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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第三章。
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第52話 陞爵。



 11月11日。帝都ブレに入った。

(そんな事より学園に通えて無い事が辛い。と言うか、先生に会いたい。先生の授業を受けたい。先生の声が聞きたい。先生ー)


 帝都は半年ぶりである。帝都のファテノーク邸に着いたアンリエット一行であった。

 アンリエットは、お茶を啜り、言うのだった。


「この帝都のファテノークのお屋敷って在外公館ですよね?ヴァレリー国内でファテノークに直接、報告出来る体制を構築したいの。

 それで、アデリーヌの町にも在外公館を置きたいんだケド?」

「姫様の仰せのままに…。とは言え、国王代行閣下にお伺いをしませんと」

 侍従長コベールはそう言った。

 それから、帝城に先触れを出すのだった。


 夕方、ブレ城の正門に着いた。

 跳ね橋の第二皇妃はそこにいた。


 アンリエット達は、馬を衛士に預け城内に入ると目に飛び込んで来た自分達の姿絵。

 恥ずかしさに顔を赤らめたアンリエットである。


 衛士を先頭に階段を上がって皇帝の執務室に着いのだが、走って来た侍従が衛士に耳打ちすると、「案内する場所が変わりました」と言う。

 今歩いたところを逆に辿って戻り、控えの間に通された。


「あ、やっぱりぃ?謁見の間ぁ」

 そして、控えの間の入り口では無い扉が開かれた。

 謁見の間にそのまま連れられて行くアンリエット達であった。

 臣下の礼を取るアンリエットとフェリシエンヌ。

 ジーンとマリエが後ろで控えて居る。


「(そんな臣下の礼等取らなくても)良い、楽に致せ。

 半年だが陞爵だ。其方に『子爵位』を授ける」

 途端に騒がしく成る謁見の間。

 貴族、有力者者が騒いだのだ。


「他国の姫ですぞ?」「蛮族の物を」「異郷の王女を受け入れてはなりませんぞ」

「陛下は国を売るつもりか?」

 等々、聞こえて来た。


「ですが、ワタクシは異国、隣国の子女、それをお受けする訳には……」

「それでも良い。この帝国をより良く発展し責めたそなたの功績、称賛せずして誰が苦言を申そうか?」

「…と言う訳で子爵位陞爵です」

 宰相閣下が勲章をアンリエットの薄い胸に着け様と寄って来た。


(とか言っちゃってるケド不味くない?フェー?)

