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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
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第82話 神国と砂漠と海辺の小国。其の11。共通通貨。




 大陸にくっ付いた島。と言う表現が正しい様な南の半島。

この半島には6つ小国がある。

 一つは大公位を詐称する男が治めていた『ダキア大公国』。そして、都市国家である『ケア』『ゾンマー』『エラ』『テロス』『リュンヌ』である。

 都市国家群は通貨同盟を締結しており、共通通過を使用している。

 この都市国家群の他にも町がある。比較的大きい『サイフ』『レータ』『ヴェラオン』の3つの町は何れも半島の山脈の麓にある鉱山都市であり、それらの町も通貨同盟の関係にある。

 したがって、今後、『ダキア』旧大公国の町『ゲタエ』の復興に多大な資材が必要な為、近隣の鉱山都市の協力を取り付けたいアンリエットだった。

 その為の『リュンヌ』市長との接見であった。



◇◇◇

「お初にお目文字致します。ファテノーク王国王太女アンリエット=シルヴァーヌ・ド・ファテノークと申します。リュンヌ市長閣下に置かれましてはご健勝の事とお喜び申し上げます」

「同じく、ファテノーク王国王位第三継承者フェリシエンヌ・ド・ノォーミク。以後お見知り置きを」

「これはこれは………。私は市長の『ジャン=クリストフ・リュンヌ』だ。して、些か突然の訪問の様だが、一体どの様なご用向きですか?」


 午後1時。

 リュンヌの町の市庁舎。その中の応接室…、では無い。どう見てもお城の『謁見の間』に通されたアンリエット、フェリシエンヌ、ベルナール、ナルシスとジーン、マリエだった。

 面会とか接見ではなく、『謁見』なのだ。

 どうにも、半島の領主は『勘違い野郎』が多いのだろうか?

 この四十代半ばに見える市長閣下もその類いの様だ。


「今回、公式では無い訪問に成ったのには、訳があります。

 ()の『ダキア』大公国の大公を詐称していた者の失脚。それと、『ゲタエ』の魔物の襲撃での喪失に伴うワタクシ、アンリエットの統治、復興に掛かる資材の調達。その為、都市国家群の通貨同盟の盟主リュンヌ市長にお知らせと挨拶に参りました」

「ああ、昨日にゲタエの事は聞いてます。で、『統治』とは?」

「文字通り統治、つまりアンリエットの領地。と言う事です。既にワタクシの私財を投じて、復興、救済を始めております」

「始めてる?何時から?それとも事前に準備を?」


「これは失礼しました閣下―――――――――――。お近づきのの印が未だでした。お納め下さい」

 いつの間にか羊三匹が謁見の間の市長の座る玉座の様な椅子の前に鎮座していた。


「あっ。ひぃっ?羊……。え?」

「この様な方法で人員、私財を運んで復興政策を始めております」

「は、はあ。」

 市長は度肝を抜いて少々放心していた。

「それは、その(わざ)は『亜法』か?どんな技だ、どうやった?教えろ」

 市長の側に立っている女性秘書官が、アンリエットに声を掛けた。随分な上からの物言いに、アンリエットもフェリシエンヌも眉を潜めた。

「『亜法』の一種ですが何か?」

「それは、何処にでも行けるのか?私を連れてってくれ」


「随分、不遜な仰り様ですな。非公式とは言え、一国の姫君に対して如何な物ですかな?」

 少しナルシスさん、キレ掛かっています。

「い、いやそう言うつもりは……」

「では、どう言うつもりの無礼であるのか?」

「す、すまない。我が娘は、どうにも言葉遣いが悪くて。どうか許して欲しい」

「娘ぇ?市長閣下はぁ公務に私事を挟む方なのですかぁ?」

「いいや、違う。私事では無い。彼女は娘だが、『秘書見習い』なのです」

「ならば尚更、公務に口を挟ませない事だ。その教育も行わずこの場に立たせて居るなど、市長、其方の怠慢であろう」

「そ、それは、それはその通り、だと、思います」

「市長、話を戻す。今回アンリエット自ら来たのは、『通貨同盟』について、だ。今後取り引きを行う都市国家群と我が『ダキア』も通貨同盟を結びたい。その次官級の協議日程を決めたいのだが、承知か?」

