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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第一章。
32/89

第31話 白亜の町の真珠。その4。


◇◇◇


「あなた方もヴァレリーの帝都から、ですか?」

と、宿の主人は言った。



 ここの町は『サトウ』と呼ばれる町である。が決してサトウと言う名では無い。

 単に『サトウ山脈の中腹』に在る町だからそう呼称されるのだ。

町の住人は、もうメンド臭いからそれでいいや的に成ってる様だ。


 この町は、非常に変わった町で、家屋が段々畑の様に山の岩肌に沿って建てて在り…、ひょっとしたら、岩を削って造ってある様にも感じる造りである。

 黒っぽい玄武岩の家屋が並んでいるのだ。

 東に登る道の南側、つまり右手に在り、真っ直ぐに南の外れに行くと、広い滝があるのだが…。今回、町に立ち寄った旅人は誰一人、見学していない。


 その町の『王家御用達』と書いてある宿に泊まるルシール一行である。

 道中二度、盗賊らしき集団を見掛けたが、騎兵隊を見たのだろう。遠目に見送っていた。


 だが、この町に着く前日に北ミュロの残党らしき集団に襲撃を受け、騎士が一人傷を負ったのだ。

 矢傷であった。処置をしたが今朝に成り、膿んでしまい熱が出た。

 着いて直ぐ町の診療所で診て貰い「2~3日安静に」と言われたのだった。


 着いたのは、1月8日の夕方。

 宿の主人の後ろに絵が飾ってあった。


「あら!可愛いアンリさん。今より可愛いわぁ!」

「お客さん方も姫様の御友人ですか?いやあ、本当、ウチ等の姫様は他所の国に行っても人気なんですねえ。新年の挨拶の歓声なんてこの町まで聞こえる位です。」

「聞こえる?それは凄いです。私の国でも凄い人気なんですよ。フェーちゃんも人気です。特に兵士達にねぇー」

 と、衛士達を見ながら言うルシール。


「そこの兵隊さん方用って訳でも無いですが、有りますよ。姫様とフェー様の御二人の姿絵。ほら、そっちの食堂の…」


ウオオオオオーーーーッ!!!

「しゅ、御主人、あの絵、売っては繰れまいか?」

 分隊長は興奮気味に言ってしまった。


「あっはっは。御客様。あれは売れません。ですが…。。。」

 宿の主人はカウンターの下から、B5大の二枚の絵を出して言った。


「買いますか?」

 二枚の絵は寸尺を小さくしたアンリエットとフェリシエンヌの絵。それとアンリエットの絵だったのだ。


 一人、熱の衛士を宿に残し、「3~4日してら様子を見に来るので」と宿の主人にお願いし、翌朝早く宿を出た。

 野営道具一式も預かって貰えた。そう言う客は多いそうだ。



 遅い朝日が良く磨かれた黒い玄武岩に反射して、光が虹の様に見えた気がした。


「まるであの子の髪の様ね。」

 と呟くルシール皇女だった。




◇◇◇


 ナデージュの朝は早い。

 井戸の水で「ちべだっ!」と言い顔を洗う。その後は、朝の鍛練だ。


 最近、ジーンとその父アレクセイ。マリエと父ゴーティエ達の訓練にアンリとフェーも参加していた。

 そこに、ナデージュも混ぜて貰って居る。


「長命種って種族は、やはり筋肉着きにくいねえ。」

「ゴーティエ、マリエと比べちゃあいかん。」

「「それ、筋肉じゃねー!」」


 ハモるナディ、アンリ。


「じゃあ朝食ですね。」

 とジーンは言い、朝食前にアンリ達とナデージュを浴室に案内するのが日課と成っていた。


 実は、温泉が出るのだ。源泉がぬるいので、沸かせばいい湯である。が、そんな事はどうでも良かった。


 フェリシエンヌである。

 別にフェリシエンヌ自身問題だって事では無い。


 いや、無い訳じゃ無い。

 アンリエットとナデージュは同じ見解を持っているのだ。

 最近に成って気付いてしまったのだ。彼女の胸の膨らみに………。


((油断したぁー。私 (あたし)より幼く感じていたからてっきり……。くっそー!))



◇◇◇


 その日の夕方、ルシール達は王都シルヴァーヌに着いた。



 坂道は、踏み固めた土の道がいつの間にか玄武岩のタイルの道に成り、それがそのまま市壁へ続いている。


 市壁は白かった。大理石のタイル張り、であろうか?

