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第六十九話~魔族領・迷宮編~



「やっと到着か。助かったよ」

「とんでもないです! 助かったのは僕の方ですよ! 本当に二人にはお世話になりました!」


 そう言って相棒は謙遜しつつもメイと手を握る。長かったようで短いパーティーだったが、相棒にとってはとても充実した時間だったのだろう。

 いや、実際にだいぶ濃い時間だった。


 偶然出会った他種族のプレイヤーとの接触、そして船旅と思いきやの船上バトル。

 それで簡単に終わるわけでもなく、相棒へ唐突にくだされたイベント。共闘。


あの無茶ぶりばかりの船長にぶん投げた所から始まり、いつ襲ってくるかもわからない森林探索から洞窟探索。エリア内にひしめき合うリザードマン達との混戦。挙句の果てにクラーケンだなんて超大型エリアボスとの対戦だ。濃く感じない方がおかしい。


「それじゃ、ここでお別れになるな」

「うぅ……ごめんなさい。せめて船を何処かにおいておけたらついていけたんですけど……」

「ま、船を置いていけないんじゃ仕方がないだろ? 」

「メイの言う通りだぜ相棒! そのうち港とかも見つかるだろうし、それまでの辛抱だぜ!」


 予想外というべきか案の定というべきか、相棒の手に入れたこの海賊船はアイテムボックスへの収容が不可能だった。しかも、一定距離船から離れてしまうと所有権がなくなってしまうらしい。

幸いというべきか、一定時間の間であれば船を岸につけて陸に降りても所有権はなくならないので、探検やレベリングができなくなるという事はない。


だが、流石にメイ達について行くことは難しい。二人の目的は魔族プレイヤーが多くいる始まりの町付近の散策だからな。流石に一日船から離れてしまっては所有権がなくなってしまうだろう。

相棒には気の毒だが彼らとはここでお別れ。メイ達は始まりの町に向かって歩いて行ってしまった。手を振って泣く泣く別れる相棒を慰めるか。


「そう悲しそうな顔すんなって。海の男なんだろう? 笑顔で見送ってやろうぜ」

「うぅ……そうですよね。メイさーん! 船が必要になったらいつでもいってくださーい!」


 それにしても、メイとミツバ……。不思議な二人だったな。かたや結構高難度に設定されている筈のリザードマンとステゴロで戦うし、かたや訳のわからんスキルばかり使う超変則的な戦い方。どっちも訳が分からない。

 極めつけはメイのレベリングスキルだ。砂浜のカニを数匹倒しただけで1レベル上がった時点でおかしいとは思った。確かに堅い甲殻のせいで他のプレイヤーは相手にしないし、難度が高い分経験値もうまい。だが、かといって数匹だけでレベルアップなんておかしい。

 少なくとも最近は数十を超える数を一掃してやっと1レベル上がるかどうかだった。それが数匹単位で足りるようになるってどんな倍率だよ。


 エリアボス戦以降なんて俺達のレベルは三桁に達してしまったし。一つのイベントで50以上だぞ? それどんなインフレゲーだ? 


 あの二人が実はプレイヤーを装ったボーナスキャラだと言われても納得してしまう自信があるね。


「行っちゃいましたね……コットンさん」

「そうだな。ま、結局はゲームなんだからいつでも会えるさ。それで相棒? 次はどこに行くんだ?」


 船を得てこれで終わりって訳ではない。むしろ海賊ジョブとしてこれからクラスアップしていかないといけないんだからな。下っ端海賊から海賊になった。海賊の次は船長で、次は七〇海あたりになるのか? そのうち海賊王とかにも派生するかもしれないし、夢は広がるだろう。


 特に考えてなかったのか、相棒は小首をかしげて進路をどうするか悩んでいる。船長に従いついて行く立場から、従えて進んでいく側にいきなりなったんだからな。仕方がないといえるだろうよ。


