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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
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第76話 神国と砂漠と海辺の小国。其の5。国取り。




 『表層』に表れたアンリエットと、裸の王様ならぬ、裸の大公。

 その素っ裸の大公に対しアンリエットは眉を潜めて、悲劇のヒロイン然とした面持ちで言うのであった。


「こんな大勢の敵意に晒されたのは初めてです。さてベルナール、この度の、と言いますか、このような振る舞い。迷惑料の概算は出ていますか?」

「はい。アンリエット様とフェリシエンヌ様を失った場合、ヴァレリー帝国とファテノーク王国の損失は甚大。特にファテノークは、王位継承者2人を失うと言う事、即ち国の存亡に関わる事態です。したがって、王金貨千と六百枚に成りますが、実際はお金を幾ら積んでも損失自体、人類(ひとしゅ)全体の大損害です」

「だ、そうです。おい自称大公、払えるか?」

「………。」

「アンリエット様、自称大公の家族、家臣合わせて37名を鉱山労働奴隷とした場合の概算も出来ております。使用人は、この計算に入っておりません。概算、お聞きになられますか?」

「それに、この建物をバラして出来た建材と他の装飾品、貴金属類も合わせた金額も合算して下さる?」

「少々お持ちを……」

 時間が掛かる。と言うので、大公の城の侍従にお茶を頼むアンリエット。自称大公の顔は真っ白になっていた。


「お待たせしました。アンリエット様。金貨四千七百と三十枚です。王金貨1730には全く及びません」

「では、どうしよう。奴隷は決定だが、何か異論反論打開策があれば聞くが?」

「…、お、横暴だ!」

「ベルナール、『横暴』と中傷された」

「不敬罪、ですね」

「この人でなしっ」

「ベルナール、『人でなし』と言われた」

「不敬罪ですね」

「おまえらあぁ」

「ベルナール、『おまえ』って見下された」

「不敬罪ですね」

「く、くっそーっ!」

「ベルナール、汚物呼ばわりされた」

「不敬罪ですね。ここまでの罪状の概算は、、、」

 そんなやり取りの後、完全に降参した大公から、「この国の権利は全てアンリエット=シルヴァーヌ・ド・ファテノークに全て譲ります」と言う言葉と譲渡に係る書類の全てにサインを貰ったのである。


 500人近くいた兵士達は城の大広間に監禁している。無論、裸だ。

「アンリエット様は酷い。『面白いものが見られる』って言ったが、私に取ってのトラウマです」

 ナルシス・ド・メルシェはそう呟いた。彼に取って『裸の虜囚』はあの帝都攻略を北ミュロ軍大将だった自分自身の姿なのだ。その後、鉱山奴隷として一年と少し過ごす事になった自分のトラウマ。

