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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
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第81話 神国と砂漠と海辺の小国。其の10。お貴族様の市長。




『シズガミの砂漠』の商隊は、『塩湖』に着いていた。

「水際が白いですわ。これ全部お塩ですの?このお塩、全部売ったら大金持ちですわあ!」

 ああ、そっちなんだジュリエット。と皆、思った。

「この辺りは、塩湖の影響で、『砂漠蟲』とかの魔物は近付きません。このまま北へ一日歩くと、私共の里です」

 商隊の隊長『イアサント』は言った。

 何か、「お塩は持って行きませんの?」と残念顔のジュリエットであった。

「ノブユキさん、アンリエット姫は『瞬間移動』の魔道具を使わないと『跳べ』無かった。と言いましたが、本当ですよね?ならば、まだ安心かもしれません。魔道具無しで跳べる様に成ったら、アンリエット姫確保の為、血眼に成って『教会』は彼女を追うでしょう」

「里に着いたら、その『魔道具』をナデージュさんに貸し与えて貰って良いのですね?」

「ああ、約束する。だが、本当に魔道具を使いこなせますか?まだ、13歳と言うでは無いですか。私共の里で使えた者は随分前に亡くなって、里に使える者は現在いない。と言うのに、こんな少女が?」

「ナデージュさんの『魔力』は、アンリエットさん並みです。きっと使えますよ」

 後、一日歩くと『シズガミの砂漠の民』の里と言うところであった。



◇◇◇

 7月14日の朝、『リュンヌ』の町を出港したラ・フォーレ号である。

 ここ迄、青空の下航海していたのだが、どうやら『嵐』が来る様だった。


「ギュスターグ、どうだい嵐は?」

「ぼっちゃん、オレぁーの予測と違っちまいやしたー。午後から明日の明け方迄、嵐の只中って感じでさぁー嬢ちゃん達、皇子さん達は船室で大人しくしてて下せー。副長、甲板は任せた。帆を張ったり仕舞ったりするなーおまえの采配で良いわなー。ウスターシュ、航路の予定と嵐の通過予測だ。船長室に来いっ」

 この海域は『嵐』の発生海域なのだ。稀に急発達する『嵐』も在る。

 午後のお茶の時間頃には南西方向から、黒い雲が立ち上って、忽ち、雨と風が勢い良く吹くのだった。

 船室で大人しく窓から外を覗くアンリエット達。

 高浪が船室の窓を洗う。ちょっと、ビビったアンリエットであった。

「船長さん、明け方迄ぇ嵐ってぇ言ってたねぇ」

「フェリシエンヌ様、私、船が沈んで仕舞ったら、と考えて恐ろしく成りました」

「妾も怖いのじゃあ。アンリエットよ、(ぬし)ならなんとか出来るじゃろ?」

「アニエス、あたしが天候なんて操れる訳無いでしょ?明日の朝迄なんだから、布団でも被ってやり過ごそう?ね」

 おおおおー怖いのう怖いのう。

 アニエスは寝堕ちする迄、嵐を怖がっていた。


――――その身体、我々に譲れ、お前が欲しい。――――僕らの身体、でしょう?―――アンリエットの身体は、私達の身体よ?―――――これは、@&Ⅲ♭◎の意思だ。―――――

 あの男性や女性、少年老人の混ざった『おまえが欲しい』と言うあの声だ。

 夢なのだろうか?前は何処で聞いたのだったか。ああ、あの岬の馬車の中だ。

――――我等の(もと)へ来い。――――アンリエットの身体が欲しいんだ僕達。―――――わたしらが使うんです。――――

(勝手な事言わないでっ!あたしの身体は、あたしのものなの!消えなさい!!!)

 その瞬間、夢の中で放った光が、男性の様な女性の様な老人、少女少年の声とその存在を吹き飛ばした気がしてアンリエットは目が覚めた。

「アンリちゃん、大丈夫ぅ?うなされてたみたいだったよぉ」

「ゴメン、フェー心配掛けた。大丈夫…。でも無いんだケドね」

 フェリシエンヌに夢の事を伝えたアンリエットであった。


「この旅ぃ、思った以上に大変かもぉ。アンリちゃん、私、少し後悔してるぅ。アンリちゃん危険だよ?きっとぉ……」

「フェーのそれ、良く当たるからねー。ちょっと困ったな」


 7月15日の朝。晴天だった。

 まだ、風の方は強いのだが、嵐を抜けたラ・フォーレ号であった。


「船長さん、三時間程の停船お願い出来ますか?」

「なんでぇアンリ姫ちゃん。オレぁーに理由を言ってみぃー?」

「二日に一度定期連絡をしているんですが、昨夜の嵐で出来ませんでした。今から昨日分の連絡を入れたいんです」

「おーい!ウスターシュぅ。ここで停船しても良いかぁー?」

「日程的に問題無い」

「だってよぉ。帆を畳めぇーっ!錨、下ろせぇーっ!」



◇◇◇

「『ゲタエ』の復興の目処は、立ってません。ここ『ダキア』との中間、『サントス』の町のゲタエ難民野営地(キャンプ)の報告ですが、昨日昼の時点で物資も行き渡っております。しかし、難民の多くが疲弊…精神的にも…しており、早急な対策が必要です」

