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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第二章。
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第39話 夏至祭り。



 『教員資格』を持つ者、40余名と資格は無いが、それなりに学力のある12才以上の子ども80人を『幼年学舎』の教員として採用した。

 資格の無い80名は、『仮』の教師としての採用である。


 午前中は、幼年学舎で教鞭を取り、昼過ぎからは『ミョスレ学園』で学ぶのだ。

 各々の学力にも由るのだが、ほぼ全員がミョスレ学園の一年生に成った。

 18才の一年生とかも居るのだが、まあ、この際仕方無い。

『高等学舎』で四年間学んだ後、『上級学府』での教員過程を経て教員資格を得れば良い。


 不採用に成った者達は、各々郷里に帰ったのだと思われたのだが、郷里に仕事があろう筈も無く、領都アデリーヌに残る者が大半であった。


 と言うのも今、アデリーヌの町は建設ラッシュなのだ。

 大工や石工、人員がいくらあっても足りないのである。



◇◇◇

 六月。

 学年末試験が終わった頃、アンリエット領、北の農村よりじゃがいもの収穫の知らせが届いた。

 大収穫の知らせだ。

 他の根菜も順調であるとの事であった。

 各村々に連作の弊害を指導して居た事もあって、おそらく各々の畑では、別の野菜を植えた様だ。

 休ませる畑は牛や放牧地として、利用し、次の作付けび備えている。



 そうして、卒業式の日に成ったのである。




◇◇◇

 コレット・ド・コルネールは伯爵令嬢である。


 だが、(くだん)の事件で純潔は奪われた。

 婚約者が居たのが、当然婚約は破棄された。

 コレットは、その頃から剣術に勤しむ様に成った。

 師事したのは平民出身のリアム・ロイノア、現在ルシール皇女の警護隊長である。


 同じ境遇の女子五名で剣術を習って居るのだ。


 卒業式は滞り無く終わり来年度、九月から二年制の上級学舎に上がる者、自分の領地に戻る者、このアデリーヌの町で仕事をする者、と、各々の道を歩むのだ。

 コレット達はアンリエット領の領軍に就いたつもりだった。



 そう、「つもり」だったのである。




◇◇◇

 卒業式の翌日、6月25日は夏至祭り。

 朝から町は賑わっていた。


 すっかり定番に成ってしまった白と黒の薄焼きクッキーの水飴『白黒姫の水飴』。それと『白黒真珠の姫クロワッサン』である。

 その屋台も出ていた。


 ジュリエットとアン=マリー先輩は『じゃがバター』の屋台で頑張って居る。


「ジュリエットさん、貴女貴族なんですから、その様なお仕事は如何なものかと…」

「ルシール殿下、御言葉では御座いますがわたくし、貧乏男爵家の三女ですの。格上の貴族家に輿入れ出来る可能性は皆無なのですわ。

 わたくしは自活しなければなら無いのですの。その為には今出来る事を精一杯やりますの」

「その決意はとても素晴らしい、とは思いますが、勉学の成績も良いのですから…。

 その、教師とか、研究職を目指しては…」

 ジュリエットはいったい何処に向かっているのだろうか?


