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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
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第57話 白亜の城。其の3。皇太子来訪。




「皆、こうして新年を迎えられ、大変喜ばしい限りだ。

新年おめでとう!」

 ここは、シルヴァーヌ城のバルコニー、扇状の大きな広場にせり出したバルコニーである。

 国王代行のライアンが、新年の挨拶をして居るのだ。


「……そして、皆も聞き及んでおろうが、『ヨルドの森』に新しい族長が就いた。

 紹介しよう『ナデージュ』女族長だ!」


おおおおおおおおおおーーーーーー!!!

 集まった大衆の割れんばかりの歓声に本気でビビるナデージュである。


「わ、私は、ヨルドの森、フェルデナンの子ナデージュです。まだ、学生の身で……」

「知ってるヨー、姫様の友達だヨねえ!」

 民衆の一人がナデージュに声を掛けた。


「そうです。アンリエット姫様、フェリシエンヌ様の学友です。13歳で、実際に族長として働くのは二年後に成ります。

 姫様がこのファテノーク王国の女王に成る、その年からと成ります。

 族長ではありますが、ヨルドの森は長老会が引き続き自治を行い。私はアンリエット姫様のお手伝いをする事に成ります。

 どうぞ宜しく御願い致します。

 それと新年おめでとうございます!」


うわああああああああーーーー!!!

 歓喜の雄叫びが王城前の広場を揺るがすのであった。


「ナデー、お手伝いってホント?」

「……アンリ、エレオノール様から聞いて無いの?」

「うん……」


「ま、その話しは後、次アンリの挨拶でしょう?去年はサトウの町で、歓声聞いたけど、今年は間近で聞くんだねぇ?楽しみ!」

 アンリエットがバルコニーの前へ出ると、待ってました!とばかりに民衆から何時もの声が上がる。


「アンリひめー!」「姫様あああ!」「アンリエット様あああーー!」「ひーめーさーまー」

 アンリエットは、それを慣れた手付きで歓声を制し、

「今年も皆さんの元気な様子が見られて嬉しいです……」

わあああああああああああああああああああああああああああーーー………。

 再び、手で制すアンリであった。


「……新年、おめでとうございます!」

わあああああああああああ。

 うおおおおおおおおおおおおおーーーーーー!!!

