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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第二章。
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第46話 進軍、目指すは再び。其の1。豊作。



 去年流れてしまった『遠足親睦会』。

 今年の一年生は行うのだそうだ。ここは帝都ブレでは無いので『エリアーヌの丘』には行かない。行けない。


 北の『ミョスレ湖』への遠足だと言う事だった。

 例年、9月の第二週に行っていた『遠足親睦会』だが、今年は10月の一週目に行った。


 何人か町の西…、東西通りの学園西の北面に邸宅を建てた貴族。

 学園の側から順に、皇族、公爵、侯爵、伯爵と並んで居た。

 公爵や侯爵領内に領地を持ち、裕福な伯爵子爵男爵もそれなりの居を構えている。

 勿論、独立した領地で克つ、裕福な貴族もこの町、アデリーヌに邸宅を持った。


 『アデリーヌ学園』。復活した『ミョスレ学園』と二つの高等学舎があり、今年度から上級学府である『アデリーヌ総合上級学府』と言う二年制の専門の学部のある学舎も始まった。

 上級学府は、元々は帝都ブレにあった各々の専門学科をひとつにまとめた学校だが、『軍学校』は北東区の領軍敷地にある。


 そんな訳で今や、領都アデリーヌは学園都市の様相を呈して居た。


 領都アデリーヌの在るアンリエット男爵領は、サトウ山脈から玄武岩や大理石が採掘される。

現在、帝都から学師を呼び、地質調査を行って居る。

 金や銀も欲しいが、今は鉄鉱石が欲しいところだ。

 そして、帝国第二の穀倉地帯でもある。

 今年の秋は、稀に見る大豊作(アンリエットの方策が既に実を結んだのだ)で、穀物類の加工場の建設が急がれた。


 南側に町を拡張する計画で、施工は9月中旬に始まった。

 秋蒔きの小麦は、アンリエット領北部のじゃがいも畑等で行って居る。南部はじゃがいもやトウモロコシを作付けして居る筈である。


 そんな収穫に浮かれて居る頃、領主館に嘆願書が届いた。



◇◇◇

『我が村で現在、行方知れずに成る子どもが多発しています。ここ一ヶ月で四人、今年に入ってからは7人居なく成っています。

警らするにも何分、人手が足りず。どうか領軍をお貸しして頂きたく嘆願致します。【ピカード村村長ジャン=リュック】』


「アンリエット様、同様の噂が流布しております。何れも南部領境に近い町村です」

「ベルナールさん、そのピカード村って場所はどの辺り?」

 領主館の文官ベルナールはペルティエ子爵家の三男。帝城の文官であったが、『やらかして』領都アデリーヌに来たのだ。

 そのベルナールの指し示す地図の村はあの人身売買事件のあった南ミュロ領都『バルサザー』に程近い場所であった。


「では、領境の町村を中心に調査します。えぇーっとぉ」

「領主、5村と町は二つです。移動時間を入れて騎馬一個小隊で、4~5日で調査できます」

「は、早いですね。では早速、領軍警吏暑に手配をお願いです。……あたしは授業に戻りますね」

「「ハッ!」」



 五日後の10月19日の昼休み。

 領主館で、アンリエットは調査報告を受けた。


「やはり同様の行方不明者がどの町村でも有りました。今年だけで20人前後です。ワロキエ王国との国境近くの町ニェールが8人。後の村…ピカード以外は1~2名と言ったところですね」

「そのニェールって町迄、馬だとどの位で行けますか?」

「馬車で四日程ですので、急げば二日と思います。因みにバルサザーからニェールは馬車で二日です」

「では、騎馬二個大隊をニェールへ、一個大隊ピカードへ。村落は各々一個小隊。予備の兵として一個大隊をアデリーヌとニェールを結ぶ………、ここ、この村に駐屯させよ!この…「領主、クロケ村です」…クロケ村の大隊の一個小隊は各町村の伝令、連絡要因に成って貰う、………んんー、あたしも行くっ明日8時の出発。伝えてっ」

