星の導きⅤ
「まぁ、···そんな事がありましたの」
「この事は、他言無用でお願い致します」
ステラアーチェは今朝の出来事を、カナリアに全て話をした。何故か不思議と、カナリアなら安心出来たからだ。
「もし、ステラアーチェが少しでもカシアス様にお気持ちがおありなら、わたくし、応援させていただきますわ」
カナリアはふふふ、と小鳥の囀りのように声を転がして笑った。
「えっ、えぇ!?··あの、それは···って、カナリアったら面白がっていませんか?」
「あら、心外ですわ。けれど、もしも本当にお2人が結ばれるような事があったら、素敵ですわね」
カナリアがあまりにも真剣な表情を浮かべるものだが、ステラアーチェはほんの一瞬だけだけれど、些細な違和感を覚えた。
-カナリア···?
首を傾げるステラアーチェに、カナリアは笑みを浮かべ窓の外を見た。もうすっかり日も沈み、濃紺の空に白く輝く星が瞬いている。空気もすっかり冷たくなって来た。
「さぁ、まだまだステラアーチェとはお話をしたいのは山々ですが、そろそろ」
「そうですわね。カナリア、今日はありがとうございました。おかげで、落ち着く事が出来ました。宜しければ、後ほどお礼をさせて下さいな」
「お礼だなんて···、よろしいのに」
「いいえ。ホットミルク、とても美味しかったのですもの」
「わかりました。楽しみにしていますわ。あぁ、カップはそのままで大丈夫ですから」
申し訳なく思いつつ、ステラアーチェはご馳走様でした、とカップをカナリアに手渡し、部屋を後にした。
♢ ♢ ♢
-もし、己の待ち焦がれていた人間が現れたらどうする?
-それがもし、叶わぬ夢だとしてもー···。
今はもう無き国の姫の話を、母(妃)から小さなころから聞かされて来た事を、今朝、ステラアーチェと出会った事がきっかけでカシアスは思い出していた。
そしてステラアーチェの瞳を見た時に、それは確信に変わった。ステラアーチェの瞳は、星の国エトワール王国、王家の血族のみに現れる特徴的なその瞳だった。
不躾だとわかりながらも、確認せずにはいられなかった。目の前に恋焦がれていた相手を前にして。切なさに支配される胸に、カシアスは···。己の身分を、深く恨めしく思った。
そしてその様子を、ほんの少し開いたドアの隙間から覗く影がひとつ。彼の執事であるフェルゼンだ。ここで覗くのも、カシアスが気がつくのは時間の問題だと、静かにドアを閉め、とある部屋へと足を運んだ。