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第六十七話 ~魔族領・宝島編~

プレイヤースキルが異常な奴がいると、主役よりも目立ってしまう不思議。


「やっぱり船長が投げてくれた方向の通りでした! 優しいですよね船長さん♪」

「いや、優しい奴は道をぶん投げた方向で教えたりは……」

「メイ……相棒の為にも黙っててやってくれ……」



 上機嫌で洞窟の中を進むジョンドに対して突っ込みを入れようとするが、コットンが疲れたようにそれを止める。ジョンドの目は人が無条件に善人に見えるフィルターでもかかっているんじゃないだろうか? 

 じゃなきゃ船長の行動を優しさから来るモノなんて考えられない。うちの座長なんて……あ、ダメだ。考えた一瞬背筋がヒヤッとした。


 船長の優しさは置いておくとして、今はこの洞窟の中だ。


 洞窟、と一言で言っても中は山を掘り進んでできた洞窟ではない。天井には氷柱状の石が伸びており、水気が強い。言うなれば鍾乳洞だ。


 幸いというべきか、洞窟に入ってしばらく立つが、罠やモンスターの類は一度も出てきていない。そのせいでミツバはちょっと不満げな様子だ。


「むぅ。ゾンビの大群が出てきてハザードな感じになったり、地底人の軍隊との世界をかけた戦いが始まると期待してたのに。何も出てこないよ?」

「お前はゲームを何だと思っているんだ……流石に設定や世界観を無視した展開はないよ。ゲームだからこそなおさらな。」

「はは。まぁミツバの言うこともわかるぜ。あの船長の提案だ。正直、嵐の前の静けさって感じがして俺は怖いぜ。注意しとくんだぞ相棒」

「はいコットンさん!」



 少し警戒気味に震えるコットンがジョンドに注意を促す。嵐の前の静けさか。確かに、これだけ何かありますといった雰囲気の洞窟の中で何もないのは不自然だもんな。

 これから大きいイベントがあるから注意しとけよってことなら納得がいく。何があってもいいように気を引き締めるが、残念ながら一番警戒しておかないといけない人物は元気に返事をしてニコニコ笑っている。ちゃんと伝わっているんだろうな?


 

 どこからか水が湧き出ているのか、足元には水が流れているので歩くたびにピチャンピチャンと水の音が洞窟内に響いている。修学旅行の一環でしか体験できないような光景ではあるけど浮かれすぎは良くないぞ?


「そういえば、あんまり戦えないって言ってたよね? ボクみたいに道場とか通ってたりするのかな?」

「ん? あぁ、別にリアルが忙しいとかって話じゃないんだ。海賊での弟子入りイベントは基本船上での操舵法について叩き込まれるんだ。そのせいでモンスターと戦う機会なんてそうそうないんだよな。あるとしたら、偶に他の海賊とドンパチやるくらいで」

「ははは……レベルを上げるのは時々船長に降ろしてもらった時くらいですもんね。結構自信があったんですけどメイさん達に会って驚きましたよ。それに、現実はとっても暇ですしね……僕にできる何も出来る事なんてないですよ……」


 そういって、ジョンドは辛そうに無理をして笑った。何かリアルの方で問題でもあるのだろうか。さっきまで楽しそうだったテンションは一気に沈んでしまった。

 ……地雷でも踏んでしまったかな。たぶん、これ以上触れられたくないだろうし、話を変えた方が良いだろう。



「それなら今回パーティーを組めてよかったな。さっきまでのトレント戦でも結構経験値を稼げたんじゃないか?」

「そ、そうだな! メイ達のお陰でレベルが跳ね上がったぜ! これだけポンポンとレベルが上がると笑いが止まらないぜ! な? 相棒! 」

「……はい。そうですねコットンさん! メイさんも、ありがとうございます!」

「いや、俺はパーティーを組んでるだけで何もしてないさ。俺の経験値にもなるしな。それよりも、コットンはどういった経緯で海賊ジョブになったのか興味があるんだけど聞いてもいいか?」

「もちろんです! これは、僕が魔族領の始まりの町に初めて来たときなんですけど__」

 

