表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/129

第八十話~魔族領・迷宮編~

迷宮編はここで終わりです。




【サイド:GM】


「よし! いいぞいいぞ! 魔王のレベルは許容値に入った! 他の見込みのある魔族プレイヤーもいい具合にレベルが上がったし、これでイベントを進めても一方的にパワー負けすることはないでしょ!」

『種族・魔王であるプレイヤー【マオ】は今回のダンジョン攻略により倍以上に上がりレベル56。当初の倍以上のレベルとなっています。プレイヤー【モフモフスキー】、【ロゼ】、【ルナ】の三名は、【ジョンド】、【コットン】と同様にレベル100を超えています。人族領側のトッププレイヤーの最大レベルでも未だ80代半ばですが、プレイヤー人口を踏まえるとシミュレーション上はまだ一方的に魔族側が押し負けると予想されています』

「人族領側がの最高レベルが80代? それはなんの冗談だいナビィ。最大レベルは351だろ?」


 意地の悪い事を言いながらゲームマスターは笑みを浮かべる。バグにも等しいシステム的に経験値の上がりやすくなる方法をとっている唯一のプレイヤー勘定に入れていいのかは甚だ疑問だが。

 

『351レベルですか………あなたの干渉したプレイヤーは対象から外しております。特に今回の貴方の干渉は度が過ぎています。特に、本来ラストイベントとなる筈の隠しエリアを開放させる等、一体何をお考えですか? これではあまりにもゲームバランスが__』

「崩壊すると思う? 本当に? 」


ゲームマスターの言葉に再度ナビィはシミュレーションを繰り返す。


 隠しエリアをクリアしたのは、メイ一人。そしてラストイベントクラスの経験値を得ても、そこから得た莫大なステータスポイントは全てDEXに割り振られているため戦闘自体はクリア前と大きな違いはない。

 更にドロップしたアイテムも、所持条件や能力の最大解放条件の為には他の隠しダンジョンもクリアしなければならない。いかに強力なチート武器とはいえ、現状はただの倉庫のこやしに等しい。

 確かに膨大なDEX値は特定のプレイヤーの成長を著しく促してしまうが、本人がそれを理解しているためむやみに広まったり、あからさまにひいきする様子もない。それに、レベルが上がりやすくなるDEXの仕様上、遅かれ早かれこの状況になることは容易にシミュレーションできた。

 想定外の事態に陥る可能性の考慮を大幅に引き上げ再演算した結果___

『……ゲームバランスが崩壊する確率……5%……。プレイヤー【メイ】のモラルを考慮すると1%を切ります。ほぼ問題ない数値です』

「まぁ、現段階で他の天属性の武器を二種以上集められたらこっちとしても多少手を打たないといけない事態になりそうだけど、それにしたって必須項目ではない程度の問題だしね。むしろ成長が遅れている種族の救済措置として彼は大いに僕達に貢献してくれているよ」


 助かるなー! と、大声で喜びの気持ちを叫ぶが、ふと何かを思い出したかのように真顔に戻る。


「で、何の話だったっけ?」

『話の大本はイベントを次の段階に進めるか否かです。現状では、プレイヤー【メイ】を始めとした一部のプレイヤーが参加の有無を問わず魔族プレイヤー側が不利になると思われます。あまりにも全体のレベル差が開いています』

「あぁそうだった。……ふむ。それならやっぱりもう少しだけ彼には魔族の育成に励んでもらおうかな。あまり本命ばかりに注目して急ぎすぎて大穴を見逃しても計画の意図に反するからね」

『……既に過干渉を繰り返し計画に揺らぎを発生させている貴方がそれを言いますか。既にプレイヤー【メイ】のSITA値は90オーバーです。次点のプレイヤーと20近くは慣れています。明らかに異常です』

「それは彼がそれだけ“らしさ”があるってことだろ? きわめて正常さ。なんてったって彼のステータス構成は僕の考察通りD___」

『マスター』


 強く窘めるようなナビィの音声に思わず饒舌になりかけた口を閉じる。そして、自分の言動を振り返り、確かに度が過ぎていたかと少しだけ反省する。

 彼の最終目的は自分の考察を証明であって、ゲームプレイヤーを面白おかしく弄ることではない。それこそ金の卵を産むガチョウの腹を裂いてしまってはここまで計画を進めてきた意味はないのだから。


「分かったよ。反省してる。流石にエクストラジョブか、それか最上位以上の戦闘職プレイヤーである前提があった上での適正レベル300帯の所に放り込んだのは失敗だと思ってるよ。ま、言い訳させてもらうと、彼だからこそ決行したんだけどね。彼の【成功】スキルはどんな逆境も覆す可能性を秘めた、言わばジョーカーだ。いくら上級道化師なんていう戦闘に不向きなジョブといえども勝てる見込みは十分あったんだよ。彼が本物ならね」

『そのことですがマスター。一つ思い違いをしております』

「え? 何が? 」

『彼のジョブは上級道化師ではありません。中級道化師です』

「………………………………は?」


 たっぷり数秒は固まってようやくゲームマスターは疑問の声を上げた。さっきまでとは違い、今度は本気で焦っているようで冷や汗がダラダラと垂れ始めている。

 中級道化師。中級。中級。と、中級という言葉がゲームマスターの頭の中でリフレインするが、肝心の脳みそがそれがどういう事かを認めたがらず拒否反応を起こしている。

 

「え? ちょっと待って? え? え? それじゃあ何? 中級程度のDEX倍率で、100近くレベル上がっちゃったの? 何それバグ? ていうかあの子魔族領なんかに来てる癖にまだ中級なの? レベル200越えそうだったのに? もうツッコミどころが交通渋滞しちゃってるんだけど」