 アンリエットは、『ダキア大公国』の自称大公の居城にいた。

 ダキア国内の復興状況の報告を受けているのだ。


「必要なのは、難民の住む場所、か…。概算でいいわ。ゲタエ復興に掛かる時間と予算は?」

「復興に一年。予算は、王金貨で500程かと。但し、港周辺ののみの復興なら半年。と言ったところでしょう」

「………。では、ダキアとサントスの町から労働者を募って、ゲタエの復興作業に当てて、大工と石工それ等は強制動員。難民は女性が多いのよね?なら、炊き出し要員も募って。後は……」

「建材、で御座いますか姫様?」

「そうそれっ!何処か近い場所に……」

「ゲタエの南、『ケア』から馬車で一日の距離、東の山中に『サイフ』と言う鉱山が有ります。建材に成る石も産出すると聞き及んでおりますれば、その町との取り引きで…」

「半島の都市国家群の盟主は何処ですか?」

「『リュンヌ』ですね」

「えっ!マジ?通貨同盟を結んだ方が良いよね。

 どうしよう。リュンヌで通貨同盟結んで、サイフでの建材買い付けの交渉は誰かに任せて、、、まぁ取り敢えず、他に無ければ明日の夕方、また来ます」

「はっ。お待ちしておりますアンリエット姫様」


 その後、アンリエット領南東の国境の町『ニェール』へ跳び、報告と情報交換を行った。

 後、アンリエットは神国ルナールの都へ跳んだ。

 ルナールの女皇イズモ=イレーヌに接見した。

 会う必要は無かったのだが、女皇が「顔を見せよ」と言うもので、仕方無く会った。

「健勝かや?」

「お陰さまで、健康です。皇はお変わり無く」

「数日で変わってたまるか、じゃ。まあ、エカルラトゥ達も予定通り出立しておるしの、今日明日には『シズガミの砂漠の里』に着くじゃろうて。お主等(ぬしら)は、明日、半島の南端じゃったな?」

「予定通り、ならですが。ところで皇、一つお願いが御座います」



◇◇◇

「ふぅぅぅ、ギリ三時間。船に着いたぁ」

「お帰りぃ、アンリちゃん。何かあったぁ?」

「なぁーんにも無い」

 女皇イズモに接見後、南の海に停泊するラ・フォーレ号へと戻った。


 今度は、船長ギュスターグに頼み事をしなくてはならなく成ったアンリエット。

「船長ぉさん。お願いがあります。そのぉ、『リュンヌ』に戻って頂きたく…」

「はぁ?って、まあアンリ姫ちゃんが『依頼主』な訳だからぁー、良いのかシリル?」

「商会的に問題無いですが、戻る理由をお聞かせ下さい」

「通貨同盟。半島の都市国家群と結びたいの。条約の盟主が、『リュンヌ』。そこの国主に謁見したい」

「そうですか。航行に支障はウスターシュさん?」

「問題無い。が、船の破損が少々酷い。リュンヌの寄港は歓迎」

 フォーレ商会の武装商船ラ・フォーレ号は反転、北への航路に移った。


 翌朝7月16日。再び『リュンヌ』の港に着いた一行。

「あれ?あんた等戻って来たの?」

 港湾事務所のおじさんが目を丸くして言った。


 朝食は、『中央市場亭』でまた『カライ』を食べた。

 『鶏カライ』と『羊カライ』もあると言うので、アンリエットとフェー、ヴィクトリアとアニエスは『羊カライ』を注文した。勿論、甘口カライだ。

 『(マトン)カライ』は特有の臭みも無く美味しかった。

 香草の『迷迭香(ローズマリー)』と言うのを使っているそうだ。


「ところでご主人。数時間滞在出来る場所は無いだろうか?」

「滞在、とは?」

「うちの姫様、アンリエット様がリュンヌの国主殿と会いたいと申されて、面会の予約を入れたいのだ」

「じゃあ、ウチの二階使って貰ったら?」

「ああ、だがあまり綺麗な部屋じゃ無いぞぉ」

「野宿とか結構やってますんで、それよりましでしょう?そこで構いませんので、お貸し下さい」

「スイマセンねえ、ウチの主人が。ちょっと片付けるから、皆様お待ちに成っててねぇ」

 奥さんは二階に上がって行った。


「ベルナールさん。こう言う場合、面会の予約より『先触れ』の方が早いよね?だけど、失礼に当たる?」

「今回の訪問は非公式なので……、と言いたいところですが。条約の締結に係る接見なので、本来であれば面会予約どころではありません。事前の次官級協議の後、公式訪問で条約調印です。したがって、アンリエット様のしようとしている通貨同盟の締結は、今日明日中に出来る訳も御座いません」

「なら、非公式の訪問で、面通し。今後そちらの都市国家群、通貨連盟と貿易がしたい。この一ヶ月以内に次官級の話し合いの後、条約の締結を行いたい。ってのを伝えに来た。って言う感じで!」

「ああ、もうアンリエット様、それで良いんじゃ無いですかぁー」

「お兄様、面倒臭く成ってません?」

「アンリエット様。僕、先触れ出して来ますねー」


「ところで主人、この町…国、ですか。ここの国主殿は如何様な方ですか?」

「国主?ああ、市長です。…市長は世襲に成ってます。で、何て言うんですか、こう言うの。市長じゃ無くて、『お貴族様』ですよねぇ」


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