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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第一章。
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第1話 皇子語る。

 ◇◇◇


 私の名は『エミール・アンドレ・ド・ヴァレリー』8月1日生まれの20歳、独身です。ここ『ヴァレリー帝国』の皇子です。

 第四皇子です。

 皇位継承順位は五位ではありますが、まぁ、皇帝になれるとは思っていません。なる気なんて更々ありませんけどね。

 私は、武に猛る三人の兄達と比べ、そう言った方面はからっきしです。ですが、一応皇族なので軍の士官になることも考えていました。

 剣は恥ずかしながら、録に扱えません。そんな指揮官に誰が付いていくのでしょうか。ですから武官より文官として何れこの国の王に成る兄達を支える道を選ぶ事にしたのです。

 学園を卒業し文官に成るべく大学府へ、その2年間勉学に励み文官に………は成らず、教職に就きました。


 学府を出て、12才以上の子女等が4年間通う、帝都にある『アデリーヌ学園』に就く事となり、自分なりに精進しています。

 意外と私、肌にあったのか、この仕事続いています。子どもも好きですしね。


 私の勤める『アデリーヌ学園』は帝城の東側にあります。

 帝城の東側の部分が『アデリーヌ学園』なのです。

 だから、通勤時間は不動産屋さん的に0分。

 『ヴァレリー帝国』の帝都ブレにあるのに、しかも帝城に隣接する学園なのに、何故『アデリーヌ学園』なのか?それは『帝国』が、まだ『王国』だった120年程前に『アデリーヌ』と言う聡明な王女が作った学園だからなのです。


 アデリーヌ王女は『国力とは武力だけではなく、臣民が皆等しく学力を持つ事で富む国に成る』と言う考えから、貴族は勿論、臣民の中に埋もれる人材を発掘すべく、隣国の幼年学舎を参考に国民皆が無償で学べる。今で言う『幼年学舎』を作ったのです。

 読み書き算術、あと簡単な理学等を学んだ子ども達の中から優秀な者がもっと上の知識を学べる『学舎』が『アデリーヌ学園』のような学舎なのです。

 そしてアデリーヌは『ヴァレリー高等学舎』を建てました。


 各地に『幼年学舎』が建ち、それと『高等学舎』も建ち始め『高等学舎』があるのも当たり前に成った頃『高等学舎』を卒えた後に各々がより専門的で高度な知識を得られる場としての学舎が望まれる様になったのです。

 その為の高度で各種専門的な上級学舎が運営され始めた頃『ヴァレリー高等学舎』は学びを国全体に広めた皇女の名を冠して『アデリーヌ学園』と名称を変えたのです。


 『アデリーヌ学園』は四年制。

 まあ、帝国の学園だけでは無く、この国の周辺国も、だいたい四年制ですね。

 概ね、12歳から15の子女が勉学に励む事になるのです。

 『アデリーヌ学園』は学園の立地で既にお分かりかとは思いますが『貴族の為の学舎』なのです。

 厳密には生徒全員が貴族と言うワケではなく、三分の一は平民です。

 その平民の中でも特に秀でた者は特待生として迎え入れています。

 特待生は授業料と寮費(入寮希望者)は免除されます。

 勿論、学園に入学できるのは、入学の選考試験の合格者です。

 入学生の定数は例年であれば120名です。

 今年度は優秀な者が多く、126名の新入生が入学します。

 その優秀な新入生の中に特に優秀な少女がいました。

 今日は、その少女について語りたいと思います。



 ◇◇◇


 その少女は名を『アンリエット・プラティーヌ・ド・ファテノーク』と言います。

 そのアンリエット嬢と初めて出逢ったのは8月1日。つまり私の誕生パーティーの会場です。



 パーティー会場である城の大広間に於いて非常に目立った少女達がいました。

 同じ年頃の背丈も顔の造りも同じ少女が、今流行りのデザインと言う訳では無いのですが、お揃いの東雲色のドレスを着て並んで立っていました。

 しかもデコルテが大胆に開いたデザインのドレスです。

 まあ、私の誕生日夏ですし、暑いです。分かります。ですが、なんと言うか、艶かしい。少女が、です。正直、そう感じました。

 ドレスの違いは、碧玉ともう片方は翠玉の各々の宝石を誂えている事位で、全く同じデザインのドレスでした。

 二人が目立った理由は、双子の様なのに全く違う髪の色です。


 髪は二人共腰に届く程の長さで真っ直ぐで艶やかでとても美しいのです。ですが、決定的に違う髪の色だったのです。

 一方が雪の様な、見え方によっては空色掛かった白。もう片割れの少女のそれは、不思議な色の髪でした。

 銀色と言うより鈍色…いや灰、黒銀でしょうか。光の具合で虹の色が見えた。そんな色合いなのです。黒曜石……色。とでも言いましょうか?