『お忘れですか? 本来のDEXステータスによる経験値上昇補正と、STR・INT・DEFといった戦闘向きステータスの低さによる大物殺し補正での経験値上昇補正の相乗効果の賜物ですね。バグではなく仕様です。もっとも、それだけ敵の保有経験値が多かったというのも理由にありますが……一番は成功スキルによるステータス上昇を大物殺し補正に反映させることを忘れていた貴方のミスです。貴方のミスです』

「なんで二回言ったぁ!? ちょ、ちょっと行ってくる! 」


 ゲームマスターは慌ただしく席を飛び出して行った。もしこれが上級道化師であり、DEXの上昇補正とそれ以外の下降補正の倍率が更に上がっている状態だったとしたら……。その上昇したレベルでもなおDEXにつぎ込まれていたとしたらゲームバランスは……。


 途中まで行っていたその上昇レベルの予測計算とシミュレーションを、馬鹿らしくなったナビィは放棄した。





【サイド:メイ】


「あぁ良かった! 今日明日はログインしないだろうから大丈夫らしい! それに本人も気にしてなさそうだ! 」

「それは誰に連絡を取ったのですか~? ログアウトしたのならメールは届かないと思うのですが~」

「あぁ。ミツバの姉だよ。姉妹揃ってこのゲームをやってるんだ」

「そうだったのですか~。姉妹プレイヤーだなんて珍しいですね~」


 ミツバをダンジョンに置いて外に出てきてしまった事をモルガーナ経由で本人に知らせて貰った結果、今はリアルの方の道場優先らしく問題ないらしい。ただ、道場関連が落ち着く明後日か三日後には流石に一人では出口が分からないから迎えに来てほしいとのことだった。ログインしたときはメールで連絡をくれるらしいし、これでひと安心だ。

 膝の上に乗ったルナの頭を撫でながら安堵する。時計を見ると、もういい時間だ。首が船をこいでいるルナはもうログアウトさせたほうが良いかもしれない。


 さてと、それなら三日間くらいはここの周辺から動かない方が良さそうだけど、何をして時間を潰すかな。レベリングはもう十分したし、魔族領のモンスターのドロップアイテムを集めるくらいだろうか? そろそろレプラに頼んで装備を新調したいところだし、新しい素材を渡せばもう一度装備作成してくれるかもしれない。


「ロゼさん。この近くに服飾系アイテムをドロップしそうなモンスターとかはいますか?」 

「そうですね~。アイテムという事ならば~私の農園でも麻や綿を育てていますが~。入り用であればご用意しますよ~」

「あぁいや、流石に今度はお金で払いますよ。えぇと、これくらいでいいですか?」


 メニュー画面を開き金額を打ち込んでロゼさんにみせると、笑顔で頷いてくれた。どうやらこれで成立らしい。だいぶオマケして貰った金額の様だったから正直申し訳なさを感じる。


「毎度ありがとうございます~。ですが、この辺に服飾系のドロップをするモンスターには覚えがありませんね~」

「そ・ん・な・ときは~!」

「うわ!?」

「な、なんでやがりますか?! 敵襲ですか!?」


 突然後ろから、大声で話し掛けらたせいで寝ぼけまなこのルナが十字架の盾を持ちだしてキョロキョロしている。

 睨むように後ろを振り向くと、案の定と言うべきか何処から湧いて出たというべきか。情報屋のガムがそこにいた。驚く顔を見てクスクスと意地の悪い笑いをうかべているが、何故か息を切らしている。何かあったのだろうか。いや、別に聞かなくていいか。こいつがまともに答えるとは思えないし。


「で、情報屋のガムさんが一体何の用だ?」

「ちょっとちょっと~。僕の名前バラしちゃう? 情報料取っちゃうよ?」

「小さい子が無理やり起こされたんだけど? 迷惑料取っていいか?」

「そーです! まことにいかんでやがります! お医者料をそーきゅーにせーきゅーするです!」

「ルナちゃん。お医者料じゃなくて慰謝料ですよ~」

「あれ? 違うですか?」

「……あー、うん。ごめん。本題に入るね? 」


 ルナの子供らしい間違いとそれにマジレスするロゼさんに毒気を抜かれたのか、ガムが真面目に話を切り出し始めた。

 

「服飾系アイテムがドロップする敵だよね? 僕の得た情報だと、ここから北西に進んだ所にある森に獣系モンスターが多く出没するエリアがあるらしいんだ。他にもその森には魔族領特有のクモ系やキャタピラー系のモンスターが出るエリアもあるらしいし、そこならいい素材集めになるんじゃない? それに何より、その道中に転職できる教会があるらしいからね。君たち、最後にジョブチェンジしたのはいつ?」


 言われてみれば、要竜を倒した後からずっとジョブチェンジができるか確認してないな。あれから尋常じゃなくレベルが上がったし、そろそろチェックしに行ったほうが良いかな? でも、教会か……確かギルドでの転職と違ってお金を取られるらしいけどまぁ、魔族領だし仕方がないか。ロゼさん達を見ても同じように転職できるかのチェックをしばらくしていなかったらしい。にしても今欲しい素材の情報だけでなく他の気配りもできるなんて性格は兎も角情報屋としてはホントに優秀………ん? 何か引っかかるような……あ!


「ちょっと待て! どうして俺達が最近転職していないことを知ってるんだ!? って、もういないし!」

「油断ならなそうなお方ですね~。結局私とは初対面の筈なのに、まるで私の事を知っているような顔をしていましたし~」


 そりゃそうです。貴方の事を教えてくれたのはあの情報屋なのですから。


 なんだか誘導されているみたいで癪だけど、必要な事には変わりないので南西に向かって出発することにする。


 それにしても、モルガーナたちは今頃何をしているのだろうか?


次ふざけます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