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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第一章。
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第24話 真珠、冬至の夜に。その3。


◇◇◇


 ちょっと、街に出よう。

 12月24日。帝都は今日の昼から『冬至祭』なのだ。故国の祭りと少し違うと言うこの国の祭りを見てみよう。



「ジーンさん。フェー達お城に行くのでお祭り、あたし達で行こう。」

「そうですね姫様。何かお支度する物は有りますか?」

「お金は、必要よね?金貨10枚もあれば…。」

「日本円に換算しますと、金貨一枚18~21万円前後です。きっちりなんぼ。っと言え無いのは物によって物価が違うからです。姫様200万円のお金を持って家具とか買うのですか?」

「いいえ、普通に屋台とかで『買い食い』したいダケだけど…。『ニッポンエン』って何?」

「金貨10枚でしたら、屋台ごと、何台もお買い上げ出来ますが、そうなさいますか?」

「そう言うつもりは…………。どうしましょう?」



 アンリエットは、やはりお姫様。どこまで行っても姫なのだ。でも、そんな姫様だから可愛いらしい…………では無い。庶民の目線で治める王に成って欲しいとジーンは思うのだが。


「あ、それから姫様、その御手に御持ちの物は使えませんので………。」


 アンリエットの手に|学友≪ジュリエット≫から頂いた10枚の『学食回数券』が握られていた。


 苦労の絶えない侍女ジーンである。

 屋敷を出ようとするとマリエが付いて来た。


「マリエどこへ行くつもりだ?」

「え?祭りッス…。」


 刹那、マリエは沈んだ庭先に…。


「おまえは旦那様お嬢様と城にいくんだろうがあああっ!」

 マリエ、父に激しく叱られるのであった。元祖、様式美。



◇◇◇


 中央公園、とても広いこの広場。お屋敷を出て10分。噴水池と言われるここは今、ベンチの様に座って出店の食べ物を食べる人々でいっぱいだった。


 噴水の向こう側、南の方は二列に並んだ屋台がある。


「何処から行こうかしら?」

「そうですね。定番は肉串ですかね。あれが、肉串の屋台です。姫様、御自分でお買いに成りますか?」


「すいません。二本下さい。」

「二本で銅貨4枚だ。嬢ちゃん可愛いからおじさんサービスだ。銅貨3枚でイイヨー!」

「ありがとう。」

「熱いから気ーつけてよぉ。はいドーゾ…………って黒銀姫さまぁっ!」

「しぃっ!お祭り楽しめ無く成るから………。」


 人差し指を小さな愛らしい薄いピンクの口に当てるアンリエット。「あ、はい分かりヤしたですぅ」と言う店主。「来年はきっと良い事ありそうだ」と恍惚とは言わない迄もホワワンとした顔に成っている。


「買ってきた。何のお肉かな?」

「牛、ですね。肉と言えば国では羊か時々鶏でしたね。」

「そう言えば帝都なのに、ここのお屋敷でお肉と言えば羊か鶏…。」

「気を使って、お国の物ばかり出されていた様です。姫様、学園の食堂では、牛肉とかお食べに成らないのですか?」


「干し魚の野菜スープとか塩漬け魚サンドイッチとか鳥のソテー。イワシのパスタ……。あれ?」

「あー姫様、『海の幸』がたくさんあるんだよっ 、て入学前から言ってましたものねえ。」


 ジーンはそんなアンリエットを微笑ましく思うのだった。


「姫様、水飴です。食べましょう。。。」


 アンリエットはそれが水飴とは判らなかった。串にクッキーが付いているそれをジーンは『水飴』だと言う。

 知ってたのだ。と言う事は、時々買い食いしてるんだ。ジーン。


 12~3センチ大の薄いクッキーに挟まれた水飴。その屋台の看板に『野菜クッキーの水飴屋』と書いてある。

 聞いてみた。


「これは何の野菜クッキーですか?」

「このオレンジ色かい、これはニンジン味だ。」


 屋台の店主は次々言った。濃い緑はピーマン。薄い緑はキャベツ。で赤いのは、大人の味の唐辛子。

 それでぇーっ、と続ける店主。

「…最近人気はこれとこれ!玉ねぎとこっちは野菜じゃあねーンだがイカスミって奴の黒クッキーで、この白い玉ねぎクッキーと一緒に買うのが最近の流行りってなワケよお。どうだい嬢ちゃん今なら大銅貨二枚……ってホントに出すなよ、冗談だよ。銅貨二枚だよったく、可愛い嬢ちゃんだねえ。1枚でいいや。はいお買い上げ『双子真珠ちゃん水飴』だーっておいおい。ご本人来ちゃったよおお。」

「しぃっ!お祭り楽しめ無く成るから。」



 『白黒真珠の姫ワッサン』と言う看板があった。

 嫌な予感しかしないので、ジーンに買って来て貰う事にした。


 ジーンが買ったのはクロワッサンだった。


「聞いたんですが、この右側が黒ワッサン、イカスミです。左が普通のクロワッサン。なのですが、白ワッサンなのだそうです。この粉砂糖で白ワッサン。真ん中に挟まれた蜂蜜は、金髪嬢ちゃんって言ってました。」


