8.
「さて、オリヴィエ。この陣の上に立ちな!」
家の外、魔女が杖で地面に書いた大きな魔法陣の上にオリヴィエは立つ。
そして魔女が何かを唱えたかと思うと地面が輝き、オリヴィエは光に包まれた。
***
「さて。終わったよ」
「……?……??」
オリヴィエは辺りを見回してみるが、何も変わった様子はない。それを察したのか魔女が手鏡を差し出してくれた。
そこに映っていたのは――――。
「っ誰!!?」
「ははは、良い反応だ。魔法でアンタを一時的男と認識されるようにしただけだよ。安心しな」
「男に認識――」
言われて冷静に自身を認識すれば、顔も声もいつも通りだ。オリヴィエの魔法は攻撃系のものが多く、魔法陣を使うタイプの魔法も見る機会が少なかった。それにこの魔法は魔法を使った後の魔力痕を全く感じさせない。認識を変えるなどというかなり強力な魔法な上に、魔力痕を全く残さない術式も入っているようだ。魔女と呼ばれるほどの凄さの一端を垣間見られた気がした。
「女の容姿のままだと王宮に入ってもバレるだろう。大丈夫さ。この薬を飲めば魔法は解ける」
「はい。ありがとうございます!」
「ああ。どういたしまして」
そんな会話をしていると、家の中で何かをしていたアドールが出て来た。
「ふーん。魔法、成功したみたいだな。ほれ、これに服着替えろ」
「え、ええ……」
渡された男物の服には見覚えがあった。何故なら毎日の様に見ていた服……王宮で働く騎士の服だったからだ。
どうやって手に入れたのかなど少し疑問に思いながらも、与えられた部屋でそれに袖を通した。
「着替え終わりました」
「中々似合っているじゃないか」
「そうだな、悪くない。これを着る筈だったイーズの背丈が低いのが幸いだった」
「うぅ……確かに俺は背が低いっスけど、そんなハッキリ言わなくてもいいじゃないっスか……」
それぞれの感想を好き勝手に述べている面々。イーズが少し可哀そうなことになっているが、これで準備は完了した。
「さて、王宮に侵入だ」