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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
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第67話 姫の喪失。其の6。海へ。




 7月4日、午後のお茶の時間が終わる、そんな時間。

 近衛分隊、分隊長を先頭にヴァレリー皇家の意匠の旗を掲げた小集団が、ニェールの町、西門に近着いた。

 その近衛兵が女性だけである事は、その身体付きでも明らかだった。


「私は、皇女付き近衛分隊隊長コレットである。この………」

「ソレ、門入ってから言ってくれる?コレットぉー」

と言う同級生である隊員に言われ、取り敢えず『市民証』を提示し、ニェールの町に入る。

 そして改めて名乗りをあげる。


「私は、皇女付き近衛分隊隊長コレッ…」

「初めまして、私はフレデリトと申します。現在、このニェールを守護させて頂く大隊をアンリエット様より任されています」

「私は帝国第二皇女ルシール殿下の近衛分隊隊長コレッ……」

「コレットさんのお噂は、我が主より聞き及んでおります」

「して、アンリエット姫殿下の事で、お尋ねしたき……」

「大隊長殿、ルシールです。アンリエットさんについてお尋ねしたい事があるのです。あの方は今、何処に居ますか?」

 少し意地悪な質問をした自覚のある帝国第二皇女ルシールではあったが、アンリエットの居場所の手掛かりを得たい彼女の気持ちの焦りである。

 馬上のルシールは、移動しながら、これまた馬上の大隊長フレデリトに質問を続ける。


「ワロキエ王国に向かった。と、報告を読みました。フェーちゃん、フェリシエンヌさんはアンリエットさんの所在の確信があって向かわれたのでしょうか?」

(わたくし)には分かりません。只、あの方、フェリシエンヌ様は妙に勘がいい、と言いますか、思考が鋭い、と言いますか兎に角、ワロキエに行く事がアンリエット様の所在に繋がる糸口だろうと、行って仕舞われました」

「確かに、フェーちゃん、物事の核心を読み取る能力は、アンリさんより勿論、私達なんか足元にも及ばない程、ずば抜けて居ます。

 では、なんの根拠で、どんな情報でフェー、フェリシエンヌさんは即ワロキエへ向かったのでしょう?」

「『蜂』の来た方向と、『不穏なワロキエ王国』の不穏自体を『ワロキエが不穏な行動を行っているのでは無い』可能性がある。と、仰っていましたので……」

「では、ワロキエ以外の他の勢力の可能性を?」

「そうです」

 暫く、思考の海に沈むルシール皇女であった。


 そのまま、東門を抜け、アンリエット領軍の駐屯地に着いたルシール達だった。

 夕餉には早い時間である、にも関わらず煮炊きの匂いが漂う駐屯地に少し訝しむルシール。


「ルシール先輩!」

 自分を呼ぶ声の主をの方向を見ると後輩のヴィクトリアが食事中だ。

 アンリパン…、否、アンリサンドにパクついている。

 隣には何故なのだろう、領主館の文官の男が、これまた同じにアンリサンドを無我夢中と言った感じに喰らっているではないか。


(きっと、『市民証』の交付で出張中なのかしら?)

と思うルシールであったのだが、ヴィクトリアの制服は薄汚れているし、同様に文官の貴族然とした服も汚れているのだ。

 何があったのだろう。

 余談ではあるが、アンリやフェーの友達で、文官『ベルナール・ド・ベルティー』と直接お話しをしているのはヴィクトリアだけであって、他のジュリエット、ナデージュ、ルシールは殆んど接する機会は無いのである。立場的に役人だから。


「いやあー、皇女殿下の御前で申し訳無い。空腹でしたもので…」

「先輩、スイマセン。お腹が、モグモグ。空き過ぎて、ゴックン。ご挨拶もせず、淑女なのに、こんなはしたない格好で……」


「貴女、その格好、どうしたの?」

「はい、先輩。実は……」

 魔物の『蜂』を放ったと思われる集団の情報を求めて、国境の向こうの町『マント』。

 その町で更に得た情報、『全滅した村』の調査に向かった事を話した。


「……その全滅した村で、ですね…」

「そこからは、僕がお話しします。その方が良いだろうヴィクトリアちゃん?」

「そう、ですね。お兄様の仰る通りです」

「その村、なんですが、30戸も無い小さい村でした。

 村に着いたのは7月3日の夕方前で……「その前にヴィクトリアさん、何故、貴女は文官の男性を『お兄様』と呼んで居るの?しかも自然に普通に」


「そう、そのっマントの門番さんに兄妹と間違われて、宿で部屋を取るのに空いてる部屋が、一つだけだったので、義妹…偽名を使って、それからずっと『お兄様』と呼んで居たらベルナールさんを呼ぶのに『お兄様』と…」

