表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/129

第八十一話~指輪の謎編~

時間とばします。手抜きです(開き直り)


「ありがとう。異種族の友よ。君たちのお陰で余は本来の居場所に戻れた。君たちには最大限の感謝を」

「はは。こちらこそ、殿下にはお世話になったので……」


 俺達の目の前にいる殿下に視線を合わせて頭を下げる。片膝をついてはいるものの、それでもなお俺達の頭の方が高いのはご愛敬だ。何せ殿下は、ホーンラビットなのだから。


「それでは私は我が民の元へと戻る。深緑の魔森で道に迷ったら、我が民の後を追うといい。ではさらばだ!」

「さらばですウサ公!」

「行ってしまいましたね~。殿下ちゃん、モフモフで気持ちよかったのですが~」

「いや、ロゼさん……相手は一応王族ですから……。兎ですけど」


 ロゼさんが残念そうに去っていく後ろ姿を眺めながらつぶやく。ここまでの移動でずっと殿下を抱いていたのだから仕方ないと思うけど、仮にも王族をちゃん付けはどうなのだろうか? 相手がホーンラビットのNPCだとしても。


 にしても、レプラのお土産になりそうな素材を探しに来ただけなのに、ずいぶんと変わったイベントをこなしてしまった。まさかホーンラビットの王位継承権争いに巻き込まれてしまうなんて……


 話は神殿で転職を終え、ガムの言っていた森へと足を進めていた時にまでさかのぼる。



===

回想


「やったです! ルナもジョブチェンジ出来たです!」

「ロゼちゃん良かったですね~。私も~、まさか上の農家があるなんて思わなかったです~。【ベテラン農家】だなんてうれしいですね~」

「そうですね。レベルもたくさん上がりましたし、2人とも大きく強化されたようですね」

 

 神出鬼没の情報屋、ガムに転職の神殿を通ることを勧められた次の日。俺、ルナ、ロゼさんの三人でその神殿に訪れ、全員ジョブチェンジすることに成功した。メンツの中にマオさんとモフさんがいないのは仕事で時間が作れないからとのことだ。


 ロゼさんは【ベテラン農家】。生産の効率や質により大きな補正が掛る様になったらしい。これまでよりももっと農園を大きくしても大丈夫になったと嬉しそうな様子だった。しかも、新たなスキルによってこれまでよりも多くの種類を扱えるようになったとか。これでステータスをドーピングできるような植物を作れないか帰ったら研究しなおすと意気込んでいた。


 ルナは僧侶ジョブから【守護僧侶】というジョブへと変わった。MPとINTの補正は変わらないらしいが、DEFが上がりや防御系スキルが増えたらしい。DEFに極振りしているらしいし、更にルナは堅くなったといえる。前衛と共にタンクとして前に出ても問題なくまじかで皆を回復できるという一風変わった僧侶になった。自分も回復できるのだから、回復職よりもひたすら堅固なタンクと言った方が正しいのかもしれないけど。


 そして俺は中級道化師から【上級道化師】への転職だ。たぶん、要竜を倒した時点で転職できたんだろうけど、魔族領に来てすっかり忘れてしまっていた。

 もしかしたら上級道化師であのダンジョンに潜っていたら更にレベルが上がっていたかもしれないと思うと勿体なく思うものの、まぁ後の祭りだ。

 そして肝心の上級道化師の補正効果だが……これがまた酷かった。


【上級道化師】

1.常時、STR・DEF・INT・AGIの数値を5分の1にする。

2.常時、DEXの値を5倍にする。

3.常時挑発効果

4.スキルのリキャストタイムを2割減少。

※ 4の効果は芸能系統スキルに限り効果上昇


 もう、ね……一体俺はどこに向かっているのだろうって性能だ。中級道化師のDEXの倍率は3倍。この時点で充分強かったのに、それを大きく上回る5倍! ぶっ壊れの領域に突入している。次にレベルが上がってステータスポイント4ポイントをDEXに割り振ったとしよう。それだけで実質20のDEX増加だ。このゲームの初期の頃、割り振れるのがレベルアップ毎の2ポイントだけで、どうやってもステータス数値が低かった頃が懐かしい。上級にまで上がると全く別の世界に見える。……DEXだけは。