「でもぉ」

 静まり還った謁見の間で、

「ぱんぱんぱん」と手を叩く音を出すヒューゴ元帥、それに続くフォンテーヌ侯爵である。

 次第に拍手の音は大きく成って行く。

 勲章を付けられたアンリエットは疎らな拍手の中、言った。


「あたしが、あたし個人が陞爵するのは、何か違う、と思います。帝国の国軍と元帥閣下、ヴァレリー領領軍あっての……」

「この度の陞爵は、領経営。アンリエット領の功績である」

「そうです。最低の10%の税で前年の二倍近い税収を上げたのです。しかも半年で」

と、皇帝陛下と宰相閣下が、口々に言うのだった。


「だが、少し自重してはくれまいか?周辺…、と言うか、帝都からの人口流出が、加速度的なのだ。改善は良いが、ゆっくり変えて行くと良いと考えるが?」

 これはアンリエット、思いもよらなかった。

 改革を、良かれと思った改善を急ぎ過ぎたのだ。


 その後の晩餐会でフェリシエンヌは、用意していた『アンリパン』を皆に振る舞った。


 材料を明かすと、皆一様に、

「馬の餌ではないかー!」

と怒るのだった。

 フォンテーヌ侯爵と、その息子ヒューゴ元帥が、


「トウモロコシは、とても甘いのですぞ?」

と言って、茹でたトウモロコシを晩餐会の参加者に振る舞ったのだ。

 いつの間に買い付けたのだろう。


 暫くして、『トウモロコシブーム』が、帝都に吹き荒れたのは言うまでも無い。

 お陰で、安い食材であるトウモロコシの値が倍以上に成ってしまった。

 それとトウモロコシで作る『アンリパン』が、色々アレンジされて、いろんな町や村の『おらが町(村)のアンリパン』と言う感じに成って行くのである。

 何処かの国の『村の数だけチーズが有る』状態だ。



◇◇◇

 アンリエット子爵領、領都アデリーヌに戻ったアンリエット達。

とある店先に『祝。アンリエット子爵』の昇りが、立っていた。

 そして、何処かの兵士が、持ち込んだであろう小さなアンリエットとフェリシエンヌの姿絵が売られていた。

「フェー、この絵って、サトウの町で売ってるよね?」

「うん、あのぉ宿でぇ売ってるぅ姿絵」

「これからどうしよう。町の発展って止まるかな?」

 学食から戻ったアンリエット達は2年1組の教室に入るのだった。


「帝都、皇帝陛下ご用事ってなんでしたの?」

「陞爵だった。子爵位に」

「へえー、凄い。まだ半年だよね?」

「何か変わるのですか?」

「領地も何も今まで通り。変わったのは爵位」

「まあ、そんなものよ」


「でぇ、困った事になった」

「どうなさったの?」

「この町が発展したら、他所が廃れた。と言う話しで、帝都も困ってると………」

 人もお店も増えた。でも、それは地面から生えた訳じゃ無く、他から来たのだ。

 ルシールもジュリエットも頭を抱えた。ナデージュは、「まあ、何とか成るんじゃない?」と言う顔をしている。


「皇帝陛下に御助力願おうと思う」

「どおするのぉ?」

「んとね…、領地に入るのを今後制限するの。と言っても、町なら制限しやすいけど、集落は入ろうと思えば入れちゃう。でも制限してれば………って思ったケド、ダメね。また思い付いたら相談する」

 アンリエットは、困ってしまった。


(いっその事、開き直って好き勝手やっちゃおうか?)

と思ったが、どうしようもない。


「ごめん。授業出ない。領主館にいる」

「サボっちゃダメぇだよぉ」

 アンリエットは、領主館で書類整理をする事にしたのだ。

 当然、フェリシエンヌも着いて来た。



「アンリエット様、聞きました。おめでとう御座います陞爵ですね。子爵位です」

「領主、おめでとう」

「ありがとうペリーヌさんベルナールさん。室長は?」

「今、南門の方へ視察です」

「……そう、じゃあ相談は今無理ね」

「アンリエット様、僕が相談に乗れますよ?」

「………。出直します」

「いやいやいやいや、相談、聞きます。仰って下さい!」

「実はね……」と帝都での話しをする。


「んんー。どうしましょう?ペリーヌさん」

「領主、人の出入りを制限しては…」

「それはあたしも考えた。でもダメ」

「何故ですか?」

「人の出入りが制限出来るのは町だけ、村や集落は制限しても入れる。

 人が入ると、仕事がそこにあれば良いケド、多分治安が悪くなる。

 警吏や領軍を出せば治安は守られるケド、軍に押さえ付けられた民衆はどう思う。

 不信感募らせて治安が悪化。こんな感じに成りそう」


はああああああーーーー。ため息。

「成る程。では、遷都。領都を移すのです」

「…何処にですか?」

「ブレ領に」

「それは……、あっはっはー!それ面白い」

「アンリエット様、僕、分からない?」


「つまり……」皇帝陛下は、帝都からも人が流出している。と言う。なら、流出しない方法を取れば良い。

即ち、ブレとアンリエット領の領境に町を造れば…………。


「良い案だと思うケド、アデリーヌをここまでにしたのに……」

「アンリエット様、僕に良い考えがあります」

「はい、ベルナールさん」

「アンリエット子爵領をヴァレリー大公領にしちゃえば良いんです」

「「は?」」


「つまりですね。アンリエット領を下賜した皇帝に返上して、子爵位の代官にアンリエット様が成れば良いんです。そうしたら皇帝陛下の懐も安泰だし、同じ領内なら流出した事にも成らない。完璧です」

「ベルナールさん冴えてます。凄いです」

「では、早速……僕、書類作るんですか?」

「言い出しっぺ。です」

「ベルナールさんありがとう!

アンリエット領は皇帝直轄地。あたしは代官。領地無しの子爵位。いよしっ。書類出来たらあたし、目ぇ通すね」



 そして、再び帝都へ向け出発するアンリエットであった。

 何故かルシールも着いて来た。



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