表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

2. ドラマ台本と私。

 『家政婦は床』 とは、床に扮するのが得意なドM家政婦が主人公の、サスペンスドラマである。


 ――― 家政婦の表向きの主人は、金満デブの老害ワンマン経営者。

 しかし、真の主人は、没落旧家のお嬢様で今は経営者の妻となっている、朱鷺子(ときこ)

 朱鷺子は、親の借金を肩代わりしてもらう代わりに、泣く泣く老害デブの嫁になったのだ……。


 朱鷺子の親は、かの金満老害デブに陥れられたに違いない、と睨んだ家政婦 (朱鷺子の叔母) は、ツテを頼ってその本宅に潜り込んだ。


 そして、時には掃除をしながら、時には床に扮して、金満デブの情報を集めていく。

 だが、しかし。


 なぜか、その都度、別の事件が起こってしまうのだ。

 そして、家政婦は集めた情報と、犯人ですら引く程のMっ気で事件を解決……というのが、毎回のドラマの、主な筋立てであった。―――




「おはようございまーす!」


 その日、『家政婦は床』 の撮影場に入った江都子(えつこ) (家政婦役) は、いきなり、監督から 「はらっしょっぽりぃぃぃとぉぉぉっ!」 という、なんだかボリショイな挨拶を受けることとなった。



 今日はドラマの中でも大切なシーン…… ヒロイン・朱鷺子(ときこ)の元恋人・滋流(しげる)がヒロインを奪い返しに、金満老害デブの自宅に潜入した場面の撮影である。


 ――― 朱鷺子(ときこ)滋流(しげる)を、両親の借用書が仕舞ってあるはずの金庫へと案内する。

 滋流(しげる)は、朱鷺子(ときこ)のために必死で培った泥棒技術で金庫破りを開始するが、途中で老害デブに見つかってしまい、争いが始まる。

 そして、金満老害デブはついに殺された。殺したのは、元恋人を守ろうとした朱鷺子(ときこ)

 滋流(しげる)と朱鷺子は、『いつまでも互いの出所を待つ』 と誓いあい、警察への自首を決意する。



 ――― という、つまりはこのドラマの肝、と言っても良いほどの重要場面なのだ。


 役者も監督も気合いが入って当然、ではあるが……、それにしても。



「はらしょっぽりぃぃと、ボルケーニョォォ! エクストリームにゃっぽりぃぃぃとぉ♪」


 監督のテンションはとにかくおかしかった。


「監督、どうしたんですか!?」


「急ですが、今日のシーンは台本を一部変更しまぁすっ!」


「えええっ!?」


 つい、素で叫んでしまう江都子(えつこ) (家政婦役)。


 嫌である。

 台本は、渡された時から何度も読み込んで覚え、イメージトレーニングしている。


 それを急に変更するなど……。


 完璧に対応できるのは、某名作劇の主演を数十年も争っている2人の天才少女くらいだと思う。


 ……しかし不幸なことに、監督の、常ならぬテンションはまだまだ続いていた。


「神様が素晴らしいアイデアをくれたのでぇす! ま、これを読んでみてくださぁい!」


「はぁ……」


 しぶしぶ、書き換えられた台本を読み始めた江都子(えつこ)であったが…… その手は次第に震えだし、最後には天に向かってバンザイしながら、こう叫ぶこととなった。


「はらっしょっぽりぃぃぃとぉぉぉっ!」


「そうでしょう! これぇぞ、我がドラマの理想型ぃぃっ!」


「渦巻く愛憎がより鮮明に出て、素晴らしいです監督!」


「そのとぉっりぃぃぃとっ!」


 監督・不死元(ふじもと)と女優・江都子(えつこ)がガッチリ握手を交わした時。


「おはようございまーす!」 と入ってきた次の犠牲者に、監督と女優は元気よく挨拶をしたのだった。


「「はらっしょっぽりぃぃぃとぉぉぉっ!」」




 ¤*≅¶©*@«º*≅¿≡<↑£




<うまくいったな> <うまくいきましたね>


 宇宙から来たちっちゃいヤツら、©*@«(ピンハネ)º*≅¿(ポンチコ)は、手を取り合ってピョンピョンと跳ねた。


 彼らは、監督が目を離していた隙に、黒インクを塗りたくった身体でもって、台本に必死で文字をしたためたのである。


<mini視点をふんだんに混ぜた改変が、これほどまでにウケるとはな>


 彼らの背後では既に、取り急ぎの読み合わせとリハーサルが始まっていた。

 miniたちによる改稿は、それほどまでにキャストの心を捉えたのだ……!


<さすがは©*@«(ピンハネ)さま!>


<いやいやº*≅¿(ポンチコ)くんこそ>


<いえいえ……> <いやいや……>


 仲良く忖度合戦を繰り広げて、ふたりは次の準備にかかった。


 台本だけでは、ない。

 フロンティア精神にあふれるminiな彼らは、『家政婦は床』 の演技にもまた、物申したかったのである……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i454710
(Picrewの「もちもちめーかー」でつくったよ! )

i459019
~ベイビーセレナーデ~

i459019
~あやさずにはいられない~
 
i473646 
~simple is best !?~

Picrewの「たまごむしメーカー」でつくったよ!

画像製作はいずれも、秋の桜子さまです。 桜子さま、どうもありがとうございます!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