 ですが髪色の差異以外、二人の少女は、同じ白磁器の肌、細い体躯で同じ顔をしていました。

 ああ、もう一つ違いはあります。瞳の色が翠、もう一方が碧色。髪の色以外は合わせ鏡か一組の宝珠の如き少女達だったのです。


 兎に角、美しいお人形の様な二人の、その宝珠の様な少女達から目を反らすことが、出来なくなりました。


 おそらく会場の皆もそうであったのだと思います。


 誤解して貰っては困るのですが、私は決して少女を性的な意味で愛でたりする様な趣味はありません。と思います。

 子どもは好きですよ。



 ◇◇◇


 8月1日。私の誕生パーティーは午後3時頃から始まりました。

 一応、曲がり成りにも皇族ですので会場は城の大広間、招かれるのは内外の貴族です。

 それと貴族では無いのですがそれなりの人物や富豪と呼ばれる者、つまり帝国に影響力のある人達が集まっています。

 ある程度、招待客が揃った頃、私含め皇族が大広間に入場します。

 皇族の女性達が第一皇妃を筆頭に入場。次に皇位継承順に男子(第一皇子から)が入場し最後に皇帝と誕生者である私の順で入場します。


 玉座の皇帝が、「今日の良き日に―――――――」と型通りの挨拶の後、玉座の横で招待客に対する私が謝辞をするのです。

 しかし、入場して直ぐ目に付いてしまった少女達が気になり、せっかく覚えた謝辞が所々跳んでしまいました。

 後は、ご令嬢の挨拶です。

 何せ私が主役のパーティーですし、一応皇族の、しかも皇帝の第四子なエミール王子です。独身で、且つ丁度適齢期な私ですので、挨拶の列が、っぱ無い。


 こう言うパーティーは一種、お見合いの意味合いが大きいので、そりゃあ余程の醜男の男子で無い以上、婚約していない私を、「懇意に…」「覚え良く」「確実に」「射止めて…」等と、お考えに成るご令嬢方も多い。そう思います。

 只、先にも言った様に私の誕生パーティーは、『夏』、なのです。

 暑さで、倒れるご令嬢も多い(毎年。)のですが、大きく胸元が開いたデコルテの、あの少女二人は、どうやら『亜法』で、上手く身体を冷却して、暑さを乗りきって居る様子でした。




