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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第一章。
28/89

第27話 真珠と冬期休暇。

 

 ◇◇◇


 冬至祭のあった12月24~25日と、翌26日は安息日だった。三連休のあとの27日は終業式だ。


 そして、その翌日から翌年の2月の終わり迄、冬期休暇である。

 終業式に学園長より、件の事件の捜査の終了と関わった生徒の学園側の処分と裁処で申し渡された罪状と処分。

 そして、事件で自殺した生徒の名前を公表した。

 この国だけでは無く。この世界は全て自己責任である。

 

 学園から被害者に賠償金は出ない。出すのは加害者だ。

 賠償額に応じ処罰される傾向にあるようで主犯格の生徒会役員達は鉱山奴隷にほぼ確定だった。


 一生奴隷だろうと言う事だった。


 他の加害生徒も鉱山奴隷として刑期が20年以上らしい。

「らしい」と言うのは、働き次第で刑期が短くなる事もあるからだ。


 そうして、講堂で生徒と教職員、他の従業員も全員で冥福を祈った。

 

 生徒の代表としてコレット・ド・コルネール先輩が学友達への弔辞を述べた。

 あの生徒総会で司会をしたのはコレットである。

 そして、事件により婚約を破棄された幾人かの女生徒へ励ましの言葉を述べた。

 コレット自身も破棄されたのだった。

 傷物である。とレッテルを貼られたら最期。特に貴族社会に於ては、致命的な程に、婚約は基より、初婚での結婚は望め無い。

 

 すすり泣く声は、なかなか止まなかったが、終業式は終わった。



 ◇◇◇


 ブレ城の皇族は忙しい。


 特に年末年始は忙しい。

 皇女ルシールも忙しく、年末は何着ものドレスを新調し、有力貴族や数は少ないが商人が帰郷の挨拶に到城する子息子女の御相手をする。と言う苛酷な仕事に時間が忙殺されるのであった。

 

 ドレスの新調は、会う方に合わせて装いを替える必要がある為である。

 年末に新調するのは流行り廃れのある服飾でなのだ。最新を、と言う訳だ。


 

 そして、新年。

 朝から、皇帝家族は一般国民に新年の挨拶。

 大抵「帝国の繁栄を」的な言葉だが…、を行う為、城のバルコニーに皇帝や兄達と一緒に立つのだ。

 

 午後は貴族家族、商人家族の挨拶に皇族の一員として出席する。そう言う仕事をこなすにである。


「少し痩せた私?」

 姿見の前に佇み、独りごちるルシールであった。


 1月4日の早朝、帝都ブレのファテノークのお屋敷。

 門番に声を掛けるのは、馬車から降りた皇女である。



「…では、2月の中旬迄、いないと?」

「はい、旦那様方は先月の30日にここを発たれました。新年会に間に合ってると良いんですがね。今ごろ、プラティーヌの町で寛いでいるんじゃないですかね。。。それと姫様…ウチの姫様から御友人が来訪したら…、と伝言を言い渡されてます。

 『新年おめでとう。また来学期会いましょう』以上です。」

「はあ、どうもでした…」


 馬車に乗り引き返すルシールであった。



 ◇◇◇


「ですが、そうしますと侍従の人員の問題が有りますれば…」

 困って居るのは皇室の侍従長。

 最近、子ども返りした様な皇女殿下の無理難題に苦慮しているのだ。



「ですが、そう言った理由なら宮廷にも学師はおります。そちらで、何とでも…。」

「アンリとフェーじゃないとダメなんですっ!」


「侍従は要らないと思います。ルシール、自身の事は出来るだろう?」

 助け船は、エミール殿下だった。

 

 って、また返事を待たず勝手に妹の部屋に入っている兄だ。


「そうです。大丈夫です。」

「只、北ミュロ領は政情不安が続いているよ。そうすると、父上が御許しくださるか…。」


「父上の所に行ってきます。」

 と駆けて入ったのだった。



 ◇◇◇


 1000メートル超えの山々が見えてきた。サトウ山脈だと思い、外の騎兵に尋ねた。そうです。と言う答え。



「もう少しで、ファテノークなんだわ!」

 と元気いっぱいにルシールは言った。馬に乗る騎兵は馬車の窓越しに、


「姫様、残念ですが後4、5日掛かります。あの山は高いですから、そう思う方は結構居るんですよ。」

「……。」


 無慈悲な小隊長殿の言葉に、ガッカリしているルシール殿下。



 ここは、未だヴェレリー帝国内。北ミュロだ。帝都を出て二日しか経って居ないのだ。

 一行は、南北に流れるミュロ川沿いに北上、帝都のあるブレ領最後の村に一泊した。

 

 その後、村の直ぐ北にあるミュロ川の支流、サトウ川沿いに進んだ。

 サトウ川は北東方向から流れていたのが、徐々に東方向に変わり、向かう方向も東へと変わった。

 右手に畑、左手にサトウ川、その向こうに森が続く。と言う景色を見ながら暫く進んだ。

 日は、今では見えない帝都方向に沈みつつあった。


「姫様、ここで夜営します。」

 分隊長が、馬車の窓越しに話しかけた。


「全軍、止まれえええ!」

 馬車が停まった。


「夜営、用意っ!」

 分隊長の声で、設営が始まった。馬車から薪等々を降ろし、騎兵の一人が森へ入る。もう一人は竃の準備。隊長ともう一人が、テントを組み立てている。最後の一人が川で水の補給だ。

