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第五十六話

臨場感ある戦闘描写なんて書けないです。なんとなくノリと勢いが伝われば幸いです。



「う、嘘……私の全力の上級魔法が、全然効いてない……?」

「呆けるのは後にしろ! MPポーション飲んで次に備えろ!」


 最も自身のある魔法を全力で使ったにも関わらず、ほぼ無傷の状態の要竜にモルガーナは呆然と立ちすんでしまう。

 そのモルガーナを叱咤したアニーがすぐさまに前に出て盾を構える。このパーティーの中でDEFにもステータスを割り振っているのはアニーだけだ。攻撃を受けたとして最も生存する可能性があると判断したんだろう。

 アニーだけじゃない。ミツバとサオリの格闘家コンビは既に拳を握って何時でも戦闘が出来る状態を作り、俺もトランプを取り出しもしもの事態に備える。

 

 モルガーナも呆然とした状態から立ち直り、急いでMPポーションを使用して杖を握り直す。全員で戦闘態勢をとりいつでも行動に移せるように警戒を解かないでいると、ゆっくりと要竜が首を起こす。


「GUOOOOOOOOOOOO!!!!!」


 それは叫び声というにはあまりにも暴力的な音の暴力とも言うべき咆哮。その怒号の様な咆哮はこれまでのプレイでは経験した事のない程の音量で、スピーカーが音割れすらしている。こんな事は初めてだ。

 方向と共に要竜の頭の上に膨大な長さの緑色のバーが現れる。ちょっとだけ最大値から削れているのはモルガーナが攻撃した分だろう。パーティー内の最大火力でほんのちょっとしか喰らわないのか……。



 なんにしても、戦闘開始だ。

 


「まずは一番耐久が高い俺が前に出て様子を見る。ある程度動きに目が慣れたらサオリたちも参戦してくれ!」

「そんなことしなくても、ボクの速さなら避けられる筈だよ? 」

「ミツバちゃん!?」


 DEFに割り振っていない俺たちに気を使って自らが率先として動こうとしていたアニーだったが、それよりも先にミツバが走り出してしまった。

 元々バトルジャンキーの気質があったミツバだ。人型では無いとはいえ分かりやすい強敵といえる要竜に痺れを切らしてしまったのだろう。いや、この場合プレッシャーに思わずって感じなのか?

 

 兎も角、身軽でAGIの高い軽戦士であるミツバは割り振られたAGI型のステータスと持ち前の身体能力の高さを活かし、一気に要竜との距離を詰める。

 その無謀ともいえるミツバの行動にサオリが焦る様に声を荒げるが、既に要竜の事しか目に入っていないミツバは聞く耳を持たない。

 まるで羽虫を払うかのように無造作に振るわれる尻尾をまるで走り高跳びでもするかのように軽くジャンプをして身体を駆け上る。

 あれでほとんどDEXに振っていない訳だから、どれだけ素の身体能力が高ければそんな真似ができるのか想像できないが、いったいのぼってどうするつもりなんだ。


 

「いくらその鱗が硬くても眼球は柔らかいよね?」

「そうか! 頭部から弱点へ直接攻撃か!」


 確かに、モルガーナの本気の一撃すら耐え切る程の鱗に覆われているとは言っても、流石に眼球までもが鋼鉄のように固いわけがないか。それならばダメージが通るかもしれない。

 まるでアスレチックで遊ぶかの様に器用に角に捕まって瞬く間に頭部に上り詰めたミツバは、大きく拳を振りかぶり眼球にむかい振り下ろす。しかし……


「え!? なんで効かないの?」

「瞬膜だよ! 爬虫類とかの目を守る膜! なんでゲームでそんな細かく作ってるの!? ドラゴンと爬虫類をごっちゃにしちゃダメだよ!」


 ミツバが眼球に拳を振るっても、まるでゴム板を殴ったかのような鈍い音が鳴り阻まれしてまう。

 モルガーナがその膜について知ってたのか、驚愕交じりに叫ぶ。一応数学の先生なのにどうして生物の知識を知っているのか知らないけど、とりあえず目を守る膜って言う事が分かればそれでいいか。

 体はモルガーナの全力すら通らないのに、唯一鱗の無い目にすら攻撃が通らないってどうやって倒せばいいんだよ!