「決まってないならそれはそれでいいだろ。風の行くまま波のまま、適当に進んで考えようぜ!」

「そ、そうですね! まずは前進! それから考えます!」


 少々行き当たりばったりではあるが、これもある意味海の男だろう。どうせ時間はたっぷりあるんだ。冒険の旅はゆっくりしていこうじゃないか。








「メイさーん! 船が必要になったらいつでも僕にいってくださーい!」


手を振るジョンドに手を振り返しつつ、俺達はもう一度魔族領大陸へと入っていった。

 イベントが終了した後、俺達はジョンドに始まりの町近くの陸地まで運んでもらった。それまでの経緯でクラーケンという大型のエリアボスと戦うことになったりと大変だったけど、ジョンドは船を手に入れて自立したし俺達は経験値を大量に稼ぐことができた。結構濃い時間を過ごせたといえる。

 

「ん……結構たくさん戦えたし、船旅は大満足だったよ? こっちでも戦えるかな?」

「そうだな。始まりの町の周辺らしいからそこまで強い敵はいないとは思うけど、少なくとも戦える機会はあるだろうな」


 満足げに背伸びをするミツバには悪いがけど、流石に始まりの町周辺でエリアボス戦並みの戦えるスポットなんて期待できないだろう。

 あれ? でも、モルガーナがヒューマンの始まりの町に来たときにアニーがなにか言っていたような。確か、他の種族の始まりの町に行くときは周囲のモンスターのレベルが上がるとかなんとか。本当に強くなるのだとしてもミツバの喜ぶくらいのモンスターはそうそうでないだろう。

 

 逆にあまり強いモンスターに出てこられても俺が戦えなくなるから困るんだけどな。ジョンド達と戦ってみて思ったけど、自分の火力の低さが身に染みて感じた。

 まさか、プレイヤーを武器としてお互いの攻撃力を高め合うなんて思いもよらなかった。あれはあの二人にしかできない戦い方だけど、俺もそろそろ武器くらいは変えた方が良いかもしれない。

 ただ、如何せん他の武器が持てないんだよなぁ……。今の俺のSTRで持てる武器は始まりの町でも買えるような初期の鉄製の短剣くらいのものだ。

STRのステータス割り振ればいいんだろうけど、ジョブ補正のせいで三分の一になってしまうSTRに割り振るのはあまりにもったいない。

 

「なにかお困りかな?」


 唐突に話しかけられて振り向くと、そこには魔の森を抜けてすぐに分かれたはずのガムの姿があった。どうしてこんなところにいるんだ? 

 普通に陸地の方を歩いてきたとか? でも、普通に歩いて移動すると敵のレベルが高くて難易度が高いって言ってなかったか? 

 シーフだから隠れながらここまで来たのだろうか。


「む、なんでストーカーがこんなところにいるの? 殴っていい?」

「なんでもなにも僕は情報屋だよ? おいしい情報がありそうなところには何処だって現れるさ。あ、拳を握ってにじり寄ってくるのはやめて? ホントストーカーじゃないからね!?」


 まだストーカー認定したまま信用していないミツバとの話を聞く限り、本当にここまで自力できたっぽいな。

 こうして女子中学生にビビっている所を見るとそんな感じに見えないけど実は本当にすごいプレイヤーなのかもしれない。

 

「ぼ、僕のことよりもメイ君だね。表情を見る限り何か悩みごとでもあるんじゃないかな? ほら、僕にできることがあるかもしれないよ?」

「センパイ、喋らない方がいいとボクは思うよ?」

「まぁ、俺も情報屋相手にわざわざ情報を晒す必要な無いとは思うけどな。例えば、どこにどんな敵がいてどういう事があったとか。」

「あはは……いやぁそんな事、あわよくば程度しか考えてないよ」


 悪びれもせずに堂々とそう宣うガム。情報屋だなんていうから何かしら企んではいるとは思ったけど、やっぱりそんな事考えていたのか……。どうせ海の奥のクエストなんて知った所で使い道は少ないだろうけど、ただで情報を渡すなんてのは癪だ。

 

「裏はあるけど、力になりたいって思っているのは本当だよ? これでも情報屋だからね。ここらの情報は持ってるよ?」

「とはいってもな。この問題は正直どうしようもない問題で__」

「火力が足りない」


 ガムのつぶやきに息を飲んだ。俺はあいつに対してジョブについては教えていない。いくら魔の森でずっと俺達を尾行していたとしても、戦い方だけでそこまで特定できるのか?

