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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第一章。
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第5話 真珠、帝都防衛。その1。


◇◇◇


 エミール先生とアンリエットは、並んで丘を登っていた。


 空は未だ暗く、道もよく見えない。

 灯りを…と、考えたアンリエットは手にした棒っ切れに『亜法』で酸素分子に激しく運動させ火を点けた。少々驚きはしたがアンリエットの国の『銀髪の女王』の逸話や、その力を多少なり知っている歴史と地理と政治学の教師であるところの殿下で副担任のエミール先生は、「便利だね」と言いながら並んで歩いていた。


「会話も無いのも寂しいですね。少し勉強しながら歩きましょう」

 コクンと首肯するアンリエット。

 エミール先生は丘の向こうの土地のお話しを「僕の話しは『帝国』側の視点ですからね」と前置きして話し始めるのだった。


「アンリエットさん、ミュロ川は知ってると思います。丘の東を南に流れる大きな川ですね。その川向こうから東は君の国『ファテノーク王国』。ファテノークの西の外れから延びたサトウ山脈西に南北に細長い国があったんです。国の名は『大ミュロ王国』って言いました。中規模な国土だけど気候に恵まれた農耕と海の恵みの国だった様ですね。」

「そのお話し母に聞いていたので、少し知ってます。お婆ちゃん………あ、先々代のあたしの国の女王様も仰っていたのですが、余りにも酷い悪政で国の民が回りの国々へ逃げて行ったってお話しですよね?」


「その通りです。その悪政と言うのが高い租税だけではなく、王家、王自ら『人身売買』を行っていたのだそうです。船で東の砂漠の向こう、……遠い東方の国との『奴隷貿易』です。そんな事をしていたその国は、どうなると思います?」

「んー。悲しくなる…は、当たり前かな。あ、買う国は『働ける人』が欲しい筈だから、労働力が少なくなる。。。かしら?」

「ほぼ、正解!流石、黒…アンリエットさんです。まあそんな訳で、前の皇帝、つまり私の祖父が派兵してミュロ王家を取り潰した。とまぁそう言う話しです。」

「祖母も兵を出そうとしていた。って母から…」

「そうです『ファテノーク』も派兵の気運が強く成っていたのでしたね。でもしなかったんです。何故か分かりますか?」

「んー。兵隊が少なかった?」

「さっすが黒!…し、白星二つですアンリエットさん。『ファテノーク』には国を守る兵はいるのですが、戦いに出せる兵は今も昔も少ないですね。ですが、おそらく派兵していたら君の国、楽に勝ってましたよ」


