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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
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第70話 国の崩壊。




 帝国アンリエット領の将軍『ナルシス・ド・メルシェ』は、中央市場の北広場で「どう対処すべきか分からない」と言った感じで集まった兵士5人組を見付けた。普通に所在無さそうな、ダメ兵だろう。


 「先刻負傷したダミアン・モーラル百人長の指示」と言って、東西に二人。南門方向へ一人と兵を走らせた。

「同格の兵士に会ったら、各々を左右へ走らせ出会う兵士に中央市場北広場へ向かう様に言って貰う。十人長、百人長には中央市場北広場に向かう様に言う。千人長以上の兵士にモーラル百人長の指示を伝え、その上で千人長以上の上官の指示に従う。もし千人長以上の上官に会う事が無かったならば、東と西に向かった兵はそのまま中央市場北広場に戻れ。戻りながら往路で行った行動を続ける様に」

そう言った。



 『馬の預り所』へ行っているジーン、マリエとアンリエット領の領兵の三人、『ジャノ』『ジェラルド』『オスカー』達が心配だ。と言うジュリエットが北広場から更に北の宿場街方向に歩き始めた。

 慌てて後を追う四人。モーラル百人長は気絶したままだが、「大丈夫だろう」と言うメルシェ将軍の根拠の無い大丈夫を信じ(た事にして)、五人は瓦礫の散乱する街へ入るのだった。

 道すがら狐人(ルナール)族のアニエスと自己紹介。


「妾はアニエス137世……に成る予定の『神国ルナール』の神子(みこ)、『アニエス=エステル・アマガミ』じゃ。家名の『アマガミ』は、『天の上』、もしくは『雨の神』と言う意味らしい。何せ千年以上昔の話しでの、はっきりした事は有耶無耶じゃ。まあ、宜しくのっ。アンリエットと同じ13歳じゃ」

 ジュリエットとフェリシエンヌも各々自己紹介した。

「しっかし、フェー…何じゃった?「私フェリシエンヌぅ」…フェリシエンヌ、か。アンリエットと顔付きがよう似ておるのぉ。そうじゃな、そう、まるで『真珠』と『黒真珠』の対のイヤリングの様じゃ!」

「帝国の民衆から『双子の真珠姫』って呼ばれてますわよ」

「何と!ジュリエットとやら、其は真かや?二人はファテノークの王族であろう?何故に帝国ヴァレリーの民草が知るのじゃ?」

「ハッハッハ。それは姫神子様、この御二人は帝国に取って『英雄』だからなのですよ」

 苦い顔で語ったメルシェ将軍。続けて言う。

「私を含めた五千の兵をアンリエット様は、お一人で無力化したのです。そして補佐役がフェリシエンヌ様なのです。現在までの功績で、アンリエット様は帝国に置いても貴族位、女伯爵なのです」

「何と何と、アンリエットよファテノークの王太女だけでは無く、他国の『伯爵位』持ちであるのか!っと言うか、なんじゃメルシェ殿とは敵同士であったのか?」

「お互い面識無かったのよぉ?だってメルシェ将軍の軍隊、帝都に攻め込む直前で敗退よぉ?

後ねぇ、アンリちゃんってばぁファテノークの『シルヴァーヌ公爵』でもあるのよぉ」

「あわわわ。今日、三度目の驚愕じゃ!

 成る程、フェリシエンヌ殿の狂信ぶりも納得じゃのぉ。妾の特異性が一日で霞んだわい。と言うか、母上の受け取った『手紙』は、この二人の事であったか!」

 そして、自慢気に言うのだった。

「私ぃアンリちゃんの筆頭護衛役なのよぉ?」

 何時もブレないフェリシエンヌである。


「ジャノさーん!ジュリエットですわよー」

 少し軽い性格の領軍騎兵のジャノを見付けたジュリエットは、2メートルはあろうかと言う槍(フェーから西門で受け取った)を高く掲げジャノに駆け寄った。


「ジュリちゃんかー。両替商ンとこ行ってたンじゃあ、っつってもこの状況じゃー両替どころじゃねえってかー」

「ジーンさん達は何処?」

「これは、アンリエット様。御無事で何より…。姉御とジェラルドのおっさんは『(馬の)預り所』の厩番の救出中。他の皆はこの辺りの生存者を探して………って随分可愛い『キツネ』さんだねー」