 目を殴られたドラゴンは煩わしそうに首を振るいミツバを振り払う。たまらずに落ちてしまうミツバに一瞬ヒヤッとしたが、体を猫のように捻って綺麗に着地する。俺がサーカスのあのメンツに死ぬほど扱かれてできるようになったことを軽々やってのけるか……ちょっと自信を無くすがそれどころじゃない。ミツバへ追撃をしようとドラゴンが手を振りかざしている。


 手にするトランプから一枚取り出し、ドラゴンの目の前に向かって手裏剣の容量で投げつける。くるくると回転しながら真っすぐ進んでいくのを確認して、指を鳴らして【フラッシュポーカー】のスキルを発動。

 眼前にてトランプは発火して爆発した。しかし、これまでのモンスターとは違って、驚いて仰け反る事はなく、警戒に少し動きを遅くする程度だ。

 ドラゴンの大きさに対して火の大きさが小さすぎるのか? だけど、動きが止まったのた確かだ。この一瞬の合間にミツバは既に体制を整えて移動を始めている。

 

「魔法もダメ。粘膜への攻撃もダメ。挙句にメイのトランプの効果薄か。万事休すか?」 

「まだだよ! 目の膜は音からして打撃に強いけど、ゴム質ってことは剣撃なら効く可能性が高いよ! それに定石的に考えてスケイルメイルの防御能力は刺突や斬撃には強いけれど、鈍器による局所的な打撃攻撃には弱い。あのドラゴンの鱗にも同じことが言えるはずだよ!」

「それならアタシの出番ね!?」

 

 モルガーナの推理にサオリが意気込み握る拳の力を更に強める。モルガーナの予測が正しければ今一番の戦力は格闘家二人って事になる。

 だけど、あれだけの巨体だと近づくことすら困難だ。どうやって近づく……いや、ヘイト集めは俺の役目か。

 もう一度トランプを取り出して投げつける。効果は薄かったけどこれでも目の前で連発されれば煩わしいだろう。それに道化師には挑発効果があるからおとりになるなら俺が適任だろう。【フラッシュポーカー】を発動!


「GRrrrrr……」

「俺が気を引き付ける! その間にサオリとミツバは奴に攻撃を!」

「センパイ! 前!」


 いつもは落ち着いているミツバが珍しくも焦ったように声を荒げる。急いで振り向くと、俺を標的にして振るわれる、ショベルカーかってくらい巨大な要竜の右腕。当たったら死ねる! 【オーバーリアクション】スキルを発動させて直撃を防いで大袈裟に吹き飛ぶ。

 ダメージを0にすることはできたものの、元々の威力が高すぎるせいか軽く10m以上吹き飛ばされる。どれだけ威力が高いんだよ! こんなの直撃してたら俺なんて木っ端微塵じゃないか。だけどそんなこと気にしてる暇はないか。直ぐに体勢を取り直して、皆の所に戻らないと。

 

「ナイスよメイちゃん! この筋肉の力を見せてアゲルわ! ブルァア!」

「ついでだ! 俺でもこれくらいはできるんだよ!」

 

  サオリがその剛腕をもって、重なり合う鱗の一枚にピンポイントで殴打を当てる。

するとパリンッと氷の砕ける様な子気味良い音と共に鱗が砕け散る。たったの一枚ではあるが、あのモルガーナの一撃をもほぼ無傷だった鱗を砕いたのだ。

 それだけじゃない。サオリと共に前にでたアニーが鱗の間に剣を突き刺し、てこのように剣を動かす。本来斬る為にある剣でやるようなことではないが、それでも無理やりではあるが一枚要竜の鱗がはがされた。これで二枚。たった二枚ではあるが、確かに攻撃らしい攻撃が通じたのだ!


「ナイスだよ二人とも! この調子で鱗を削っていけば、あの強固な守りを崩せるはずだよ!  」

「簡単に言うな……よ!」


 悪態を吐きつつもモルガーナの難題をこなすべく鱗の間に剣を突き刺し削りにかかるアニー。てこの原理ならSTRの低い俺でも出来るんじゃないか? トランプをしまって短剣を取り出してみるが、装備した瞬間腕がガクンと落ちる。何でだ!?