 目を背けるのをやめて他のステータスに触れよう。

 5分の1ってなんだその補正は。80%も下げるのか? しかも、値ではなく数値ってことはパッシブスキルや防具によってステータスを補正した後に下げられるってことだろ? もはや防具が防具として機能していない。せめてもの救いはレプラの作ってくれたこの兎革シリーズがDEXを上げる系の効果の役割の方が防御力よりも多い事か。

 色々試してみた結果、短剣を持つとこれまでよりもより重く感じるようになった。要求STRを満たせていないことによる重量ペナルティのせいだ。ルナに十字架を借りてみた所、重く感じるどころか持ち上げる事すらできなかった。これでは短剣くらいしか装備できないな。まぁ、他の武器を使う事はそうそうないだろうけど。

 一応、【成功】スキルを使っている最中は重量ペナルティが解除されるから戦闘にはさほど影響がない。せいぜい初期準備の必要性が増えたくらいだ。

 そうそう。ありがたい事に成功スキルのステータス上昇はジョブ補正の減少には引っかからないことが分かった。だから【成功】に依存してやれば問題なく戦える。


「メイにーちゃん。あれ、なんです?」

「え? あれは……ウサギか?」

「でも~、なんだか様子がおかしくないでしょうか~?」


 ルナの指さす方向にはウサギの群れがあるのだが、ロゼさんの言う通り様子がおかしい。ウサギの中で一匹だけやたらと他のウサギに絡まれているというか、いじめられている?

 いや、むしろ逃げるその一匹を追いかけて攻撃を仕掛けていると言った方が正しいか。


「なんだかかわいそーです。虐められてるほうのウサギを助けちゃだめですか?」」

「そうですね~。ポップしたモンスターが争うだなんて話は聞いたことがないですし、もしかしたらホーンラビットのプレイヤーなのかもしれませんね~」

「それなら助けないとマズいな。行こう!」


 もしプレイヤーだったらこのままじゃやられてしまう。急いで攻撃されているウサギの元へと向かう。

 AGIに割り振っている人物が俺達の中にいないので、急ぐためにも【ステップ】スキルを使い一足先に向かう。


「助太刀に来た! 助け入るか!?」

「おぉ! そこの異種族よ! 余を助けてくれるのか!?」

「う、ウサギが喋った!?」


 驚いてしまったが、喋るスライムもいたことを思い出し気を取り直す。プレイヤーならば喋れて当然か。なんだかウサギの言い回しが気になったけど今はそれは放置。


 右手に黄色い液体が塗られた短剣を、左手に紫色の液体を塗られた短剣を装備しなおす。 ウサギとの戦闘は慣れているし、ロゼさんから貰った新しい武器を試すいい機会だ。

 元々道化師ジョブの効果でヘイトが集まりやすいうえ、称号【ラビットジェノサイダー】の効果によって喋る方のウサギを攻撃していたウサギたちは俺の方へとターゲットを変える。

 こちらへ飛びかかってくるウサギに対し、回避ですれ違う瞬間に合わせて右手の短剣で斬りつける。


「キュ、キュウ!?」

「よし! 成功!」

 

 撫でる様に斬られたウサギは、その一回だけで痺れたのか苦し気な鳴き声を上げて動かなくなった。どうやらちゃんと麻痺したらしい。ウサギの耐性が低いのか、ロゼさんの作った麻痺毒が強力だからなのかはまだ判断がつかないけど、これはだいぶ戦い方が楽になるぞ。

 続けて跳んでくるウサギに、今度は左の短剣で斬りつける。今度のは麻痺毒ではないので動かなくなることはないが、毒状態になったのか動きが鈍くなった。

 

