異世界転移!
「緊急家族会議を開きます。各々の仕事が済み次第、即刻帰宅するように。」
お父さんからそんなメッセージが届いたのは、お昼休み直後の最っ高に眠たい講義を受けている時だった。
――何だろ?まさか遂に宝くじが当たったか⁉︎
「宝くじが当たったら、緊急家族会議な!」とお父さんが冗談めかして言っていたのを思い出すと、少しだけ眠気も引いた。
どうにか講義を終え、友達からのお誘いを丁重に断って、電車に乗った。
「ただいま〜!おー!モモ、いい子にしてたかー?」
自宅の玄関を開けると、いつものように愛犬モモが出迎えてくれた。ひと通り撫で回してからリビングへ向かう。
「ただいま!急にどうした……の、いや待て、本当どうした?」
リビングのドアを開け、目に飛び込んできたのは、テーブルを囲んで座る父と母と、パツキンの美女。
――え、何これ、何て修羅場?
しばらく呆けていると、パツキン美女が口を開いた。
「あなたが、リオさんですね?」
「え、あ、はい…そうです。」
あれか?あの人との愛の結晶なんて見たくもないわ!って刺されるのか?と、少し身構えたら、
「あの、失礼なこと言わないで頂けます?」
パツキン美女からまさかの返答。
――わたし声出してないよね!?
「声に出ていなくても私にはわかります。何故なら…」
パツキン美女が一拍おいて、次の言葉を紡ぐ。
「私は、神ですから。」
「うわ、やべぇ奴じゃん。」
「ちょ!声に出されると倍ヘコむんで、やめて頂けますか!?」
「す、すみません!」
自称神様のパツキン美女から強めの要望を受けて素直に謝る。迫力すげぇ…。
「わかって頂けたのなら良かったです。では、リオさんもお掛けになって?」
「あ、はい。」
いや、ここ、わたしの家じゃね?という疑問は飲み込んだ。…と言っても、思った時点で自称神様には伝わってしまったのかもしれないが、そこは気にしない。
「さて、本題ですが。」
わたしが席に着いたところで自称神様(もう面倒だから神様でいいね)が話を切り出した。
「皆さまには異世界へ行って頂きたいのです。」
――はい、出た、よくあるや〜〜つ〜〜!あー、これ夢だわ。帰りの電車で寝てんだ、きっと。
「夢じゃないですよ。」
「心の中読むなって。てか、何でわたしの心ばっか読むのさ。お父さんとお母さんのも読みなよ。」
「リオさんの心の声が一番よく届くので。」
「煩くしてごめんなさい。」
「あ、こんな話をしている間にもう時間です!では、フジムラ家御一行、異世界へ向けてしゅっぱ〜つ!」
「え、ちょ…待っ…!」
刹那、眩い光が辺りを包んだ。