 慌ててステータスを確認するとそこには「ウェイトリミット」の赤い文字。そういえばこれまで半減だったSTRが今は三分の一だったっけ。って事は俺もう武器を持てないのか!? 今は短剣は役に立たない。直ぐ様短剣をしまいトランプを取り出し直す。


 トランプを投げて三度目の【フラッシュ・ポーカー】を発動させつつも、続けざま【ジャンプ】のスキルを発動。ミツバと違ってSTRもAGIステータスも低く、素の身体能力も劣る俺ではあれほど綺麗に要竜の身体を昇るのは難しいしな。

  

「こっちを見ろ! このトカゲ野郎!」

「っ! メイ君が要竜を引き付けてるよ! 今がチャンスだよ! 」

「センパイばっかりに良い格好はさせないよ?」


 鱗を一枚ずつ剥がされるよりも目の前で光ったりちょこまかと動かれる方が煩わしいらしい要竜は、俺を振り払おうと首を振るうばかりだ。ちょっとしたロデオ気分だけど、好都合だ。ミリレベルの微妙な量ではあるが、要竜のHPは確かに減っている。やっぱり面攻撃である魔法は効かなくても、ピンポイントでの物理攻撃なら効くらしい。 俺がヘイトを集めている間に皆には攻撃して貰わないと。


「GRR……」 

「なんだ? 妙に大人しいな……って、なんだと!? 奴のHPが!」

「嘘! なんでHPが回復してるの!?」

 

 モルガーナが信じられないと、悲痛の声を漏らす。さっきまでは確かに削っていた筈のHPバーが回復してしまっていた。削った量は全体の5%にも満たない様な少ないダメージだったけど、せっかく与えたダメージだったんだ。こんな直ぐに回復されたら勝てないぞ。


「ふん。回復されるというなら、それを上回る程のダメージを与えればいいだけよ! 行くわよミツバちゃん!」

「おっけーサオリちゃん」

「そんな簡単な話じゃ無いよ! 何か打開策は……メイ君! 上から何か見えないかな!」


 焦るモルガーナにそう言われるが、そう簡単に仕掛けが見つかるか? 要竜の頭という高い視点から周囲を見回すけど、変わった所なんて何も……いや、尻尾が地面に埋まっている? むしろ、巨大な尻尾を地面に突き刺して何かをせき止めている様にも見えなくもない。

 

 そう言えば、要竜の名の由来はこの地に集約する地脈や龍脈といった物を全てせき止め吸収してしまっている所からきているんだったか? それで際限なく強くなり続けてるってバロンが言ってたような気がする。

 ってことは、あの尻尾を使ってその脈の力を吸収しているって事なのか? 尻尾は植物の根っこかよ。

 あの尻尾がある限り要竜のHPは回復し続けるし、強化され続けるなら無理ゲーも良い所だ。


「尻尾だ! 尻尾が地面から力を吸収し続けている!」

「なら尻尾を切らないと、この状況から抜け出せない……半端剣士! 尻尾を切れない!?」

「無茶言うな! 鱗をはがす程度なら何とかなるが、切断となると刃渡りが足りねぇよ!」

「もう! 肝心な所で役に立たないよ!」

「常に役に立たないお前よりマシだ!」


 アニーが持つのは俺の短剣の倍以上の長さの長剣だ。だけど尻尾の太さは長剣で切れる様な半端なものじゃない。いくらアニーといえとも難しいだろう。アニーがキレるのも無理じゃない。


 モルガーナが何やら思案顔でうつむいているけど策でも考えているのだろうか。頭部に張り付くのも楽じゃないから、作戦があるならできれば早くしてほしい。

 首を振るう程度では振り払えないと判断したのか、首振りを止めて前足で顔を払い始めた。【オーバーリアクション】では余計に吹き飛んでしまうから今使ってはダメだ。【ステップ】スキル、さらにセカンドからフォースまでを発動させてどうにか回避。

 

【スキル:成功!】【連鎖!】 ×5

 

 今の【ステップ】とさっきの【ジャンプ】や【オーバーリアクション】。これで【成功】スキルをある程度稼ぐことが出来た。そのせいか体の動きが多少機敏になる。

 検証なんてしていないけど、三分の一のジョブ補正があるにしてはステータスの上昇が速い気がする。成功のスキルはこのジョブ補正からは逃れられてるんじゃないか? 

