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神田の小話『ホタテ解散』

作者: 神田かん

「そんなこと急に言われても。困る。ずっと仲良くやってきたじゃないか。もちろんたまには喧嘩もした。でもそれは本音をぶつけ合えるっていう良い意味でとってくれよ。


困るよ、すぐそんな言い方されたらこっちだって。え?なに?言いたいことあるならはっきり言えよ。だから困んだよ。はっきり言ったのはたしかに言ったけど、理由聞かされてねぇから。理由をはっきり言えよ。


嫌だからって、そんなの理由になってねぇよ。俺たち死ぬまでずっと一緒なんだって思ってたのによ。もうなんだよ。なんでこんなことになんだよ。くっそー、頭にきた、もうやってらんねぇよ。くそ。なんなんだよ、まったく


・・・


なんでなんも言わねぇんだよ。あぁそうだよ、泣いてるよ。見ればわかんだろ。バーカ。


・・・


え?ちょっと待って。そんなこと?それが理由?信じらんない。信じらんねーよ!くそ!そんなん最初からわかってたろ?始めるときから、俺がおまえに声かけたときからわかってたことだろがよ。あ?おれ言ったよな?言ったよな?だからはっきり言えよ!むかつくなぁーもう!


・・・


・・・お前のサポートがあったからここまでやってこれたんだよ。お前が言うようにおれはメインだよ。俺がスポット当たるよ。俺がキャーキャー言われてちやほやされるよ。感謝されるよ。ありがとうって。


でもな、うまくなかったときも浴びるのは俺なんだよ。吐き捨てられるんだよ。簡単にな。あんな大勢相手に、あんな目で見られて。期待を返せって声が聞こえんだよ。一瞬にして人に嫌われるって気持ち、お前にわかんのか?俺は今まで全部背負ってきたんだよ。それ、お前にわかんのか。


・・・


それでもな。わかるか。わかるよな。あぁ、お前がいねぇと立てねぇんだよ、俺は。俺一人だったらとっくに流されちまうんだよ。それを思うと、あぁ、なんて自分は弱いんだって突きつけられて悔しくなんだよ。力量不足なのかなって。お前に負担かけすぎてんのかなって。

誘ったの俺だからよ。


お前がいてくれたから、今の俺があるのは間違いねぇんだ。なんか久々に熱くなっちまったけど、うん。いやいや。こちらこそ、ごめんな。それと、あ?なんだよ。言えよ。


なんだよ、急に。照れくせぇなー。おう。いや、うん。うん。わかった。


ありがとな。そんで、これからもよろしくな!」





つい盗み聞きしてしまった。危うく解散になるかと思った。ホタテの身と貝柱の会話はあまりに熱く、僕は思わず泣いてしまった。でもなぜ、身の方の声しか聴こえないんだろうか。


しかしのぼるは柱には口がないんだということで簡単に疑問を片付けた。


よし、家に帰ったらしじみ汁を食べよう。

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