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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第一章。
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第29話 白亜の町の真珠。その2。


◇◇◇


「お兄さんみたいなお姉さん、いませんかぁ?」

「あ、フェーちゃん、お姉さんみたいなお兄さんならいるよー!」

「あ、姫様だ!」

「アンリちゃん!」

「「オセロキターーーー!」」


 木造二階建ての仮住居が並んでいる。

 ここは、王都の貧民街。ではあるが、服装はその辺の町の子と大差なく悲壮感も無い。

 他との違いは、親が仕事していない子と、身寄りの無い子どもが居るってだけ…。

 そして、隣国の北ミュロ領からの難民も住み着いている。


 『炊き出し』は、正方形のこの広場で行う。

 ここは子ども達の遊び場でもある。

 仮住居はそこを囲む様に二重三重に建てられていた。


「案内するーーー!」

 子ども達に連れられ炊き出しのテントへ行くアンリとフェー。


「昨日、フェーが、ナディー達が『只で泊まる』って言ってたからここだろうと思って来たんだ。」

「学院長先生と昨日の日中、宿探したんだ。どこも空いて無いって言われてね…。」

 テントの中で、ナデージュは、おばさん達に混じって、パン粥をよそって手渡ししている。


 学園長は、次のパン粥作成中だ。


「途方にくれてた訳じゃ無いけど、この方(と指をさす)が、今日手伝うなら、ここ泊まっていいよ、ってね。」

「あら、あんた姫様とフェー様の知り合いだったのかい?」

「はい、学園の友達です。」

「へえぇ、そんな偶然もあるんだねえ。ちょっとアンタ等、このお姉ちゃん姫様の友達ダってさー!」


「ええ!おにーさんじゃなかったのーーー!?」

 学園長とナデージュは炊き出しが終わったら、出発するのだと言う。

 只、積雪が多い場所もあるので、どのルートでヨルドの森迄行くかで、迷ってると言うのだ。


「じゃあ、炊き出し終わったらお城に来てね。」

と言い残し城へ戻った。



「おとぅ様、ヨルドの森へ行くのにぃ何処通って行けばいい?」

「フェーが行くの?」

「違うよぉ。」


「…おまえ、まさか…「ちげぃーよ」…。」


「…そうだなー一端、ノォーミク湖迄行った方が安全だと思うが、一度サトウ伯爵に聞いてみた方が良いかもだな。」

 パーティーで名乗ったロイクと言うのが、ナデージュと言う名前の女の子だと後で知ったユーゴであったが…。

 「驚いたよ。女の子かー、女の子。ホントに女の子?」とちょっと半信半疑なフェー父だったらしい。


 ノォーミク夫妻とフェリシエンヌがサトウ伯爵邸に行く事に成ったのだが、フェーが渋い顔だ。


「あそこの息子達()ぉ、しつこいから嫌だなぁ。」

と言う事で、アンリエットも同行。

 当然だが、侍従も付いて行くので、ジーン、マリエとマリエの父でありユーゴの侍従ゴーティエも行く事に…。

ナデージュ達が先に城に着く様なら、待っていて貰う様頼んでサトウ伯爵邸に行った。



◇◇◇


 サトウ伯爵邸に着くと、居間に案内された。

 当然、家族揃って出迎えられた。


「用向きに付いては先触れに託けた通り、娘の先生と友人がヨルドの森に行くのだそうで、そちらの領地を通り向かうのが良いか尋ねに来ました。」

 ユーゴがそう言うと、ソファーの向かい側に座る伯爵は予め用意していた地図を広げた。


「確かにうちの領を抜けて行くのが距離的には近いですが、隣のタクァーシィ領との領境のタクァーシィ川に掛かる橋の橋脚が一本流されたか折れたらしく。また崩落したと昨日到着いた我が領の商隊から報告を受けました。

