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emeth  作者: 炭水化物
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いつか、だれかの【Ⅰ】

何処とも知れぬ山の中


大地を焼き尽くすかの如く照りつける真夏の日差しは此処には届かない


むせ返る様な熱気の中


眼前には敵国の兵士が一人


その双眸は虚空を見つめていた


何処とも知れぬ山の中


背後の幹にはまだ乾ききっていない赤い染みが広がっている


眼前には未だ幼さの抜け切らぬ青年が一人


その諸手には鋼鉄の悪魔を抱えていた


或いは愛する者の肩を抱いたかもしれないその手で


或いは未来を掴んだかもしれないその手で


彼は全てを守るため悪魔との契約を交わしたのだ


何処とも知れぬ山の中


雑然と立ち並ぶ木々はただ穏やかに傍観している


眼前には命を刈り取られた者が一人


彼は慊焉たる想いで逝ったのであろうか


はたまた失意のうちに散ったのであろうか


だが一つだけ確かな事がある


それは私が彼の死神であったという事だ


何処とも知れぬ山の中


春に芽を出した若葉は弱々しくも太陽へと必死にその手を伸ばし続けている


眼前には二度と動くことのないものが一人


彼は私を恨んでいるだろう


仕方のないことだ


だが私はそうするしかなかった


そうすることでしか


私は私の大切なものを守ることができないのだから


そしてそれもまた仕方のないことなのだろう


しかしそれと引き換えに


私は呪いをこの身に受けた


それは決して解けることはない


来たるべきその時まで


暗く淀んだ深淵の底でもがき苦しむより他に道はないのだ


そして私は罪と栄光の狭間をさまよい


獄にとらわれたみじめな囚人として


狂い立つような空しい生を享受し続ける










何処とも知れぬ













山の中















私はそこから















逃れられない




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