半減だった時は余り気にしていなかったが、三分の一に効果が上がって(下がって?)るから余計気になる。

それはありがたい。じゃないとただでさえ戦闘において向かい風なのに【成功】スキルまで劣化してしまったら本当に俺のパーティー内での存在意義が学習装置くらいしかなくなってしまうからな。


「尻尾に攻撃目標を変更にするよ! 鱗さえ剥がせば私の魔法が通る筈。今度こそ私の全力で尻尾を切断してみせるよ!」

「「「了解!」」」


 モルガーナが即興で立てた作戦に即答で全員が了承する。回復され続けてしまう以上、今は他に打つ手がない。何としてでも力の供給を止めないと。

 もう一度トランプを使って【フラッシュポーカー】を発動。今の俺のやるべきことは皆が尻尾を攻撃しやすいようにドラゴンの注意を引きつける事だ。このままどうにか押しとどめないと。


 こうしてる間にもモルガーナの指揮の元でアニー、ミツバ、サオリの三人が尻尾の鱗を削っている。特に格闘家の二人は一度の殴打で確実に一枚を削る獅子奮迅の働きをしている。アニーは剣をてこにしないといけないから仕方が無い。むしろ時折下の皆を狙う薙ぎ払い攻撃を盾を使っていなし、うまくタンクもこなしてる。単純な仕事量ならアニーが一番多いかもしれない。



 俺も負けてられない。成功スキルでステータスが上昇している今なら短剣を持てるはずだ。試しに装備してみると、思った通りさっきのように腕が重くなること無く装備できた。これなら俺でも攻撃ができる。

少しでも与ダメを増やす為に【的確急所】を発動。要竜の目に向かって、短剣を突き刺す。


「GURRROOOO!!」

 「よし! 効いた! けど……うぉ!?」


 膜を割いてほんの若干目に傷をつけた程度。だけど、モルガーナの推測通りに斬撃なら俺でも目にダメージを与えられる!

 けど、目にダメージを与えた事でドラゴンの動きが変わる。これまでは顔に羽虫がまとわりついて鬱陶しい。といった様子だったドラゴンが、今は虻や蜂といった危ない虫がくっ付いていたから本気で振り払うかのように、これまで以上に本気で振り払おうとしてくる。

 

 たまらず振りほどかれて頭部から落下してしまう。高所からの着地はこれまでさんざんサーカスでやらされていた。ミツバ程鮮やかに__とはいかないけど、ダメージ無く着地するくらいなら俺でも出来る。


「悪い! 頭から落ちた!」

「大丈夫! もう十二分に尻尾の鱗は剥げたよ! 後は任せて!」


 尻尾をみればこれまで鱗に覆われていた尻尾は、三人によって鱗がはがされみずぼらしいボロボロに傷ついていた。


 魔法に対して無敵といえる程の防御力を持っていた鱗が無くなった今、モルガーナの魔法が通じる筈だ。せめてモルガーナの魔法を発動させるまでの時間を稼ぐ為にも俺が注意を引かないと。【フラッシュポーカー】を使ってもう一度要竜の気を引く。元々目に攻撃をしたせいでヘイトは俺に向いている。時間は十分に稼げるはずだ。



「ここで決めなきゃロマンが廃る! 【グレーターウィンドカッター】! 」

 

 モルガーナが、恐らく上級であろう風魔法を発動させる。単純な破壊力や殲滅力では火属性の方が望ましいだろうが、今必要なのは切断する事だ。それならば、カッター系の斬属性のある風魔法のほうが適切だろう。


 刃と化した暴風が竜巻を形成して、要竜の尻尾に衝突する。竜巻状になった事によって、チェーンーソーのように何度も何度も刃が回り、要竜の尻尾を斬り刻んでいく。


 

「GUOOOOO!?!?!?」

「「「いっけぇぇぇ!!!」」」

 

 これまでは目障りな羽虫、または蜂や虻蚊のようにちょっとだけうっとしい虫程度としか見ず、適当にあしらう程度だった要竜が、今確かに悲痛ともいえる叫び声を上げHPバーが目に見えて減少する。初めての目に見える大ダメージに全員が思わず声をあげてしまう程だ。しかし___


「そ、そんな……」

「チクショウが! 今の攻撃でもダメなのかよ!」


 今の一撃で倒せるような高望みなんてしていない。だけど、全く効かないとも考えていなかった。モルガーナの二回目の全力の風魔法。それで斬る事が出来たのは尻尾の半分程度。切り落とすことはできなかったのだ。半分切れたといっても龍脈との接続は続いている。今削ったダメージも、徐々に回復を始めている。もう少し時間が経てばせっかく削ったダメージは全開してしまうだろう。


「え、と……次の作戦は……でも、どうせ魔法は、効かない……そ、そうだよ。まずはMPポーションを飲まないと……」

「モルガーナ? ……おいモルガーナ!」


 二回も魔法が効かなかったのが余程ショックだったのか、手を震わせながらMPポーションを取り出し始めた。モルガーナにしては無警戒な行動。いや、おかしいともいえる行動だ。アニーが呼び掛けても全く反応がない。明らかに異常だ