 お城には今朝、報告させて頂いております」

「そうなると……ぉ、あった。上流のこの橋迄行く必要があるのか…。」


 考え込む公爵と伯爵。フェーもアンリも地図を覗き「んんー」と唸る。


「ところで積雪の案配はどうですか?ウチ(ノォーミク)は去年と比べ多いですね。そちらの…………。」


「アンリエット姫様、フェリシエンヌ様、うちの若様方がお呼びするよう申し使えまして…」

「理由は?」

「は…え?」

「何故、あたし達がそちらに出向く必要があるのか。の理由です。」

「はい、大人の話しに混ざっても邪魔に成るよ。と…。」

「では、伝えて下さい。『貴方等こそあたし達の邪魔をするな』です。一語一句正確にお伝え下さい」

 ちょっと、アンリエットは怒っている。


「姫様、フェリシエンヌ様。うちの愚息共の非礼、御詫び致します。」

「伯爵様ぁ、それは良いので、話しを進めましょぉ」

「仰る通りで…。で、我がサトウ領は先の商隊から例年の降雪と変わらず。そう聞いております。それと、川の水量も例年と変わらない、と。」

「んー、学園長殿、連れてくればよかったなぁ。」


「では、わたくしめが、学園長様を…。」

と、ゴーティエは、居間から出たのだった。


 話しは行き詰まってしまった。



「先程、『また崩落』と言いましたが…」

「ええ、昨年の夏に川の増水がありまして…、その時、互いの領地の人足達で復旧作業を行ったのですが、直ぐに秋の収穫が始まり、12月初旬に仮の橋脚で通れる様にと…………。」


「あのう旦那様お話し中、誠にすいません。若様方が御二人を解放する様にと…」

「アンリちゃん良い?伯爵様、申し訳無い…。マリエ姉、行きますよ!」

「ほぃ来たっ!」

 フェリシエンヌは立ち上がりながら、伯爵の首肯を確認し「サッ」、と跳んだ。合わせてマリエも跳ぶ。

 三人の伯爵子息はそれぞれ数発殴られ何時の間にジーンが開けた広い窓から蹴り飛ばされた。


 当然の様に窓を閉め施錠するジーン。

 真ん中で殴られていた長兄が幾分多く喰らった様子だった。


「お茶、頂けますか?」

 先程の侍女に声を掛ける公爵夫人。


「……。は、はい、ただいまっ!」

 「クツクツ」、少し笑った様子の侍女さん、「冷めた様なので…」と言いティーワゴンを押して行った。クツクツと未だ笑い声が聞こえる気がす。


「制裁有り難う御座います。」

 涙目のサトウ伯爵。


 その後、「御客様の邪魔をするなとあれ程言ったのに、私に恥じを掻かせおってー!」と泣きながら息子達をぶっ叩く伯爵の声が遠くの部屋から微かに聞こえた。


 長男が20才、二男は18才、三男15才を17と12の女子が瞬殺したのである。



◇◇◇


 結局、結論から言うと、『ヨルドの森』へ向かうのは、断念した。

 確かに長命種である学園長は長生きで知識も経験もある。


 が、無理を押してでも…、とは考えず。夏に行けば良い。と考えるのだ。長生きだから。

 おそらく、タクァーシィ領で迂回して川を渡る道はそれが夏だったのなら10日程の日程で行けただろう。が、今は冬。

 馬橇を使うにしても、夏日程の1、5倍以上掛かると学園長は言った。

 ノォーミク回りでは、更に日数が掛かる為、論外。

 只、行く方法はある。と言う。


 サトウ領から川沿いに南下する経路だ。

 川を下る前に馬橇から馬車に乗り換え国境を越えてから最初の町で騎乗、町から出ている橋を渡る。東へ進み、更に川を二本越えて川沿いに北上…。


 大きい問題が二つ、まずナデージュはまだ完全に乗馬が出来るとは言えない。

 もう一つは盗賊が出る事。

 確実にナデージュが襲われる。慰み物として。。。


 夏にはナデージュも馬に乗れよう。馬ならばここは高原だ。羊の群れ、移り動く民の暮らす国なのだ。

 草原を突っ切って、時々民の集団のお世話に成りながら行くのも良い。


 なので、各々の族長に根回しするのも良いかも。と、考えていそうな学園長だった。


「ヨルドの森には行かない事に成ったケド、どうするのナディー?」

「どうするって、私一人じゃ学園に戻れ無い…。」


 アンリエットの問いに「暫く滞在」と答えたナデージュ。

 後は滞在費の問題だ。



「そう言えば、学園長先生。私、お金そんなに持って無い。どうしよう?」


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