 そして近付くにつれ城の塔が見え初める。

 その塔も白い。


 西門に入ると、門兵がヴァレリー皇家の紋章を見、乗って居るルシールを見た。

 そして尋ねた。城の姫様とその御友人に用か?と「そうだ」と答えると、「やっぱりフェーちゃん勘が冴えてるねー」と言いながら顔を引っ込め同僚に何か聞いている様子。再度顔を出して言った。


「何日か前にフェーちゃん…フェリシエンヌ様よりお預かりした伝言が御座います。えー口頭にて失礼します。『お天気だったら言ってね』…。あれ?ここは言わねぇで良かったんだ。『西門から南門へ向かって下さい。そこから王城へ向かわれる様に!』以上で有ります。」


「こちらの外苑の通りを御使いください」

と門兵は騎兵の先頭を案内した。



 地面は町も同様、黒い方塊状の石が帝都の通りの焼き煉瓦と同じ様に規則正しく並ぶ道であった。

 市壁の内側の壁も白い。並ぶ家屋や建物も白であった。

 時々黒又は灰色が混じる感じに並んでいた。

 道幅は、馬車二台が通れる程度の幅である。


 そんな町並みを眺めながら馬車に揺られ、南門の前広場に着いた。

 大通りに向きを変え「はっ」と息を飲むルシール達。

 黒っぽい大通りの向こう正面に白亜の城が建っていた。


「なんって、荘厳なんだ!」

 分隊長が呟いた。


「美しい」

 大きい城では無いが、その存在感は…。表現出来無かった。

 侍女のジャンヌが、白い城を見て、「まるでアンリエット様。」と言うのである。


「あら?アンリさんお髪は黒銀よ?」

「……そう、なのですが、、、アンリ姫様のお優しさ、壮大さ?と言いますか…………。すみません姫様。言葉が難しいです。」

「優しさと王者の風格と、畏怖……かしらね?ジャンヌ。」


「そうだと思います。アンリエット姫は偉大な王に成られます。きっと………。」

 その横で「フェリシエンヌちゃん。。。」と呟く分隊長。



 「すいませーん!資材の邪魔に成るので進んでくれませんかああああーーーい!」

 見入って、移動せず留まって居たルシール一行に大声が掛けたれたのだ。

 新年早々何の工事か尋ねると、「今月中に南門近くの役場と近隣の商店を移転する」と言うのだ。

 詳しく聞いた。


 ミュロ領の難民が増え、今ある建物では収まり切れなく成って、集合住宅を作る事に成った。との事だ。

 『貧民街』の拡張計画を前倒しにする。と新年の挨拶で国王代行閣下が宣言したのだ。


 貧民街の拡張…………。意味が解から無い。

 貧民街は貧民が勝手に住み着く者が集まって出来た場所の筈。

(まあ、後でアンリさんに尋ねよう)

 とルシールは思うのだった。


 そして、気が付いた。

 すっかり忘れていたのだ『先触れ』を出す事を。

 分隊長を呼び、急いで出すよう言った。


「昨日、絵を何枚買うか悩んでおりました。すっかり抜け落ちていました。」

 と言うが早く、馬を蹴って行ってしまった。


「隊長が行っちゃって、姫様の先導どうすんだ?」

 他の騎兵が口々に言うのであった。


「フェーちゃん達に会えるんだ!」

――――それだけの為に俺は走る!分隊長はそう呟きながら駆けていたのだった。



◇◇◇


 大通りをゆっくり進む。


 そして、扇状の広い場所に出た。

 帝都の中央公園の様な場所なのだろう。

 通りの黒っぽい玄武岩では無く、広場の足元は白茶の煉瓦敷きに成っている。

 その扇の持ち手側に、白亜の城よりその公園の大きな日時計の前にバルコニーが突き出ている。


(新年の挨拶はここでやったのねアンリさんは。)

 そして、馬車はバルコニーの下奥に入り停まる。


「一足先に会えるかもって思ったのにっ!」

 分隊長さんだった。


「遥々ようこそおいでくださいました。私、ボドワンと申します。では、案内致します。」


「では、御召し物等、必要であれば、何なりと………。」

「いいえ、このままで結構だと思いますので。」

 控えの間に案内されたルシールはドレス等の礼服に着替える様に気を利かせたのだろう。と思ったのだが…、


「いえ、御客人をお待たせするのは、そのっ、申し訳無いのでありますが、王太女様方は、湯浴み中と…。。。」

「はあ?」

 隣国の皇女殿下が御立腹。と思ったのであろう衛士ボドワン。更に恐縮萎縮して、

「うう、馬、かけっこにむちょおぁ…。乗馬に夢中に成られ全身泥と汗にまみれ、やむ無く湯浴みと成りましたっ!以上で、で、あります!」

「…あ、なる…。あり得ますねアンリさんなら…。じゃあ待ちます。」


 失礼しました。と下がるボドワンであった。

 暫く後、謁見の間に通されたルシールは、学園の制服であった。友人として来訪した。と言う意識表示であり、友人で在り続けたい。と言う思いでもあったからだ。


 そして、玉座の横に立つアンリエット達も思いは一緒なのだ。と思ったのだ。



 事実は知らない方が幸せである。

 急いで着替えるのにドレスはメンドー。

 そんな理由で、制服姿だったと、後で聞いたルシールはなんとも落胆したのは後の話。


「急な来訪を心良く迎えて頂き私、ヴァレリー帝国第二皇女ルシール、恐悦至極に存じます。そして、…単純に遊びに来たんです。アンリさんフェーちゃん…。なんです。なんでナディーさん迄って、学園長先生までえええ!?」


「……まあ、ウチの娘よろしく。ね?ルシーちゃん」

 国王代行ライアンは言ったのだった。


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