「GROOO!!!」

「不味いわ! 今の攻撃で完全に火が付いたみたいよ! 一度下がるわよ!」

「流石のボクでもこれは怖いかなー。撤退撤退」


 明確なダメージを与えた事で煩わしい羽虫から忌々しくも倒すべき敵として認識が昇格してしまった近接組が早々に撤退に移る。だけど、そんな事要竜が簡単に許してくれる筈も無かった。


 大きく息を吸うと、巨大な口を大きく開き爆炎を放つ。ドラゴンといえばもはや十八番ともいえる技。ブレス攻撃だ。


 下手をしたらモルガーナが最初に放ったエクスプロードよりも威力が高いかもしれないドラゴンブレスは轟々と音をたてながら皆を蹂躙にかかる。格闘家二人はまだ大丈夫。だけど、様子がおかしいモルガーナだけは反応が遅れてしまった。

 頭部から落下したせいで尻尾付近にいるモルガーナ達とは大きく距離が開いている。俺じゃ間に合わない!


「モルガーナ! 危ない」

「ックソ! 間に合えぇぇ!! 【ヘイスト】ォ!」


 俺の位置からじゃ叫ぶくらいしかできない。このままじゃモルガーナが危ない。だけど、アニーが魔法でAGIにブーストを掛け全力で跳躍してモルガーナを吹き飛ばす。

 吹き飛ばされたモルガーナはブレス範囲から何とか逃れる事が出来たけど、代わりにアニーがドラゴンブレスの範囲に取り残されてしまった。アニーは険しい顔をしつつも盾を構え、叫ぶ。


「【防御強化(ガードアップ)】、【堅牢なる盾(シールドガード)】、【アンチ・ファイア】、【プロテク】。これでどうだ!」


 スキルと魔法の二方面から防御力を強化してブレスを真っ向から受けとめるアニー。もしもただの剣士であればスキル的な防御強化する事しかできなかっただろう。だけど、魔法剣士であればスキルによる強化だけでなく魔法的な防御強化も行う事が出来る。ここに来て魔法剣士になった事の意味が現れた。


「ぐぅぅぅがぁぁぁ!!」

「は、半端剣士!?」

「「「アニー」」」


 DEFをスキルと魔法の二方向から強化してなお、そのブレスの威力が上回っていた。吹き飛ばされたアニーのHPは全損。LPに表示が移り変わり、炎の延焼状態により今なお減少が止まらない。

 突き飛ばされたモルガーナが急いでポーションを取り出してアニーに近づき、手にするそのポーションを振りかける。LPの減少は止まったが、あと一撃でも喰らったらアニーのLPは0になってしまうだろう。


「なんで……なんで半端剣士が私を庇うんだよ!」

「はっ。借りが残りっぱなしなのが気に食わなかっただけだ。イワンとのPvPの借りはこれでチャラだな」

「そ、それでゲームオーバーになってたら本末転倒だよ!」


 アニーは戦闘に参加する事はもうできない。これまで指示を出していたモルガーナも、そんな余裕がないから格闘家二人も戦い難いだろう。




……一時の恥を気にしてる場合じゃない!



「【演目設定(プログラムセット)】!」


 これまで恥をかくのが嫌で使ってこなかったが、サーカス団での弟子入りで手にしたスキルは大量にある。ただ、そのほとんどが限定的な状況じゃないと使えないっていう事と、人前で使うと恥だって理由で使ってこなかった。でも、使うなら今しかない。


 必要な演目はなんだ? ダンスショーは人型相手じゃないと使用できない。猛獣ショーに至っては、そもそも俺にテイムした配下のモンスターはいない。


 となると、一番オーソドックスな物を中心に最後はマジックショーにする必要があるから……こうだ!


「1.【オープニングトーク】 2.【ジャグリングショー】 3.【アクロバットショー】 ハイライト【マジックショー】! 」


【プログラム セットアップ! アーユーオーケー?】 



 設定は完了した。あとはコールをするだけだ。ミツバとモルガーナ辺りは茶化してきそうだけど、できればほどほどにしてくれることを願おう。

 今はこの状況をぶち壊すのが第一だ。




【レディース! アーンド ジェントルマン! ウェルカムトゥー サーカスショー!】






チート性能のドラゴンを倒すなんて事はご都合主義展開と俺ツエーが無いと作者にはできません。というかサーカスショーやってどうやって倒せばいいんでしょう? いつも通り行き当たりばったりな作者です。

来週までには投稿出来たらいいなと考えています。


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