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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
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第55話 白亜の城。其の1。白亜の城。

少し性的表現があります。




 その日の夜、アンリエットは夢を見た。


 エミール先生に優しく抱かれる夢だ。

 アンリエットは、先生に包まれ、そして囁かれる。


「僕といっしょに生きて行きませんか?」

「あたしは貴方と同じ時を生きる事は出来ない。けれど、貴方の生が尽きる迄、あたしは貴方の側に居ます」

と、先生に抱かれたまま大人の姿のアンリエットは言うのだ。

 そして、朝目が覚めたアンリエットは濡れた下着をコッソリ洗うのだった。


「アンリちゃん、エッチな夢か何か見た?」

 顔を洗っていたアンリエットにフェリシエンヌは聞くのだった。フェーは鋭い。

 「そんなの見てないよ?」と言ったが、誤魔化せた気がしない。



 12月25日。

 今日はアンリエットの誕生日で、学園は終業式だ。

午前中で、終業式は、終わり。明日から冬期休暇だ。新学期は、2月25日から始まる。

 新年アンリエットとフェリシエンヌはファテノーク王国の王都シルヴァーヌ。ルシール皇女は帝都ブレで過ごすのだ。

(ジュリエットはどうするのだろう?ナデージュは学園に残るのだろうか?)

 そんな事を考えて、学食に朝食を取りに行くのだった。

 6時45分にはジュリエットもナデージュも学食の席に着いていた。

 遅起きのヴィクトリアを連れて五人で食事を取った後、何時もの日課の鍛練をするのだ。

 ルシールは既に来て軽い準備運動を終えていた。

 今日はジーンとマリエが皆を手合わせすると言っていた。

皆負けた。


「じゃあ、行ってきます」

とジーン、マリエに言って学園に入った。



 終業式も終わり、皆が冬の予定を言い合った。

 ルシールは公務があるので帝都ブレ城に行くが、ファテノークに行くかも知れないと言った。

 ジュリエットは、侯爵様と帰ると言う事だったが、ファテノークに行くかもしれないと言った。

 ナデージュは、アンリエット達と一緒にファテノークに行きたいと言う。歴史を調べたいと言っていた。


「私、アンリエット様のお城に行きたいっ!」

と、ヴィクトリアは言うのだ。

「でも、帰らないと公爵様が心配するのでは?」

 「手紙で『アンリエット様のお国へ行きます』って知らせた」

と言うのだ。


「大丈夫、かな?」

「たぶん大丈夫ぅ?」

 アンリの問いに、疑問形で答えるフェリシエンヌ。


「じゃあ、ジーンさん、友達二人も馬車に乗る事、お父様に伝えて下さい」

「承知しました」

 ジーンとマリエは、アンリエットの父、国王代行のライアンとノォーミク公爵夫妻の泊まる宿へと行ったのである。


 その日、ささやかに誕生パーティーを行った。

 アンリエットは13歳に成った。


 翌日、早朝四頭立ての馬車に乗りファテノーク王国王都シルヴァーヌへ向かうアンリエット達であった。

 ヴィクトリアはワクワクしていた。

 ナデージュは、ノォーミク公爵ユーゴに睨まれていた。


「私、ホントに女なんですけど…」

「本当に本当か?だいたいその平らな胸で……」

「うわあああああーーー!やっかましいいいわあああ!!!」



 公爵の頭をぶっ叩いたのである。



◇◇◇

 本当はサトウと言う名では無いのだが、町の住民は「面倒だからサトウでいいや」と言うサトウ山脈の中腹にある町に着いたのだった。


「去年の新年の挨拶の歓声、ここの宿で聞いたんですよ」

とナデージュは言った。

 「そんなに近いの」と言うヴィクトリアに、フェリシエンヌは言った。


「朝出たらぁ夕方前位にぃシルヴァーヌだよぉ?」

『王室御用達』と書かれたサトウの町の宿に一泊して、翌朝、出発するのだ。


「ライアン閣下。ユーゴ公爵様、エレオノール様。ようこそおいでくださいました。アンリエット姫殿下、フェーちゃ、フェリシエンヌ様お久しゅう御座います。あなた、ナデージュさんでしたね。おや、可愛らしいお嬢様は、はじめまして、ですね。皆様、ごゆっくりおくつろぎください」

と、宿の主人は言った。

 ヴィクトリアは、壁に掛けてある小さなアンリエットとフェリシエンヌの姿絵がいたく気に入った様子で眺めていた。


「欲しいですか?売りますよ?」

と主人は囁いて、カウンターの下から寸尺を小さくした姿絵を二枚、ヴィクトリアに見せるのであった。



 黒く踏み固められた道を昇る。

 何時しか道は玄武岩のそれに成り、真っ白な城郭都市へと続いた。

 西門を抜け、南門へと続く玄武岩の外周の通りを行き南門の広場に馬車を停めた。

 そこから歩いてアンリエット達は『貧民街』へ入ったのだった。


「ひめさま」「フェーちゃん」「アンリ姫」「アンリエット姫様」「フェリシエンヌ様」「姫ねーさま」「あ!お兄姉さんも居るぅ」「フェリシエンヌ様」「アンリちゃん」

「「「オセロキターーーー!!!」」」

と、子ども達がワラワラ涌き出て来る。


 ここは『貧民街』なのだ。ヴィクトリアは、信じられなかった。帝都でも、ヴァレリー公爵領でも貧民の集まった場所なのだ。

 だが、ここは違った貧民の為の町なのだ。

 夕方近いのだから夕食を作る匂いがしている。そんな普通の光景がそこにあったのだ。

「ほら、みんな姫様達、お疲れなんだから今度遊んでもらいなー」


 馬車に乗り、玄武岩の通りの向こうにシルヴァーヌ城が見えた。

 それは荘厳で優雅な、不思議な雰囲気が、まるでアンリエットの様な佇まいなのだ。

 

