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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
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第60話 税金。




 後期の新学期が始まった。



 学園は9月が入学式の学園である。一学期は9月から12月。二学期は2月から6月なのだ。

 冬期休暇は、12月の終わりから2月の終わりの二ヶ月である。夏期休暇が7~8月の二ヶ月だ。卒業式は6月の終わり。

 そして、入学選考試験が7月初旬である。



 3月末の中間試験も終わり、生徒会会長選挙が迫る。

 アデラール・マルタン生徒会会長は、アンリエットを推薦した。

 当のアンリエットは固辞するのだが、機運なのであろう、アンリエットの会長就任は、現実に受け入れられて行く様であった。


 結局、アンリエットの対抗馬は皆無。

 選挙は無く、新任投票と成ったのだ。

 全校生徒478人全員から新任されたアンリエットは生徒会会長に成った。


 副会長にフェリシエンヌ。書記はマリエル・ド・ルブック。会計ロイク・モンダー。広報ジュリエット・ド・テター。庶務には、ヴィクトリア・ド・ヴァレリーに決めた。

 広報のジュリエットは、キャラ的に良い広報であろう。



 新しい執行部が出来た頃、馬術部が来た。


 あのロタール(自称)馬術部部長だ。

 頑張って部員を六人に増やせたと言う事で、部活動を再開したいとの事だったのだが、馬は既に領軍の厩に、厩番の下男もそちらに行ってしまって居る。

 予算を出す事は出来るが、馬を引き取る程の予算は、無い。

 さて………。


「だったら、俺が働く」

 そう言って、ロタール先輩達は、厨房の仕事を手伝うのであった。

夕方の仕入れから、朝の仕込み。そして、食材の買い出し迄行うのであった。

 こうして、馬や厩番を雇い入れ、『馬術部』を新たに発足させたロタール先輩であった。



 前生徒会会長のアデラールは、アンリエットに言うのだ。


「おまえが本命の生徒会長だ。俺はおまえに引き継ぐ為だけに存在したのかも知れない。と思って居る。多分そうなのだ。と思う。

 実はな、ファテノークの騎士団に仕事が決まったのだ。俺はおまえに惚れた……。惚れたと言っても、そう言う意味では無いぞ?

 おまえの家臣として仕えたい。

 そう思ったのだ。どうかこれからも宜しく頼む」



 中間試験の順位……、と言うか、もう不動の1、2、3位であるのだ。

アンリ、フェーは勿論、ロイクの三位は既に周知の事と成って居たのである。

 ジュリエットの四位もナデージュの五位も変わらず。

帝国第二皇女ルシールも六位であった。


 因みに、一年生のトップは、入学以来ずっとヴィクトリアであったりする。


 四月に成り、アンリエット領北部の作付けも終わったと言う報告を受けた アンリエットは、愕然としたのである。


 殆んどの集落の畑が売れ筋の『トウモロコシ畑』だと言うのだ。


「これは、不味い。と言うかヤバい」

 トウモロコシは、『とても』肥料を好むのだ。

 だから土の栄養を『根刮ぎ』取ってしまう作物なのである。

 とは言え、もう植えてしまったのだ。

 各集落を廻って、農民達と話しをしなくては成らないだろう。



◇◇◇

 と言う訳で、今アンリエットは北部の村に居た。

 フェリシエンヌと、何故かジュリエットも着いて来た。


「領地の運営が知りたい。アンリさんのお手伝いがしたいの」

と言う事だ。

 本当に何処へ向かうのだジュリエット?


「まず、トウモロコシばかり市場に出すと値崩れします」

「でも、今一番の売れ行きだと聞いているが……」

 とは、その村の村長。

 「ですが……」とアンリエットは、説明した。


「……と言う事は、村だけでは無く、この領地の北部全体が損をする。と言う事ですか?」

「はい。ですので収穫の終わる7月半ば、全てとは言いませんが、トウモロコシを一端、乾燥させて下さい。小出しに市場に流しますので…。

 それと、土の栄養が(から)に成ります。夏の作付け……じゃがいもや豆類です。の肥料を多めに用意して下さい。お願いします」

と、こんな感じで集落を廻ったのであった。


 勿論、アンリエットだけでは無く、領主館の文官ペリーヌやベルナールも各々分担して集落全てに価格と肥料の事を触れて廻ったのである。

 7月に成ったら改めて、『お触れ』を出すと言明して………。


 南部は、安泰であろうか?