  




 ジョンド達の話を聞きながらしばらく歩き続けると、初めて変化が訪れた。


 進路方向の奥から、ピチャンピチャンと誰かがこちらに向かってくる音が聞こえてきたのだ。戦闘に備えて俺達全員は警戒態勢に入る。特にミツバはただ歩くことに退屈していたのか、待ってましたと言わんばかりに眼を輝かせている。

 

「退屈しのぎにちょうどいいよ? センパイ、ボクが先にいっていい?」

「……いや、今はジョンドがリーダーだからな。どうするジョンド?」

「ぼ、僕ですか!? えっと……全員迎撃で!」

「「「了解!」」」


 ジョンドの方針を聞き、ミツバは枷が外された番犬かという勢いで音のしたほうへと走り去る。俺達も後に続かないとな。


「うわぁ。トカゲ人間? 人型なら大歓迎だよ?」

「トカゲ……リザードマンってやつか? 相棒! パターンAだ!」

「はいコットンさん!」

 

 追いついた先では既にミツバが戦闘を始めていた。戦っている相手は、三叉の槍を構える二足歩行のトカゲ。コットンの言う通りリザードマンであろうそのモンスターは、無手であるミツバを相手に大苦戦。えぇ……

 手にする三叉の槍にて必死にミツバを遠ざけようとするが、閉鎖空間であるこんな洞窟の中でそんなことをミツバが許すはずもない。

 突き出される槍を軽々と躱すと、そのまま懐に潜り込んで殴打。苦しそうにたじろいで後退し、牽制するように槍を振るうがそれをミツバが避ける。延々とこれが繰り返されていた。

 完全にハメ技に入っている。正直手の出しようがない。……もうこれ全部ミツバ一人でいいんじゃないかな……


「ううん……長物と戦うのは初めてだけど、ちょっと期待外れだよ? 技の切れがいいわけでもないし……狭い場所だから仕方がないか。もういいよ? ていっ 」

「シャゲダンッ!?」


 それだけ言うと、ミツバはリザードマンの頭部を蹴りHPを消し飛ばした。満足するほどの相手ではなくても、槍を持つ相手と戦うのは初めてだったらしくミツバはご機嫌になったようだ。


「まぁ……うん。ミツバの強さは知ってるし、こうなるなら急ぐ必要もなかったかもしれないな。あ、リザードマンは俺がもらうな」


 倒したリザードマンは、コットンが【捕食】スキルで吸収した。新しくスキルを得られたらしいが、【槍技強化】というコットンには無用な物だったらしく不満げにプルプル震えている。



 

「僕達じゃ槍なんて使いませんもんね。残念ですねコットンさん」

「次にも機会があるし気にすんな相棒! それよりも出てきたのはリザードマンか。てっきり洞窟だからコウモリ辺りが出てくると思ったが、予想外だったな。」

「鍾乳洞だし、水場だからかもな でも、敵が人型ならミツバの独壇場だな」

「ばっちこーいだよ?」


 俺の言葉に、ミツバが気楽に手を振ってこたえる。洞窟だけあって道幅はあまり広くない。せいぜい一人が何とか武器を振って戦える程度だ。

だから連携を取りながらの戦いは厳しいけど、こっちにはミツバがいる。相手が人型のリザードマン相手なら彼女に任せておけば危なくなく進めるだろう。

そう思っていたが、コットンが待ったをかけた。


「ちょっと待ってくれ。確かにミツバは強いが、流石にそこまで全部任せるわけにはいかないからな。相棒と順番に戦うってことでどうだ?」

「ボクは全部任せてもらっても大丈夫だけど、そういう事なら大丈夫だよ?」

 

