瞳の中の星の輝き
「やはり君は、私の探し求めていた···" "」
カシアスは星の光の粒を纏ってゆっくり降りてくるステラアーチェを、その腕の中に抱きとめた。カシアスはステラアーチェに、愛おしそうに視線を送っていた。カシアスはステラアーチェが幼少の頃から、長年恋焦がれていた星の王国姫だと、確信した。
星の流れる瞳と、先程の星の力を使った魔力。無意識だろうけれど、星の力を借りて我が身を守ったのだ。
しかし、未だに落ちていると錯覚しているステラアーチェは、体を強ばらせたままだったが、やがて違和感に気がつくと、目を開いた。
「王太子、··さま?」
何故、目の前に王太子様が?と、思っていたのだが、今の状況を瞬時に理解したステラアーチェは、とんでもない状況に陥っていると顔を青くさせた。
-わ、私ったら何て事!??
「も、申し訳ございません!!王太子様にこのような御無礼をっ!!」
ステラアーチェは今、王太子カシアスに横抱きにされている状態だった。慌ててカシアスの腕から降りようとしたものの···。
「動かないで。素足の君を地面に降ろす訳には行かない」
「しかし、王太子様っ」
「静かに。それに、君はあんな高い所から降りて来たんだ。もしかしたら、どこかに怪我をしているかもしれない」
腕から降りようしたステラアーチェに対して、カシアスは腕に力を入れて、しっかりと支えた。
「ッッ、わたくしはただの一介のメイドでございます。どうか、この腕から下ろしてくださいませ」
ステラアーチェは焦りと不安と緊張から、冷や汗をかいていた。もしかしたら、(物理的に)この首が飛んで行ってしまうのでは無いか、とすら思ってしまう。
「先程から顔色が優れていないね?冷や汗もかいている。やはり、どこか具合が···、あぁ。ならば、私の部屋で休んで行くといい」
王太子は、これは口実のいい理由が出来たと、隠し切れないどこか嬉しげな声。王太子の口からとんでもない言葉が出たのを聞いたステラアーチェは、頭痛を感じ始めていた。
-あぁ、転生して私の2度目の人生が終わったと。
♢ ♢ ♢
絶望の中で、ステラアーチェがこっそりと招かれた王太子の部屋。豪華な装飾のベルベットの生地のソファに座らされ、カシアスに腕や足を取られ、怪我は無いかと様子を見られた。
「お、王太子様!」
これには、流石に生きた心地がしない。
不安に胸が押しつぶされそうで。
-この国の王太子様に、私ったらなんて事を!
「シッ、···良かった。どこも打ってはいないようだね」
「あ、あのっ、部屋に返してください···」
「あぁ、···すまない。配慮が行き届いていなかったね」
泣きそうに涙で潤んだステラアーチェの瞳を見て、カシアスは困ったように笑みを浮かべた。
「そう言う事では無く···、!」
カシアスは白い手袋を外すと、ステラアーチェの目尻から溢れた涙を、人差し指で優しく拭った。
「やっと、···探し求めていた人が、目の前に現れたから」
「何を仰っているのか、よくわかりません」
ステラアーチェは早く部屋に返して欲しいと、目で訴えつつ、容易な行動をしてしまった事を、酷く後悔していた。
「そんな顔をしないで、君が降りて来てくれたから、私はこうしてまた君に出会える事が出来た」
「なぜ、わたくしにそこまで、と···お聞きしてもよろしいでしょうか?」
カシアスは1拍置いてから、ステラアーチェの頬に触れ。
「そうだね。···君が、星の王国の第一王女。ステラアーチェだから、かな」