 南部の半分が小麦の作付けを終えている。後の半分はじゃがいもや葉菜、根菜等々多彩に作付けしている。

 安心だ。


 それと、農家の給金制だが、収穫も安定……少し問題は在るが、今年度いっぱいで終了する旨を布告した。

 アンリエット領の税率は現在15%と、帝国国内の他の領地と比べ半分だ。

 と言う事は、税率の高い地域からアンリエット領で商売する方が儲かる。

 市民証を持たない者は一人頭大銅貨二枚、他所の領から来る商人には『入町税』を一割とした。


 こんな感じに流入する民を規制するアンリエットである。

 『市民証』を発行するにあたり、証書を偽造出来なく安価で大量に短期で作成出来る物はと思案するのだが、良い案が出ない。


「お手紙でしたら『封蝋(ふうろう)』で何処のお家のお手紙か証明出来ますのに……」


「おおお、ああっそれだっっっ!!!」

 ジュリエットの何気無い一言がヒントに成った。


 と言う訳で、アンリエットは、自分の意匠の紋を作り、アデリーヌの町の東、職人街へと急いだ。

 急いだのだが、実は『職人街』に来たのは初めてだったのだ。

(見て廻りながら、思い付いた物を作って貰おう)

と考えるアンリエット。


「ジーンさんマリエさんは、ここ来た事あるの?」

「私とマリエは、定期的……、とは言いませんが、暗器の手入れや補充で、来ます」

「え?補充って、投擲する様な戦いってそんなしょっちゅうあるの?」

 何と戦って居るんだろうこの侍女達は………。

 ジーン達に案内された武器屋に入った。


「ここは嬢ちゃん見てーなガキの来るトコロじゃ無ーゼ?帰んなっ」

と、何ともお決まりなセリフが飛んで来た。

 まあ、ジーンやマリエは兎も角、アンリ、フェー、ジュリは13歳の子どもであったのだから、仕様が無い。


「おじ様、お尋ねしたい事があります」

「だから、ガキは……ってお姫さんだよお!こりゃあ失礼した。お、おいっお茶か何か持ってこい!」

「あの、お茶は……頂きます。

 ええと、教えて頂きたい事があります。こう言った『コイン』を作成出来る方か工房があったら、と思い出向いたのですが」


「お姫さん、お金作んのは、御法度だゼ?」

「いいえ、お金では無く『市民証』を作ろうと、で、その証明に成る物がこの『コイン』……」

 アンリエットは、掻い摘まんで説明する。


「…成る程ぉ、だったら、あそこの工房。何て言ったかジェ、

ジェネリック!」

「親方ぁ、『ジェラール』ですよぉ『ジェラール工房』」

「ああ、それその工房がこう言った細かい仕事が出来るんだ」

 出されたお茶を飲み「おじ様ありがとう」と言って店を出るのだった。



 翌日、アデリーヌ学園の領主館の在る校舎西側の空き地にちょっとした建物が建設され始めた。


 一ヶ月で完成した建物には出入り口の無いのである。

 その建物の出入りは領主館の中にしか無い。

 出入りの際は必ず持ち物検査をするのだ。


 その建物は『工房』である。

 金型でアンリエットの『印章』紋のコインを作るのだ。

 『市民証』の羊皮紙は横15センチ、縦12センチの大きさで右下に黄銅のアンリエット紋のコインを着けた物に成った。


 全領都民六万名の『市民証』を作成するのだ。

 当初『市民証』には本人の名前と住所、年齢と性別。それに代官であるアンリエットの名を記載する予定だったが、六万もの市民証にアンリエットが署名するのは大変どころでは無い。


「アンリさんの紋が付いているのですから証明に成りますわ」

と言うジュリエットの意見で「それもそうか」と成ったのであった。

 こうして『入町税』導入の9月には間に合う目処がたったのである。



◇◇◇

『領民の皆様へ。

 来年度9月より新たな【入町税】の導入を予定しております。領都の市民は【市民証】の提示で都の出入りでの徴税はされません。

 今、【市民証】を購入の方には、アンリエット様の素敵な意匠のコインが付いた市民証を受け取る事が出来ます。尚、数には限りがあります。』

と言う文面の『お触書』がアンリエット領各所に貼られたのであった。

 文章を作成したベルナールは、


「アンリエット様、ちょっと詐欺紛いですが、こう言う風な書き方だと、皆持ちたく成りますよね?」



 お陰で、領主館の窓口、文官であるベルナール達は殺到する領民の為に仕事量が一挙に増えたのである。




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