  そういっている間に、また奥から近づいてくる足音が聞こえてきた。恐らく同じようにリザードマンだろう。今度はミツバの代わりにコットンを肩に乗せたジョンドが前に出た。


「うし! それなら次は俺達の番だ。頑張ろうぜ相棒!」

「はいコットンさん!」


俺達の目の前に現れたのは、やはりというべきかリザードマンだった。ただし、今回の個体は槍ではなく剣を持っている。

 違う武器を持つ個体をみて、ほんの少しだけミツバが羨ましそうな顔をしたが前に出るようなことはない。約束通り順番を守るようだった。


 ジョンドがリザードマンにカットラスで一閃。

 リザードマンの攻撃が当たることも厭わずに剣撃を繰り返し、ノーガードで押していく。

 コットンも肩の上から見ているだけではない。ガードを捨てているジョンドの負担を少しでも減らすように、リザードマンへ水鉄砲でも飛ばすように酸を飛ばして牽制を続けている。


 一見無謀に見える、ガードを捨てた殴り合いであるが実際はそうではない。ジョンドの種族アンデッドヒューマンは種族的にHPが高く、時間経過で回復していくらしい。つまり、非常に打たれ強いのだ。しかも、攻撃についてはコットンと合わせて二倍の手数。

 いくらダメージを負おうと最終的なダメージレースで勝てればいいという、豪快な戦い。DEX特化で紙耐久な俺にはできない戦い方だな。

 このままのペースでいけばジョンドが勝つだろう。そんな風に考えていると、リザードマンは攻撃の手を止めそのまま逃げだしてしまった。


「コットンさんコットンさん! リザードマンに逃げられちゃいました!」



 まさか、モンスターが逃げるなんて選択肢を取るのか!? 最初のころに戦った野ウサギさえ逃げずに突進だけしかしてこなかったぞ!?


 いや、待て。よく考えたら経験値が大量にもらえる系のモンスターをはじめとして、すぐに逃げるモンスターはゲームではよくある存在か。


 先行するジョンド達を追いかけ、洞窟の中をまっすぐ走る。下に流れる水のせいで、足が濡れて冷たい感覚を感じながら走っていると広い空間に抜けた。これまでの通路を流れていた水はここに流れついていたのか、大きな湖まで存在する。


「広い!? ボスエリアにでもついたのか!?」

「ボスかは分からないけど、さっきのリザードマンはたくさんいるよ?」

「あえてボスっていうなら一番奥の王冠をつけているリザードマンですかね?」

「「なにぃ!?」」 


 ミツバとジョンドのいう方向を急いでみる。そこには十や二十どころではない数のリザードマンの大群。船で戦った海賊たちよりも多いんじゃないか?

一番奥には、杖を携え王冠を冠った、他の個体よりも一回り大きいリザードマンの姿。確かにボスというならあれがボスだろう。

 リザードマンたちは俺達に気付いたのか、それぞれ槍や剣といった武器を構えてこちらによって来る。

 


「コットンさん! いっぱい来ました!」 

「囲まれたら厄介だ! メイ! あの怯ませるスキルを使えるか!?」

「了解!」


 トランプを取り出し、リザードマンの大群に向けて数枚を投擲。手裏剣の様に飛んでいくトランプに向けて指を鳴らすと、それらが一斉に爆ぜ怯ませた。


「【フラッシュ・ポーカー】! ついでだ! 【ダガースロー】!」

「ナイスだ! 【アシッドショット】!」


 スキルの効果によって一瞬だけ怯んだリザードマンに向けて、遠距離攻撃ができる俺とコットンで攻撃を仕掛ける。しかし、コットンの攻撃はある程度通ったものの、俺の攻撃は大してダメージになった様子はない。成功スキルでステータスを強化していないせいだ。

 先にスキルを使っていなかったことに歯噛みしながらボールを取り出しジャグリングを始める。

 

【ジャグリング:成功!】

【スキル:成功!】【連鎖!】

【ジャグリング:成功】

【スキル:成功!】【連鎖!】


 

「メイさん!? どうしてジャグリングを!?」

「そういえば見せてなかったか……道化師的に必要な事だから気にしないでくれ! それと、悪いコットン! 十秒くらい時間をもらう!」

「わかった!」


 突然ジャグリングを始めたことにジョンドが驚くが、それに詳しく説明しているほどの時間がない。本当なら【演目設定】スキルも使って全力で戦いたいところなんだけど、何が起きるかわからない今、一日の使用回数に限度があるスキルを使うのは控えておきたい。

