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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第一章。
19/89

第18話 お股の痛み、真珠、お胸の痛み。

 

◇◇◇


 寄宿舎の朝、朝食は6時45分から。


 食事を作るのは、初老の夫婦である。

 しかも舌の肥えた、お貴族様の子弟達も居る寮である。

 元々、住み込みの調理員は、初老の夫婦の二人だけである。


 今は先月の末に入った親子も居る。通いの調理員もいるのだが朝早く来れる者はいない。

 だから、この親子の存在が嬉しい夫婦なのだ。


 娘のフルールは筋が良く。かなり食事を作るのに慣れて来たし、母親は村で食堂をやってたと言う話しだ。

 特に朝は助かっているのだ。


 そんな朝の学食に本日一番乗りしたのがナデージュだ。

 朝食は昼と違ってメニューがほぼ一種類と決まっている。

 今日は、白パンと呼ばれる柔らかいパンだ。それとジャガイモと塩漬け肉のスープ。

 パンには好きなジャムを塗って良いのだが、随分昔から学食の調理員が塗る事に成っていた。

 

 昔の寮生が「これでもかっ」って感じでジャムを盛ったらしい。そしてそれに追随する生徒も多数発生した事案があったと言う話しだ。


「おはよう御座います。ナデージュさん今日は何塗りましょう?」

「おはよう御座いますフルールさん。今日はバターで良いよ。」

 まあ尤も、フルールさんが塗るバターやジャムに文句を言う子弟は皆無。

 

 急いで朝食を食べ、自分の部屋(二人部屋)へと戻り身仕度を済ませ帝城に急いだ。

 城の正門は、開いていなかった。

 まあ7時半にまだ20分もあるし、少し散歩のつもりで…。

 跳ね橋の上で、うろうろするナデージュ。完全に不審な人だ。

 

 そうしてるウチに、

「お早う御座いますナデージュさん」

 ジュリエットの声だ。

 いっしょにアンリとフェーちゃんも来た。

 

 門の衛士が、おかしな少女ナデージュを小窓から時々伺って居たが、見知った顔のアンリエットとフェリシエンヌが来たので声を掛けた。


「黒銀と白雪様ぁー、朝からどうしたんだい?おやー、クロワッ様も一緒だね?」

「誰かがそんなパンみたいな名前ですのっ」


「今日の朝からリュシちゃん…。皇女殿下と体術の鍛練する事に成ったのぉ」

「そうかい!じゃあ頑張って」

「城の敷地内で鍛練するんです。」

「じゃあ通行許可証か招待状出して下さい。」

「ありませんけど…」


「あ――――――入れませんねー。」

「………。でも陛下もいいって言ったって。」

「…許可証は?」

「ありません。」

「入れません。」

「この御役所仕事が!」

「私等、役人ですし。」



 ◇◇◇


「待ってましたが、誰もいらっしゃいませんでしたわ。」

 

 8時30分過ぎ。1年1組の教室で、窓際一番後ろの席。自分の席で座って居るヴェレリー帝国の皇女ルシールはしょんぼりしていた。


「ですから、わたくし達、お城の正門から入れませんでしたの。」

 

 今朝、約束の時間に来た事、門番に約束がある事を証明する術が無かった事をジュリエットはルシールに説明した。


「すまなかった。明日は入れる様にしておきます。」

「でも、明日は休息日よぉ?」

「…あ。。。」


「ところで、お城の修練場って安息日なら使える?」

「主に近衛が修練に使っているけど、お休みならおそらく。」

「じゃあ、『乗馬』の練習する?」

「それは良い考え。」


 ルシール殿下はアンリエットの提案に結構、喜ぶのであった。



 ◇◇◇


 港町バルサザーの奴隷事件から、自分が何一つ出来ない只の少女である事を自覚して、一ヶ月ちょっと、帝国のお姫様は「私、今日から変わる」と息巻く程、では無いが少々前屈み、のめりに成っていた。

 

 昨日の内に近衛の隊長に(修練場の使用)許可も貰ったし兵站の責任者に馬の使用許可も厩の馬番さんにも声を掛けた。



 11月34日、安息日、朝7時。帝城北の修練場。


「アンリさん達がくる…。あ!門の衛士にアンリさん達が来るの伝えて無い!」

 取り急ぎ、城内へ踵を返すルシール姫。



 南の正門に着いたルシールは衛士の側に駆け寄った。


「じゃあ通行許可証か招待状出して下さい。」

「ありませんけど…。」

「あ―――――――入れませんねー。」

「………。でも皇女殿下もいいって言った。」

「…許可証は?」

「ありません。」

「入れません。」

「この御役所仕事が!」

「私等、役人ですし。」

 ルシールは門兵に、スミマセン、スミマセン。と頭を下げた。


「私の連絡の不行き届きです。この方々をお城に入れては下さいませんか?お願いします。」

「姫殿下が、そう仰るのでしたら…、って頭は下げんで下さいっ!」

 