 ルシール皇女は警護の衛士達と町を歩いていた。

 衛士長はフェリシエンヌ大好きーのリアム・ロイノアである。

 そして、リアム以外の衛士は皆女性であった。


 新入りのコレット先輩達である。

 コレット・ド・コルネールは混乱して居た。

 まさか自分達が皇女付きの衛士に成ろうとは思ってもみなかったのである。


「女性である皇女殿下に女性の警護が付くのは至極、当然であろう?」

リアム衛士長にそう言われ、「確かに…」と納得はしたのだが、余りにも畏れ多い人事に恐縮しているのであった。


 そんな先輩五人と歩くルシールは、ある屋台の前で止まるのであった。


「これが、ジーンさんの言っていた『水飴』ね?本当に白と黒のクッキーなのね。コレットさん達も御一緒に食べてみません?」

「ハッ、御相伴に預かります!」

「…少し、肩の力を抜いたが良いのに…」

と、リアムは言うのだがコレット達には聞こえて居ない様子である。


「もしも私が襲われでもしたら、今のコレットさんでは何の役にも立たないですよ?だって、隊長さんの声も聞こえていない様ですし…。

 コレット・ド・コルネール!しっかりなさいっ!!」

「ハッ!」

「………もう、生徒会長をやってた頃の堂々としたコレットさんに戻って下さいね?」

 立場が変わると人って変わる物だなあ。と思うルシールであった。



 夏至祭りの賑やかな町を歩く大男が居た。


 身長190センチ超えのアデラール生徒会長だ。

 そしてその生徒会長に肩車されて居るにはフェリシエンヌだった。

 若干、赤い顔のアデラール。

 美少女を肩車しているのだ。顔も赤く成るのも無理は無い。


「フェー…ちゃん、見つかりますか?」

「会長さん!アンリちゃん発見ですぅ」

と言うか兎に角、目立つのだ。


 190超えの大男に肩車される白雪の美少女だ。

 アンリエットを探すよりも、アンリエットに見つけて貰う方が早いのでは…、と思うアデラールであった。


「アソコッスね?ンじゃ行って来ます」

 マリエは、ジーンと食べ歩きをしているアンリエットの側に行ったのだが、一向に戻って来ない。

 フェリシエンヌはもう一度アンリ達を見ると、なんと三人で串焼きを頬張って居るのであった。


 結局、五人で食べ歩きをする事に成ったのである。




◇◇◇

 そんな喧騒の町から離れた学園の生徒会室で、書記のマリエル・ド・ルブックと会計ロイク・モンダーは今年度の予算を計算し直して居たのだった。


 前生徒会…、鉱山奴隷に成った前生徒会執行部の使い込みの洗い出しをしていたのだ。

 クラブ活動や行事の予算を隠す事も無く使って居たのだ。

 『洗い出す』手間も無い程に杜撰だった。


 今と成っては請求する事も出来無い金であるのだ。

 しかも来年度の予算分配の参考にすら成ら無い、と言う代物である。

 それでも、まあ何とかまとめる事は出来た。

と言う訳で、


「ロイクッチ、祭りに行くでぇー」

「え?今からですか?」

「当たり前田のなンちゃらやっ。金は持っとるかー」

「持っていますが、ハッ先輩、俺が出すんですかぁ?あんたホントに貴族令嬢?」

 そんな二人がアンリエット達に合流するのは早かった。

 とてつも無く目立つ会長とその上には、これまた目立つ白雪の美少女が乗っかって居たのだから……。


 こうして、七人で町を練り歩くアンリエットであった。

「今度は先生とお祭り、歩きたいなあー」


呟いたアンリにフェーは言うのだった。

「乙女ねぇ、アンリちゃんってば」


 アデラール会長の後ろで隠れる様に小さく成ったアンリエットの顔は夕焼けよりも真っ赤に成っていたのであった。



 いろいろな屋台を廻った。


「領主様、お代は結構ですよ」

「ですが、貴方も商売でしょう?あたしは客です。対価はきちんと払います。余り気を使わないで下さいね?」


 何軒かに必ず只で商品を渡して来る屋台の主人が居た。


「お気持ちは有難いと思います。

 ですが、この領地の財政が安定する再来年度には、然るべき税率に成ります。あたしは民に対して公平で在りたい。そう考えて居ます。

 ですので、どうかあたしも他のお客様の様に扱って下さいね」

そう、アンリエットは言うのであった。



「今度の領主様は、とても出来た御方だ」

「ホントに12才なのか?」

と言う屋台の店主や町の人々の評価はアンリエット人気を益々不動の物として行くのであった。




◇◇◇

 そんなアンリエット一行の『買い食い』は夜も続いた。


 一人の男が、アンリエットの後ろから近付いて来た。

 アンリエットも気が付いたが、いち早く気付いたのはフェリシエンヌであった。


(間に合わない!)

 フェリシエンヌは咄嗟に自分の身体をアンリと男の間に割り込ませた。

 刃渡り20センチ程の包丁で、アンリエットを襲ったのだ。


 フェーの機転でアンリエットは無傷であった。


 しかし、フェリシエンヌはそうは行かない。左の脇腹に包丁が刺さったのだ。


 見る見る、包丁を中心に赤い血で染まるフェリシエンヌの制服。

 血の気の引いた顔でフェリシエンヌは言った。


「…良かっ、た。アン、リちゃ、んが無事、で……」

 アンリエットは全力で治癒の『亜法』を使うのだった。

 だが、『治癒亜法』は肩凝りや軽い捻挫を癒す事は出来ても、傷やましてや深く刺さった刃物傷等、治す事は出来無い。


 騒然とする町を全力でフェリシエンヌをおぶったアデラールが近くの治療院に走った。



 縫合を終え、まだ顔色の戻ら無いフェリシエンヌの横たわるベッドの側でアンリエットは只、立ち尽くすのであった。





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