どんどんいこう。痺れさせ、毒らせ、痺れさせ、毒らせ……。最初の一匹目のスタンが解けたのを確認。麻痺は大体10秒前後と言ったところか。もう一度右手の痺れ毒で数回斬りつけて麻痺状態に。今度は左でも斬りつけて毒状態にもしておく。

 今回は新しいものを試すことを兼ねているので【的確急所】でクリティカル発生率を上げていないので、成功スキルもそこまで一杯発動していない。だけど、状態異常の効果が強力なお陰で大して苦もせずにすべてのウサギを片付けることが出来た。

 ちょうど倒し終わった所で二人もこちらに到着したので、くだんのウサギの方を見る。


「異種族の戦士よ。大儀であった。世は第29代兎王が六子。ルビー・ウサット・ウル・ラビータである。ラビータの名において心より感謝する」

「え? ………あ、私はヒューマンのメイ、です。ちょ、ちょっとロゼさん?」」

「NPC……ですかねぇ~。ロールプレイング中のプレイヤーでないのなら、ですが~」


 なんだか偉そうだと思ったら、本当に偉い兎だった! ロゼさんに確認をとるとNPCだろうと予想。これは、もしかしなくても何かイベントが発生するのではないか? 


「かわいーくせにえらそーです。名前長くておぼえれねーしウサ公で充分です!」

「な、なにをする無礼者! 余の頭をテシテシするな! 撫でるならもっとソフトに撫でるのだ」

「ル、ルナ! 多分そのウサギホントに偉いから! ウサギの王子様だから!」


 ロゼさんと話をしている間にいつの間にかルナがウサギ王子の頭を叩いてる!? 焦りながらもウサギ王子を取り上げる。

 しかし、今度は俺に抱き上げられた兎王はソワソワとおびえだした。



「メ、メイとやら。助けてもらっておいて何だが、貴殿に抱き上げられると物凄く落ち着かないのだが。なんだか生殺与奪権を握られているような感覚になるのだが……」

「え? あぁすいません。えっと、ロゼさんパスで」

「かしこまりました~。うわ~モフモフですね~」


 そういえば【ラビットジェノサイダー】の称号があったっけ。ウサギ種のモンスターだけに影響があるのかと思ったらウサギのNPCにも影響があるのか。

 反射的にロゼさんに渡したけど、ウサギのモフモフを堪能してご満悦だ。ウサギの担当はロゼさんでいいかな?

 ウサギの王子のNPCだなんてどう扱えばいいのか迷っていると、物おじしないルナが動いた。



「ウサ公はどーしていぢめられてたですか? 嫌われてんですか?」

「そういうわけでは無いのだ。ウサギ族は今、王位継承権争いの真っ只中である。王位継承権を持つ余も例外ではなく、兄上の放った刺客に襲われ今に至るのだ」

「お、おーい……けいしょーけん?」

「兄弟で王様になる為に喧嘩をしているんですよ~」

「ケンカですか!? ケンカは駄目です! せんせー怒るとこえーです」


 命を狙われているのだから喧嘩では済まないと思うけど、小学生にそんなことを説明しても酷なのでスルー。

 王位継承権争いをウサギがしているのか……。それならこのウサギ王子は殿下って呼んだ方がいいのかな?

 ロゼさんに抱き上げられた殿下を見ると覚悟を決めた凛々しい顔でこっちを見ている。本人は真剣なんだろうが、今の状況がロゼさんの巨大なメロンに挟まれたペットのウサギにしか見えないのでどうにもしまらない。というかロゼさん。目に毒なんですが。


「異種族の戦士メイよ。そしてそこな娘たち。折り入って頼みがある。余も王位争いに参加せねばならない。故に、貴君らの力を貸してほしい」

「うーん……力になりたいのは山々なんですが、俺達これからあの森に行くので殿下のお力には……」

「なんと! なんたる偶然! 我がウサギ王国もその森の中にあるのだ! これはまさに運命! どうにか貴君らの力をお借りできないだろうか!?」



回想終了 

===

サブタイ詐欺なのは許してください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