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ちょっと変な国語の先生の話

珍問珍答シリーズ その8 「小説の一場面ふう」のものを書いてみなさい

作者: マボロショ

1993年1月、「国語表現」の最後の学習活動として、創作してみよう、という時間があった。そこで、

「あれやこれや言って、なんとか結婚してくれと迫る男」と「相手を傷つけずに、なんとかことわろうとする女」の会話を中心に、「小説の一場面ふう」のものを創作してみよう、という問題を出してみた。

その際の解答の中に、おもしろいのがいくつかあったので、紹介してみたい。

なんで、こんな問題を出したかというと、そのころ、ほとんどのマスコミが報道し、高校生をふくむ全国民も関心をよせていたニュースにヒントを得て、出題したものである。

40分足らずの解答時間だったので、時間切れ、となったものもあった。

解答者は、すべて、高校3年の女子である。それぞれの個性を味わっていただきたい。

その1


「幸せにするから、僕との結婚を考えてください」

「私は、まだ早いと思うの。もっと後でいいと思うの」

「結婚すれば、今まで以上に、君のこと、幸せにできるよ」

この人は、いつも、幸せにする幸せにするというけれど、今まで1年半、心から幸せなんて感じたことはなかった。でも、この人からは、いろんなものを買ってもらったし、おいしいものも、たべさせてもらったし、傷つけるような断り方はしたくないのよねー。

「結婚する前に、私はもっとしたいこともあるし、今、結婚しても、いいお嫁さんにはなれないような気がするの」

「いいお嫁さんなんかにならなくていい。僕といっしょにいてくれるだけでいい。他の女の子じゃ、イヤなんだ」

「お願い、私をあんまり困らせないで。私の両親が反対するのは、まだ早いってことよ。

父は、すごくこわいのよ。中学の時、初めてつきあつた人が電話して来た時、うちには女の子はいない、電話番号を間違えているだろう。二度とかけてくるな!って、どなっちゃったのよ」

「僕は、どんなにどなりつけられても、どんなになぐられても、君のお父さんのゆるしをもらうから」

「あなた、うちの父のこわさを知らないのよ。なぐられたら、死んじゃうよ。イトシシと格闘して、やっつけたこともあるほどよ。

あなた、お酒もタバコもだめでしょう。酒も飲めないやつは男じゃない。そんな男はつれてくるなよって」

「お酒だけは、僕、だめなんだけどー」

「でしょう。結婚はできないわ。結婚って、私たちだけでは、進められないでしょう。父のゆるしもないとねえ」

「じゃー、かけおちしようよっ」

「かけおちー?」

「うん、今からすぐ行こう。遠くがいい。北海道? 東京?」

「ちょっと、ちょっと待って! 両親を裏切るようなことは、できないわ。今まで育ててくれたんだから。

かけおちしても、いつか、みつかるわ。みつかった時、口の中に、酒のびんをつっこまれて、ベロンベロンにされちゃうかもよ。一升ですむかしら!」



その2


「僕と結婚してください」

男は、真剣な顔つきで、女をまっすぐ見ながら言った。淡い青色のジュエリーケースを差し出した。

何百万もしそうなダイヤのリングが、月の光の中で、キラキラと光っていた。女はぼうぜんとした。

「私と結婚? 真剣に言っているんですか?」

「はい。………君となら、どんなつらいことがあっても、乗り越えて行けそうだし、………君はきれいだし、………いい奥さんになれるだろうし、………」

女は、ジョウダンじゃないわよという気持ちでいっぱいだった。遊びで、軽いノリでつきあっていたのに、

何で、いきなり、結婚なわけ? ホント、ジョウダンじゃないわよ!