「は、はい。日程を決めましょう。事務官あちらの事務官殿を会議室に案内しなさい」

「ナルシスさんベルナールさんを頼む。では市長ワタクシ共はこれにて失礼する」

 踵を返すアンリエットとフェリシエンヌに続くジーンとマリエ。

「ちょっま。ちょっと待ってぇ……、会食でもぉ」

 何やら喚いている市長だが、アンリエット達は、(知ったこっちゃ無い)と無視して、市庁舎の胸糞悪い『謁見の間』的な部屋から出たのであった。


 庁舎前の広場で待たせていたエミール達五人にアンリエットは、「待たせてご免なさい」と言うと、老ジェラルドに小声で話し掛けた。

「怪しいの居なかった?」

「今、一人ですね。まあ時々人が変わるんですが…、今は噴水を挟んだ向こう側に居ます。『中央市場亭』を出てから四度目の交代で、全部で三人、ですね」

「そう、ありがとうジェラルドさん。後はジーン達に任せるから…」

 アンリエットはエミールの下へと小走りで駆け寄った。

「先生。『通貨同盟』、共通通貨について教えて下さい」

「随分難しい…って、その為にリュンヌに戻ったのでしたね。

 そうですねぇ、例えば帝国とファテノークは共通通貨ですね。貨幣の原材料の金銀銅の供給の安定もありますが、一番は両国共、政治的、経済的に安定している事が大きいです」

「大きな飢饉も無いし大きな政変も無いから金貨を鋳潰して増やしたりする愚策な金融政策をする必要が無い。両替の必要が無いから取り引きがスムーズ、手数料も取られない」

「そうですね。ですが、先生の給金が帝国で貰うよりファテノークで教鞭取った方が良かったら?きっと先生達はファテノーク王国に引っ越します。もしそれが農民だったら?もし、国の民皆が、とまあ国家間を移動しやすいと人口の偏り、お金の大量流出。良い事だけでは無いですね。

 ところで、アンリエットさん、今回の『通貨同盟』、短期的な同盟なのでしょう?」

「わあ、流石、当たりです先生」

「復興の資材確保の為かなぁって僕、思ってました」

「何で勉強してるっぽいのにイチャイチャしてる様に見えんの?

 って言うか、アンリちゃんって、経済にも詳しいんだー」

「アンドレさん、何を当たり前の事をぅ。領地ぃ経営者よぉ?アンリちゃんはぁ」

「そおだったぁ。ところで、(半島)南端の町への出港は今夜?」

「明日の朝に成るかも」

「でも、この依頼で一日金貨17枚使っちゃうじゃん。損しちゃう、ん……」

 フォーレ商会の御曹子アンドレは、「ん?」と首をアンリエットに向けた。

(アンリちゃん、何で沈んだ顔してんの?)

 と感じたからだ。同じ様にイヴァンもアンリエットを見ていた。


「のう、アンリエットよ。悩み事があるのなら、妾が聞いてやらないでもないぞ?言うて見るとスッキリじゃ」

「んん~。聞いてくれる?」

 アンリエットは、今朝見た夢を話した。そしてそれは7月3日、馬車の中に囚われていた朝も見た事を言った。


「それはあれじゃ。『明月(あけつき)』の求めている声じゃ」

「空の『明月』?あのお空のぉ?」

「そうじゃ」

「……。何であたしを『青月』に落ちた『明月』が求めるの!?」

「そーれはぁ。知らんのじゃ知らんのじゃ。ノブユキに聞くが良いっ!」

 それ以上姫神子アニエスは答えなかった。



◇◇◇

 砂漠は熱い、日中は熱い。凄く熱いのだ。だから危険な生き物は日中出て来ない。

 夜は涼しい。大抵、魔物や人を襲う動物は夜行性だ。旅の行程で襲われたのは一度だけ、それも商隊の人達が片付けたのだった。


 夜明け前出発して四~五時間程移動したら、朝食兼昼食(ブランチ)だ。

 大きな日除けの帆を張る。その『帆』は商隊26名とルシール達13人の『マント』を繋いで出来た帆だ。その日陰で休憩を取る。そして、夕方前に移動を再開、日が沈む頃、野営だ。

 食事は何時も硬い黒パンと水で戻した乾燥スープ。ジュリエットはそこに乾燥香草を入れたりしていた。

 砂漠に出て四日目の午前中、オアシスに着いた。それから二日後の夜に『シズガミの砂漠の里』に着いた。

 先触れは、半日前に出していた商隊(キャラバン)隊長イアサントであった。

 だから、少し豪華な夕食が出来上がっていた。

 長命種の人達が、『シズガミの里』か只、『里』と呼ぶそこは、砂漠なのに草も生えていたし木も生えていた。畑もあり、おそらく、家畜も飼っている様子だった。


「ノブユキさんお久し振りです。老けましたねぇ」

 老年の男性が学園長に握手を求めて来た。

「おおぅ、有り難う御座います。本当にお久し振りですマサカズさん。ぃやあぁぁ何年ぶりでしょう?」

「んんーん。何年かの?」

「「わっはっはっはっ!」」

「こんばんは、初めてまして。私が次期ヨルドの族長ナデージュです。マサカズ様、どうか宜しくおねが…」

「『様』って何?シズガミの族長マサカズだ。アタシの事ぁ『マサカズさん』で良いからの。

 しっかしアレだヨルドの先代、ヒロノブが亡くなってもうーぅ80?年「98年です(イアサント隊長のツッコミ)」…その百年近く不在で、やっと決まったかと思ったら、女の子とかーーー。趣味?なの?」

「いやいや、とぉ、まぁ、冗談はそのくらいで。本題です。

『移動』の魔道具をナデージュさんに貸し与えて下さい」

「用意はした。だが、本当に使えるの?」

「確実に使えるだけの『魔力』はあります」

「……そうか。では、ヨルドのナデージュ。これをお前に預ける」

「えっ、こんな簡単に渡されても良いんですかマサカズさん?」

 シズガミの族長から渡された5センチ四方の正方形の板、銀色で幾何学模様が描かれた『魔道具』。神国ルナールでは『神器』と呼ばれるそれを受け取ったナデージュ。

「じゃあ、アンリさんにあって来ます。今日は帰れない、と思います」

 と言って、神国ルナールの(みやこ)の皇宮を思い描くのだった。



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