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黒銀の王女の物語。  作者: 潤ナナ
第一章。
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第15話 真珠、港の町へ。その2。姫悩む。


◇◇◇


 この国、ヴァレリー帝国の主要な道には、馬車で進む一日の距離毎に村か宿場町が、大抵あるのだ。


 知識として、御勉強一番のアンリエットは知っている。のだが、帝都の南に延びる道に点在する町村は無い。

 町村が無いのではなく、所々の切れ目はあるのだが道を挟んでずうっと家々が続くのだ。なにせ、帝国一番の穀倉地帯。

 アンリエット、ビックリだった。


 少し広目の川、西から南東方向に流れる川を渡り、川の直ぐ南にある山裾迄、家屋は続いた。

 山裾の下(と言っても川裾)の町に着いたのは午後9時に成ろうと言う時間であった。


 何度か馬を替え、ほぼ一日でたどり着いた。馬車では二日の行程である。



 アンリエット一行は、フェリシエンヌとジュリエット、ルシール(染め粉で髪は焦げ茶色。)の女子生徒の三人。それに何時もの侍女二人。そして、普通の旅人っぽい格好の衛士を二人。

 衛士が動向するのは、何も護衛目的だけでは無い。馬の借用や宿へ優先的に泊める。等々の命令書を出しやすくする為だった。


 女性、少女を含む。そんな一行が、『皇帝の命令書等持ち歩く訳が無い』と侮られるだろう。と言う配慮からだ。


 道中アンリエットはジーン達に尋ねた。


「他所の国の事情に他国の姫が、介入しても良いのか?」

と…。


「今更ッスよ?他国の内戦に介入したり他国の商人の悪事に介入したりとか。。。」

「それに『経験は人を育てる。娘が望むならお前達は手伝って欲しい。道を外す時は諌め、導け!』と姫様の御父君が仰られて…。」

「ンで『問題有っても尻拭いはワシがする。なぁーに可愛い我が子の尻だ。幾らでも拭うわ!つか、拭いたいのっ。』って言ったッス。」


「お父様が、そんな事を…。」

と感動仕掛けたアンリエットであったが、感動は取り止めた。マリエの最後の言葉の所為だ。


「あの伯父様なら然もありなん。」

と呟くフェリシエンヌの声は、何故かジュリエットとルシールの耳に届いたりしたのであった。


 翌朝、南ミュロ領との領境の駐屯地に向かう為、町の警吏の詰所へ向かったアンリエット達。

 馬の借用の為、衛士が命令書を出すと、察した警吏が言った。


「昨日、帝都の騎馬隊が来て、替え馬。これが借用書です。で、お預かりした馬達はこちらに…。」

「して、騎馬は直ぐに出たのだな?」


 何、偉そうな態度の子ども。と訝しむ警吏。

 その後ろの年配の警吏が「お、おい、おまえ…」と先の警吏に耳打ちをした。

 即決、臣下の礼を取る警吏達であった。ジュリエット張りであった。


(ああ、起き掛けに染め粉で髪色変えてたんでした。)

と、思い出したルシールだが「大声で私の名を呼ばない!それと直ぐに立ち上がる様に。」と警吏達に言ったのだった。


 そして、言葉を付け加える。

「近くに敵対者、それが居なくとも民草の噂咄に上っては今後の作戦に影響する可能性がありますから」

と。

 宿で用意して貰った朝食用のサンドイッチ。それを各々が自分のリュックや物入れに仕舞い。ルシールとジュリエットは、衛士の馬に乗ろうとする。


「ひ、姫様を私の様な下々のものの…」

「昨日も言いましたが、今の私もその『下々』なのですから乗せなさい。…じゃ無いわね。『乗せて下さい。お願いします』ですね?」


 ああ、そうだった。姫様達は『商品』に成る町娘役だった。と思い直す衛士であった。

 「しっかりしろよ?」と同僚にも言われたのであった。



 流れる川を左手に、右にそんなに高く無い山々が続く。

 あんなにたくさん続いていた家屋は既に無く、川沿いの道を走るアンリエット達。


 アンリエットは知らなかったのだが、実は川向こう(川の北側)には農家の家が点在するのだ。土手で見えないだけである。余談だけど…。


 昼過ぎ、川がミュロ川に合流する場所に少し大きな町がる。

 その町を通らなけらば、先へ進め無い様であった。


 当然、入町税が取られる。

 面倒ではあるが貴族側では無い一般の入り口に並ぶアンリエット一行。

 だが、長蛇の列と成っているその列は一向に進ま無い。


「ちょっと、見て来ますわ」

 ジュリエットはそう言って列の前に走って行った。それを追いかける衛士。


「どうも大きな捕物があったと仰ってますわ。それで、町の出入りを制限しているらしいのですの。」

「ああ。そうだった」

と、ジュリエットの報告を聞いたルシール皇女。

 貴族側の列に並び替える一行。


「嬢ちゃん達、そっちは貴族様専用だぜー」

「ズルはいけねーなぁ」「列から離れたンだ、後ろに並び直しなっ!」「貴族様だったとしてもソッチにゃ行かせねえゼ?俺等だってイラついてンだ!」


「黙れっ!」


 一人の少女が声を出したのだった。

 特に大きな声では無かったが、馬に乗った少女の声は実に威風堂々とした声であった。


 横に並ぶ馬上の月白の髪をした少女は、うっとり眺めるている。

 ブレ無い、フェリシエンヌである。


 静寂の後のざわめき「あれ?あの黒銀と白銀…って」「あの不思議な色合いの髪って」「…ああ、ああああー!」

―――――うわあああああああああーーー!スイマセンデシタアアアアーー!!!


