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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第二章。
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第40話 夏期休暇。



 フェリシエンヌの状態は、全快、とはいか無いが、普通に食事も取れる様に成って居た。


 アンリエットを襲った犯人は、領主就任の挨拶でアンリエットが言った「おまえ達、愚民にも責任がある」と言う言葉に怒った市民の一人であった。

 直ぐにその場で取り抑えられた男は、

「俺達が悪いンじゃ無ー。前の領主が悪いンだ!お陰で仕事は無ーし、家族もバラバラだっ」

と騒いで居たのだと言う。



 只の逆恨みだった。


 心配したノォーミク公爵…、何時の間にか、陞爵して居たのだが、その公爵夫妻が、領都アデリーヌに来訪したのは、殺傷事件のあった一週間後6月32日の夕方の事だった。

 ノォーミク公爵夫妻は公務の為、王城に滞在中だったのもあり、一週間で領都アデリーヌに来訪出来たのだ。


 父ユーゴは心配性と言う訳では無いのだが、愛娘が大怪我をしたのだ。心配するのは当たり前であった。

 だが、母親であるエレオノールは違った。


「良くやりました。それでこそ、王女の予備です」

こう言ったのだ。


「それは、あまりにもあんまりですわっ」

思わず、王籍の女性。王位継承第二位の貴婦人に対して言ってしまうジュリエットであった。


「ジュリちゃん、王族には王族の事情があるんだよ…」

宥めるナデージュであったのだが、彼女も彼女の思うところがあったのである。




◇◇◇

 七月に入り、二ヶ月の『夏期休暇』と成った。

 フェリシエンヌの容態がもう少し安定したら、静養も兼ねて『ノォーミク公爵領』に向かう事に成った。


「本当は一緒にノォーミク迄行く予定だったけど、事情が事情だもんね。私等、先に行くね。

 お大事にフェーちゃん」


 そして、ナデージュと学園長は『ヨルドの森』へと旅立ったのである。


 夏期休暇が一週間過ぎた頃、公務を粗方終え、領主館の職員に後の仕事を引き継いだアンリエット。


 フェリシエンヌの状態も落ち着いた。

 ところで、アンリとフェーの居宅は、『アデリーヌ学園』の新学舎に隣接…、寧ろ学舎の西側部分の領主館の三階なのだ。


 7月8日の早朝、アンリエット達が領主館を出た所に数名の少女と女性騎士が立ち塞がった。


 ルシール皇女と見習いの衛士コレット達、そして、ジュリエットだ。


「わたくしだけ、冬にアンリさんのお国に行けなかったのですわ。ですから、この夏は御一緒させて頂きたく思いましたの」

「夏も行くって言ったわよね?アンリさんフェーちゃん」

「皇女殿下が行くところ、衛士として当然御守り致します」

 一挙に旅の仲間が増えてしまったのだった。




◇◇◇

 こうして、大きめの馬車に乗ったフェリシエンヌ親子とアンリエット、ルシール皇女にジュリエットと言った面々は、ファテノークの騎士団五名とジーン、マリエ、それと皇女の見習い騎士五名よ隊長リアムに守られ、ファテノーク王国のノォーミク公爵領に向かう旅が始まった。