「何方かワロキエ出身の方は居ませんかね?」

「…あっ、先輩に居た!ちょっと聞いて来るー」

「アンリちゃん待ぁってええぇー」

 アンリ、フェーは学舎に走って行くのであった。

 そして、3年1組の教室の扉を開け、


「マリエル先輩居ますか?」

「うわっ黒銀姫!」「白雪ちゃんも居る」「白黒揃って何の用?」

「あのーマリエル先輩って1組ですよね?」

「そうだけど、今いないよー」

「何処にいらっしゃるか分かりませんか?」

「食堂かなー。多分」

 もう昼休みが終わりそうだ。


「あのー伝言頼めますか?」

「ああ良いよー」

 授業が終わったらマリエルに会いに来ると言う事を伝えて貰う様に頼んで二人は2年1組の教室に戻った。


 今日の三年生の授業は二年生より一時限多かったのだった。

 その時間、教職員室でアンリエットは、ワロキエ王国についてエミール先生に尋ねた。


「大きな産業は授業でやった通りです」

「石炭と鉄鋼、あと漁業、です。風俗的な事を知りたいんです」

「風俗?世俗的な…習慣ですか?」

「いいえ性的な習慣や嗜好な事です」

「ええ?そっち……、この国とそんなに変わらない…。や、確か、男娼とか、そう言うのもあって凄く享楽的なお国だと記憶してます」


「「男娼って?」」

「えええー僕が説明するの?」

「…で何ですか『男娼』って?」

「アタシが教えよう!」


 サラサ先生が事細かく教えてくれた……。アンリエットは真っ赤に成った。フェリシエンヌは、ちょっと分から無い様だった。




◇◇◇

 ピカードの村には、周辺町村の調査結果の簡単な概要と行方不明者の捜索を行うと言う内容の文書を、その村に向かう小隊の小隊長に持たせた。

 何故かマリエル先輩も行く事に成って居た。


「マリエル先輩、乗馬出来たんですね」

「こんなん、貴族の嗜みってゆうヤツですわ。ほんなら、行こか」

 このアンリエット領には人口一万を越える町が五つ在る。その内四つが南部だ。北部には只一つしか無い。

 人口五万のアデリーヌは領都だ。


 アデリーヌから徒歩半日の所に在る集落は7、合わせた所を仮に『領都圏』とでも呼称しよう。

 領都圏の総人口は約十万。五割近くが農民で在る。


 南部最大の町ニェール。人口二万の商業都市だと言う。貿易の町だ。



「男爵様、クロケ村です」

「野営出来そうな所…は?」

「先行って見た参ります。マリエ」

「おう、行くッス」

 ジーンとマリエが先行したのだが、「領軍に任せれば良いのでは?」と思った。


「ちょうど収穫を終えた畑が御座います」

「じゃ全軍に達して、『設営せず待機。あたしは村長さんに挨拶してくる」

「では、私めも……」

「(やっぱ、隊長も一緒じゃ無いとダメよね?)では、四人で…あ、ジーンさん達も。の前に……隊長さん『連絡小隊』を直ぐ出して下さい。昨日言った通り件の町村との連絡要員です。

 ここから一番遠い村迄馬車四日ですね?中継の村落が三つですからそちらは、四名で、ほぼ1日で連絡出来ると思います。忘れずに各騎士に『訓令書』を持たせて!」

「はっ」

 連絡騎士は各々の受け持ちの町村へと走った。


 大隊長フレデリト・ド・フロトンの兄は侯爵だ。

 二男である自分は、ほんの数ヵ月生まれるのが遅かったから侯爵に成れなかった。と、思っている。

 実際妾腹の子であるので成れなかったのだが……。

 「成れた筈だ」。フレデリトはそう言う男だった。


「じゃ、行きましょう」

 アンリエットはフェリシエンヌとジーン、マリエを従え、先に歩くのだった。




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