 アシッドショットで近づくリザードマンをけん制しているコットンが叫ぶ。


「流石に俺の遠距離攻撃だけじゃ焼け石に水だ! ぶつかるぞ!」

「待ってました!」

「あ! ミツバさん!?」


 やはりというべきか一番最初に飛び出したのはミツバだった。先ほど戦ったリザードマンよりも鋭い槍の突きが繰り出されるが、軽いステップを踏んでそれを軽く回避。

 そのまま手ごろな位置にいたリザードマンに蹴りを決めた。無手で剣に勝つには三倍の実力が、剣で槍に勝つには更に三倍の実力が必要って聞くんだけどな。それをこの数の相手に……。しかもこの足運びとか、蹴りってスキルの類使ってないんだろ? 現実のミツバの実力って一体……


 少し遠い目になりかけていたらいつの間にかリザードマンとの距離が近くなっていた。今はこのリザードマンのことを考えよう。

ボールをしまいナイフを取り出す。始まりの町でも買える初期の短剣だから、予備としてたくさんストックはしているけど如何せん威力が低いのがな……。かといってこれ以外では要求STR値を満たせないのでそれ以上考えないようにする。


「【的確急所】!」


 クリティカルの発生確率を上げてやり、ミツバに続くように前に出る。ヘイトをミツバが稼いでくれているので、気にせずに突っ込むことができた。ステップスキル、続けてセカンド・サードと発動させて肉薄。【ショートスラッシュ】スキルでリザードマンを一閃。


「シャア!?」


【クリティカル:成功!】【連鎖!】


 クリティカルが出ても、これで倒せるほど敵は弱くない。正しくはこれで倒せるほど俺は強くない。

ヘイトが俺にも集まってきたので決まったモーションしか出せない攻撃スキルはやめたほうがいいな。

 普通に短剣を振るって更に追撃。反撃に振り下ろされる剣を、【ステップ】スキルを使って回避し、それが間に合わないものは短剣を盾に受け流してパリィ。そこからカウンターに移る。

 2,3,4匹と、ミツバにヘイトを向けていたリザードマンたちが俺の方に向かい始めてきたので一度後退。

 トランプを投げ【フラッシュポーカー】を発動。怯んだ一瞬の合間に【ハイステップ】を使って距離を詰めて更に追撃を繰り出す。


【クリティカル:成功!】【連鎖!】 

【クリティカル:成功!】【連鎖!】

【スキル:成功!】【連鎖!】

【パリィ:成功!】【連鎖!】

【スキル:成功!】【連鎖!】

【クリティカル:成功!】【連鎖!】


「シャア!?」


 ここまで成功スキルを重ねてやって、やっと一体倒すことができた。隣を見るとミツバが八面六臂戦いを繰り広げている。やっぱり戦闘職だと火力が違う。手数は俺以上に多いにもかかわらず、一撃のダメージも比較にならないのではないだろうか。


「コットンさんコットンさん! ミツバさんがすごい勢いでリザードマンを倒してます!」

「他人事みたいに言ってるけど一番頑張らなきゃならんのは相棒だぜ!? 【アシッドショット】!」

「そうはいっても、僕あんなにすごい動きなんてできないですよ!」


 ジョンドはそう言っているが、種族の耐久力に物を言わせたごり押しで無理やりリザードマンの数を減らしている。コットンの的確なサポートによって致命傷もしていないから、十分活躍しているだろう。



「【フラッシュポーカー】! 【魔力弾】【魔力弾】【魔力弾】【魔力弾】!」


 一度怯ませた上に唯一使える魔法で弾幕を張って俺を取り囲もうとするリザードマンたちから逃れる。ミツバ程のプレイヤースキルがない俺では頑張っても対処できるのは2匹までだ。囲まれてしまったら、たちまち俺は負けてしまうだろうからそれだけは避けなければならない。

 要竜戦後に新たに会得した【鬼才】スキルの効果によって、魔法の詠唱時間・消費MPがDEX依存で軽減できるようになっているので威力は兎も角、【魔力弾】の弾幕としての性能は飛躍的に上昇している。

 敵の数が数なので、普段使わないMPもフルに活用して戦わないと三人の様なまともな戦いができない。


「数は異常だけど一体一体はそこまで強力な敵って訳じゃない! このペースなら問題なく……相棒あぶねぇ!」

「へ? うわぁ!?」

「ジョンド!?」

 

 ジョンドに向かって水球が飛んでいく!? 魔法を使えるリザードマンがいたのか? 

