表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
78/89

第77話 神国と砂漠と海辺の小国。其の6。転移。




 20台の大型弩(アーバレスト)の矢が、一斉に『蜂』へと向かって行った。

 何体かは仕留めたのだろうか。ギュスターグが次射を指示する。

 矢を放つ頃、『蜂』達は自分の敵を認識した様だ。数体、こちらに向かって飛んで来始めた。


「大型弩1から10番は火矢を用意出来次第、打て。残りは近付く『蜂』に弓で対処。帯剣忘れるなよー」

 大型弩は火矢を放ち、弓は近付く敵を打った。

 だが、船長のギュスターグもエミール達も気が付く。

 蜂に矢が刺さっても飛んでいるのだ。死んでいない。

 ここで、エミールは思い出した。


「すまん皆。今思い出した。報告書にあった記述に『目と目の間を狙わないと絶命せず、攻撃が続く』だ。眉間を狙って下さい!眉間です!」

 だが、戦いの怒号にエミールの声は届かない。

「オレがギュスターグに伝えて来る。エミールとイヴァンは水夫一人一人に教えてやってくれ。急ぐぞっ」

 各々が役割をこなし、なんとか蜂が、ラ・フォーレ号に取り付く前に攻撃方法は伝わった。


 夕方、「蜂の殲滅を確認した」と偵察から戻った水夫から伝えられると、船員全員が勝鬨を上げた。

 だが、事前に魔物の倒し方を知っていたのにそれを伝え無かったが為、少なく無い死傷者が出た。

 エミールは自責の念で心が押し潰されそうだった。

 水夫の死者は六人だった。


「ラ・フォーレ号の皆さん、僕が…、僕がもっと早く、知っている事を伝えていれば。本当にすまない。どんな謝罪がいいのか分からない。どんな罰を受けてもいい。どんな…どんな……」

「おう、あのよお皇子さん。あんたがどんなに泣いても謝っても死んじまったアイツ等は戻っちゃこねー。まあ、謝って気がすんで、救われた気になんのは皇子さんの心だけだぜぇー」

「おいギュスターグ!」

「ぼっちゃん黙ってなー、まだ話しゃー終わってねー。

 オレぁー死んじまったアイツ等の責任取れっとか言わねー。死んだヤツの自己責任って思ってる。これはコイツ等に何時も言ってる事の一つだ。なあーおまえ等あー」

おおおおうっ!!!

「……でだ、皇子さんよー、責任感じるってんなら、今後に生かせ。ってこった。以上だ。そう言う訳で、死んだアイツ等の鎮魂と勝利の宴だ。野郎共。飲め踊れ騒げ楽しめっ!」

 夜中過ぎ迄宴会は続いた。

 翌日、船長二日酔いの為、船上にて休日と成った。


「無事だろうか、アンリエットさん」

「ロリコン皇子。あの姫様はちょっとやそっとでどうにかなっちまうタマか?また、とんでも無い事、仕出かしてると思うぜ?あの岬の土砂の小山、アレってぜってー王都の路地だぜ。どうやって馬車で半日の所に運べるんだ?俺等が聞いた話しと合わせて考えてみたんだが、おそらく空飛んだか或いは……」

「瞬間移動、だな?」

「ったく、今俺言おうとしたのにイヴァンのバカ野郎!」

「まさかー」

「いいや、あの姫様ならわかんねーぞお」

 なかなか鋭いエミールの友人達だった。



◇◇◇

 朝食前、ジャンヌのお誘いで武術の鍛練、手解きを受けた神国ルナール第二皇女エカルラトゥ。初めての経験に興奮気味だった。

 食事中も帝国皇女ルシールとジュリエットの模擬試合やナデージュに剣技を教わっているジャンヌの事を話したり聞いたり、エカルラトゥの狐の尻尾が、ワッサワッサ揺れ動いている。

 興奮している一番の原因は、城の衛兵の模擬試合にあった。


「お姉様方は凄いです。私が言うのも変ですが、まだ、子どもなのに、お城の兵があんなにも早く『参った』って言うんですものっ」

「それでも、アンリさん達には敵わないですの」

「ですねぇ。『亜法』もね」

「アンリさんは、常識の範疇にありません。特別です」

「なあ、ルシー、アンリもだけどフェーちゃんも特別だよな?」

 こうして、アンリエット英雄譚に突入する7月7日の朝だった。

 英雄譚は昼食中も続いた。



◇◇◇

 自称大公の居城の衣装で、500着の男性用衣類は全て賄えそうだった。

 裸で監禁しているこの町の兵500名に対しダキエの町を掌握した事、大公とその家族家臣を地下牢に入れて居る事等を説明し、アンリエットに降る事を条件に解放する事を伝えると皆が皆歓喜の声を上げた。

