第25話 真珠、冬至の夜に。その4。
◇◇◇
肉串(山羊)、揚げパン、鳥串、焼きパスタ、魚玉(麦粉に玉子や出汁を入れ練った物に干し魚を入れて…タコ焼きみたいに作ったヤツ)、お好み焼き(食材を…以下略)、肉串、水飴と姫ワッサンにはフェーとマリエが大いに受けていた。
と、色々食べた。
お昼前にはお腹が膨れ、もう昼食は入らない。と言う四人が出来上がって居た。
屋敷に戻ると「ダダダダダダダッ」「オオオオォー」「ダダダ…」
「おおー!アンリちゃあああああぁん!!!」
飛び乗って来た物体。
父だった。アンリエットは父に襲われたのだ。
「い、痛い痛い、ひげっひげっ、痛い。痛いっつってんだろがあああああっ!」
蹴飛ばしても蹴飛ばしても離れ無い。
「アンリのお父様だよお、アンリのお父様だよお!」
「知ってる知ってる分かった分かったから、一旦離れて下さいませ、『御願い』!」
「うむっ、アンリエットの『お願い』。受けた!」
離れた父は、アンリエット上から下、下から上へをまじまじ見て言った。
「無い…な。全く無い!病的な程にっ。」
「なっ、何?」
「エステルの様に成る物、未だ無し。」
『エステル』とは、エステル三世、先の女王。つまりエレオノールの姉であり、アンリエットの母である。
『無い』と言うのは、つまり、無い事の様だった。
「お、お父様、アンリエットはまだ12。ですから…」
「だが、もう12。だ!」
「…まあ、無い物は、無い。父は悲乳。。。」
と、話し続ける父…。
◇◇◇
「仕事が片付かず、慌てて馬車に荷物を詰め込んだのは良いが…」と、話す服はあちらこちら破け顔は青アザだらけの男、父親だった。
「…。で、都の下のサトウの町近くに二頭立ての馬車を置いて(置き去りにして)、ここに来た…ここにアンリが大好きな父が来た。と言う訳だ。」
「「アンリを一方的に好きな、父だろがっ」」
ハモったのは、ジーンとアレクセイである。
因みに、アレクセイはジーンの師匠であり、父親だ。ノォーミク領にある隠れ里(隠れて無いが、カッコイイと言う理由で『隠れ里』と言っている。)の現首領である。
「そして、ジャーン!アンリエットのパーティードレス、だ!……だが、残念なお知らせ。おいアっくん続けて続けて!」
「はっ、予想される姫殿下の成長に合わせドレスを新調致しました(身長ダケに)。。。が、予想値に|希望値が過分に付与された《・・・・・・・・・・・・》。と思われ、非常に残念では有りますがそのままではダンス中、否、歩行中にお身体からずり落ちるのは必見!」
「―――必見?」
「必然…です。…ですので、急ぎ採寸の後の手直しを。しかし姫殿下、御安心下さい。こんな事もあろうかと、このアレクセイ用意して参りましたっ!」
そして、鞄から『メジャー』を取り出した。
「ちょ、ちょっと、ちょっと待って!今測るの?ここで?」
「はい、姫殿下!」
「ど、どこを測るの?そして何故メジャーを横に伸ばす!」
アンリエットはソファーから立ち胸元を抑えつ後退る。
そのアンリエットをアレクセイは上下左右に瞳を動かしアンリエットを見ながら言ったのだ。
「測るのが御嫌?ならば、(あっくんアイ!)・・・ウムゥ。靴の分を差し引いて、身長は…152センチ。胸囲72。昨年度の幼年学舎の記録と大差無い。ですが、身長は3センチ程伸びましたね。御喜び申し上げま…」
アレクセイは床に沈んだ。
「何故、幼年学舎の身体検査のを知ってる!そしてなんで胸囲が変わらない!」
アンリエットは泣いた。
「アンリよ、乳はもっと悲しい。」
父親も泣いた。
◇◇◇
馬車は、学園を目指していた。帝城に差し掛かった頃、前から来る馬車が止まった。窓から顔を出したのはジュリエットだった。
「アンリさん、フェーさんパーティー会場、学園ではありませんわよー!」
「「え?」」
毎年、パーティーは学食と隣接する大講堂で行っている。
聞けば学食が、工事中と言うのだ。代替の会場はいったい何処なのだ?