 兵士の見張りを指揮しているナルシスは、深くため息をつくのだった。


 因みに、監視を行っているのは傭兵である。

 派遣ギルドに隣接する『傭兵ギルド』を通じ30人雇ったのだ。

 勿論、金に物を言わせるアンリエットの財力と言う力業で速効集まった。



「なんだか、詐欺で国を盗ったみたいな気分」

「アンリエット様、気に病む必要はありません。向こうは最初から我々を虜囚の様に扱うつもりだったのですから」

「そうですアンリエット様、悪いのはあの大公です」

 ベルナールとヴィクトリアに言われ、アンリエットは「そうなのかなあ」と返すのであった。

 アンリエットが今居る場所は謁見の間の控え室である。

 何故控え室なのか、と言うとどの部屋も目がチカチカするから、金銀パールじゃ無いが、金銀宝石の壁がキラキラなのだ。

 控え室の方が幾分ましだった。


「それじゃあぁ、ハンターギルドと派遣ギルドの依頼はぁ取り下げるのでぇ、ジェラルドさん呼んで来るねぇ」

「フェリシエンヌ様、取り下げるって、何故ですか?」

「もうこの国?町の権力を掌握したあたし達が、『布告』として『明月教会』の情報。いいえ、教会関係者を捕らえても問題無いからよ?」

 と、ヴィクトリアの疑問に答えたアンリエットは、もう一つ指示を出した。

「人を雇っても良いから、男性用の衣類を五百着揃えて欲しいの。

 あ、そうだ!このお城に服は無いかな?先にお城のクローゼットを探してっ」

「それなら私が探して来ます。お城の使用人の方にお手伝いを頼みましょう。行ってきますお兄様」


 この自称大公の居城には侍従侍女が50人以上働いていた。

 大公を捕らえた後、使用人達を城の外に集め、アンリエットが新しい主人であると宣言した。

「アンリエット様は皆さんの質問や疑問にお答えすると仰っております。我が主アンリエット様は身分や性別によって差別される方ではありません。質問等ある方は挙手して下さい」

 暫く騒然とする使用人達であったが、最初に侍従頭を名乗る男性が質問した。


「実務に関する質問ではありませんが、そのう、貴女様は……、貴女様と後ろの少女は、ヴァレリー帝国で有名な『双子の真珠姫』、なのでしょうか?」

「あ、あのう。その渾名で呼ばれるのは、物凄く恥ずかしい、ので、…ですが、その通りです。あまりその渾名で呼ばないでっ」

わああああああーーー!

 大歓声だった。

 朝から集まって事の成り行きを見ていた民衆からも歓声が上がっていたので、町中に響き渡ったのではないか、と言うくらいに、である。

 これで、住民にアンリエットがダキエの町を治めるのだと言う事が周知されるのだ。

(それで、門前での質疑応答を行っているのね。提案したベルナール恐るべし)

 フェリシエンヌの中のベルナール評価がまた一段上がった。


「あのっ、あたしから皆さんに質問しても良いですか?良いと思われる方は挙手で…………。有り難う御座います。

 質問は、お給金についての質問です。ですが少々お待ち下さい。質問の為の用意をしますので―――――――――――――――」

 突然アンリエットが消えた。驚く使用人達、そして民衆。

 その間に、アンリエットが事前に指示した事『使用人達を職種と役職ごとに分ける』を行った。と言っても門前に集めた時点でほぼ分けて並べて居たので然程時間は掛から無かったのだが………。


「―――。お待たせー!」

 数分消えていたアンリエットは紙束を抱えて表れた。


「では、最初にお給金を決めるのは執事長さんですよね?執事長さんは、この紙に出来るだけ実際に支給している金額を書いて下さい。次は各々の…、ここでは『頭』ですね。頭さんが、自分と自分の部下に出している金額を書いて下さい。最後に………」

「あのう、真珠姫様」

「質問される前に一言言わせて頂きますが、その呼称は凄くすんごく恥ずかしいので、止めろっ!許さぬぞ?」

 使用人50余名が一斉に平伏してしまった。

 現状回復するのに暫く時間を消費するのであった。


「さ、先程は、大変失礼致しました……」

「…もうぅその事には触れないであげてぇ、実際私も恥ずかしいのよぉ?私はフェリシエンヌって名前だからねぇ」

「は、はい。では、あのう、ここに居る使用人は全て執事頭のセザール様から直接頂いておりまして、例外は、御者と厩番の数人で、侍従頭のフェルマン様が実質分配しております」

「有り難う。じゃ、セザールさん、貴方のお給金と各々に対して支払っている金額書いてね」

「ご主人様、全員分でしょうか?では、書くよりも書類をお持ち致します」

「では、そうして下さい。ジーン、一緒に付いてって」

とアンリエットはジーンに目配せをした。

「次はフェルマンさん、五人分だからこの場で書けますね?他の皆さんは、各々自分の貰っている金額を書いて下さい。自分の名前も一緒に書くのよ?勿論、嘘偽り無く書いてね」

「アンリエット様、補足、よろしいでしょうか?……。読み書きの出来ぬ者は、私と、こちらにおられる白雪の髪のフェリシエンヌ様か金髪のヴィクトリア様、赤茶髪のマリエ殿に声を掛けて下さい」