 道中、三日間は旧北ミュロ領の農村を見て廻った。

 思った以上に農作物の状態も良い様子で、行く先々で大歓迎されたのだ。


 歓迎会は、「急ぎの旅であるので…」と、辞退したのだが、それでも歓迎され、少々予定より遅くにサトウの町に着いたのだった。


 盗賊の類いに会う事は無かったのだが、一度魔獣の群れに遭遇した。


 初めての実戦を体験したコレット達皇女付きの騎士団の二人が怪我を負った。

 どうやら、毒持ちの魔獣だった様で、サトウの町の診療所に駆け込んだ。


「5日程、安静にと言う事です」

コレットは本当に申し訳無さそうに言ったのだった。


「王都で、2~3日滞在する予定だったんだし、5日位なら特別、問題無いよね?」

 そう言って、アンリエット達は王都シルヴァーヌに滞在したのである。




◇◇◇

 王都シルヴァーヌに着いて、王城に行く前に南東区の貧民街に立ち寄った。


 新しく成った『貧民街』は広場も以前よりも広く、住宅棟も白く真新しかった。


 管理責任者であると言う中年の女性が言うには、現在五千人の住人が居るとの事だった。

 最盛期は八千人を超えて居た。と言うのだが、就職等で今の人数に成ったのだと言う。

 何人かの学師は、隣国の旧ミュロ領で教職に就いたのだと言う話し…、ってそれ領都アデリーヌの事だった。


 こうして、アンリエット一行は、シルヴァーヌ城に到着したのである。




◇◇◇

「うわああああーーーっ!」

 夕焼けに染まるシルヴァーヌの町並みを見て感嘆の声を上げるジュリエットである。


 黒い道と真っ白な家々。

 御伽の国に来たのかと思うジュリエットであった。

 そして夕日を浴びた幻想的なお城を見て、ため息を付くのだった。


「…なんて、なんて美しいのかしら………」

 「そうでしょう?」と、まるで自分のお城の様に自慢するルシール皇女であった。


 コレット達皇女の騎士も同じ感想であったのは、言う迄も無く、只々、ため息を付くのであった。


 少し遅い晩餐を国王代理であるライアン…、アンリエットの父と公爵夫妻と会食したのだ。


 ジュリエット・ド・テター男爵令嬢は、物凄く緊張して居た。

 王族と、考えてみたら皇女殿下との晩餐会であるのだ。

 貧乏男爵の子女、と言っても三女である。


 はっきり言って、そこら辺の平民と同格なのである。

 そんな自分が、雲の上の方々と同席して居るのだ。

 ジュリエットは正面の席に着く伯爵令嬢コレットを見た。

 案の定、彼女も「ガッチガチ」に固まって居た。


「帝国の方のお口に合うかは、分から無いですが、子羊のソテーです。如何でしょうか?」

 国王代理が、手ずからジュリエットのお皿に取り分けたのだ!

 もう、味なんて分から無い。

 とうとう目を回して倒れ込むジュリエットであった。



「…ん。ここは何処ですの?」

 目を覚ましたジュリエットは、豪華な天蓋付きのベッドに横たわって居た。

 起きた御客様に気付いた侍女。


「お目覚めですか?ジュリエット様」

「『様』って…、わたくし、アンリさんのお城に来て居たのでしたわ………。

 あのー、わたくしどうしてここに?」

「ジュリエット様は、お夕食の席で気を失われたのです

 御加減は如何で御座いますか?」


「…特に何とも………。わたくしとした事が、トンでも無い迷惑を掛けて仕舞いましたわ」

「いいえ、大事無いのであれば、まだ、朝には早よう御座います。もう暫くお休み下さい」

 侍女に何度も謝るジュリエットであった。


 翌朝も王族と、朝食を取った。未だに緊張はしているのだが、昨夜程酷くは無かった。


 食後、乗馬と体術の鍛練を行った。

 コレット達はファテノークの騎士団と剣術だ。



 ファテノーク王国の騎馬隊、実は以前、エミールの言った様に弱い軍隊等では無かったのである。


 元々が、騎馬民族の国の兵士達なのだ。一騎当千と言うのは大袈裟だが、他国の騎士団よりも精鋭であるのだった。

 そんな騎馬隊の鍛練を受け、コレット達は少しではあるが鍛えられたのだった。




◇◇◇

 次期女王が、国に帰って来たのだ。

 二日目の夕方。宮中では、パーティーが行われた。


 ジュリエットもだが、コレット達も帝国の貴族の子女で在る。

 当然、参加させられた。


 サトウの町で静養している二人以外の三人はとジュリエットはドレスを持参何てしていない。

 侍女数名が、四人を衣装部屋に連行した。

 ルシール皇女もドレスの持ち合わせは無かったが、最初からアンリエットに借りる予定だった。




 こうして、帝国の皇女以下四名は大広間に入って行ったのだった。




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