「あのー、私、結婚とか、そういう形式なんかに、こだわりたくないの。何ていうのか、結婚してなくても、毎日こうやって会っているから、それでいいじゃないですか。形式なんかにこだわらないで、今のような私たちの関係を、これからも、ずっと続けて行きたいの」



その3


午後6時、二人は、会社近くの喫茶店で、向かい合わせに座っていた。

男は、よし、もう一度、という気持ちでいる。しかし、長々と世間話をしただけで、店を出た。男の車で夜景を見に行った。車をとめて、夜景を見ている時、男がポツリと言った。「結婚してほしい」と。

女は下を向いて、だまっていた。

「あなたは、僕の理想の女性だ。料理はおいしいし、洗濯や掃除も、よくしてくれる。

返事を聞かせてほしい」

「あなたは最高の人よ。でも、恋人と、結婚する人とは違うと思うの。あなたと結婚するのにふさわしい人は、私以外に、別の所にいると思うわ」

女がためらう理由は、一度、結婚に失敗しているからだ。また、失敗をくりかえしたくない。だから、この男のプロポーズをことわり続けている。

男が、もう一度言った。

「僕が幸せにします」



その4


「何が気にいらないのだ?」男は女にすがるようにつぶやいた。女は黙ったまま椅子からゆっくり立ち、バルコニーの方に歩いた。外は、女の憂うつな気分とは反対の、さんさんとした日の光に満ちていた。風に木々が、やさしくざわついていた。

「君はいつだって、こうだな。自分の言いたいことが言えなくなると、すぐ、僕の所から離れようとする。………だけど、そんなところも好きなんだ。君がつれないほど、僕は燃え上がって、君を抱きしめたくなるんだ。………僕の言いたいこと、わかるだろう?………」女は少し考えたようで、やっと口を開いた。

「あなたは、私が振り向かないから、ただ振り向かせたいだけじゃないの? それで、自分のプライドを満足させようとしているだけじゃないかしら」女は、そう言うと、バルコニーの椅子に腰を下ろした。

「君、僕のプライドの問題って、そういうふうに、見ていたのかい? そんなんじゃないよ。僕は一生、君と寄り添って生きて行きたいんだ」

男は一気にそう言うと、女の答えを聞くように、そばへ寄ろうとした。女は言った。

「あなたが、今は、どんなに愛してくれていても、もし結婚したら、すべてが変わってしまいそうで、……

それが、こわいの。………」



その5


「A子さん、どうしてOKをしてくれないのですか。もう2年も前から、何度も、プロポーズしているんですよ」

「私だって、2年間、なやんで来たわ。だけど、やっぱり駄目なのよ。わかってよ、私のこの気持ち」

しかし◯男は、あきらめもせず、おこった様子も見せず、A子の顔を見つめた。見つめながら、こころの中で、となえた。(A子さんは私の妻になる、私の妻になる)と。

この男、自分には超能力があると信じている。A子と初めて会った2年前、一目ぼれをした。その時、赤い糸が見えたと、かんちがいしてしまった。その、かんちがいに、今なお、気づいていない。実は、超能力があるのは、A子の方だった。◯男の考えていることなど、すぐ、わかった。しかし、きっぱりとことわりもせず、2年が過ぎてしまったのだ。

自分にイヤ気がさしたのか、A子は、一人旅に出た。もちろん、◯男には、言わずに。そして、旅先で、ほんとうに、赤い糸の男とめぐり会ったのである。そのまま、二人でひっそりと暮らしている。

◯男は、何も知らず、自分のかんちがいにも気づかず、地元で、一人で暮らしている。



その6


性格もやさしいし、よく気がつくし、大切にしてくれるし、いい人なんだけど………。

「自分のことはちゃんと自分でしているし、小さい子供でもないのに、ママが、ちょっとうるさいのは、すこーしイヤだからー」

「えっ?、ママ? 」

「それじゃあ、母さんにするよ。結婚したら、ぼくは家を出るし、母さんは、そのまま、今の家に住むんだから、生活は別々に独立してすることになるんだよ。だから、いいだろ? 」

(あなたのマザコンがイヤなのよ!)と、はっきり言えばいいのに、それが言えないうちに、結婚話まで出て来た。もう、はっきり言うしかない。

「ごめんなさい。やっぱり、あなたとは、結婚できません。あなたのお母さんとも、うまくやって行けそうにないし………」

「だから、別居するって……」

「長く続くことはないわよ」

「一生懸命、君を守るから、結婚してよ」………(時間切れです)






リクエストがあれば、あと数人分のデータはある。

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