「それじゃ仕方無い……。部屋が一つ?……まさか、どどどど、ど、同衾ですかああああ?」

「いえいえいえ、待って、待って、待って下さい皇女殿下あー!ベッドは別、別です。別に決まってるじゃないですかー!」

「そうですルシール先輩、淑女たる私が、その様な不埒な行いをする訳がありません。

 只、一晩ベルナールさんに抱いて頂いていただけです!!!」


「「はああああああっっっ!?」」

「いやいやいや、待て待て、僕は…「コレット隊長。この男を引っ立てーいっ!」

「はっ!」

 こうして、ベルナールはお縄に成った訳だが、説明に説明を重ねる作業は、「でも優しかった」と言うヴィクトリアの言葉に難航。

 更に、言い訳じみた説明の最中、「安心出来たの」と言うヴィクトリアの言葉で暗礁に乗り上げる事と成った。

 今年22歳に成るベルナール。人生二度目の危機であった。

 そう感じる事態は、近衛分隊隊長コレットの追い撃ちと言う形で現れるのである。


「伝聞ではありますが、彼『ベルナール・ド・ベルティー』が帝城で職を追われた原因が、『女性関係』であった、と言う事です。

 具体的には、女性上司に………」

「文官ベルナール、それは(まこと)ですか?」

 結局、『全滅した村』の情報を伝えられたのは、その日の深夜に成ったのである。




◇◇◇

「大きなぁ町だねえぇ!」

 綺麗な茶色の髪をした、白磁器の様な滑らかで、白い肌のお人形の様な少女は今、ワロキエ王国の王都ワロキエに居た。

 7月3日の昼には早い時間であった。


(しお)のかおりぃって言うのぉ?お腹がすくねぇ」

「そうですの?朝は先程、フェーちゃんも食べたではないですか」

「しかし、フェー様。その御髪(おぐし)でも十分御美しいですなあ」

 老ジェラルドは、すっかりフェリシエンヌの信者に成って居る。


「ホントだよ、綺麗ってこう言うのを言うンだろうよ。『綺麗』って言葉じゃ収ま切れるモンじゃあ無ーとも思う。

 アンリエット様も相当だけど、フェーちゃんもかなりだなあー。おやじさんの気持ちも分かるぜ」

「そうですね。見目麗しいです」

 領兵の三人。ジェラルド、ジャノ、オスカーが言うのは最もである。

 (もと)の色自体、只の『白』ではあるのだが、それは粉雪か月白の色、人により『白銀色』と呼ばれ、艶やかな髪質もあり、非常に美しいものなのだ。

 本当に物語の主人公にしてやりたい程である。


「ジェラルドさん、そろそろ『ハンター証』を用意して頂けますか?」

「おお、ジーン殿、失念しておりました。もう町の入り口でしたな……。結構、混んでますな?」

「わたくし、見て参りますわ」

 馬から降り、颯爽と走って行くジュリエット。

 心配なのか、「俺もっ」と、ジャノが追いかける。

 暫くして戻ったジュリエット、ジャノ。


「なんだか事故か事件があって、門の兵士も駆り出されてるって話しだよー」

「町の中で、死傷者が多く出てると仰ってましたわ」

「何があったんッスかねえ?」

 それからも、町に入る列はジリジリとゆっくりではあるが、進んで行くのであった。


 王都の出入り口である門は、二ヶ所。

 東門と、フェリシエンヌ達の並ぶ、西門である。

 南は港湾に成っていて、北側は高い岩山に成っているのだ。

 岩山の南、つまり町側であるが、そこは岩を利用、くり貫いた建物がある。この国の統治者の住まう所、王城であった。



「ヴァレリー硬貨だったら、一人大銅貨二枚だ」

「おかしいですわ。どうしてワロキエの大銅貨二枚なのに、ヴァレリーのも二枚ですの?

 相場なら大銅貨一枚と銅貨六枚ですわっ!」

「お嬢ちゃん、そうなんだろうが、決まりなんだ」


「ジュリ嬢、ここはあまり荒立てずに参りましょう」

「ですがですわ」

 悲しいかな、子爵令嬢に成っても尚、貧乏性と言うものは治らないジュリエットであった。


 大半の宿が、町の中央の『中央市場』の北側にあり、馬の預かり所もそこに幾つもあると教えて貰えた。

「只、ボッタクリの厩もあるから気い付けろ」と門兵に言われ、「ホントは売りモンだけどなっ」っと、ジュリエットは町の地図を受けたった。


 こうして、ワロキエの町を歩くフェリシエンヌ一行であった。



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