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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
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第74話 神国と砂漠と海辺の小国。其の3。姫様の欠点。




 翌朝、アンリエット達は出発した。


 取り敢えず、井戸で洗顔中のナデージュが、(何時もの様に)『亜法』で冷たい水を用意しようとして桶の水を凍らせた様だ。

 なのに今度は溶かす為に桶を焦がしてしまい通り掛かった学園長に叱られている様子だったので、ほおって置く事にした。

「族長とは、誰が就いても良いのかのう」

 アニエスの普通の感想に皆は普通に首肯するのであった。



 五センチ四方の板、『神器』を使うアニエス。

 先ず最初に向かうのは、『ダキア公国』を名乗る国の最大都市『ダキア』。

 被害にあったと言う『神国ルナール』の炭鉱の町は、皇女であるアニエスが、「調べ尽くしたが、『虫の実』が廃鉱の奥に群生していて全て焼き払った」と言う事であった。

 それで、直接『ダキア』に来た訳なのだが、特に『蜂』の被害も無く、何時もの日常を営んで居る様に見えた。


 少々早い時間に来た為、朝食を取れる場所を尋ね、町を彷徨(うろつ)いていたアンリエット達だったが、西門の騒ぎが中央付近に居る彼女達にも伝わって来た。

 おそらく昨日の『ゲタエ』の焼失がやっと伝わって来たのだろう。早馬でも、一日は掛かる距離であるのだ。


(寧ろ伝わるのが早くて優秀、なのか?もしかしたら、来たのは『蜂の襲撃』に関わりの在る人物なのではないか?)

 アンリエットは、フェー達に自分の考えを言った。

「アンリエット様、私が見定めて参ります。なあーに、私は『ハンターギルド』のランク5ですから、怪しまれませんので」

(やっぱりぃジェラルドおじさん、頼れるわぁ)

 等とフェリシエンヌは思ったりするのだった。


「こう言う時、口八丁手八丁のお兄様が行けば良いのではないかしら。(わたくし)少々、ガッカリです」

「ヴィクトリアさん、勘弁して下さい。こう言う行動力ってのは鍛えて居る軍人さんのが良いですって…」

 そんな言い訳をしているベルナールを見るフェーの評価はヴィクトリアとは違うのだった。

(貴族崩れっぽい文官然とした男より、初老のハンターが聞きに行く方が疑われにくい。中々どうして良い人材ねが揃って居るわよね、アンリちゃん…)

 4~50分程経ち、老ジェラルドが戻って来た。


「やはり『ゲタエ』の兵士の早馬でした。彼が言っていた内容は『5日の未明より魔物の襲来が最初に北西方向からあり、北門付近の家屋は全滅。港である西側からも襲撃を受け市場、商店街の住民もほぼ全滅したであろうとの事。

 明け方東門を出られた住民二万五千を五百の兵で守りながら、公国中央の町サントルに向かって居る』と言っておりました」

「ご苦労であったジェラルド。どう思いますアンリエット様フェー様」

「その兵隊さんのジェラルドさんの印象は?」

「私の主観で宜しいのですか?」

「当然です」

「当たり前よぉ」

 アンリエットとフェリシエンヌが揃ってジェラルドを肯定した。


「至って普通の兵でした。私の意地悪な質問に真摯に答えてくれました」

「ジェラルド、その意地の悪い質問とは?」

「はい、『魔物を引き連れての避難民ではないか?』と言う質問と、『避難先のサントルと言う町の避難民受け入れは簡単に出来るのか?』と言う物です」

「その質問の答えとジェラルドの心証は?」

「はい、避難開始時に西門の兵士と市壁内に残った兵が油を撒き町ごと全ての魔物を焼き尽くし始めたと言う事で、避難民に魔物が襲い掛からなく成ってからの避難開始だと答えております。

 それと避難民の受け入れについては、『サントル』の町中での受け入れでは無く、サントル東に在る川での野営を考えている。と言う事でした。

 問題点は、当座の食料だそうで、そこについては考えあぐねていると、言ってました。

 私の印象は先にも言った通り、特に含む物の無い様子の兵でした」

「と言う事は、少なくとも『ゲタエ』とこの国には陰謀を働く意志は無いって事ね。フェーの言いたい事、あたしは分かるよ?」

「うん。アンリちゃんを連れて行きたい連中は国では無い組織って事がはっきりした。『明月教会』を探そう」

「と言う訳で大っぴらに情報を集めます。まず手始めにあたし達が『明月教会』に敵対する『双子の真珠姫』である。とか自分で言うのは恥ずかしいわねぇフェー。大声で情報を集めます。

 『ハンターギルド』は開いてるわね?ならば、ギルドに依頼を出します。『明月教会の本部情報求む』と。後は…」

「『人材派遣ギルド』でしょうアンリちゃん?」

「アンリエット様、どう言う事ですか?」

「勿論、人を雇います。つまり、『炙り出せ無くても教会を焦らす作戦』です!資金が心許無いので、一旦あたしはアデリーヌの領主館に戻ります。皆さんは朝食を召し上がっていて下さい。

 アニエス、『神器』貸して!」

「主よお、早朝からノリノリじゃのう。ほれ、持って行くが良い」

「じゃ行ってくる。また後でね?」



◇◇◇

 同刻、エミール達一行は『ラ・フォーレ号』で『アンリとミラの岬』の洞窟の調査を行っていた。

 流石に大型帆走船を暗礁する可能性の在る岬に近付ける等と言う真似は出来ないので、小舟での調査である。


「皇子よお、やっぱし食堂のオヤジの話し通り、最近焼けた様子だ。岬に登ったイヴァンからは何かあるか?」

「皇子は止めてくれないかぁアンドレぼっちゃん。あぁ今イヴァンが戻って来た。どうだったイヴァン」

 洞窟から岬迄の階段がしっかり作られていて非常に助かるのだがエミールには寧ろ悪意が見え隠れするのである。

(魔物を飼育していたのであろうな。洞窟内の焼けた洞窟全体を囲う様に作った檻。動物や人?を苗床に『虫の実』の木なのだろうか?を設置している餌の場所取り、とか……。しかも実験の実行場所ワロキエ王都に近い!)


