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第七十五話~魔族領・迷宮編~

折角作りためたストックを全部放出してしまった人がいるらしい……。

「やったです! 大勝利です!」


 エリアボスを倒したことによって先へと進む道が現れる。ステータスを確認すると、俺のレベルも1上がっていた。レベル200を超えている俺の必要経験値は馬鹿みたいに高いからな。エリアボスだけあって経験値もたくさんあったのだろう。

 ロゼもルナも、大きくレベルが上がったらしく、嬉しそうな顔をしている。これでレベルは十分高くなっただろう。下手をすれば数週間、いや、一か月分のレベルアップに相当する筈だ。それにこれ以上ロゼさんを連れて先に進むのは危険が大きい。いくらレベルアップがしてレベルが当たったとはいえ農家という非戦闘系のジョブ。俺もダガースローを使いすぎたせいで短剣の残数も心もとないし、ここら辺が潮時だろう。


「よし、それじゃ出口に戻るか」

「え!? メイにーちゃん戻っちまいやがるですか!? ロゼねーちゃんも!?」

「あぁ。元々ここに来たのはロゼさんのレベルを上げるためでもう十分だし、それにこれ以上進むのは危険だからな 」

「そ、そうですか……そうですか………」


 うっ……身体全体でショボーン(´・ω・`)な様子を表現するルナを見るとこのまま帰りずらい……。かといってこれ以上進むのも本当に危険だし、弱ったな。

 確認を取りにロゼさんを見ると、変わらずにこやかなままに頷く。


「いいじゃないですか~。せっかくここまで来たのですから~いけるところまでいってしまいましょう~。報酬の方は~しっかりと弾ませてもらいますから~」

「う~ん……まぁロゼさんが良いって言うならいいかな? ルナ、もう少し一緒にダンジョン攻略しようか」

「! 本当でやがりますか! なら行くです! レッツゴーです! 」


 軽い足取りで先を進むルナの後を追う。軽い足取りといっても、ルナのステータス構成はDEF極振りの為動きはすこぶる遅い。同じくDEX特化にしている俺や戦闘職でない為にステータス補正が低いロゼさんでも見失うことはない。


 暗い道を更に進むと、やはり出てくるのはアンデッド系エネミー。今度はソルジャースケルトンとくたびれたローブと杖を持ち宙に浮かぶスケルトンの二体。何も持たず何も纏っていなかった序盤に比べると、格段に装備が良くなってきている。敵が強くなってきている証拠だろう。ソルジャースケルトンはエリアボス前にも見たが、浮かんでいる方は、リッチあたりか?


 ルナが十字架を盾の様に構え防御姿勢を取り、俺も短剣を取りだして戦闘態勢をとる。ソルジャースケルトンが剣を振るい、リッチが魔法をこちらに放つが、いずれの攻撃もルナの十字架が全て防ぎきる。当たり前の様に0ダメージだが、普通のタンクでは多少なりともダメージが発生する筈なんだけどな。それも割と奥に進んだダンジョンの敵の攻撃だ。それだけルナの防御力が高いってことなのだろう。

 


「【ルートバインド】~。今です~」

「ナイスです! どっせぃ!!」


 地中から木の根が現れ、ソルジャースケルトンとリッチを地面に縛り付け、ルナがハンマーよろしく十字架を振り下ろす。動けないアンデッドを殴る様はさながら餅つきをしているようだ。

 特攻火力によって見る見るうちに二体のアンデッドのHPは減っていき、ついには俺は何もしなくともアンデッドは倒れてしまった。

 

「あらら~。思ったよりも簡単に済みましたね~」

「それだけルナ達がつえぇってことです! この調子ならかんぜんせいはも夢じゃねーです!」

「はは。流石にダメージディーラー担当のミツバがいない状況じゃダンジョンボスまで倒すのは難しいかな……。にしても中ボスクラスを倒した後もアンデッドか」


 この調子ならダンジョンのボスもアンデッドなのは確定だろうな。だけど、どうしてアンデッドなんだろう? ジョンドとコットンの海賊団も同じくアンデッドだった。なんだか最近アンデッドと縁がありすぎるな。……うーん、こういう考察系はモルガーナの領分だしなぁ。

 


「そうですね~。このダンジョンの名前は【棄てられし者の揺り籠】。揺り籠といえば、思い浮かぶのは第二次世界大戦直後のイギリスのスローガン、【揺り籠から墓場まで】でしょうか~。揺り籠を墓場に例えるならば、捨てられし者とは死者。そう考えると、アンデッドのダンジョンなのは自然な事ではないでしょうか~」


 所謂カタコンベですね~。とコロコロ笑いながらロゼさんは自らの考察を披露する。確かにそれなら分かりやすいな。アンデッドが棄てられし者で、中ボスの名前は揺り籠の守り手だったから、ダンジョンボスは揺り籠を揺らす者とかか? どちらにせよ、そのボスもアンデッドなのだろうからルナがいれば何とかなるだろう。


_____ないかな?

_____っちはー、一度通ったようなー?


「ん? ロゼさん何か言いましたか?」

「いいえ~? 私は何も言っていませんが~」


 気のせいか? 今何か間延びした声が聞こえたと思ったんだけど……。

聞こえたのは俺だけじゃなかったらしく、ルナも首を傾げて辺りを見回していた。 


「んー? 今の声、どっかで聞いたことがある気がするです。どこだっけ……あー! 」

「ルナの知り合いなのか?」

「ですです! この声、めっちゃつえぇおっちゃんの声です!」

 

 めっちゃ強いおっちゃんって言えば、ルナの十字架の元の持ち主の事か? 確か、絶賛ここで迷子中とかいう……。ってことは、この近くにその人がいるのか?

