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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
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第72話 神国と砂漠と海辺の小国。其の1。皇都。




 アンリエット達は岬の洞穴に残る魔物『蜂』を残らず焼き尽くした。

 アジトであった小屋や『蜂』を運んだ馬車の遺体から蜂を操ったであろう『小さな笛』。それと、全員が短い金属で出来た棒状のネックレスをしていた。

 フェリシエンヌにはそれが何か分かる様子であったし、アンリエットにもネックレスを持つ集団に心当りがある様だった。


「後、二回かしら?」

「姫様、本日の行動予定ですね?」

「うん、一度、あたしの無事を知らせないと……。それと新しい情報があるかもしれないから、ニェールに行ってくる。後は戻ってからかなぁ。『霊力』とか『魔力』とかの回復状態で戻るのは二時間後位。ジーンさん皆に伝えて。

 それと、皆お昼してて。大休憩ね。じゃ―――――。」

 ニェールの町の西門前に『転移』したアンリエットは目の前が将官用の天幕である事に気が付いた。


 昨夜、と言うか今朝方迄掛かった『ベルナール・ド・ベルディー』の報告。

 ヴィクトリアの言動と自身の過去の行いで只の報告が誤解に誤解を重ね尋問の様な報告を余儀無くされたベルナール。

 彼は床に天幕の床…、つまり、地面に疲れきって寝ていたのだった。


「ベルナールさん?」

「…………………。ん?ぅわぁぁぁアンリエット様あああああっ!!!御逢いしたかったですうー。あのっ大事無いですか?お身体とか……、御無事で何よりですうー」

「ベルナールさんベルナールさん、皆は無事ですか?無事なら皆を集めて下さい」

「はい只今っ」

(つか、何故ベルナールさんがニェールに居るんだ?)



 大隊長の『フレデリト・ド・フロトン』以下中隊長5名と帝国第二皇女『ルシール』、公爵令嬢の『ヴィクトリア・ド・ヴァレリー』もその場に居た。

 「何故に?」とは思ったが、もう既に10日もアンリエットは消息不明だったのだ。

(すっかり、皆に心配掛けてしまったなあ)

 アンリエットは自身の心緒に苦笑いするのであった。


 ワロキエ王都の崩壊と『蜂の岬』の事(など)を伝え、フレデリトより三日前に届いた叔母上の親書を受け取り、内容を確認した。


 『ダキア』にあるかもしれない『明月教会』、そこが今回の一連の事件の首謀者である可能性を示唆していた。

「皇女ルシールは、今から書くあたしの親書を皇帝陛下に届け、これ迄知り得たルシーの情報と合わせ事件の事を伝えて欲しい。ヴィクトリアとベルナールは、あたしの無事と暫く調査の為、領都アデリーヌの帰還はもう少し先、と伝えて下さい。今回の『蜂』の襲来は人為的なものである事を伝えよ。

 尤も『領民』の大半はそう言う事件があった事等、他所の話しと思って居るであろうがな」


「アンリさん。これから何処へ?」

「ルシー、あたしは都市国家群を調査の(のち)、『神国ルナール』に行くつもり」

「私も御供致したく思っております」

「ヴィクトリア……」

「帝国の名代として私にも行く権利があります」

「ルシー、非公式の訪問なんだよ?」

「「御供させて下さい」」

「ぇぇーー…………」


「わたくしベルナールは事務官としてお付きしたく……」

「このフレデリトは、武官として同道をばっ」

「あー、『武官』ならナルシスさんが居るからね。フレデリトさん今回は、ごめんなさい」


「じゃあ、三人ね。ルシーとヴィクトリアそれとベルナールさん。都市国家群が、どう成っているか分からないから、時間が掛かっても掛からなくても、二日に一度は報告の為、ニェールに来ます」

