第20話 生徒総会と真珠姫。
◇◇◇
「君たち、学食が混雑しているんだ。無駄話をするのなら他所へ行きなさい」
楽しい一時を過ごすアンリ達を注意するのは、制服の左腕に腕章を付けている上級生だ。
アンリエットはボーっとしているので、楽しいか楽しくないかは、判らないが…。
「ですが先輩、混雑と言っても意外と空いてますよ席。例えば私の隣、とか」
と、ルシールは言う。
その上級生は周りを見て…。確かに空いている。四人掛けのテーブルに二人で座る生徒。六人掛けを三人で、と言う風に使っているのだ。
そしてアンリエット達はと言うと、四人掛けのテーブルを5人で使って居たのだった。
「くっ、…まあ、程々にして退室しなさい。」
歯切れ悪く、上級生は去って行くのだった。
「さっきの先輩。誰?」
「副会長…でしたかしら」
実はジュリエット学級委員の委員長。なので、生徒会メンバーに面識があるのだ。
「ここ最近、良く注意されるなー」
ナデージュの言う通り、今週、アンリエットが不治の病に成った頃から頻回に注意されるこの面々。
「フルールさん人気ですね」
と言うルシール。
確かに混雑していて全生徒が注意されているのなら…。皇女の言う通りなのだろう。
だが、何気に鋭いフェリシエンヌは気づいていた。
「目的はアンリちゃんの様だねぇ?」
◇◇◇
ナデージュの朝は早い。
今日も寄宿舎横の井戸の水を汲み、
「こんな時の私の『魔法』!」
桶の亜法で凍った水を捨て、新たに水を汲むのだ。そして顔を洗った。
「お早う御座いますフルールさん。」と言って、何時もの様に保温効果抜群なケルトからティーポットにお湯を注ぐ、何気に顔を上げ目の前の貼り出された掲示物を見た。
『食事の終わった生徒は速やかに学食から出てください【生徒会】』
最近貼られた紙だ。がその下に、
『特に一年の女子』
と言う紙が貼られて居たのだった。
その紙には【生徒会】と言う印は押されていなかったのでナディージュは剥がして捨てようとしたが、ゴミ箱が無かったのでポケットに入れた。
◇◇◇
昼、アンリエット達は学食に居た。
今日のジュリエットのメニューはクロワッサン2つにタラのマリネと野菜スープ、鳥入りの野菜スープ。
「今日は当たりですわ。」
と喜ぶジュリエットにナデージュは言った。
「ジュリさんって、貴族様だろ?もう少し良い物頼んでも良いんじゃない?」
「良いのですわ。それに…。」
フフフンと自慢気にバサッと何やら、綴りに成った厚紙を出した。
『食事回数券』
なんか哀れみを醸し出すだけの様な気がする。何故その様にに勝ち誇って居るのか分からないが、自慢気感が痛々しい。
「ねえ、気になンだケドさっ。アンリさんここンとこ元気ないじゃん。どしたの?」
「色々あるのでしょう。乙女には…。」
同じ1組のルゥさん、ルイーズが本名だが。の問いにルシールは言った。
今日は他の子達と一緒のテーブルだ。六人掛けに8人で着いていた。
「ねえー誰?誰誰!?まさかロイク?」
「「「「無い、ロイクだけは無い!」」」」
エマさんのバカな質問は全会一致で否決された。
「おい。一年!雑談を止めて、速やかに食事を取りたまえ。混雑の原因だぞ!学食に貼った生徒会の貼り紙を見ただろう。『特に一年女子』って言………。」
「先輩、この悪戯書きですか?」
ナデージュはポケットから紙切れを見せた。
紙切れを受けたった上級生は、クシャクシャの紙を広げ「なっなっ」と言う可笑しな声を出し、顔は紅潮するのだった。
「何故おまえが持ってる!」
「捨てようとしたのですが、近くにゴミ箱無かったので。」
「いや、そうじゃ無く。何故持ってるのか!」
「だから、捨て忘れ。です。」
「俺が貼った紙を何故持ってる!」
「だから『捨て忘れ』と、――――あ、悪戯の紙貼ったの先輩ですか?生徒会の掲示物にそう言う事していけないって知ってますよね。一年の私だって知っているし、普通に公共物にそんな事したら警吏に捕まります。つか、文句は言う、悪戯はする。なんか怒った!生徒会に突き出します。こんな悪者、確保ぉー!フェーちゃん!」
