第3話 黒銀の姫と白雪の姫。
◇◇◇
教壇で椅子に座っいるボブっぽく切り揃えた黒髪の若干吊り目ので背の高い女性は、1年1組の担任で学年主任のサラサ先先生。
先生、面倒臭いなー思っている。らしい………。
さっきから質問をしたい生徒が挙手すると「あぃ」「うぃ」「どぞ」と当てている様で挙手した者を見ていない。
アンリエットへの質問が、既に質問の体から逸脱していた。
最早、少年のリビドーに留まるモノは何も無い。
「僕もオセロ好きですから、今度の休息日に遊びに行っても良いですか?」
「次の休息日、我が屋敷で入学祝いのパーティーを行います。お二人で来て下さい」「今日の帰り遊びに行きませんか?」「お茶を御一緒したい」
「オマエ等『質問』と『欲望』履き違えンじゃねー!ったく欲望に忠実過ぎンがろ。アンリエットさんの質問コーナーはお仕舞い。っと。次、白…。次の方。」
「はい、私、『フェリシエンヌ』と言います。アンリちゃん、…、アンリエットさんには、『フェー』と呼ばれています。アンリちゃ…アンリエットさんとおんなじ『ファテノーク王国』の出ですが、アンリちゃんの町じゃ無くぅ、生まれ育ったのは『ノォーミク領』の『領都ノォーミク」です。領都と言っても小さい田舎町で名産物は、羊毛と羊のお肉と羊皮紙と温泉です。でもぉ、アンリちゃんとは赤ちゃんの時からお友達で、夏期休暇はアンリちゃんがわたしの町で過ごして、冬期休暇はわたしがアンリちゃんの町に行って、いつもいっしょに過ごしていました。帝都に来てから四年間はアンリちゃんの帝都のお屋敷でいっしょに住んでいますぅ。わたしもアンリちゃんといっしょでぇ、美味しいお魚が食べたかったですがぁ、塩漬けや干したお魚とアンリちゃんをいっしょに食べて……アンリちゃんといっしょに食べたいです。おわりますぅ。」
「お前のアンリエットスキーは分かった。質問無ければ…」
「はい」「おう、どーぞぉ」
「質問ですが、フェリシエンヌさんは『アンリエットさん』が好きなのですか?それとも『女の子』、が好きなのですか?」
「女の子?好きですよぉ。でもアンリちゃんが好きでぇす。」
――――百合キタ―――――ッ!
「ドンッ」と言う音が教室を揺らした気がした。一部の学友達には………。
そんな教室の空気の中只一人、思考が別空間にトランスしている男子生徒がいた。『ロイクくん』である。
(あぁ、アンリエットさん、良い声だなぁ入学式の答辞の時も思ったけど、『透き通る様な声』ってああ言うのを言うんだろな。お顔も可愛いし綺麗だしっつか、美人だし、何か醸し出す威厳?じゃ無いな、雰囲気?やっぱお姫様って感じなのに力強くて儚げで…、ホーント先輩達が言ってた『黒銀の姫』とか『黒銀の翠玉姫』とか『白黒真珠の黒』後、何かいっぱい言ってたなぁ。俺、普通に『アンリエットさん』って呼んで良いのかな?それよか『アンリさん』『アンリちゃん』……ちゃん呼びはダメ…かな、やっぱ、王女様だし俺なんかの平民がお声を掛けるなんて……ってさっき声掛けちゃったじゃねーか!やっべードキドキして来たっ。あ!こ、これって恋?恋!身分違いの決して叶わぬ恋、恋なのか?)「―――うわあー!」
「ロイク。うるさい。いい加減にしねーと即、退学にすんぞ?」
「す、スイマセン、以後気を付けて妄想します」
「もう質問無いなー。」
「はい」
「ルカちゃん…くん。」
「フェリシエンヌさんとアンリエットさんは御姉妹じゃないの?」
「違います。でも姉妹です。」
「え?」
「ホントォの姉妹だったらいいなぁって思ってます。」
「あーそう言う………」
「はいっ!」