「下郎が。妾を愚弄するかや?怖いもの知らずじゃのぉ?『ジャノよ平伏すが良い』」

 アニエスの音声が言葉、と言うより直接頭に響いた。

「うえ?うわあああ」と情け無い声を出しながら自分の意志ではどう仕様も無く地べたに頭を貼り付けるジャノであった。


「いきなり平伏させるだなんて、アンリちゃんみたぁーい」

「アンリさんがここにもいらっしゃるなんて」

「もう一人のアンリエット様がっ」

 異口同音にフェー、ジュリ、ナルシスは感想を述べた。


「良く聞くが良い。一兵卒の主よ。妾は『神国ルナール』の次期、(すめらぎ)じゃ。(ぬし)(あるじ)と同様に敬うが良い。分かったかの?」

「スンマセンスンマセン。分かりました。御無礼御許し下さい。美しい姫様あぁぁ。何だかオデコ痛いッスよー」

「『ジャノよ休め』じゃ。分かれば良い……。ヌゥ、解除されぬか?」

「元に戻らないですよー」

「…すまぬ、解除方法を忘れ……、ああ、今ので『霊力』切れじゃった。暫し待つのじゃ。少し休めば妾の『霊力』も戻ろう」

「ええーそんなあー」

 何気に可哀想なジャノである。

 本当に『霊力』?とやらが枯渇した様子のアニエス。顔色が元から白磁器の様な色が更に白く成って居た。

 そんな状態のアニエスは立って居られない様子の為、アンリエットは膝枕をする。

 「アニちゃん、アンリちゃんに膝枕ってぇ、良いなぁ」と言うフェーの呟きを聞いたジャノは全力で思う。

「キツネめー!羨まけしからんっっっ!!!」

 つい、音声に成っていた。

「おまえは妾の夕餉迄、このままじゃあーーー」

 力無いアニエスのお仕置きは後、数時間続く事と成った。


「アニエス、今日は野営です。いい?」

「ああ、仕方無かろう。アンリエットよ、主は野営とか平気なのかや?」

「うん。楽しいよ」

「そうか」

「あっアニエス、『神器』返すね。でさアニエス、お願いがあるの……」

「なんじゃ?妾で出来る事ならば良いぞ?」

「あのさ、明日もその移動の『神器』貸して欲しいんだー」

「なんじゃそんな事か、信用の置けるお主ならば貸す事も吝かでは無い」

「その『神器』に書いてあるのって、『魔法陣』よね?あたし達の使う音節文字じゃ無く、音素文字……、かしら?」

「4~500年前にの、『長命種』の学師様が千と二百年以上前の記録媒体を数十年掛けて解析した『神器』じゃ。ついでに『火力発電所』の修理と古代の記録…、と言うかの、妾達、狐人族は星から降ってきたアンリエット達人種(ひとしゅ)の先祖とすっかり交わってしまってのぉ、純血の狐人はおらぬのじゃ。