「私達がここに居た事を吹聴するで無い。良いか?」

―――――はっ、ははああああああぁぁぁぁーーー。


 あの事件(ミュロ軍の帝都進行)から二ヶ月足らずにも拘わらず、もうこんな離れた場所でも知れ渡っていたのであった。

 門兵に帝都の騎兵隊が向かったであろう『ジェイロック商会支店』の場所を尋ね。そこに急ぐ一行。


 騎兵隊と合流したアンリエット達は四頭立ての『ジェイロック商会の印』の付いた馬車に乗り騎兵隊もろとも国軍の駐屯地へと向かうのだった。



◇◇◇


 途中、野宿…。初めての野宿だ。何となくはしゃいで仕舞うアンリエットとフェリシエンヌ。そしてルシールだった。


 厳密には毎年、夏期、冬期各々、野宿をしているアンリとフェーだったが、基本、星空の下では無く王家や公爵家の馬車には、ちょっとしたベッドが付いていたりするのだ。


 野宿っぽく無いのである。

 ジュリエットの男爵家は貧乏なので、こう言った野宿は悲しいかな、慣れていた。


 薪はジーンや衛士達が探し持って来て、火はアンリエットが『亜法』を使い点けるのだ。

 その薪は小さな種火から、では無く。瞬時に、「ゴウッ」っと、突然に燃えるのであった。


 アンリエットは火の点く瞬間回りの空気から酸素を取り出し火に送っただけではあったのだが、それを知らない衛士やジュリエット、ルシールは多いに驚くのである。


「あああ、貴女、それ『魔法』?」

「あ、あたくしも『魔法』と言うのを初めて見ましたわ。」

「アンリちゃんの『魔法』じゃぁ無いよぉ『亜法』よぉ?」

「「「「ンなワケあるかい!」」」」


 ルシール、ジュリエット、衛士達は揃って言ったのだ。


「種火、直ぐ消える事あるでしょ?だからちょっと工夫して火を強くしただけ…」

とのアンリエットの説明に「そんな事、出来るなんて見た事も聞いた事も無い。」と思う四人であった。


 野宿をするアンリエット達、子ども達がすっかり眠った頃、寝ず番の衛士にジーン達が声を掛けた。


「明日もあるのですから………。」

「あたし等、代わンよ?」


「ですが私共、衛士は臣民を…、臣民で無くとも女性を守るのが仕事です。まして、女性に守られる。とあっては立つ瀬も…」

「いいからいいからー。ちょっと寝たのが良いッスよ!」


「そうですか?…では休む前に、少しお話しをしても宜しいですか?」

「もし差し障り無ければ…。」

と言い始める衛士であった。




「その、貴女方の姫様について、アンリエット姫なのですが…。何方か高名な術師のに師事されたとかであの様な術を覚えたのでしょうか?」

「姫さぁ、自力だよな?」

「はいマリエの言う通り、独学です」


「マジっすか?」「信じられん」

 一人地の出た衛士達である。


「その、姫様は…………」

 生まれた頃から身体の弱かった事、その原因が姫様の魔力だか霊力が幼い身体では上手く制御出来なかった事だったと。

 そして彼女は小さな頃から王都の図書館。王城の図書室の出入りを許される様に成ってからはそちらに入り『亜法』の書物は勿論。『世の有り様』の書物を読み漁っていたのだ。

と、話すと、衛士は「成る程…」と言った。


「生まれた持った才能なんて言ったら、失礼ですな。人一倍の…、いや、努力のたわものですなぁ。」


「姫さぁもだけど、嬢タン…フェリシエンヌ嬢タンも凄いッスよ。あたし等以上ってこたぁ無いッスが、投擲や暗さ…」

「それ以上は言う必要無いっ」

ポカッと叩かれるマリエ。お馴染みの光景だ。


 そんな訳で、衛士達も休んだのであった。


 翌朝、良い香りで起きた女生徒達だったが、ジュリエットは居なかった。

 焚き火の側に居たのだ。

 何をしているのか気に成るルシール。


 覗くと血抜きしたであろう鳥を焚き火で炙っている所であった。

 ジュリエットは炙った鳥を丁寧に捌き、鍋に入れる。灰汁を取り更に乾燥野菜を入れ胡椒と取り出した岩塩を削り入れた。


 最後に集めたであろう山菜(香草)を入れたのである。

 そうして煮込んでいる間に鳥の臓物の食べられない部位を土に埋めたのだった。


 美味しかった。

 鳥は衛士の一人が弓で仕留めた。と言う事だったが、ルシール皇女は、落胆していた。


 昨夜、寝付け無く聞こえて来たアンリエットの努力の話し。そしてポヤポヤしているフェリシエンヌの力。その一端を皇女は見ているのであった。

 あの奴隷商の店の番頭に突き付けた小刀を…。


 あの時アンリエットが止め無ければ、フェリシエンヌは躊躇せず役割を全うしたのだろう。


 二人共に学力も高い。と言うかトップだ。アンリエットは学園を卒業したら『女王』に成るのだ。きっと良い為政者に成るのだろう。

 そして、フェリシエンヌは優秀な側近として手腕を振るうだろう。しかも王位継承権の三位でもあるのだ。


 ジュリエットは貴族令嬢にも拘わらず野草の知識もある様だし、調理も出来る。

 では、私は?


 アンリエットの様な力は無く、フェリシエンヌの度胸も無い。馬を操る事も出来ず。食材を探す術も料理すら作れない。

 自分は役立たずだ。皇女と言う肩書きのあるだけの小娘だ。


(この件が終わったら、アンリエットやフェリシエンヌとジュリエットに教えを乞おう。)


 そうルシール姫は思ったのである。


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