 いやいやいやいや。どう見てもお貴族様でしょ?マリエ以外。

 ベルナールは、そう言った身分制による一般市民の認識には疎かった。

 彼は伯爵家の長男では無かったし、伯爵家と言ってもあまり裕福な家では無かったので、成人する迄、領民の近くで過ごしたのだ。庶民的過ぎた。


「お兄様、あまりこう言う言い方は好きでは無いのですが、皆様、萎縮されてます。貴族が彼等を『民草』と侮蔑する様に、私達を『お貴族様』と敬ってしまうのです。ですから、私から彼等に出向きます」

 そう言って、ヴィクトリアは厩番達の方へと歩いて行った。


「なかなか出来たお嬢様ですな。度胸もある」

 ハンターギルドから戻って来た老ジェラルドは、独り言の様にベルナールに言ったのだった。

 ヴィクトリアの行動で、躊躇していた使用人達がフェリシエンヌやベルナールにも自分の給金を伝え始めた。

 よく分からないうちにフェリシエンヌが可愛がられていた。


「ねえ、ベルナールさん。ずっと気になってたんですけどアニエスってば、何処行ったのかしら?朝は居たわよね?」

「姫神子様は、お城に居ます。……そのう、アンリエット様をすっかり怖がっちゃいまして」


 当の姫神子は、エントランスの上、階段を昇りきった廊下の端に踞って震えていた。


「恐ろしいのじゃ恐ろしいのじゃ、怖いのじゃ。あんな大人数の大人を一瞬で裸にするとか、あり得無いのじゃ。いやいや、確かにエレオノール様の手紙にその様な記述はあったが、眉唾モンじゃのうと、笑い飛ばした過去の妾を殴りたい思いじゃ。偉いこっちゃ、なのじゃ。ううううー」



◇◇◇

 前日の昼、フォーレ商会の武装商船『ラ・フォーレ号』の甲板で、帝国第四皇子エミールとその友達は、困惑していた。


 『ゲタエ』の港間近なのだが、進め無い状況なのだ。

 壊れた沢山の船が港を塞いでいる。それだけでは無い。

 魔物、『蜂』がその船に群がっていたのだ。


「ヤバいな、エミール」

「イヴァンもそう思うか…、って普通に不味い。あれが、アンリさんの報告書にあった『蜂』とか言う魔物なのか?」

「どのみちアレなんとかしねーとダメだろう。なあロリコン先生」

「僕は、ロリコンじゃ無い。一の兄上とは違うっ!」

「説得力、無い、よな?」

「そのー婚約者。アンリエット王女って確か12だろ?おまえの教え子の」

「アンリさんは13歳だっ!」

「で、エミール先生は、来月で22っと。ロリコンだな?」

「だな。」


「そんな事より、あの魔物をどうにかしないと……」

「おいっ!大型弩(アーバレスト)を左甲板に並べろ!それと弓。火矢も忘れんなっ。急いでありったけ持って来いっっっ!!!」

 アンドレの大声での指示に水夫達が作業を始めた。

 ラ・フォーレ号の主帆から畳み始め、副帆も小帆も帆、全てを仕舞い、(オール)で、(くだん)の『蜂』に向かった。

 ゆっくりと右に旋回し船の左舷を『蜂』に向け錨を下ろした。


「っしぃ。エミール、イヴァン、自分の弓、用意出来たか?ギュスターグ船長、後の指揮は任せた」

「おう、任されやした、ぼっちゃん!」

「ぼっちゃん、ププ」

「ぼっちゃん、ププ」

「おまえ等なあー…、覚えてやがれぇ、ぜってーアレしてやるっ!」

「「だから、『アレ』って何?」」

 そんな余裕綽々な会話を続けるエミール達であったが、船長ギュスターグの号令に緊張が走った。


大型弩(アーバレスト)よおーい。――――。一斉発射あああっっっ!!!」


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