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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
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第59話 白亜の城。其の5。パーティー。




 アンリエット達に案内され、ルイ皇太子とミシェル皇太子妃16歳……、マリエがボヤく。


「あっちらより若いってどうなってるッスか?」

「行き遅れ無い様、頑張りま……こればっかりはどう仕様も無いです」

とは、ジーンである。

 ジーンとマリエは、18歳である。

 もう焦っても遅いお年頃なのだ。


 こうして『貧民街』に着いた一行であった。


 集合住宅の広場で馬車を降りたアンリを見つけた子ども達。


「姫様ぁー!」「ひめさまだあー」「お兄姉さんもいるう」「アンリエットさまぁ!」「フェーちゃーん」「ルシーちゃんも来たー」

「「「オセロキターーー!」」」


「これが、本当に『貧民街』なの…か?私を謀って居るのでは、無い、のか?」

 ルイ皇太子は、そう言ってアンリエットの顔を覗き込んだ。


「兄上、ルシールの報告書は正しい、と思います。この集合住宅、まだ真新しいですし……。

 しかし、驚きました。報告通りの街並み……、清潔さも去る事ながら、子ども達の表情は、確かに、本当に生き生きしているのですね」


「姫様、新年の時の甘いジャムのパン、今度の炊き出しでも、出してくれる?」

「じゃあ、次の安息日にまた、用意するね」

「姫様約束だよぉ」「やくそくー」「やたーやくそくー」「ひめさまやくそくねー」


「元気な子等よなぁ。エミールよ、帝都のそれとは大違いだなぁ」

「そうですね兄上。アンリさん、ここの経営は、確か王都が、四割、商人と王国が三割でしたね。王都は、『債券』を発行している。と言う事でしたが、『債券』はどの様な方々が買われるのですか?」


 急に振られて真っ赤なお顔に成るアンリエット。


「アンリちゃん、起動ぉしないのでぇ、わたしが答えますぅ。

『債券』は主に貴族や商工ギルドが買います。一年債券、五年債券等あります。より長い債券は、より利率が良いので商人個人が買い求める事も在る様です」


(普通に喋れんじゃん)

「キャラ付けはぁ必要なのですぅ。エミール先生ぃ」


 こうして、ルイとその婦人ミシェル、エミールを連れたアンリエット達は、集合住宅を観て廻った。

 周りには幾つかの幼年学舎も在り教育も行き届いて居る様子は一目瞭然だった。


 広場に戻って来ると、男の子達が、剣術の真似事をしていた。


「どれ、私が手解きしてやろう」

とルイが言って子ども達の中に入って行った。


「あの人、剣術始めると何時までも止めないですの。困ってしまいますわ」

と皇太子妃ミシェルは言うのだった。

 そんなミシェルも女の子達とオセロに興じるのだった。


 結局、夕食前迄、子ども達と遊んだ皇太子殿下。シルヴァーヌ城で、『温泉』に浸かり、すっかりご満悦である。

 皇太子妃ミシェルもいたく温泉を気に入った様子で、長湯してしまった。食事を取らず一足先に休んだ。


 その夜は、皇太子一行の歓談パーティーを予定していた城の儀典官達であったのだが、皇太子殿下の遊びで時間が取れなく成ったのであった。


「驚きました。あれは『貧民街』等と言う物では無いです。れっきとした街ですね。ライアン閣下」

 夕餉の席でルイ皇太子は、アンリの父、ファテノーク王国国王代行に言うのであった。


「細かな事はアンリやフェーちゃんに聞いた。とは思います。あの町は我が妻、今は亡きエステル……前女王イズモ三世の忘れ形見の様な物でして、今のアンリ達の様に『炊き出し』に通いつめて出来上がったのです」

「成る程…。ライアン閣下、明日にでも細かい予算や運営のノウハウをご教授願いたい。」

と、考え込む皇太子殿下であった。


「ところで、どうしてジュリエットさん迄来たのですか?」

 エミールに話し掛けられたジュリエットは、一瞬喉を詰まらせた。

 温かい山羊の乳を飲み、落ち着いたジュリエットは、

「だって、アンリさん達と遊びたかったですの」

と言う、見も蓋も無い理由だった。


「ですけど、御家の方大変じゃ無いのですか?」

「はい、家は多分大変ですわ。でも、あたくしは大変では無いですの」


 「何の事?」と言うアンリエット達にエミールは、説明した。


「ええっ!陞爵して、子爵令嬢に成ったの?じゃあ言い方悪いけど『貧乏男爵』じゃあ無く成った。て事?