身体を触手状に伸ばしたコットンが無理やりジョンドの体勢を崩し回避するのを確認すると、水球が飛んできたほうを見る。

 その方向にいたのはあの王冠をかぶったリザードマンの姿。杖を持っている時点で気付くべきだったか。

 もう一度水球を放とうとしているのが見えたので【ダガースロー】を使って牽制しておく。


先にあのボスっぽいリザードマンを倒したいところだけど、前衛の層が厚すぎて近づくことすらできないない!

 というか、この戦い方話に聞いた攻略組の戦法に似てないか? 盾か武器かの違いはあるけど、なんでモンスター側の気持ちを体験しなきゃいけないんだ!?

 そんな事を思っていたらまた魔法の詠唱を始めた。あぁもう! トランプを投擲して【フラッシュポーカー】! 


「後ろのあいつは俺が妨害する! 前衛のリザードマンを何とかしてくれ! ミツバできそうか!?」

「まかせてよ?」


タレ目の目をギラリと獣の様に光らせると、更に攻撃の手を激化させた。


ドン!ドン!ドン!ドンドンドンドンドドドドドDoDodododddddddd

 

 最初はまだ目で追える程の速度だったのにだんだんと加速して残像が発生した。

軽戦士のジョブ効果によって、攻撃のコンボが続けばSTRとAGIが上昇していく。上がるのが二点だけな分、道化師の成功スキルよりも上昇量は高いらしい。

 早いのは分かるけど、これは速すぎないか!? そもそも残像の移る程の速さにどうしてついて行けているんだよ!? 

 頼んだのは俺だし実際にリザードマンが減っているから文句は言わないけど。言わないけど!


「僕も負けてられないです! コットンさん!」

「おうよ!」


 ジョンドも負けじと攻撃を激化させる。コットンもアシッドショットだけでなく、伸ばした触手を鞭の様に振るいまるでジョンドの手が倍になったかのような猛攻だ。


 三人がリザードマンの数を減らしてくれている間、ボスは【フラッシュポーカー】スキルを使って俺が魔法を妨害。

 相手の連携を崩しつつ戦ったことで、リザードマンの数は最初の数の半分以下にまで減らせた。

 だけど、ここにきてまた変化が起きた。


 リザードマンのボスが魔法を発動させようとする動きを止め、後ろの湖に逃げ出したのだ。なんだ? また逃げ出すのか?


 そう思ったがリザードマンは逃げるという訳でなく、湖に向かって杖を掲げた。まるで何かを祈るかの様に。呼び出そうとしているかの様に。

 それを見たコットンが焦ったように叫ぶ。


「メイ! どうみてもあれは碌なことにならないフラグだ! 全力で潰してくれ!」

「わかっている! 【ダガースロー】!」


離れた距離のせいでトランプでは届かなそうなので短剣を投擲。短剣は確かにリザードマンのボスへと命中した。だけどボスには何の変化も見られず変わらずに杖を湖に掲げている。



「シャー!」

「な、なんだ! 白い……触手!?」


 

 ボスが最後の仕上げとでも言うように声を上げると、湖の中から数メートルはある巨大な白い触手が現れた。あのリザードマンが呼び出したのか!?

 

 予想外の追加戦力に驚いていると、予想外な事に触手は自身を呼び出したはずのリザードマンに絡みついた。

 仲間割れか? リザードマンも振りほどこうともがいているが、抵抗むなしくそのまま湖の中に引き込まれていった。


 まだなお残っているリザードマン含め、数秒の静寂。



 そして、湖の中からゆっくりと出てきたのは、巨大なイカ。

【クラーケン】だった。





海賊編の話と聞くとクラーケンとの死闘は外せないと勝手に偏見を抱いている作者です。

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