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五十八話

お久しぶりです。現実逃避しに帰ってきました。

久しぶりすぎてキャラとか覚えてない人がいましたら、感想に覚えてねーよって書いてもらえたら登場人物のページをもう一度書き直しやります。


Booooooo!!!



 俺はエリア内にけたたましく広がるブーイングに耳を傷めながら地面に倒れる。ヘルメットに内蔵されたスピーカーだと、大音量だとホントに痛いから困るよな。

身体を動かそうとしてみるけど、案の定ピクリとも動かない。わざとスキルを失敗したことによるペナルティ効果だ。ステータスを開いて確認してみると『前と同様に』全ステータスが1にダウン。状態の欄にはスタンとスキル使用不可の状態異常の文字がある。

 アニー達がいてよかった。もし一人だったら動けないまま他のモンスターにタコ殴りにされてゲームオーバーだったろうしな。


 で、そのアニー達なんだけど、要竜の元から俺の方に走ってきている。アニーはともかく、一部物っ凄い笑顔の方がいる。うん。物凄く逃げたい。身体動かないから無理だけど。


「めーーいーーくーーーん? 今のは何かな? 私の全力の、全・力・の! 魔法攻撃を受けてなおピンピンしていたあの要竜を、一撃? 控えめに言って有り得ないよ!」

「それだけじゃない! あのスキルは何だ!? いきなり声が出なくなったと思ったら、何処からか歓声が聞こえてくるし。終いには何だあのギロチンだ! お前道化師で使い物にならないスキルしか無いんじゃだったんじゃないのか?」

「えーっと……言わなきゃダメか? ……あ、ハイ。ダメですね分かってます。それじゃ、長くなるけど1から説明するな?」


 話すのを渋ろうとしたらサオリが無言で筋肉を膨張させて一層ニッコリとしていたので丁寧に説明することにする。どう考えても話さないと俺の身が危険だ。

 話すとしたら、まずは始めに使ったあのスキルからかな?


「あのスキルは道化師ジョブの専用スキル【演目設定】。演目を組み立ててショーを開催するスキルだ。効果は二つ。ショーを行うエリアを展開して、各演目の間、演目に準ずる特定のスキルを強化する。もう一つはボルテージっていう道化師専用のステータスを追加することだ」  

「ボルテージ? あ! もしかして、あの何処からか聞こえて来た声援と関係あるのかな!?」


 察しの良いモルガーナがボルテージに気付く。戦闘中はなんか珍しく狼狽えていたモルガーナは落ち着いてきたようだ。俺は軽く頷いて話を続ける。


「そう。モルガーナの言う通りあの声援はボルテージの高さを表すんだ。ステータスっていってもHPやMPというよりは俺の【成功】スキルに近い感じかな? 0から始まって特定の行動次第で高まっていく。ボルテージが高まっていけば、俺のステータスの強化や一部のスキルの制限が解除されていくんだ。」

「制限の解除? どういうことかしら?」

「もしかしてあの断頭台みたいなやつとかかな? 何か使う前にタイミングを見てるような感じがしたよ!」


 またもやモルガーナがさらっと正解を言い当てる。まぁ、あれだけ大掛かりな見た目だからこれくらいわかるか。アニーやサオリもある程度予想はしていたのか、俺がうなずくと見てやっぱりかって顔をしている。


「俺のスキルにはいくつか発動させるのに制限があるものがあるんだ。一番わかりやすいのはあの断頭台。【安心安全の断頭台】ていうんだけど、あれはボルテージが最大値。つまり滅茶苦茶声援が盛り上がってるときじゃないと使えない。まぁ他にも強制的に口を閉じさせたり座らせたりするスキルも普段は使えない。【演目設定】スキルの使用中って制限があるんだ。正直に言うと強いスキルの殆どがこの制限の中にある」

「なるほど。てことは、メイの本来の戦闘スタイルはヘイト操作や足止めといったサポートではなく、自分の土俵に敵を引き込んでスキルという多量の手札で翻弄して戦うことだったのか。そして効率よくボルテージを稼いであの断頭台のような強力な攻撃で止めを刺す……知らなかったとはいえ本来とは違う戦闘スタイルを取らせちまったな。すまないメイ。」