 貧乏じゃ無く成ったのに何で単騎で来たのさ」

 ナデージュの指摘は最もだった。


 翌日も何時もの様に朝から鍛練である。

 エミールは、アンリエットに「前の様に弓を教えるよ」と言い、アンリの身体を後ろから抱くのであった。


 アンリエットは、この間の夢、エミール先生に抱かれる夢を思い出し、真っ赤なお顔に成るのであった。


(ずっとこのままで居たいかも……)

と思うのである。

 「キューッ」とエミールの胸に沈むアンリエット。


「アンリさん、アンリさん、しっかりして下さい。どうしたのですか?」

 訳が分からず、アンリエットを抱き起こすエミール先生。


「こう言うのは、本人か、本人の承諾を得て言うものだとは思うけど、エミール兄様いい加減気付いても良いのでは?」

「何をですか?ルシール」


「アンリエットさんはエミール兄様が大好きなのです。流石に朴念仁過ぎです」

「本当に朴念仁だよエミール。私ですらアンリエット嬢の想いが分かると言うのに…全くこの愚弟は!」

「兄上迄………。ですが、どうしたら良いのでしょうか?僕は…」

「そんなの自分で考えなさいっ!」

 妹に言われる兄エミールであった。



 アンリエットを自室のベッドに運んだエミール先生。


(どうしたものか……、彼女の気持ちを知った今、僕はどう接したら良いのだろう。そもそも何時からそう言う思慕を持つように成ったのだろうか?いや、待て、僕は、僕は彼女と初めて会った時、既にそう言う気持ちに………って、僕はロリコンじゃあ無い、筈……。)

と言う思考に陥って居るエミール先生の前で、アンリエットが目を覚ましたのである。


「……あたしの部屋。エミール先生、どうして?」

「アンリさん、君が急に倒れたので、僕がここまで運んだんだ。少し休んだら、朝食を取ろう。皆は先に食事に行ったよ?」

「ごめんなさい先生。先生も食事はまだ何ですか?」

「君が心配でね」

 エミールは、アンリエットの想いを棚上げしたのだった。

(自分でも情け無い、とは思う。だが、どう仕様も無い。自分の中で答えが出る迄、『棚上げ』する)

 こう判断してしまったのである。


 こうして一週間、朝の鍛練を行った。


 因みに、帝国秋の武闘大会『槍術部門』最年少優勝者であるジュリエットは、帝国内で既に有名であった。

 『クロワッサンブーム』の火付け役。と言う名声と共に……。


 そうして、1月14日安息日。アンリエットは約束通り、トウモロコシの粉で作る『アンリパン』を振る舞った。


 小麦粉より安価な筈のトウモロコシの粉が、『アンリパン』若しくは『姫パン』の所為で高騰してしまった事は痛かったが、子ども達が喜んで食べてくれるのは、名状しがたい事であった。


 皆フライパンを持って、ミシェル皇太子妃も頑張ってパンを焼いた。

 まあ、ジュリエットは、何時ものジュリエットだった。

 何気に誇らしげにパンを焼くジュリエットであるのだ。


 皇太子殿下は、子ども達と一緒にパン粥とジュリエットの赤ソースの『アンリパン』を食べて居る。

 すっかり風景に溶け込んだ皇太子であった。こうして安息日の夜、遅く成ったヴァレリー帝国皇太子夫妻の歓談パーティーが行われたのである。



◇◇◇

 アンリエットは、ルシールに謝られた。

 エミール兄様にアンリエットの想いを勝手に伝えた。と言うのだ。


「でも、エミール先生、そんな事、一言だって言わないわ?」

「兄上、怖じけ付いたのだわっ」


「でも、でもでもでも、どう仕様。先生とお顔会わせられ無いよおおおーっ」

「エミール兄様が言う迄、アンリさんはそのままで居なさい。大丈夫よ?」


「そうぅよねぇ、アンリちゃんってばぁ分かり安いのにぃ何でエミール先生ぃは気付かなぁかったのか?気付くのを『怖れた』のよぉ?」



 何時もながら、鋭いフェリシエンヌであった。




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