「サラサ先生どぉぞぉ(フェリシエンヌが挙手した先生に言いました)」
「ルカくんはどうして可愛いのすかー?」
「え!あううぅ。。。」
ルカくんのお顔が真っ赤です。サラサ先生はなんか勝ち誇っています。
自分に素直な良い先生です。
「白…、フェリシエンヌの次、自己紹介」
「はい。あー、ヨルドの森、フェルディナンの子『ナデージュ』だ。宜しく頼む。特技は『魔法』かな?以上!」
フェリシエンヌの次に自己紹介をしたのは、長い白っぽい金髪で背の高いスレンダーな体躯のお胸の可愛い女の子だった。
「質問無ければ」
「はい」「どーぞ」
「『魔法』って言いましたが『亜法』じゃ無く、本物の『魔法』ですか?どんな…、『攻撃魔法』とか出来るんですか?」
「あ、はい『攻撃魔法』出来ます」
「「「「うおおおおおー!スッゲーーー!!」」」」
「例えばどんな『魔法』?」
「例えば…ですか、小樽に入ってる水を凍らせて、凍ったら攻撃対象の人に投げます。すると、死にます。当たり所によっては…」
「…なんかそれ『魔法』じゃ無い。『炎の魔法』とかは?」
「あぁ、有ります。攻撃対象者の自宅へ行って、『火魔法』を………」
「もう結構です」
「質問無ければ次の…」
「はい質問っ」「ぅいどーぞ」
「あのー『森』って仰っていらしたので、ひょっとしてナデージュさんは『長命種』の方ですか?」
改めてナデーシュを見て皆気が付いた。
少々、耳の形…耳自体が長いのだ。『長命種』の特徴の一つが『長耳』なのだ。と言われている。
「はい『長命種』です。それと言い忘れてましたが私、アンリエットさんの国の出身、に成るのかな?『ヨルドの森』は『ノォーミク侯爵領』つまりフェリシエンヌさんの所の隣り、南側にある森ですから。」
『長命種』って薬の様なお酒の様な薬の様なお酒かな?と一部の生徒は思考停止していた。
「長命種の人、初めて見たよ」
「凄い綺麗」「髪、サラサラぁ」「眼福、眼福」「1組美少女率高けー」「長命種って都市伝説じゃ無かった」「『アンリ』って呼び捨て…とかオレ、無理っ」
色んな囁きがあったが、概ね「初めて見る」と言う感想が多い様だ。若干、関係無い不遜な囁きもあった様だが………。
「そんなに私の様な人種は珍しいのかな?帝都でもけっこう見掛けましたが………。この学園にもいらっしゃいますよ?ね、サラサ先生」
「ン、あーアレなー。ってオマエ、言ってよ。」
と殿下先生に振る学年主任。
「私がぁ?何かヤなんですよー言うの」
と小声で言ってる副担任殿下。
「って、入学式も今日の始業式でも長々喋っていただしょう。あの人…学園長は何処かの森の族長の子息です。つまり『長命種』の方、です。」
―――――エエエエエェェーーー!
「ほぉらーーーあ、だから僕言いたくないんですよぉ先輩。」
「アタシだって嫌だからオメーに言って貰ったンだろが、だいたい『長命種』っぽく無いンだよあの人。美しい長命種さんって言うイメージを根本から破壊するんだもん!」
何とも大人気無い会話をしている先輩先生と後輩先生であった。
新一年生の長命種に対するイメージが、見事に打ち砕かれた瞬間でもあったのである。
◇◇◇
始業式の日は授業は無い。自己紹介の後は、明日からの予定。時間割や他の説明で終わる。
「『白黒真珠』ちゃん達って1組だったよな?」
「『黒銀の姫』ちゃん凛々しかったよね!」
「入学式の時の答辞だね?」
「そうそう!」
「『白雪』ちゃんって、次席だったらしいぜ入試。」
「俺さ、『白雪の姫』ちゃんのポヤポヤ感が好き。」
既に各種渾名は学園中に広がっていたのである。