「そんなことないって! このパーティーメンバーならこれが一番理にかなってたからアニーは間違ってない。それに、そもそもあの断頭台は攻撃スキルじゃないし、人前でボルテージを上げるのは気が引けるから助かってたんだよ」

「「「は?」」」


 頭を下げるアニーに慌てて訂正したらなぜか全員にそんなわけないだろって顔をされた。何か間違った事言ったかな?と思ったけどよく考えたらエリアボスを倒しておいて攻撃スキルじゃないっていうのはおかしいか。ついでにこれのデメリットも話しておいたほうが後々もめ事を避けれるかもしれないから話しておこう。

 

「もう一度言うけどあのスキルの名前は【安心安全の断頭マジック】。タネのあるマジックだから本当は対象には一切のダメージはないはずだし、このスキルの効果は使用後スキルの成功率を上昇させて、一定時間ボルテージを最大値に固定するくらいしか効果がないんだ。でも、このスキルに【失敗】スキルを重ねると何故かスキルが不発にならないで断頭台に固定されている対象が即死するんだよ」


 弟子入りイベント中、合間を見て都外のゴブリンとか相手にスキルや演目を試してるときに偶然見つけて驚いたっけ。スキルの説明には確定で対象は生存できるって書いてるから失敗スキルを使えば純粋に断頭台が消えて時間稼ぎくらいにしかならないと思ったのに、まさかゴブリンが即死するんだから。

 

「それに代償がデカすぎる。大技をわざと失敗させるせいでボルテージが0になって、ショーが強制的に終了になってその日一日再使用できなくなる。しかも、何に対するペナルティかはわからないけどHPとMPを除く全ステータスが1になってしまう上にスタン状態、一定時間スキル使用不可のオマケ付き。使いどころなんてないと思ってたけど、今回は流石にな」

「うわぁ……もう、うわぁとしか言いようがないデメリットだよ……。それ、ソロで使ったら勝ったとしてもその後に沸いたモンスター相手に抵抗できないよ」

「気にしてなかったけど、だからさっきからメイちゃんは全く動かないのね。なんというか、ほぼ捨て身の攻撃ね……」



皆にドン引きされているこれを要約すると、首チョンパで敵を即死させるズルが出来る代わりに


全ステータスが1になって、

全スキルが使用不能になって、

ついでのように動くことのできない状態で、

一定時間の間フィールドに放置されるわけだ。


 最早自爆技といっても過言ではない。こんなデメリット極まりない行為、誰が好き好んでやるだろうか。いや、たった今自分自身でやった訳だけども。

 非常事態だから仕方が無いだろ? あのままだと全滅してただろうし。



「センパイ」


 大体説明が終わった所でこれまで黙っていたミツバが声を出した。ミツバはあんまりスキルの話とか、純粋な戦闘以外に興味ないように思っていたから意外だ。何か俺の説明で足りないところがあっただろうか?


「スキルとかはどうでもいいけど、どうしてセンパイはあんなハイテンションだったの?」

「うっ! それは……」


 一番言いたくなかった所に突っ込んできたな……。出来ればこの事には触れないで説明したかった。これまでは要竜を倒した方法や俺のスキルの方に気を取られていた面々もミツバのその言葉でそっちに興味が移ったようだ。サオリもモルガーナが新しい玩具を見つけた子供のようにニヤニヤし始めた。

 


「そういえばそうね。スキルが衝撃的だったから忘れてたけど、メイちゃんのテンションは何かしら?」

「面白話の匂いがするよ! メイ君。それも説明してほしいよ!」

「……ボルテージの上昇の条件が、スキルの成功の他にピエロのような言動をとることなんだよ。面白おかしい行動で笑いをとれば、その分ボルテージも上がるんだ」


「あー、だから先輩あんなハイテンションだったんだ。れでぃーすあーんどじぇんとるめーん……プクク」

「ミツバちゃん。せっかく説明してくれてるのに笑うのは失礼よ。……プフ」

「あれは面白かったよ! 授業中もあれくらいのテンションでいてもいいんだよ?」

「それは絶対に嫌だ。……だから言いたくなかったんだよ……」

「メイ……ご愁傷様」


 これだよ……。【演目設定】スキルを使ってあの姿を誰に見られたとしても黒歴史確定だと思ったからずっと使ってなかったのに。特にバレたらめんどくさそうな人の前で使ってしまった。アニーの同情の眼差しが痛い。