 半分呆れ顔のジーンだった。


「成る程…。付加価値って、書いてあったっけ王立図書館で読んだ本に。ちょっと工夫して高く売る。他の人や国が真似出来なければ、尚更…。か?」

「姫様、このジーン感服致します。このような市井でその様にお考えに成られるとは…。して我が国に於いてはどの様な物が有るのでしょう?」


「羊よね。保存方法ってやっぱり塩漬けとか干したりですか?」

「あと燻製って方法も有ります。」

「その燻製ってどうやって作るのかしら?まあ詳しくはジーンさんも分からないでしょう?多分塩漬けした物を燻して水分抜くのでしょう。だとすれば『付加価値』は味よね。例えば香辛料とか、腐らせない調味料の開発研究ね。例えば、腸詰めの燻製ね。あれなら、日持ちするし、売れる、かしら?」


 感心して聞くジーンであった。が思わす臣下の礼を取ろうとしたのであわてて止めるアンリエットであった。



◇◇◇


 祭りに喧嘩は付き物ですよ。とジーンは言うが、気に成って見てみると、学園の制服を着た先輩達が5~6人の大人に囲まれていた。



「…だから、この場所は僕等が公園管理官から銀貨二枚で借りてるって言ってるでしょうが!」

「だがよー毎年俺等が使ってンだっつってンだ。だから妥協して売上のたった半分寄越せば許すってンだ!?」


 屋台二台分の一方に長いテーブルと椅子を配した出店だ一人が調理してもう一人が給仕する形らしい。素焼きの器にパン粥と言うメニューの様だ。


 アンリエットは屋台の裏に入り、器に食材のパンを入れ大人の前に飛び出した。


「おい、なんだこのチビッ子?ほおぅ、結構別嬪じゃねーか。コレ貰えんなら更に妥協すンぜえー。」


 『コレ』呼ばわりされたアンリエットは、ちょっと腹が立った。

 器をテーブルに置き左手を翳す。空気中より酸素を取り出し圧縮そしてパンに発火。

 「ドン」と言う音と共に器は砕けパンは一瞬で炭化した。


「こうされたく無くば、居ね!」

 大人達は皆尻餅を付いて座り込んでいた。その中の一人が言ったのだ。


「せ、殲滅姫!」

―――――うわああああああああ!


 逃げ出した大人の一人が財布(巾着袋)を置いていった。


 ジーンは胸元に手を入れて暗器を握っていたが、彼等が去ったの見てアンリエットのお傍に寄る。


「姫様お怪我は…。。。」

 右手で、ジーンに制し「先輩、大丈夫ですか?」と言うアンリエット。


「助かったよアンリエットさん!」

「多分なんだけど、他の学園生もおんなじやり口でやられていると思うんだ。だから………。」


「だから…何です?全て我が姫様一人に解決させるのですか?」

「いや、そのお…。」

「先輩、たまたまあたしがここに居た。そう言う事です。」

 アンリエットは思った。あたしとは何か?あたしの力とはな何なのだろう?




「ジーンさん、あたしはあの人達に必要だったのでしょうか?」

「おそらく必要な救いではあった。と同時に不必要だったと考えます。姫様は為政者になるお方です。導く、そんな存在なのです。決して便利な道具に成ってはいけないのだ。と思います。」

「そう。ジーンさんの言う通りだわ。行動を考えないとダメね。」



 喧騒の中、アンリエットは考えるのだった。



◇◇◇


 25日。今日は『冬至』だ。そして『アンリエットの生まれた日』でもあった。


 朝から、アンリエットとフェリシエンヌ、お傍付きの侍女であるジーンとマリエも一緒に中央公園の屋台に来ていた。



「朝ごはんッスか?屋台で賄うスから、要らないッス」

 と、言う訳だ。


「ゆうべの町、綺麗だった。」

「そうですね。姫様。」

「あたしも行きたかったッス。」


 不平を述べるマリエだった。

 街は、松明の灯りで浮かび上がる建物が喧騒の中で幻想的な光景を演出していた。


 が、煩かった。『喧騒の中』。全く喧騒だった。

 酔っ払いは騒ぎ、喧嘩の怒鳴り声、警吏は走り回る。そんな夜だった。

 おまけに「黒銀姫、ハケーン!」とか言われて追いかけられたのだ。


 中央公園に着いて、ジーンは思う。

(漏れなく、また騒がれて、落ち着いて屋台巡り出来無いんだろうなあ。。。)



 その通りに成ったのは言わずもなが。



◇◇◇


「えぇ?屋台で買い食いするのぉ。じゃ四人で銀貨3~4枚か、大銅貨10枚もあれば十分よぉ、多い位ね。」



 フェリシエンヌの金銭感覚は常識的だった。


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