 徐々に夕焼けに染まる白亜の城に馬車は入って行った。


「夕食の前に、疲れたでしょうから……」

と侍女に言われた。

 ナデージュとヴィクトリアはお城の温泉に入った。


「この温泉も良いんだけど、フェーちゃんのノォーミクの温泉は、と言うかノォーミクの温泉街はもっと良かったって話しだよ?」

 ナデージュはヴィクトリアにそう言って聞かせた。


「四百年前に堀当てた温泉なんだって。私も夏行きたかったんだよね」

「ナデージュ先輩はどうして夏行かなかったのですか?」

「夏にね族長の選定の儀があって、その時、族長に成ったんだ」

「………は?」


 夕食は、やっぱり『羊』だった。

 その席で、国王代行ライアンは、予定を話した。


「12月中は特に用事は無い、休息日は『貧民街』の『炊き出し』。と言っても35日だけだ。

 それと1月は1~3日はアンリエットもフェリシエンヌも公務があるので、ナデージュ殿とヴィクトリア嬢はひょっとしたらお相手出来なく成るかもしれない。

 侍従も侍女も居るから、何かあったら尋ねなさい。

 1日の午後『炊き出し』があるので、手伝って欲しい」


 12月29日の夜は更けて行くのだった。

 翌朝、ジーンとマリエの指導でヴィクトリアは、体術の鍛練をした。アンリエットとフェリシエンヌ更にマリエの父ゴーティエ。ジーンの父アレクセイはナデージュと模擬戦をした。

 朝食の後、乗馬の練習をさせて貰うヴィクトリア。

 勿論、ジーンとマリエの指導でだ。


 昼食の後は、お茶の時間迄、勉強だ。復習予習も忘れない。

 二年生の優秀な先輩方も揃ってる。宿題は、二つ、読書感想文と研究報告。

 二年生は各教科毎にある様だ。


「アンリエット先輩は、去年どんな研究されたのですか?」

「春蒔き小麦と秋蒔き小麦の連作の障害について」


「何ですか、それ?」

「同じ作物を作り続けると不作に成るって話し」

「だからじゃがいもの後に小麦作ったりしてるんですね?」

「まあ、そう言う事」


「じゃあ私は何をやろうかしら?」

「図書館でも行ってみると良いかも。去年はナデーとルシーが図書館に入り浸ってた。行くなら誰かに案内……、あたし行くわ」

と言う訳アンリエットとでヴィクトリアは、図書館に行く事に成った。


 当然、ジーンも着いて来た。


 アンリエットは、教本と紙を持ち歩き、図書館の机で課題を消化した。

 ヴィクトリアは、片っ端から本を漁った。

 いつの間にかナデージュも図書館で課題をやっており、そして夕方に成った。


「もうお城に戻ろう?」

「そうだねアンリ」

「もう時間ですか?」


「フェー誘わなかったから、ちょっと拗ねてるかも…」

(拗ねている可能性は、大きいと思うなあ)

と思うナデージュ。


 お城に着くと、フェリシエンヌは拗ねていた。


「皆でぇ図書館へ行ってるぅだなんてぇ、酷ぉいぃ」

「明日は一緒に行こう」

「私は、エレオノール様との用事があるので……」

「おかぁ様と?」


「私が、他の人種(ひとしゅ)と違うのは知ってますよね。我等の事を知っているエレオノール様からお話しを聞く為です」

「それはきっとあたしにも関係して来るんでしょ?」

「今は言えません」

「そっかぁ分かったぁ、後聞かないぃ」


「ありがとう、フェーちゃん」

「…さぁ、お風呂入って、夕食」

 皆で入ってもまだ大きい湯船であったが、アンリエットとナデージュは、少し落ち込んだのだった。


((また、フェー (ちゃん)の胸がそ育ってたっ!))

 この事実を無かった事にしたい二人だったが、真実も事実も変わらないのである。


「何故、あたしは育たないのだろう?長命種は、種族的な事でしょう?」

「いやいやいやいや、待て、ちょっと待て。何か?アンリは、『種族的に胸が無い』そう考えている。って訳?酷い、酷いぞぉ」


「脂身。油だ、運動すると脂身が落ちるって聞いた事が、ある。脂身を食べよう!」

「成る程、脂身、か!長命種は、脂身が少ないって聞いた事ある。ありがとうアンリ」

「夕食は、脂身だー」

「おおーーー!!」



 夕食は、今日も羊だった。



「お父様、脂身が足りません」

「私も脂身が欲しいです!」




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