 剣士や魔法使いといった事ならともかく、道化師の能力や戦い方なんてそうそう出回らないはずだ。

 動揺している俺を察したのか、ガムは苦笑したまま続きを話し始めた。


「不思議そうな顔をしてるね? 君が使っている武器は鉄の短剣。始まりの町の武器屋でも買える初級装備だ。ゲートキーパー・キードラゴンを倒したパーティーのプレイヤーが使うような武器じゃない。ならどうしてそんな武器を持っているか? 恐らくはSTRが低いんじゃないかな? これくらいの推察ができないと情報屋なんてできないよ」


 というか、使ってる武器を見ればだれでもこれくらい勘づくよ。と、もはや苦笑いで推論を閉めた。


 いわれてみればそれもそうだ。これまではジョブの多くが魔法使いとタンクが大半を占めているせいで装備している短剣について触れるプレイヤーはいなかった。

 だけど情報屋であれば短剣くらいすぐ見分けがつくか。……これからは魔法使いとタンク以外も増えるだろうし、気を付けておこう。


「それで、それが分かったからってどうするつもりだ? 確かにお前の言う通り俺は割り振っているSTRは少ない。でも、それが分かった所で解決策なんてあるのか? せいぜいが『レベルを上げてSTRに割り振りましょう」程度だろう?」

「“少ない”ね。それくらいならこんな話持ちかけないよ。僕がこの話をしたのは情報屋として君の力になれると思ったからさ」


 ……そういえばそうだな。得意げに火力について追及してくるなら何かしら対策があるから言い出しているんだろう。話だけなら来てもいいかもしれない。


「もっとも君の抱えた問題を直接的に解決できるって訳じゃないけどね」

「直接的には? 俺が出せるダメージを増やす事じゃないってことか?」

「そういう事。ここから先のゲーム内時間で十数分って所にロゼっていう魔族プレイヤーがいる。彼女の力を借りれば多少は火力、ひいては戦略の幅が広がるんじゃないかな?」


 そういって、魔の森の時にやったように指を指す。力を借りれば……って、短剣でも作ってくれるのか? それ以前にちょっと待て。なんか引っかかる。 

 ガムが火力よりも戦略の幅の方を強く言ってなかったか? やっぱり道化師ジョブの事をある程度調べているんじゃないだろうか。


「あぁそれと、その近くにダンジョンがあることも掴んでるよ。結構規模が大きいって話だから、レベリングにはちょうどいいんじゃないかな。それじゃ、確かに伝えたよ。僕はこれで失礼するよ。【ハイド】」

「あっちょっと!」

「やっぱり一発殴っておいたほうが良かったかも。……気配ももう感じないよ?」


 ガムは教えるだけ教えると、そのままどこかに移動してしまったらしい。ミツバも気配を見失ってしまって悔しそうにしている。

正直ガムについてより、普通の女子中学生が気配だなんて単語を自然に使っている事に突っ込みたい。言ったら殴られそうだから言わないけど。

 いや、普通の女子高生じゃなかったらセーフか? 

 

「センパイ。なんかしょうもない事考えてない?」

「何のことかわからないな。それよりも、ガムの言う通りの方向に行ってみてもいいか? ほら、近くにダンジョンもあるらしいし戦闘場所には困らないと思うぞ」

「……露骨に話を変えてきたね? ボクはとっても優しいので見逃してあげるよ?」


 露骨な話題展開に対して露骨にミツバが反応してきたがスルー。わざわざ見逃してくれてるトラの尾を踏むまでもあるまい。許してくれたならそれでいいとしよう。

 それにガムが言っていた戦える場所。そう、ダンジョンだ! この手のゲームにおいて超定番のテンプレ。最後の階層まで到達することができたら、何かすごいアイテムでも手に入るんじゃないか?





___」そういってガムの示した先にあったのは、大規模な農園であった。




だんだん自分が何書いてんのか分かんなくなってきた

異世界物で書き直したい衝動が酷い


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