 まあ追々その『長命種』の学師様の事と合わせ、その時の翻訳物を見せようぞ?」


「星から降って来た人種(ひとしゅ)?何それ」



 夕方に成り、ジーン達と合流したアンリエット。

 膝枕のアニエス姫は静かに寝息をたてていた。


「まだ寝かせておきましょう」

「ですわね」

「……マジ?俺、もうダメぇ勘弁して下さいよー」

「全くおまえと言うヤツは……、前々から言葉使いをだなあ。まあいい機会だ、良いお仕置きでありますアニエス姫様」

 先輩格のジェラルドは、「仕様が無い」と言った感じにジャノを見て言うのだった。


「せっかくジュリちゃん居るからぁごはん作ってよぉ」

「良いですわ。ですが、町中なので、山菜はありませんの。それで良ければ作りますわ」

 『馬の預り所』に預けて、王城の崩壊で亡くなった一頭の馬を厩番の二人とジェラルドさんが解体。

 香辛料や塩はジュリエットの持ち出しあり、しかもジュリエット、昼の内に中央市場で野菜類を購入済み。

 城崩壊直後から中央市場の商品は高騰し始めていたのだ。

 ジュリエットが購入した時間はまだ少し高い位であったと言う話しであったが、夕刻の現在、どれ程の値に成っているのやら……。

「さっすがジュリ嬢ッス!」とマリエはベタ褒めだ。

「マジで子爵令嬢ってウソって思うッス」

 余計な一言でジーンのげんこつを喰らう通常運転のマリエであった。


 オスカーがレンガで竈を3つ造り、マリエとメルシェ将軍は廃材……そこいら中にあるので必要量は直ぐに十分集まった。

 アンリエットは膝枕中のアニエスから離れ、超爆着火。

 アンリエットの『亜法』で空気中の酸素を送り続け、大量の炭火が出来た。

 一つの竈で馬のモモ肉と適当に切った羊の塩漬け肉を入れゆっくり煮る。煮凝りを取り、セロリの葉っぱと茎を鍋に入れるジュリエット。

 取り出した岩塩を気持ち少なめに削り入れ、大鍋は蓋をされた。


「さあ皆さん、焼き肉ですわー!ですが、生憎と味付けがお塩と胡椒だけですの。あら?お野菜、一口大でとわたくし言いましたのに…。

 まぁ男性が多いのでよろしいですのっ!良いですか焼き肉は『肉、肉、野菜、肉、野菜』で召し上がれっですわ」

 近隣の生き残った『預り所』の厩番や店主達とアンリエット一行10名の合わせて37人の夕食。

「あ、アニエス起こさないと……。ジャノも助けて貰わないとっ」

 アンリエットは、フェリシエンヌにアニエスを頼み、ふとジャノを見る。

 「トイレ行きたいトイレ行きたいトイレ行きたい…」と呪詛の如く繰り返していたジャノが居た。

 数分後、男の尊厳は守られた。と言う事に成った。

 焼き肉に感動したジャノは泣いていた。……と言う事にしたジャノの泣いた理由は聞かない優しい大人達と13歳´s(少女たち)であった。

 いつの間に野菜や乾燥香草を入れ塩胡椒で味を調えた様子で、「野菜スープ、出来ましたわぁー」とジュリエットは皆に言って、ジュリエットは気が付いた。


「スープを入れるお皿か器がありませんわっ」

「上官命令だ。平皿、それと深目の皿もしくは器を各々37枚以上探して来い!駆け足っ!」

「「「はっ!」」」

 ジェラルド達三人が三方向へ散るのを見たメルシェ将軍。

「バカ者!三人連絡を取りながら探さなければ、誰が何皿発見したのか分からんではないか!互いに連絡出来る距離で捜索せよ」

「「「はっ申し訳御座いませんっ!!!」」」

 十数分後、いろいろな大きさのお皿を抱え、三人が戻って来てようやくジュリエットの『馬肉入り野菜スープ』にありつけた。


 「美味しいよう美味しいよう」と本泣きのジャノは、ほんの小さな恋心を抱くのだった。

「のうジュリエット、主は天才かのっ。スープも美味じゃが、この炭火にくべただけのじゃがいも。焼きじゃがかや?『じゃがバター』も単純じゃが良い物じゃのう」

「ジュリエット嬢の野営の食事。噂に違わぬ旨さですなあ」

 アニエスとメルシェ将軍も褒めまくられ、久し振りの『身分コンプレックス』を発動させたジュリエット。

「め、滅相も御座いません。その様なお褒めの言葉、わたくし卑しい子爵の三女風情が頂く等まっこと勿体なき事に御座います」

と片膝を地面に付け深く頭を下げてしまった。

「ねえぇ、スープのお鍋、まだ残ってるのぉ。火加減どおすんのぉ」

 フェリシエンヌの困っている声も届か無い程に将軍とお姫様に恐縮するのだった。


 アンリエット一行は翌日の予定を軽く話し合い……、実際にはアンリエットの予定を皆に伝え、雑談と成った。

 『預り所』の店主や厩番は、既にアンリエットとフェリシエンヌが有名な『双子の真珠姫』である事を薄々気付いていた様で、恐る恐ると言った感じに声を掛けたのだ。


「もしや、とは思いましたが、()の『理不尽姫』様とその『懐刀』様でありましたかー」

 そのまま27人のワロキエ市民は平伏すのだった。


「アンリエットよ主は妖術でも使うのかや?」

 そう姫神子は、冗談とも本気とも言えない的な感じで疑問を口にした。


 復活したジャノはとある村の宿『中央市場亭』でのフェーとマリエ、ジーン、ジュリエットとの手合わせの話しをした。メルシェ将軍は、物凄く興味を引かれた様だ。


 「そう言えば……」とナルシスは言い始めた。

「昨年、帝都での大会、『槍術部門』の優勝者の少女とは……」

「将軍さぁーんその通り、ジュリ嬢ッスよぉ」

「やはりそうであったか。この様な少女が伝統ある武闘大会で…、全く前代未聞であるなあ」

「いいえ将軍閣下。わたくしなど、この女子の中では最弱ですわ。この四人がわたくしの師匠ですもの……。未だ一度も勝てませんの」

「勘弁じゃああぁ。『二度あることは三度ある』とは言うが、昼からの驚愕は四度目ではないかあ。恐ろしい。主等が恐ろしい。助けてたもう、ナルシス殿ぉ」

「神子姫様、私に助けを求められましても、確信を持って言いますが、確実に絶対負けます私。将軍ですが……」


「そこの女の子達だけで余剰戦力」

「可愛いお顔なのに秘密に成って無い超戦力」

「『黒銀の殲滅姫』って?」

「ああ、それは私を含め五千の軍隊を一瞬で無力化…。と言いますか、五千人を物の数秒で素っ裸にして敵の前に投げ出された。って話しです。お恥ずかしい」


「「「…………………………。」」」

 預り所の店主や厩番達は言葉を失う。

「ああ成るよなー」

「成るな」

「気持ちは分かる。俺だって手合わせでそう成った」

「寝るかぁ」

 兵士では無いが、他人が自分達と同じ気持ち…、共感して満足したジャノ、オスカー、ジェラルドは横に成って休んだ。預り所の店主、厩番も休んだ。

 そして、皆休んだ。放心した少女一人残して…。


 火の番をするジーンに獣耳(ケモミミ)、ふさふさ尻尾の姫が近付く。

「夕方少し昼寝をしたのじゃ、眠れん。ジーンよ、何でも良い『お話』をしてたもう」

「…私で宜しければ。姫様…、アンリエット姫様の御幼少のお話でも……」


 翌日、アンリエットの一挙手一投足に「ビクンビクン」する某神国のお姫様が出来上がっていた。


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