 ようやく、鍛練の第一歩だ。

 ジーンとマリエを連れて来る気は無かった。のだが、


「いいえ、姫様の行く所はジーンの向かう場所なのです。」

「嬢タンとアタイはいっしょッス。」


「あら、アンリさんフェーさん、ジーンさんマリエさん。お早う御座います。奇遇ですわね。」

「も、ツッコンでやんねッス。」


 

 帝都は『ブレ』と言う。だから、お城の名は『ブレ城』、城郭都市で30万の市民が住まう町なのだ。

 

 そして、第二皇女は馬に乗る。


「すいません。手を貸して頂いて………。」

「まず、乗馬の基本からッスね先ず、『なみあし』ッス。脚を交互に使って馬を歩かせるッス。

 馬の左の肩が前に出たら右足、右肩が前に来たら左足って感じで使うッス。」


「真っ直ぐに!ルシール様、身体を前に倒さない。真っ直ぐ座って力は抜いて!」

「はいっジュリさん背中丸めないで…。そう姿勢は真っ直ぐに!」

「手綱は必要以上に引いてはいけません。馬が痛がって…。そうです。曲がる時は自分の身体の重心を…ナデージュさん。上手いです。」



「ひ、姫様ぁバランスがっ。」「ああ、姫様。」「姫様。お痛わしい。」

「外野、煩いです!練習の助けなら兎も角、感想を述べるだけなら、邪魔にしか成りません。とっとと失せなさい!」

 

 お城の従者や執事達が見守る中、乗馬の訓練は続くのだった。

 借りた馬に乗って「カッポ、カッポ」と修練場をくるくる回るアンリエットとフェリシエンヌは暇だった。

 

 乗馬指導は、ジーンとマリエが行っているのだ。

 ジーンは教える側に成ると何時もこんな感じに熱が入る。


 常に適当なマリエも熱心に教えているし、暇なのだ。


「あのぉー、何方か弓を扱える方、居ますかあー?」

 剣術と棒、槍術は得意だが接近戦である。遠距離での戦いには『弓矢』だ。とアンリエットは考えた。


「あ、僕、弓だけは得意ですよ。」

「わあー、嬉しいです。お願い出来ます。…か?あ…。」

「先生?が…。ッスか?」


 見物しているお城の従者の中のその他大勢の中に帝国第四皇子エミール殿下先生も混じっていた。



「前、先生言ってましたね。『僕は兄達と違って剣術とか、そっち方面はからっきしなので学問の方を』って」

「…でも、学問も才能無くて先生に成ったぁ。てぇー。」

 アンリエットとフェリシエンヌはエミールの言葉を思い出す。

 そして結構、心抉る物言いなフェリシエンヌ。


「専門分野に突出した才能が無かっただけで、意外と賢いんです先生。皇帝に成ったら『賢帝』ってきっと呼ばれますよ?」

「先生ぇ、継承順位的に無理だよぉ。それにぃその発言。『内乱の意思有り』だ!憲兵ぇー、謀叛の企みを見つけたぞおおおぅ!」

「や、止めて止めて、止めてって!」


 第四皇子、必死だった。

 ちょっと楽しむフェリシエンヌ。



◇◇◇


「…そう、最初は、ゆっくり…。そうそういい感じ…両肩は開いて、的を刺す様に弓を持つ手で…。」


 アンリエットの身体はエミールに抱かれる姿勢で押さえ着けられている。アンリエットの頭にエミールの顎が乗っている。

 

 弓を持つ右手の甲は、軽くエミールの右手が握り、矢の尻の羽を持つ左手はエミールの左手が右手と同じ力加減で押さえている。

 弓を引く主体はあくまでアンリである。と言う姿勢なのだろう。

 

 アンリエットは、それがこの先生『エミール』の『優しさ』だと思うのだった。

 

 そして、何となくエミールに身体を預けるアンリエットであった。


「アンリちゃん、お顔赤いよ?」

 フェーに見透かされた。


「アンリエットさん身体がブレています。重心を下に、真っ直ぐ…。狙いを着けて、矢を放すっ。」


 パッ!的の上を掠めた。矢を射ったアンリエットの頭は未だエミール先生に預けていた。


「惜しい。では、もう一度。」

 こうしてルシールとジュリエット、ナデージュの乗馬の練習は昼前迄続いた。

 弓矢の指導を受けたアンリは、何故か茹で上がっていた。

 

 そして、暇を持て余していたフェリシエンヌは見物人(お城の従者や非番の衛兵達)の「おおおおぉぉぉ!」っと感嘆の声を受け『投擲』をしていたのだった。

 

 昼を挟んで、午後も『乗馬』を。と皆考えていたのだがルシール、ジュリエット、ナデージュの三人は悲鳴を上げていた。


「「「お、おまたがー!」」」


 股関節が痛くて仕方無いのだ。

「では、仕様が無いので馬に乗るのは、また今度やりましょう。」

「『股』だけにぃ。。。」


 茶化すフェーだったが、視線はアンリエットに向いていた。



 そして呟くのだ。「アンリちゃん、ってば、『恋』かしら?」と…。


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