 ある程度挨拶の列も終わり、粉掛け対象が、私の兄上達に移った頃、私は壇上を降り………降りられました。

 そこに、間捕まえて居たのでしょう。私に寄って来る貴族や大商人、他国の大使。そして貴族の令嬢との挨拶や歓談をします。

 全ての出席者と話す義務は無いのですが、どうしたものか、気に成っている、あの彼女達なかなか挨拶に来てくれません。


 先にも言いましたが、私は婚約者もいなく独身です。

 しかも皇族なので粉掛ける女性も数多く、皆が皆、声を掛けて来ます。


 成人している女性も少女も、時には幼女すら話しに来ます。

 ですが、私から声を掛ける事は非常に不味い。単純に『第四皇子が御興味を持たれた』と思われるからです。


 ではどうしよう。

 私の視線が少女達に向いているのが、何となくバレてるっぽい。何せ、辺りの諸兄と同じ所を見ているのですから……。

「まあ、どうせ第四皇子だし、どんな陰口叩かれても問題無いか」

 そうひとりごち、ではこちらから参ろうと歩き出しました。


「「そう急くな!」」

 二人の兄上。一の兄と三の兄それぞれの手で左右の肩を掴まれたのです。


「まあ、焦る気持ちも分からないでもない。」

「あ、兄上だけには言われたくないですっ!」

「なっ!」


 一の兄上にだけは言われたくないです。

 16も年下の皇太妃を娶った癖に!15歳の少女を妃にして於いて!羨ましくは無いです。とは、思っていなくは無いかもしれない私です。


「ミっちゃんは可愛いよなっ。控え目な胸だし。」

 と言いながらウンウンと首を上下させている三の兄。


 因みに、みっちゃんとは『ミシェル皇太子妃』つまり、一の兄の妃である。

(それにしても彼女達は綺麗だと思う。そう、小さな宝珠、二粒の白と黒の真珠の様ですね。出来るのであれば誰の目にも触れぬよう2つ並べ宝石箱に入れこっそり机の引き出しの奥に仕舞って於きたい。一人っきりの時にでもゆっくり眺めていたいものです。それだけで幸せな気分になれそうです。。。)

「それは、私も同意だ。」

「…なっ!」

「聞こえていたぞ?お前の独り言。だが、俺も同意だ。独占したい気持ちも分かる。只、発想が猟奇的、ではあるがな。」


 まさか、声に出ていたとは不覚。迂闊だ私、自重しましょう。

 私は、彼女達を性的にどうこうしたいと言う趣味趣向はないのです。


 ですが、見目に麗しかったり可愛らしかったりするものを愛でるのは別に悪い事ではない。そう思うのです。

 趣味ではない、そう言う主義なのです。そう、『主義』ですっ!



 御付きの侍女でしょうか?

 二人の侍女に促され…、いや、どう見てもせっつかれて彼女達『白黒真珠』がこちらに来ました。


「御初に、御目もじ致します。エミール殿下。この度は、お日柄も良くご生誕のお祝いをする様、善きお日和で、誠に御目出度く。そして、此度は、お招きに預かり光栄に思います。

 ワタクシ、名を『アンリエット・プラティーヌ・ド・ファテノーク』と申します。隣国の『ファテノーク王国』の子女に御座います。お見知り置きを……。」


「ワタクシはぁ、『フェリシエンヌ・ブランシュ・ド・ノォーミク』。

 エミーりゅ殿下、おにゃ…おめでとうぅ御座いますぅ。。。」

 最初に挨拶してくれたのが黒い方。家名からしても本人も言う通り、『ファテノーク王国』の王女、王太女であろう。


 白い御髪の方は、おそらくファテノーク王国の公爵『ノォーミク』の御息女のようです。

 そして、二人揃ってカーテシー。実に可愛らしいです。愛らしい。


「おや家名から察するに、双子では無さそうだね?」

「そう、、、そうでございますわ。」


「あ、オーギュスト殿下ぁ!御初に御目もじじぃしまぁっ自慰します。しませんっ!しますぅ。。。」

「ああ、まあ、初めまして…。ところで君達、双子の姉妹では無いとすると、従姉妹同士かな?」

 流石二の兄、スルースキルっぱないです。


「「従姉妹同士です「こっちのぉ「フェリシエンヌ「アンリが「が公爵の「王家の「で…?」

「ゆっくりお喋りなさい?解らないからね?」

「と、言いますまか、二の兄上、何時の間にっ!?」


 因みに、二の兄『オーギュスト』は私と同じ母より生まれたのだから、変態ではない。スルースキル持ちですし。


 この後、少しの時間歓談して分かったのは、彼女等が共に今11歳である事、そして今年度『アデリーヌ学園』を受験したと言う事だったのです。


「では、合格したら、私が直接教える事になるかもしれませんね?」

「え!殿下は学園の先生なのですか?凄い素敵!皇子様に教えて頂けるだなんてっ!」

「アンリちゃんだって王女様でしょうにぃ。」

「田舎の王族とは違うと思うよ?帝国だし、」



 以降の話は、私、第四皇子エミール・アンドレ・ド・ヴァレリーが語らずとも今後、誰かしら語られるでしょう。ですので、割愛させて頂きます。

 決して、面倒臭くなったからじゃないんだからねっ!



 ◇◇◇


 この時、第四皇子エミールが知るよしも無かった。

 この出逢いの一ヶ月半後、学園のみならず帝都全ての住人が彼女達を様々な渾名や二つ名を呼ぶ事に……。


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