 かすかに聞こえた声の方へと三人で歩いて行くと、髪に白いものが混ざり始めているような男性と、その男性よりも頭一つ二つ背が高い甲冑の姿があった。甲冑の方は分からないが、ダンジョンの敵も相応に強い敵となっているにも関わらず、男性の表情はまるで散歩を満喫しているようなリラックスした表情だ。ルナがめっちゃつえぇと表現したようにこの程度の敵は造作もないという自信の表れだろうか。でも、見る限り防具や武器の類は見えない。ミツバのような格闘家ジョブなのか?

 不思議に思いながら見ている間に、ルナは男性の元に駆け寄った。


「おっちゃん! 久しぶりです! おっちゃんがくれた武器のお陰でめっちゃ強くなれたです! ありがとです! おっちゃんはまだ迷子のままでやがりますか?」

「ん? ルナちゃんかぁ! 久しぶりだねぇ。その十字架、使ってくれてるんだねぇ。喜んでもらえて良かったよ。それと、困ったことに出口が分からないままなんだよ。おじさん方向音痴でねぇ。」

「あはは! おっちゃんらしいです! それならルナ達と一緒に行くです! 一緒にダンジョンせーはするです!」

「ちょ、ルナ!?」


 ルナがいきなり勧誘を始めて焦る。ビジネスであるロゼさんやまだ小さいルナはまだいい。しかし、いくらルナの知り合いとはいえパーティーを組んでしまっては俺の経験値の秘密を知るものが増えてしまう。魔族領に来てから既に4人に秘密を明かしてしまっている以上、これよりパーティメンバーを増やすのは避けたい。


「ところでルナちゃん。こちらの方たちは?」

「ルナのパーティメンバーのメイにーちゃんとロゼねーちゃんです! 二人ともすっげーつえぇんです!」

「へぇ。おじさんは__失礼。僕はマオ。今はただの迷子の中年だよ」

「オイラーはー、モフモフスキー。長ければー、モフさんって呼んでー。リビングアーマーだーよー」

「これはご丁寧に~。私はロゼ。お二人同様魔族プレイヤーであり、種族はアウラウネ。ジョブは農家です~」

「俺はメイ。種族は皆と違ってヒューマンだ。ジョブは………短剣使いだ」 

 

 いつもの通りジョブを偽って自己紹介をする。甲冑の人物は重装備をしているのではなくて重装備が本体だったのか。普通なら人外キャラって所に目が行くんだろうが……遅い! 圧倒的に喋るのが遅い! まるでどこぞの戦場カメラマンかのような遅さだ。語尾を伸ばしてゆったりとした口調であるロゼさんと比てもなお遅い。

 マオさんの方は見た目はヒューマンと同じようだけど、ここが魔族領であることを踏まえるとやはり魔族なんだろう。一体なんの種族だろうか。ジョンドと同じようにアンデッド系? いや、吸血鬼か? 

 

「モフモフスキーさんは名前からして獣人プレイヤーそうなのに魔族プレイヤーなのですね~。どうしてですか~」

「獣人はねー耳と尻尾だけなんだー。もっとーモフモフ度が高い方が良かったんだけどー」

「あー……魔族だけは種族ランダムですからね~……」


 ロゼさんは表情のない甲冑で器用に遠い目をするモフモフスキーことモフさんと意気投合している。そういえば魔族は何の動物か選べる獣人と違って完全ランダムだったな。そう考えると、今まであった魔族プレイヤーの殆どが人に近い形をしているのは割と珍しいんじゃないか? マオさんに至っては殆ど人族だけだし。

 この二人の内警戒すべきはマオさんだな。一見子供に優しそうな男性にも見えるけど、名前だけ告げて種族やジョブといった情報を公開していない。恐らくかなりの切れ者の筈だ。

 彼をパーティメンバーに入れて俺の秘密を漏らすのは危険かもしれない。


「マオのおっちゃん! 一緒にこーりゃく行くです! おっちゃんが入れば鬼と金棒です! 」

「あー、ルナ? 流石にいきなりパーティに誘うのは止めたほうが良いと思うぞ? マオさん達にも予定があるだろうし」 

「いや、僕達に別に予定はないよ。何せ出口が分からなくてさ迷っているんだからねぇ。むしろここから出られるなら好都合だよ」

「オイラもー、問題ないねー」


 やっぱりそうなるよな……。最初から迷子だって言っていたし、断わる理由はないだろうし。どうするか悩んでいるとロゼさんが耳打ちをしてきた。


「メイさん。貴方の秘密を広めてしまう危険はよくわかりますが~、ここで変にパーティを入れないのは不自然ですよ~。変に探られて曲解した情報を広められるよりは、正直に話して黙っていて貰えるようにお願いしたほうが得策だと思いますよ~」


 ううむ……それもそうだな。確かに隠してしまったら変に広められてしまう可能性が高い。それくらいなら、ちゃんと口止めをしておけば2人くらい許容したほうがまだいい。


「すいません。これから二人をパーティに誘いますが、一つお願いがあります__」

 





「なる程。つまり、君の秘密とやらが広まるととっても危ないと。そういう事なら約束するよ」

「オイラもー約束するよー。口堅いからー安心してー。鎧に口はないけどー」


 素直に話してみると二人ともすんなり納得してくれた。ロゼさんの言う通りにして良かった。同じ年上の女性でもモルガーナとは偉い違いだな。

 ルナにしたようにメニュー画面を開き二人にパーティ勧誘を送る。何故かマオさんがもたついて隣のモフさんが耳打ちをしていたけど、まぁ気にしなくていいだろう。


 これにてパーティメンバーは五人。さて、どうなることやら……

 




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