一瞬で床に臥せられ後ろ手にされる上級生。「確保ぉーー!」とお手柄フェーにより紙も確保済み。
「誰か生徒会役員呼んできて下さい。この場合は良いよね。帝国皇女の権限です!」
「俺が生徒会かいちょーでぐっ!」と床に臥せられた男子生徒が言う。
「なんて事っ!会長自ら公共物に悪戯とか、あり得ない!」
大ヒートアップなナデージュ。只、ちょっとズレてる長命種さんなのだ。
『生徒会長が悪戯した』と言う話しは、ほんの一日(当日)で学園中に広まるのだった。
◇◇◇
アンリエットは恋する乙女。
だが、愛は憎しみに変わるのも世の常だ。
可愛さ余ったレオ・アベル某も、その一人。
『小生意気な小娘』の癖に『大公様』だと言う事実に腹を立てたのか兎に角、気に入らない。何とか困らせてやりたい。
そこで生徒会室で言ったのだ「あの一年女子が学食で煩い」。と、それに乗ったのが生徒会長だ。
生徒会長、名を『ベルナール・ド・ヴァレリー』と言う。
ヴァレリー帝国の西の外れ『ヴァレリー公爵』の嫡男である。
新入生総代で隣国の王女で卒業後は女王に成るのは確定で、しかも帝都、否、帝国の英雄だ。
そしてレオに聞いた『大公位持ち』の少女アンリエットが憎たらしく疎ましく思った。
そんな彼女と瓜二つな黒銀の影に寄り添う、あの白髪の少女も凄いらしいと聞いている。
男子寮で、男子生徒を次々と排除したのだと…。
そしてあの皇女『ルシール』だ。『真珠姫』達と一緒に悪徳商人を潰し違法奴隷の売買を未然に防いだと言うではないか。
あの『未曽有のクロワッサンブーム』を起こしたと言う金髪の少女と共に!あのジュリエットと言う貧乏男爵の子女。
既に流行の発信源。ファッションリーダーなのか?クロワッサンでファッションリーダーと言うのも如何とは思うが…………。
俺だって有名に成りたい!!!
だから、嫌がらせに乗ったのだ。
一日開けて、学園に来てみると、『会長退任』『会長弾劾』そんな機運に成っていた。
(只、俺は威張りたいだけだ。皆を見下し言う事聞かせ、好き勝手したいだけだったのに。それにあの四人の皇子が居なければ、次期皇帝は俺なのだから!)
◇◇◇
「ベルナールくん、君辞任しなさい。それと生徒会の…。」
「…はあ?何言ってる?」
一時間目の授業が始まる前、担任教師に「学園長が呼んでる」と言われ学園長室に入ったベルナール会長は、早々に言われたのだ。
「君の行いは聞いているよ?」
「しかし学園長先生、俺は混雑する食堂の秩序を…。」
「君の言う『秩序』とは特定の女子生徒に対する物なのかい?この一週間注意していたその生徒達は四人掛けや六人掛けのテーブルを詰めて座っていたそうじゃないか。混雑に正しい対処をしていた者達だったと聞いていますよ?」
「そ、それは…。。。」
「そして、これ『特に一年女子』と書いてある紙ですが、生徒会の印が付いていない紙、これを剥がした生徒の言う通りだと思います。公共物への悪戯、と言われても仕方の無い張り紙です。それと実際、上級生が一番問題があったそうですね。席の取り方、長時間の学食利用もですね。」
「ですが…!」
「今回はそんな所ですが、以前から苦情は出て居ました。生徒会室の私物化…、とかです。
したがって生徒会の解散を、です。来週の学期末試験の後に生徒総会を行って貰います。」
と、学園長は言ったのだった。
「学園長。そんな勝手は俺が許さない。俺が誰だと知って言ってんのか!俺の家は公爵だぞ!」
「君、公爵じゃ無いでしょう。その子どもでしょ?」
「…あ、はい」
学園長は「やっぱ退学の方向で考えましょうね。」とか言いながら、ベルナールの退室を促した。
◇◇◇
期末試験は14日から始まり18日に終わった。
試験の終わった週末の12月19日の9時半から『生徒総会』は始まったのである。