 さっきからハイテンションな俺の真似をして煽ってくる姉妹は置いておいて、アニーとサオリが話のまとめに入る。


「むぅ……特定ジョブの強化エリアの展開と、ほぼバグ技に近い必殺技……。確かにこれは今まで黙っていても仕方が無いかも」

「というか使う方がデメリットじゃないかしら。少なくともアタシは人前であんな恥ずかしい口調は言えないわ……」


 デメリットを説明するとロマンに情熱をかけるモルガーナでさえ若干同情気味の様子だ。モルガーナがサオリのセリフにうんうんと頷いてるけど、モルガーナの場合存在自体が恥……いや、言うのはやめておこう。


 さっきまで皆と一緒に俺に質問をしていたアニーはというと、何故かそわそわと落ち着きがない様子だ。どうしたんだ?


「アニー、どうしたんだ?」

「いや……お前のスキルが衝撃的過ぎてスルーしてたけど、倒したんだよな? あの、自称攻略組すら倒せなかったエリアボスを……」

「「「あ!」」」


 そうだ。俺のスキルの話ですっかり頭から離れていたけど、あの要竜を倒したんだ。

それを思い出したらデメリットとか恥とかよりも喜びの方が上回ってくるような気がする。あのKYなタンクやバロンたちのクランが為せなかった事を、俺たちが……

 みんなで顔を見合わせ、そして


「「「__よっしゃあー!」」」


「アハハ! ざまぁないぜ! 攻略組が聞いてあきれるな!」

「ホントだよ! 結局最も重要なのは安定した戦略じゃない! 突出した個性! つまりはロマンなんだよ!」

「結局先輩が良い所全部持ってかれちゃった感はあるけどね~。次は先輩にも負けないよ? むしろ今からもう一度勝負しない? 」

「動けない今それを言われてもな……。ミツバもすごい活躍してただろう? 特に鱗を的確に破壊していくのは俺にはまねできないよ。ステータス的にも、技量的にもさ」


 余りの嬉しさに全員で叫んで喜びを表す。ヘッドフォンが当たる耳が痛いほどだけど、それすら今は心地いいくらいだ。普段喧嘩ばかりのアニーとモルガーナの二人も肩を組んで喜びを分かち合ってる。戦闘中ヒロインと主人公みたいな展開になってたし、2人の距離も縮まったのだろうか。

 


「ハーイ。皆嬉しいのは分かるけど、ちょっと声のボリューム落としましょうか。一応今深夜帯なのを忘れちゃダメよ? 近所迷惑になっちゃうわ」


 サオリに咎められてハッと手を口に当てる。そう言えばこれ没入型じゃなくてただのVRゲーだったっけ。そりゃマイク越しに叫んでたら普通に周囲にも叫び声が出てしまうな。

 叫ぶのは何とか抑えたけど、全員ニヤけ顔が収まらない。特にアニーは攻略組と因縁がある分討伐できた喜びが大きいんだろう。パーティの中でも一番うれしそうだ。


『エリアボス【ゲートキーパー・キードラゴン】が討伐されました。これにより、魔族領エリア、人間領エリアの通行が可能になりました。また、エリアボスの独占していた地脈が解放されたことにより、明日よりポップするモンスターのレベルが上昇します』



 どこからかそんなアナウンスが流れ、俺たちはエリアボスに完全に勝利をしたことを確信した。













誰も倒せなかったエリアボスかぁ。いっぱい経験値がもらえるんだろうなぁ……(すっとぼけ)


誤字訂正

~しかも、何に対するペナルティかはわからないけどHPとMPは除く全ステータスが~

修正後

~しかも、何に対するペナルティかはわからないけどHPとMPを除く全ステータスが~

誤字報告ありがとうございます。





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