 監禁から解放される事より大公から解放された事を喜んでいるのだ。

 予想はしていた。

 メルシェ将軍は、何とも言えない気持ちになった。あの大公は悪い貴族の典型的な男だった様である。


「どうして、アンリエット様の様な為政者は少ないのか…。善政だと言われた私の父でさえ、領民の一部には恨まれていたものだ。『お貴族様』と言われたりしてね」

「将軍、あのアンリエット様でさえ、民に恨みを買って、殺され損ねたのですよ。善政を行ってもそう言う物です。しかも聞いた話しだとフェーちゃんが庇って重症に……」

「その話し詳しくっ」

 聞き終えて、深いため息を付くナルシス。


「フェリシエンヌ様には、何かそう言ったものを感じていたのだが、『自身の命すら主の物』、か……」

「おそらく、そうなのでしょう。常々フェーちゃんは、『従妹でぇ、幼馴染みでぇ、大親友』とアンリエット様の事を言いますが」

「物心付く頃から、『姫を守る』。それだけの為に育てられた。と?」

「はい。悲しいです私は……」

 老ジェラルドの目は真っ赤だった。



 時を同じくして、エカルラトゥもジャンヌもジュリエットも目を真っ赤にしていた。ジュリエットに関しては号泣だったりする。

 ルシールが、以前ファテノークへの旅の途中、リアム隊長と分隊の兵士達のフェリシエンヌ考察を語り終えたところだったのだ。


「何故、今に成って言うかなぁルシーはぁ」

「だって、こう言う時じゃ無いと機会が無くて」

「でも、そうだね。フェーちゃん、確かに半歩後ろにいるよ。こう言うのって……、そうか私の森の『在り方』にも通じているのか……」

「な、んですの。グズッ、『在り方』って。グズッ」

「ああ、いけない。口が滑った。そのー、ゴメン。今は言えない」

「ナディーさん何時なら言えます?」

「ホントすまない。その時が来たら。としか…」

 そこに学園長が顔を出した。


「小さな娘さん達が泣いていますね。若干大きな娘も泣いている様ですが、どうしたんですか皆さん?」

 ナデージュが経緯を大まかに話し伝えると、学園長は言った。

「皆さん。フェリシエンヌさんは可哀想でも悲しい運命でもありませんよ。

 例えばルシールさん、貴女は第二皇女です。生まれた時には『皇族』。政略結婚の道具に成る運命かもしれない。

 ナデージュさんも『長命種』として生まれ、友達とは違う時間を生きねば成らない。人には、各々の役割があるのです。そう言うモノです」

 目から鱗のルシールだった。思い出す度、悲しく成っていた自分は随分狭い考えだったのだろう。と思うのであった。


「ところで、連絡がありました。明日には商隊(キャラバン)が皇都に着くそうです。2~3日滞在の後、出発だそうですよ」



◇◇◇

「結果として、あたしの采配で行った事。王太女アンリエットとして対処します」

 ある程度、兵の掌握や城の使用人の処遇の目処が立った7日の午後、アンリエットは皆に言った。


「具体的には、どの様に為さりますか?」

「ナルシスさんには悪いけど、ファテノークから人員……、具体的に、でしたね。事務と行政官。それと若干名の兵を連れて来ます」

「はっはっ。私は帝国の軍人かもしれませんが、私自身はアンリエット様の軍人のつもりです。今更です。それに、帝国に楯突いた『北ミュロ』の軍人でしたから、帝国に帰属するには少し違う気持ちなのですよ」

「ですが姫様、帝国とのバランスを考えますと」

「アンリエット様、あまり問題無いと愚行します」

「ベルナールさん、その根拠は『ワロエス』ですね?」

「アンリエット様、当たりだと思います。帝国にワロエスを与えれば良いのです。あの国は今後、地方領主の争いに成るでしょう。まあ、隣接しているアンリエット領も巻き込まれるでしょうが、そこは『帝国のアンリエット』様が対処するのですからね。ここは『ファテノークのアンリエット』様が治める。そう言う事です」

「ベルナールさー、頭良いッスねえ」

「当たり前です。私のお兄様ですものっ」

「前々から思ってたッスが、ひょっとしてヴィクトリアタン、ベルナー「ゴンッ」いったーいッスぅ」

「マリエ、余計な事は言う必要ありません」

 ジーンに頭を殴られたマリエ。

 皆まで言うな。と言う事である。


「どうやって連れて来るのですか?その文官様や兵を?」

「ジェラルドさんの質問に答えるね。見てて―――――。ただいま!」

 一瞬アンリエットが消えた。何時もの『異層』へ移ったかの様に見えた。

 だが、違う事は一目瞭然だった。

 腕に抱えた子羊一匹。

なっなんじゃそりゃあーーー!?


「ファテノークから連れて来た今日の晩御飯っ」

「『神器』は、アニエス殿下が持っているはずですが……、同じ物を発見したのですか?」

「『神器』はアニエスの持つのだけ。あの神器を使って見えたの『異層』が。だからアニエスには『何かつかめそう』って言ってたんだけど、肝心のアニエスが居ないし、まあ後で伝える」

「ですが姫様、どの様な理屈でそんな事が…」

「理屈、そうね。『異層』って移った更に向こうにも『異層』があって、ってタマネギの様に一枚一枚、奥へ奥へ。って感じに説明してた。だけどね違うの。確かに奥へ奥へ、なんだけど実際は何処へでも通じていて、自分の思い描いた『異層』に行けるの。あたしが、直ぐそこの一番近い『異層』だと思っていたところは、『アストラル界』と言うらしい。と言うのは随分前から知ってたんだけど、『アストラル』ってのは、簡単に言えば『精神』『霊魂』みたいなモノって認識で良いと思う。で、『転移』なんだけど、行きたい場所へ行くのに、そう言う『場所を思い描く事で行く事が可能に成る異層』って言う感じです」

「最後、面倒臭く成りましたね姫様。要するに『行きたいと願うとそれが出来る異層』って事ですね?」

「そうそんな感じ」

「回数制限みたいな、そのう『霊力』『魔力』か存じませんが、そう言うのはいかがですかアンリエット様」


「それが、ヴィクトリア。全然疲れ無いの。なので、今からこの港町『ダキエ』の完全掌握の為、人員を運んで来ます。行って来ます――――――――――」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