 集まった大衆の歓声は、終わらないのであった。


 そして、午後、貧民街での『炊き出し』である。

 ナデージュが、新しい『族長』に成った事は、昨年の夏以降知れて居たのだが、貧民街の子ども達は半信半疑だった。

 だが、新年の挨拶でのナデージュを見た住人達は、改めて驚いたのであった。


「お兄姉さんは、ホントに族長さんなのぉ?」「偉く成ったから、もう遊べ無い?」「じゃあー、ナデージュ様って言わないといけない?」


「あのね、今まで通りで良いんですよ?だって、偉く成ったらここに来れないって事は無いでしょ?アンリ…姫様だってフェーちゃんだって来てるもの」

「あーそういえばそおだったー」「良かったぁ」「なーあんだぁ」「姫様もフェーちゃんもナデちゃんも時々遊んでね?」


 炊き出しの『パン粥』の他にアンリエット達は、あのトウモロコシの粉で作る『アンリパン』を焼いた。

 五千人もの住人の居る貧民街である。

 その二千人近い子ども達全員にパンを配付した。

 流石にサンドイッチとは行かず、ジャムやバターを塗っての手渡しだった。

 ジーンもマリエもひたすら焼いた。


「ジュリさぁ居たら嬉々として焼いたッスね?」

「そうですね。あの男爵令嬢は、そう言う感じですね」



◇◇◇

 そのジュリエットは、馬上の人に成っていた。

 フォンテーヌ侯爵領内に在る小さな男爵領から、馬に乗ってファテノーク王国を目指し、馬を走らせているのだった。

 新年の挨拶を早々に切り上げ……、と言うか四千人の男爵領である。挨拶何て一瞬……。

 そう言う予定だった。


 一年生イレーネ・ド・ラ・サールの事件で、『お取り潰し』に成った『ラ・サール子爵領』を併合する事に成ったのだ。

 ジュリエットはテター子爵令嬢に成っちゃった。


 テター男爵領は一挙に倍以上の領地を持つ事と成り、新年の挨拶は、去年より少しだけ長く成ったのである。


 でも、貧乏性とは治らない物で、ジュリエットは簡単な調理道具とテントに毛布を背負い十日間の旅路を急ぐのであった。

 帝都ブレの西側馬車で五日の距離であるテター子爵領なのだ。


 と言うか、折角、お金持ちの子爵家に成ったのだから、馬車で旅をすれば良いのに。

 まあ、ジュリエットってこんな感じよね。と誰かが言うであろう。



◇◇◇

 ジュリエットの事は、分からないが、ヴァレリー帝国の第二皇女ルシールからライアン国王代行閣下に手紙が届いたのは、2日の昼の事だった。

『1月10日前後、ルイ皇太子夫妻、エミール第四皇子と一緒にシルヴァーヌ城に伺います。皇太子共々、滞在の予定です』

と言う内容の手紙であった。


「アンリちゃん、どう言う事であろうか?皇太子殿下も来ると言うのは……」

「どうだろうお父様もご存知無いのですか?」


「ああ、それって多分、去年の冬の宿題で、私とルシー、『貧民街の研究』を提出したんだ。

 皇帝陛下が大層興味を持った様だってルシーが言ってましたよ」

「それでぇルイ皇子もぉ来るって事ねぇ」


 2日、アンリエットは、去年同様、公務に忙殺されるのであった。

 ナデージュも『ヨルドの森』近隣のタクァースィー侯爵やその領内の商隊の族長、貴族との挨拶廻りをするのであった。

 ナデージュ一人で廻るのは、格好が付かないのでシルヴァーヌ城の衛士を二人従えての挨拶廻りと成った。


 一人取り残されたヴィクトリアであるが、お城の図書室で、『亜法』の書物に埋もれて居た。


「アンリエット様のあの凄まじい炎の『亜法』ってどうやるのかしら?」

そう言ってヴィクトリアは手を前に突き出しイメージしてみた。

「ボンッ」

 近くにあった本が燃え出したのだ。


「きゃああああああっ!」

 悲鳴に驚いた衛士が火に気が付き、自分の上着で火を消し止めたのだ。

 貴重な書物も在るのだ。水等掛けてしまっては、一大事なのだ。


「ヴィクトリア様、火傷やお怪我は御座いませんか?」

 衛士に優しく言われたヴィクトリアであった。


「ごめんなさい。私、お城の大事な本を燃やしちゃったし、貴方の上着もダメにしちゃって……、本当にごめんなさい」

「いいえ、貴女が無事なら良いのですよ?もし、そのお綺麗なお顔や御髪が……と思うと、私共の姫様が悲しみますので……」


(ああ、本当にアンリエット様は、愛されて居るのだなぁ)

と思うヴィクトリアであった。


 その日の夕方、新年パーティーで、ぼや騒ぎの事をアンリエットに心配され恐縮しまくるヴィクトリアである。



 ナデージュは、去年訪れた『ジル・ド・ジロー』子爵の王都での邸宅に居た。

 ジル・ド・ジロー子爵は、商隊の族長であり、子爵位を持つ珍しい族長だ。

 普通の商隊、遊牧民の事だが…、一族の長子が族長に成り、末の男子が爵位を継ぐ物なのである。


 何はともあれ、床に大きな羊の毛皮の敷かれた居間に通されるナデージュであった。


「昨年のお嬢さんが、族長に成られるとは。驚きました。

今回はノブユ……ノビューキ学園長は、いらっしゃら無かったのですか?」

「(あれ?今『ノブユキ』って言った?何処かで……)はい、学園長は忙しい様でしたので……。今日は挨拶と少しのお願いがありまして、参上しました」

「お願い。とは?」


「はい、私はおそらくヨルドの森には帰る事が無い、と思います。それは族長に成ったのが、アンリエット様の時世だから、です。

 前から予告されて居た様に13年前、『明け月』が『青月』に落ちました。

 アンリエット様は聡明な方です。素晴らしい為政者であろう事も帝国のアンリエット領で見て来ました。

 ですが、いくら優れた統治者でも、どうする事も出来ない事があります。

 私はその為だけ族長に成ったのです。

 これからの時代、荒れた時代に成ります。

 どうか貴方の子爵領を守るついでで良いので、ヨルドの森も守って下さいませんか?」

「数代前とは言え、森のお人には世話に成ったのだ。このジル・ド・ジロー、その願い喜んで受けましょう。

 ところでその『荒れる時代』とは?」


「具体的な事は、まだ……。ですんで、この事は内密にお願いします。

 要らぬ混乱を生むかもですので……」


「とは言え、就任おめでとうございます」



 ジロー子爵邸を辞して後もナデージュの挨拶廻りは、終わらないのであった。



◇◇◇

 1月8日の夕方、先触れがあった。『ルイ皇太子』からである。

 と、同時にジュリエットが馬でやって来た。

 服も身体も汚れ、若干頬も痩けて居た。

 冬季の寒い中…、と言うかよく凍死しないで来れたものだ。と感心された。

 何せ8日間、野宿だったと言うのだ。


 直ぐにジュリエットをお城の温泉に入れて温めた。

 そして、ジュリエットは、そのまま眠るのであった。


 翌朝、すっかり元気な様子のジュリエット。

 今回は、国王代行閣下の前でも緊張せず朝食をもりもり食べるのだった。



 そして、翌9日。ヴァレリー帝国第二皇女ルシールの案内で、ルイ皇太子夫妻と第四皇子エミールが、白亜の城を訪れたのである。



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