1. 人気昼ドラと私。
ご訪問ありがとうございます。
本作は表現の一部を、間咲正樹さまの作品より、ご本人の許可を受けて借用させていただいております。
間咲正樹先生の作者マイページはこちら。
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『明らかに両想いな勇斗と篠崎さんをくっつけるために僕と足立さんがいろいろ画策する話』
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間咲さま、ありがとうございます!
宇宙の彼方アンドロメダ銀河の端にある惑星 『≡<*£』 から、あんな事情やこんな事情を経て、地球へ移住してきたminiなヤツらがいた。
miniというのはすなわち、地球基準でいえば、大きさ1mm程度のノミのような知的生命体である。
そして、彼らのリーダーは、その名を©*@«といった。また、©*@«の傍らには、片腕のmini・º*≅¿が、常に控えていた。
――― これさえ分かっていれば、賢明なる読者諸氏には、これから始まる物語が理解できよう。
従って、ここで、彼らが地球に来た経緯やその後の冒険は、語らぬことにしたい。
(気になる方も気にならない方も、是非とも 『部屋と宇宙ノミと私』 シリーズをご覧ください、かつ 『ブックマーク』 や 『☆』 をたくさんポチしてください……
などと実は作者は思ってはいるが、あくまで作者都合なので、賢明なる読者諸氏は気にしないでほしい。)
さて、では、いよいよ、始めよう。
――― 壮大な彼らの生涯の一片を彩った、とある小さな物語を……。
時は、miniたちが寄生している、とある島国のとある一家に赤子が生まれて間も無く…… のことである。
「ふんみゃあ……ふんみゃあ…… にゃぁぁぁ!」
「ハイハイどうしたの、ミワちゃん♡」
可愛らしい声で泣く赤子と、パタパタと忙しそうに駆け寄る母…… という、平和な光景を尻目に、©*@«とº*≅¿は、ワクワクと胸を踊らせつつ、ソファに陣取った。
「むにゃぁああ! むにゃぁぁああ!」
「あら、この泣き方は……」
赤子のオムツを調べ、乳を与えようとして、母はその手をふと、止める。
「『家政婦は床』 か! もうこんな時間だなんて……!」
「むにゃぁああ! むにゃぁぁああ! むにゃぁああ!」
「ハイハイ、分かってるよ。『家政婦は床』 見ながら、ミルク飲むの好きだもんねぇ、ミワちゃん」
母がピッ、とリモコンを操作し、テレビを点けると、木材の床板をイメージさせるロゴと共に、テーマソング 『キュッとシワ寄せ』 が流れ出した。
「あ、笑った。ほんと、好きねえ…… ミワちゃんの笑顔は世界イチぃ……♪」
言いながら、赤子を抱っこし、哺乳瓶をその口にちゅぽん、と突っ込む、母。
――― 彼女は、知らない。我が娘・ミワちゃんが、昼ドラ 『家政婦は床』 好きになった原因が、ヤツらにあることを……。
そして。
当の、生まれたての赤子にテレパシーを利用して 『家政婦は床』 を教え込んだ、とんでもないヤツら・©*@«とº*≅¿は……
<<うーん?>>
ドラマ開始後、十数分で、首をかしげることとなった。
――― 地球に来て、大ファンになった昼ドラ。どれだけ好きか、といえば、『家政婦は床』 シリーズは全て網羅し、台詞も当然ながら丸暗記する程、である。
それは良いのだが。
<予想通りですね……>
<うむ、やはり横領していたのは支部長だったな……>
<恐らく、係長は罪を擦り付けられただけでしょうな>
<きっとこの後は支部長の悪が次々と明るみに出て、最後は逮捕……に、違いないな>
ふたりは不服そうに跳びはねた。
最近の彼らは、愛のあまり 『家政婦は床』 思考が進化してしまい、展開をほぼ完璧に予測できるようになってしまったのだ。
安定と安寧に慣れた、平和なこの島国の住人は 『思った通りの展開』 という安心感を好むようだが、宇宙から来たminiたちのフロンティア精神に、それはマッチしなかった。
<こうも予想通りだと、どうも新鮮みがないですな……>
<いや…… まだ、支部長と係長の間に目眩く愛憎劇が繰り広げられる可能性も>
ブツブツとテレパシーを交わしつつ、画面に注目する、©*@«とº*≅¿。
しかし。
彼らは、ラストの家政婦の決め台詞 『私を殴って自首して下さい!』 でガックリと肩を落とすこととなる。
その後、ヤケになった犯人が家政婦を襲い、家政婦が殴られた喜びに震えているうちに警察が到着、犯人逮捕…… 全て、テンプレ通りにコトは進んだ。
おもしろいが、おもしろくない。
そんな気分の、miniふたりである。
<もう、いっそ、我々が介入するか……>
<いいですね! さすが、©*@«様!>
©*@«が呟くようなテレパシーを漏らせば、すかさずº*≅¿が、賛同の宙返りをする。
<今日も冴えざえとした天空の雷のように冴えておられますね>
<いやいや、これもº*≅¿君の助力あってこそ>
<いえいえ……> <いやいや……>
阿吽の呼吸の忖度合戦に、今日もどっぷり浸りつつ、背後にミワちゃんのご機嫌な波動を感じつつ、miniたちは思った。
テンプレの安心感とはこれすなわち、母の抱っこである、と……。
¤*≅¶©*@«º*≅¿≡<↑£
「……ん? アレ何だ!?」
その日、人気ドラマ 『家政婦は床』 の撮影現場に入った監督・不死元が目にしたのは、用意されていた台本の上をピョンピョンと跳ねる黒いノミのような虫だった。
そして、その周りでもまた……
赤・青・黄のいずれかの色に塗られた、ノミのような虫たちが、自在に跳ね回っている。
「……」
目がおかしくなったのかと、まぶたをこする不死元。
再び目を開けた時、虫たちの姿はどこにも無かった。
「……気のせいか」
そう自分を納得させて、パラパラと台本をめくった不死元は、しかし、再び我が目を疑った。
――― 台本が、一部改変されている。
しかも、もとのものより、良い。
最近マンネリ化しがちだった展開に、ほんの少しの変更が、見事に新風を吹き込んでいるのだ……!
「……これだ!」
不死元は感動に手を震わせて、叫んだ。
「これだぁぁぁぁっ!」
彼は、知らない。
――― 先ほどのノミたちが、錯覚などではなく、実在することも。
『mini』 を自称する知的生命体であることも。
台本が、黒インクを身体中に塗りたくった彼らによって、書き換えられたことも。
――― そして、今も、現場に介入しようと、密かに待機していることも……。