 

 夜のと張が下がる頃、焚き火を囲んで夕食と成った。

 乾燥野菜と乾燥肉のスープ。日持ちする堅焼きパンをスープに浸して食べるのだ。



 城内、旅支度中の侍従にルシールは言った。


「兵士と同じ物を食べます。白パンは嵩張るので。テーブルも椅子も湯浴みの道具も全て嵩張る物は一切合財持ちません。必要な物は最小限で」


 その後、用意が出来たと言われ、荷物を見て唖然とした。

 ドレス20セット。中短期の滞在予定なのだから…と言うのは分かるが、『最小限』ではなかったのだ。


「普段着として学園の制服を着用します。ドレスは二着もあれば十分。もし必要があれば、借ります。湯浴みの道具、姿見、食器、お茶のセットまでいれたの?これ等は不必要ですわ。」

 

 こうして荷物は旅行鞄一つと勉強道具を入れたリュック一つに納めた。

 馬車は四頭立て。

 本当は侍女と二人しか乗らないので一頭立てでも良いのだが、テントや予備の薪数日分と食料を屋根にのせられるタイブのを選んだ。馬車の中にも荷物を入れるので、なるべく小さな物にした。


 そんな訳で、兵士五名、御者二人とルシールが夕食を食べる。

 当初、「姫様と夕餉を御一緒に、などと畏れ多い」と言われたのだ。


「でも、私も焚き火に辺りたいし、何より、恥ずかしい話し…」

 そこまでルシールが言ったところで「焚き火なら姫様用に、ここを提供する予定です」と宣う。


「それでは皆さんの身体が冷えますし、恥ずかしい事にこの様な食事は初めてなので、食べ方をお教え願おうと思っていました。なので、ご教授願いたく、、、御一緒させて下さいませ。」

 姫様にここまで言われて、断る臣下など居たら見たいわ状態だった。

 なので、一緒に食べたのだ。


 皆で焚き火を囲み、ルシールは、南ミュロの町バルサザーへ行った時の話しを始めた。

 初めて野宿をして、夕食に食べた食事の事を。


「その娘さん、ジュリエットですか?知らないです。」

 と何人かが言うので、去年からお城の修練場に毎朝来ている()だと言うと、「クロワッサンの嬢ちゃんか!」と皆揃って言った。

 そして、話しはバルサザーでのアンリエット英雄譚になり「やはりそう言う事だったんだ」と納得するのであった。


 あの北ミュロの防衛に参加した兵士ばかりなので、市壁に立ったアンリエットの采配ぶりや指揮を手振り身振りで話す兵士達。

 そして、その後、謁見の間でアンリの言動が如何に威風堂々たるものだったかをルシールが話せば、兵士達は、跳ね橋の口上に大衆がひれ伏す様を語った。


 片割れの白雪の姫、フェリシエンヌの行動も話題に成り、彼女の迷いの無いあの番頭への切り込みをルシールが語ったところで兵士は言った。


「修練場で幾度も見たんですが、あの投擲術も凄いです。それだけじゃなく、衛士相手に模擬戦やった時。俺等は剣と盾、あの白ちゃんは25センチ位の短剣だったんですが、こっちが一本取る迄に何回負けた事か…」

「俺は見てただけだったが、俺等って兵、だろ?兵隊ってなぁ、複数相手に複数で戦うんだ…。いや負け惜しみってんじゃ無ーんだ。ありゃ、っつか、白ちゃん一対一、一対多数の戦闘特化だと思うぜ?と言うかだ………」

「……俺、解った。おまえの言わんとしてる事、あれだ。投擲の使い手、って言うなれば『暗器使い』だ。そんで白ちゃんの『体捌き』だよ。そして姫様の言った、速攻さと確実に殺れる場所取り。黒銀姫さんが止め無いと確実に殺ってたかもって、事は、だ………。」


「暗殺術か?」

「そう、それしか無いと思う。」

「そう言えばフェーちゃん、一度『暗殺術』と言い掛けた事があったような…?」

 乗馬や体術を教えて欲しいと頼んだ時の事を思い出すルシール。


「んむ。根拠が無い、訳では無い…」

 分隊長が話し出す。


「私がフェリシエンヌ様を見掛ける時は常にアンリエット様の半歩、後ろにいる、と感じた。……あの残党探しで、数日同行して感じたのだ。」

「俺もです隊長。そう思います。」

「そうですね。何時も彼女、アンリさんの側。と言うより、後ろを歩いていますね」


「多分、常に『守る』姿勢でいる。と言う事です。つまり…」

  常にアンリエットの周囲を観察し外敵に備えている。と同時に後ろを庇う姿勢、自らを盾として居るのだと…。分隊長は言うのだ。


「……。」

 ルシールは言葉が出なかった。


 あの子は只、奥ゆかしい娘なのだと、控え目なのだ。単にアンリエットを立てているのだと、そう信じていた。

「おそらく、随分小さな頃から仕込まれていたのだろう」


 隊長は「やるせないな」と呟いた。


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