「ミュロ自体、疲弊してたし、酷い王様の為に死地に向かいたい兵はいなかった。軍としての士気は、最低だった?」

「大正解っ!も、最高っっっ流石、僕の真珠!」

「は?オマッ何言ってン?」



◇◇◇


 護衛の為、侍女ジーンとマリエがアンリエットとフェリシエンヌに付き添い徒歩通学した二日目の朝。


「あら?お早う御座います。奇遇ですわね!こんな所で御会いするなんて!」

 ジュリエットが北側の路地から現れた。


「金髪コロネのジュリエット嬢?」

「違うよぅジーンさん、ジュリちゃんは『クロワッサン』よぉ。」

「わたくしパンでは御座いませんわっ!」

「なーんか、お腹空いたッスよー。」

 そんなこんなで歩いて学園に向かう三人の新一年生と付き添う侍女二人だった。


 翌週、新一年生は、毎年の定例行事『遠足親睦会』が始まる。

一日一クラスずつ『遠足』を行う。5日間で5クラス。

 初日は1年1組だ。


 9月14日朝10時。集合場所は丘の下の厩の前。

集合場所が学園では無いのには訳がある。貴族の子女を一時間も歩かせたく無いからだ。なので現地集合、と言う事らしい。



「で、明日、早起きして丘の上から日の出が見たいの」

「御姫さぁー結構、我が儘ッスねー。」

「スパコーン」。侍女ジーンが手に持った右の革靴で頭を叩かれるマリエ。様式美である。


「それから侍従長と他の方々と調整します。私としましては何ら問題ありません。」

「何時も有り難うジーンさん。」

「いえっ姫様の為ならば粉骨砕身、猪突猛進でございます。」

「「え?後ろの四文字熟語、怖いんですケド。。。」」

 ちょと怖がりなアンリエットとフェリシエンヌであった。



◇◇◇


 日付が変わり9月14日、午前4時少し前。アンリエットは焦っていた。フェリシエンヌが起きないのだ。


 身体を揺すっても往復ビンタしても擽っても「んー」と寝返りを打ったり、「そんなにサれたら、シちゃうから、ンッ。。。」とか「アンリちゃん壊れちゃう、わたしのソコ、壊れちゃうのぅ。」と起きない。


 そんなフェリシエンヌが何故に畏怖の念を感じ、諦めるアンリエットであった。

結構、恐がりである。

 その旨を侍女二人に伝え、アンリエットとジーン、マリエの三人で出発する事にした。


 「嬢タン、自分が起きる時にしか起きないッスよー」ってマリエが言うのなら…。と納得しかけたが何とも腑に落ちないアンリエット。「っつか、当たり前じゃんっ!」と呟くに留めとた。


「…御者のお方、いないの?」

「ええ、そう言う約束で昨夜の内にお話しはついております。否、着けて(・・・)おります。」

「誰が馬車動かすの「わたくしで御座います。」

とジーン。


 そう言えば、ジーンさんお馬、好きだったなぁ。国では結構、草原走ってたっけ。ジーンさん。

 ぼんやり自国の風景を思い出しているアンリエットである。「少し五月病かしら」ハハッ。っと自重気味に笑ってみる。五月病が何かは知らないが………。



 東門を出る直前、御者台に座るジーンの身体が小刻みに震えている様に感じたアンリエットとマリエ。何故か?ジーンの頬が紅く高揚している様な気がした。




 東門を出ると直ぐ南方に道が曲がり其処から緩やかに東の丘に向かっている。


 流れる向かい風……、突風がアンリエットとマリエをぶちのめす。しこたま、打ちのめす!

 御者台から楽し気な「ふっふ、ふははははははー」と言うジーンの笑い声がした。


 『猪突猛進』。とは…………。

 怖がりアンリエットは必死でマリエにしがみ付き、そして、瞠目、驚愕した!


(な、ななな、何だあああーコレわあああっ!)

 丘に着く前に狂暴な超ド級双丘にたどり着いたアンリエットはそのまま眠りに墜ちた、らしい。



◇◇◇


 丘の麓?と言うのかな。物見小屋の兵士用の厩の厩番に青年が馬を預けようとしていた。


「―――――エミール先生?」

「ん?黒し…、アンリエットさんかー。早いですね。」


 朝の挨拶を交わし、お互いの目的が「日の出を見る」と言うのが分かったので、「では二人で登ります」と言う事になったのだった。


「では、フェリシエンヌ御嬢様を迎えに行って参ります。

とジーンは言って馬車は風の様に去って行ったのだった。

 これからはジーンを今、思い付いた二つ名で呼ぼう。と勝手に決めるアンリエット。


 『疾風ジーン。』


 あ!でも仲良しな相方、オッドアイだったな?マリエ両目黒目だし、ギリギリ持上げたりしたらローゼンリッターの隊員その8くらい?には成るかしら?

 持上げ…盛り上がる…双丘……。

「マリエの凶悪精神破壊兵器おっぱいの事かああああっっ!!」

「急にどうしたんです。…アンリエットさん?」



◇◇◇


 9月14日午前4時40分。東の空はまだ真っ暗だった。


 その頃、馬車の中で引き続きマリエは寝(気絶)ていた。

 お屋敷のフェリシエンヌはアンリエットの揺さぶりとビンタにより『巨大地震で崩壊する帝都!』と言う大スペクタクルな夢の悲しいクライマックスへと突き進んでいるのだった。


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