「こちらが会場だと聞きましたわ」
とジュリエットが指差すのは『帝城』であった。
「おとぉ様達のお呼ばれされたパーティーは御城よねえ?」
「ああ、そうだが?」
「ううん。何でも無いぃ」
何気に鋭いフェリシエンヌ、状況は始まりつつある。「私の灰色の脳細胞が活動を始めた」と囁くのだった。
◇◇◇
状況は既に始まっていた。
パーティー会場は前に来た事のある場所だった。
エミール先生の誕生パーティーを行った大広間だ。皇族達が降り出て来た階段もあったが、壇上は取り払われ少し小さな壇上に変わっている。階段の上は待機する場所と思っていたが…。
階段の上も大広間だ。
アンリエット達のいる大広間は天井が高く、邸宅の三階分位あった。二階部分迄、階段は延びそこから上がもう一つの大広間に成って居るのだ。
その二階の大広間だが、意外と下の大広間にせり出した造りに成っていた。
つまり、
「そう言えば、ウチの広間もこう言う造りだったわね。下でダンスして、上で食事をする形に…」
アンリエットは旋律した。上下合わせて『一つの大広間』なのだと言う事だ。
突然の工事、これは仕組まれた事なのだ。と…。
「やっと気付いた様だねぇ」
とポアろ………フェリシエンヌは言った。
さて、今回、既に生徒会は獄中の為、司会者はいない。
「皆様御揃いでしょうか。ようこそ、『冬至のパーティー』へ!コレット・ド・コルネールが開会の挨拶を致します。
では最初にこの会場の設営と場所の提供を快く御引き受けして下さいました方から挨拶が有ります。どうぞ皆様、拍手で御迎え下さい」
と壇上の上にいきなり飛び乗った上級生が言った。
皆が拍手する中、上段から降りて来た。皇帝陛下。
「マジ?」「嘘ん」「うわああ」「おいおいおい」「俺、近くで見るの初!」「あたしだって」「ねえ本物本物?」「お前等不敬だぞ」ちょっと大混乱。
そして、民衆の前でやる様に手で皆の拍手と声を制し、静まるのを確認する様に、頷く。
「生徒諸君、初めましての方も居るかと思うが、一年の生徒の父です。こんばんは!」
こうしてパーティーは、始まった。
楽団がワルツを奏でる。
パーティーは参加が自由で貴族は勿論、平民の生徒も参加する。
寄宿舎の平民達は、ドレス、タキシードやテールコート等々持っていないし買える者等居ないのだ。
だから、『好きな服装』での参加が認められていたのが、何時しか『好きな仮装』で参加する様に成っていた。
そして、まさか平民の自分がお城のパーティーに参加すると思っても居なかった者の一人、ナデージュは『男装の麗人』だ。
長く薄い金髪をテール状に纏め、いやはやカッコイイ。
早速、女生徒と踊っている。
本日、お呼ばれされた学食の天使フルールはピンクのドレスでグリーンのドレスの妹とダンス…。
『妹』では無い。弟ルカくん、だ。
姉と別れ、次ぐ男子と踊り、そして男子。更に男子、…先輩女生徒へと流されていた。流石ルカくんである!
「ちょっと、侯爵様とお話しをして参りますわ」
一緒に馬車で来たのであろう老侯爵の居る上の会場へ行ってしまうジュリエット。
何か嬉しいのか、愉しげにステップを徒っている。
ジュリエットってあんな感じよね。と思う皆だった。
ロイク。彼は虎視眈々と獲物を狙って、狙っ、えず。サラサ先生に連れて行かれた。
サラサ先生の獲物とダンスをする為、サラサ、ロイクペアが近寄って行った。
エミール先生とルシールが踊っている。
「やっぱりシブラコン(シスコンとブラコンを合わせたアンリエットの造語)だわ。」
と口に出した自分の言葉に何故か、「ズキッ」っと胸の辺りが痛く感じるアンリエットであった。
「アンリちゃーん、アンリちゃーん」
おそらく助けを求める声なのだろう。
だが、アンリエットの心は、(このシスコンがシスコンが)と悪態を着付いていたのである。何かを誤魔化す様に。
それで、上級生や同級生男子に次々と踊らされるままに成っていた。
上のテラスっぽい所から学生を眺める皇子1、2、3。
「お、真珠ちゃん発見」
「「どこどこ?」」
「中央辺りに白ちゃん。左手に黒銀ちゃん」
と、第三皇子のマティス殿下(21才)。
「ルシールとまたダンス。相変わらずのシスコンぶりだなぁエミールは………。三曲、目?妹と結婚する気か?」
第二皇子のオーギュスト殿下が言うと、
「「おおっと!」」
オーギュストの実況から、第一皇子ルイとマティスは注視していたエミールが動いたのを見て思わず声を上げたのだ。
「おっとっ、大丈夫ですか?黒銀姫?」
アンリエットは前のパートナーから離れる際、思わず右に一回転してバランスを崩したのだ。
その先に居た先生が抱き留めたのだった。
「姫。僕と踊りませんか?」
「……はい」