「おう、エミール、発見だ。馬車の(わだち)だが、上に在った小屋とワロキエ王都、『ダキア公国』の2つに向かってる。それと確認は出来無いが、王都の通りのみたいな焼き煉瓦が放射状に散らばっていた。こんな妙チクリンな事って、『理不尽姫』の仕業じゃないかって、アンドレぼっちゃん、ところの商人さんが、言ってたぜ。そう言う訳で、目的地は公国の、『ゲタエ』って町だな?」

「おいイヴァン!今度『ぼっちゃん』言ったらアレだぞっ。皇子も言うなよぉ、アレすんからなっ」

「「アレって何だよ?」」

 風向きも悪く無い。おそらく今日中に『ゲタエ』の港へ問題無く無事に着くだろう。そう三人は思っていた。昼前に『ゲタエ』の惨状を目にする迄は………。



◇◇◇

 ジーンは何か大切な事、と言うより重要な事柄を見落として居るのではないか。と言う不安に苛まれていた。

 朝食のクロワッサンを見て思い出したジーン。


「姫様に着いて行くべきでした。私としたことが……、無念です」

「どう為さったのですかジーンさん」

「私の姫様は優秀です」

「知っています。学年トップですもの、私の憧れのお姉様です」

「その唯一の欠点が『庶民感覚』、いいえ、『一般常識』なのです」

「ええ?必要対効果(コストパフォーマンス)に長けた方では無いですか?『アンリパン』とか」


 「将軍閣下の言う通り なのですが、以前―――」と語り始めたアンリエット幼少時からの専属侍従のジーン。

 以前、お祭りの出店で買い食いしようと、金貨十枚、つまり出店ごと十数件買える金額を持ち出し、小銭のつもりなのか『学食の回数券』を持って来た事。

 その後も事在るごとにジーンは(あるじ)の金銭感覚を育て様と試みるも虚しく、下着を購入するだけなのにドロワーズ三枚に金貨三枚を出し、「アンリエット様、何百着必要なんですか?」と店主を困らせ。仕立てたドレスの支払いに大銅貨を積み上げ「代金多いですか?」「足りません。領主様はこの金額で売れと、それは御命令なのでしょうか?」と仕立て業の店員を泣かせ。


 そう言えば、串焼き屋の店主特有の冗談である『嬢ちゃん可愛いから特別料金だ。串焼き一本100銀貨』を疑いもせず「はい」と言って金貨を出した事もあった。


 そんな感じで『庶民感覚』とか『一般常識』とか『金銭感覚』が未だ育たないアンリエットなのだと言う。

 ジーンは日頃からアンリエットに言うのだった。


「住民の皆様と同じ目線で考え、同じ様に感じ、それをお学び下さい。それこそが為政者たる姫様に必要な事なのです」

「ジーンさんの言う通りだと思う。それこそ為政者の真理よね」

と言うのだが、アンリエットは何処かがズレて居るのである。

 他が完璧なだけに残念な超人なのだ。

 ベルナールは知っている様だが、老ジェラルドとメルシェ将軍は落胆と供に『我々で教育しなければっ』と言う使命感を新たに持った様子だ。


 だが、別の意味で残念な事もある。それはここに在った。

 反応のおかしい()が居る。ヴィクトリア・ド・ヴァレリーである。


「カッコいいお姉様に、この様な一面が在っただなんて。なんて事でしょう?素敵過ぎます。アンリエット様、無敵だわあぁぁぁ。なーんて可愛らしいのでしょう!」

 どんだけアンリエットが好きなのだ?公爵令嬢。



 暫くして戻って来たアンリエット、ドヤ顔である。勝ち誇った感じで言って退けたのだ。


「これだけ有れば五日間『ダキア』の明月教会を煽れると思うのっ」

「ええ姫様、きっと向こう300年は煽り続けられますよ」

 お財布の革袋にはヴァレリー帝国の王金貨十枚が入っていたのである。

 王金貨一枚は、金貨百枚と等価値であった。

 ジーンの思い描いた最悪だが予想通りの展開に成った。

(何故十分前に『状況』を予想出来無かったのだほんの少し前の過去の私っ!)


「すみません皆様。もう一度アデリーヌの町へ行って参ります。さあさ姫様、ご準備を」

「ええ?ジーンさんなんでぇ?」



「これで、4回『転移』ですか?本日の計画は少々足踏みですな」

「閣下の仰る通りですな」

「でも、アンリエット様の『大ポカ』って貴重ですよね!」

「姫サァーの大ポカって随分昔に見た事あったッスかねぇ?」



主等(ぬしら)の姫様は、ほんに大物じゃのう。と言うかマジもんの残念仕様じゃのう。……苦労するの?」



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