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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
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第54話 会計監査と冬至のダンス。



 仕方が無い。厩の馬、五頭を領軍に預ける事にしたのだ。

 厩番の男性も領軍の厩で雇って貰った。

 もう『馬術部』は無いのだから。


「本当にこんな強権使って良かったのか?」

と生徒会長のアデラール先輩は言った。

「監査委員会から、予算の不正支給を問題にされますよ」

 ロイクはそう言って、『部活動』では無くなった馬術部の予算を遡り算出するのであった。

 9月の中頃には部員が三名に成っていたのだ。10月から二ヶ月分の予算が使われている。


 11月の各委員会があり、監督監査委員会では案の定『不正支給』された部費が問題に成った。

「会計監査委員会の委員長、四年のジェレミーだ。実体の無い馬術部に予算を無駄に使わせた。と成ると、他にも似た案件がある可能性も考えられるが、どうですか?」

「生徒会会計のロイクです。改めて、精査しました。馬術部以外、問題はありませんでした以上です」

「会計を二年生何かがやってるから、こんな事に成ったのでは?」

「生徒会長のアデラールだ。それを言ったら、俺の任命責任じゃ無いのか?」

「ちょっと、冷静に成れ?ってまーこう言うのは馬術部の生徒の申告や顧問の問題だ。っつーワケだ。これは学園預りの案件っつー事だな?」

と、生徒会顧問のサラサ先生が言って、この問題は学園長の預りと成った。

 何となくスッキリしない幕引きに成った。



◇◇◇

 11月27日。

 帝都ブレのコロシアムで武闘大会が、開催された。

 なんと、御前試合だったのだ。

 皇帝陛下も御観覧である。


 アデラール会長は、クロスボウ部門で、また三位入賞だった。

 剣術部の団体戦で、ジュリエットは強かった。だが、団体戦である。一人が強くてもどうしようもない。


 しかし、ジュリエットは、『槍術部門』にエントリーして居たのだ。

 都軍の若い兵士を破り、槍術部門一位を勝ち取ったのである。

 金貨10枚と優勝のトロフィーを持つジュリエットは、一体何処に向かって居るであろう?