 そう言ってアンリエット達五人は『転移』したのだった。

 アンリエット、ルシール、ヴィクトリア、ベルナールの四人とルシールの侍女『ジャンヌ』も一緒に『転移』したのだ。




◇◇◇

 アンリエット達が『岬』に戻ると、ジュリエットが昼食の準備を終えていた。

 今朝、貰った馬肉と昨日中央市場で買った野菜でスープを作っていたのだ。

 生憎、パンが無いので『じゃがいも』とスープの昼食である。


「遺留品は笛とペンダント以外、無かった?」

「無かったッス」

 アンリエットの問い掛けにマリエは両手を上げて「収穫無かったッス」と言うのであった。

「それじゃ、『ダキア』に跳ぶよ?…………あっ。ゴメン、あたし、『ダキア』って行った事無かった。頼めるアニエス」

「……15人とな?妾の『転移』範囲に収まる人数では無さげじゃのう。頑張って五メートルじゃあ。往復も無理じゃし…」

「それじゃあ、あたしと数名、『転移』して。もう少し休めたら、往復出来そう」

「待ってぇアンリちゃん」

「フェー、どうしたの?」

 険しい顔のフェリシエンヌが、アンリエットの腕を掴んで言うのだった。

「もう少し、後三回、『転移』出来る位、『霊力』か『魔力』が戻る迄、休憩してちょうだいっ」

「分かった。少し寝るよ」

 こう言う時のフェーの勘は当たるのだ。だから、素直に従うアンリエットである。

 姫神子アニエスも休むのであった。



◇◇◇

 都市国家はワロキエ王国の東から南に延びる半島にある。

 元は南北に長い楕円形に近い島であった様だが、現在、島の東側は千年以上前の地殻変動で大きく削れ、断崖絶壁と成り、漁港は西側にしか無い。


 北から『ゲタエ』。何処から南に馬車で一日の位置に『ベルクール砦』があり、更に一日進むと『ケア』と言う町がある。

 『ケア』から4つの都市国家を抜け、馬車の速度で5~6日目に国家群の最南『リュンヌ』と言う町…、国家がり、その更に南に大きな山『ラピドリュンヌ山』と呼ばれる三千メートル級の火山が鎮座しているのだ。

 『ラピドリュンヌ山』から南は、魔獣である『竜種』の領域に入り、非常に危険だと言われているのだが、半島の最南端に航路のみを頼りに交易を続けて居る町が在ると言う。


 本来、海であった半島の始まる場所、大陸との付け根西に『ゲタエ』。東側に『ダキア』と言う都市があり、その二つの都市と大小の町と集落が一つの国を形成して、『ダキア大公国』と名乗っているのである。


 そんなダキアの『ゲタエ』にアニエスの『転移』で跳んだ一行であった。


 『ゲタエ』は燃えていた。


 市壁の中は、火災と飛び回り、自らも炎に包まれる虫、魔物の『蜂』であった。

 東に向いている港の船は逃げる市民を乗せては居るが、町の火災は凄まじく殆どの船に火災が広がっていた。

 どうにか出港出来た船にも火災の炎は移り、更に『蜂』の襲撃を受けている。


「……もうどうする事も出来無い。ここは引きましょう。アンリエット様この町はダメです」

「ナルシスさんがそう言うのならそうなんだろう。

 どうにか出来ない?誰かあ、ねえ、お願い!」

「……無理です姫様」

「ここで何とかするのが貴族ですわっ」

「ジュリエットさん、無駄です。メルシェ将軍の仰る通り、引くと言うより進みます。

 アニエス様…、でしたかしら。神国へ『転移』しましょう」

「帝国の皇女よ。妾が『転移』を行うのかえ?無理じゃあ。14人(など)、とてもでは無いが抱えきれぬ」

「いいえ、アニエス様はアンリさんと『転移』するだけです」



◇◇◇

「姉様ぁぁぁーーっ!!!」

『エカルラトゥ=フレーズ・アマガミ』は十歳。アニエス姫の妹君である。


「エカーズ、姉は帰還したのじゃ」

「そちらの方は?」

 アンリエットを見るエカルラトゥ。

 『エカーズ』は姉アニエスが妹エカルラトゥに付けた愛称である。

(……綺麗。)

(ぬし)への紹介は後じゃ。アンリエット、頼むっ」

 『神器』である5センチ四方の板をアンリエットに渡すアニエスであった。

 受け取ったアンリエットが消えて、1分と経たず、13人の客がこの皇都に現れた。

 宮殿の中、(こう)のおわす玉座の間の真ん前である。

不敬にも程があるのだ。


「おおっ、其方がエステルの子、『アンリエット』かや?」

「え?あのぉ……、っ!」

 三十代位の狐人族の女性から声を掛けられたのだ。

 しかもその女性、頭は明らかな『王冠ですよ~』と言わんばかりに黄金の王冠には所狭しと光る碧や翠や緋色の宝石が(ちりば)められて、額の上には一際大きく輝く金剛石が付いて居る物を被って居る。そんな人は、『国主』以外考えられない。

 そんな人物から声を掛けられたアンリエットは当然の様に驚き固まるのであった。


「のう、其方がアンリエットであろう??アニエスよ、何故ファテノークの姫は固まっておる」

「はい、おそらくアンリエット殿は、母うぇー、(こう)に驚かれた。と…」

「ワッチ、そんなに驚く様な容姿はして居らぬと思うがの」

「御言葉ですが、お上は、は上から下迄、十分派手です」


 遠慮無い宰相の言葉に「そうかのう?」と眉を潜める女皇イズモであった。



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