 そして、喜びと共に、領都アデリーヌに馬で駆け戻って来たのだった。剣術部の先輩達と顧問の先生を帝都に残して……。



◇◇◇

 生徒会室で、会長以下役員とヴィクトリア。

「もう、ヴィクトリアさん庶務でいいか?」

と190センチ超えの会長アデラールが言った時、「トントン」と生徒会室の扉がノックされた。

 アデラールが「どうぞ」と言うと見知らぬ男子生徒が扉を開けた。


「馬達をどうしたんだっ!?」

とえらい剣幕で入って来たのである。


「俺は馬術部の部長四年のロタールだ。馬を何処へやった!?」

「馬術部はもう二ヶ月以上前に実質無くなっていた。にも関わらず予算が使われ続けたのだ。無い部活動の維持出来ない物や何かは処分するに決まっているであろう?」

と言う生徒会長にロタール部長は「何をー!」と食って掛かったのだが、身長190センチ超えのアデラール会長だ。

 相手に成らない。

「ロタールと言ったか?ずっと馬達に会っていなかったのではないか?」

「そ、それが、どうした」

「馬が好きであれば、毎日でも行くであろう?結局、そう言う事なのだ。

 馬術部に馬の好きな人間はいなかった。と言う事だ。馬術部は無くなるべくして無くなったのだ」

「会長さん、良いぃ事言うねえぇー」

 フェリシエンヌはアデラールを褒めるのだった。

 そして、それ以上何も言わずロタールは部屋から出て行った。



 生徒会の仕事が終わり「掃除は、私の仕事です」と部屋に残ったヴィクトリア。

 生徒会室の窓から夕焼けの空を眺めていると、また、ロタールがやって来た。


「おい、一年のおまえ!」

「…何でしょうか?」

 今、ヴィクトリアは一人なのだ。

 前に男子上級生に襲われ掛けた事は、少しトラウマだった。

 寮の自室に未だ戻れず、今もアンリエット達のお世話に成って居たのである。

 そこに男子上級生が来たのだ。ヴィクトリアは身構えた。


「おまえ一人か?」

「そうですが…」

「…じゃあ聞いても分からないな。実を言うと馬術部をもう一度やりたいんだ。五人以上部員を集めれば、『部の認可』が降りるんだったな?もし良かったら入らないか?」

「嫌です。部費を誤魔化す様な方のクラブなんて…」

「…そうか。悪かったな。乗馬は好きか?」

「今、アンリエット様達に教わってます。楽しいですよ?」

「そうだろうな。乗馬は良いよ。邪魔したな」

 そう言ってロタール先輩は帰って行った。

 ヴィクトリアは少し時間を置いてから生徒会室にカギを掛け、アンリエット達の居室に向かうのだった。



 次の日もロタールは生徒会室に来た。


「マリエルさん、アンリエットさんフェリシエンヌさん、馬術部に入らないか?」

 勧誘なのだ。


「ウチ等、乗馬上手いでぇ」

「わたしとアンリちゃんはぁ草原の国育ちぃなのでぇ、乗馬はぁ当たり前だったからぁ」

「何で先輩、俺に声掛け無いの?」

と、少し寂しいロイクだった。


「いや、あのー、アンリエットさん達が、馬術や武術の稽古をしてるのは、結構有名に成ってるんで、馬術部に入るかなあーと思って、お邪魔した。また来る」

 ロタール先輩は言うだけ言って帰って行った。


「だから、何で俺は無視されんの?」

 少しだけロイクを可愛そうに思うアデラール会長であった


◇◇◇

 12月15日から始まった学期末試験も終わり、一階昇降口の掲示板に順位表が貼られる。

と言うか貼るのは生徒会だった。

 一学年から四学年迄、約20組分貼るのだ。


「フェー、大きい紙だねえ」

「そおねえぇーアンリちゃん」

(と言う会話を聞いて居ると、あの恐ろしい『殲滅姫』だったり、『瞬殺の懐刀』だったりするのを忘れてしまうねえ)

とロイクは思うのだった。


「つかぁ、聞こえぇてるんだけどぉ?」

「あ、フェーちゃん!」


 試験結果。ロイクくんは三位だ。アンリエットとフェリシエンヌは、不動の一位二位。ルカくん八位。

 ジュリエット四位。ナデージュ五位。皇女も頑張った。六位だった。



 今年は24日が冬至だ。

 12月23日の今日から『冬至祭り』である。

 昼には、通りに屋台が並ぶ。

 屋台には、もう定番の『双子の真珠姫水飴』『姫ワッサン』の他に各種『アンリパン』が売られていた。


 そして、アデリーヌ学園では毎年恒例のダンスパーティーのある日なのだ。

 去年は帝都のブレ城で開催された。今年は学園の講堂で行われる。

 領都アデリーヌで、一番大きい屋内会場が学園の講堂なのである。と思っていたら、軍学校の講堂の方が大きいらしい。


 6時に成って生徒会長のアデラールが挨拶をするのだ。

壇上に立つ生徒会長。


「生徒諸君。今年も冬至のダンスパーティーが始まった。新校舎での初めてのパーティーである。大いに楽しみ大いに踊ろう。音楽スタート!!」

 軽快なワルツの調べだ。

 生徒会長アデラールはは副会長のアンリエットとダンスを始めた。

「生徒会長って良いなあ」「俺、来期生徒会長やろっかなー」「会長、フェー様とも踊ってる」


 寄宿舎の平民達は、ドレス、タキシードやテールコート等々持っていないし買える者等居ないのだ。


 だから、『好きな服装』での参加が認められていたのが、何時しか『好きな仮装』で参加する様に成っていた。



 今年の平民寮生の仮装は、まあ、例年通り何だろう。と言うかルカくん今年も女装だった。

 ナデージュも男装の麗人だ。

 ロイクは何かまともな格好だった。


 そして、馬が居た。

 面白いので、代わる代わる馬とダンスをする生徒達。

 馬は、もう2頭居た。

 馬はダンスをしながら「乗馬は好きですか?」「馬術部に入りませんか?」と、どうやら勧誘している様だ。

 あの三頭は、馬術部の部員(自称)だ。あのどれかがロタール部長(自称)なのだろう。


 アンリエットとフェリシエンヌは、ファテノークから来た父親達のせいでお揃いのドレスだった。淡い空色のドレスだ。

 ジュリエットも侯爵様から頂いた淡いピンクのドレスを着ていた。

ルシールもオレンジのドレス。




 アンリエットも踊った。

 誘われるままに踊った。


(エミール先生、誘ってくれないかな?)

と、アンリエットはずっと思って居たのである。だが、先生はアンリエットの側に来てくれない。


 ナデージュと踊るアンリエットであったが、「あれえー」と言ってナデージュが引っ張る様にアンリの手を離し投げた。

 投げた先にエミール先生が居た。

 そして、アンリエットは「ぽふっ」っと先生の胸に飛び込んだ。


「やあ、アンリさん、ちょうど曲も変わる様ですし、踊りますか?」

「……はい」

 ナデージュのわざとらしい、だけど友達思いな所は良いと思うアンリエットだった。

 そして、一曲ダンスを踊るアンリエットとエミールであった。

 そんなアンリエットを見るフェリシエンヌは、

(上手くやってんじゃん)


 

 と、馬と踊るのだった。



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