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第五十四話

久しぶりの転職描写です。

補正の強さは深く考えずに設定したので高すぎる低すぎると意見があるかもしれませんが、気にしないでください。

主人公のステータスの悪ふざけは今に始まった事ではないので大目に見てください。


 攻略の最前線である魔の森から帰って来た俺たちはジョブチェンジしたアニーと出会った。これまで中級剣士であったアニーの転職先は、剣技の他にも魔法にも適性のある魔法剣士。全てのステータスに均等になる様に割り振ったアニーに適したジョブだと思う。

 だけど、こと魔法においては口うるさいのがパーティに一人。HPどころかMPにすら割り振らず、ただひたすらに全てをINTに割り振った魔法使いがいる。

 案の定というか、運が悪いというか、最悪のタイミングでログインしてきたモルガーナは魔法適正も増えたというアニーに不機嫌になってしまった。


「い、いやモルガーナ? 俺の使える魔法はあくまでも補助魔法や支援魔法がメインだ。お前の様な華のある高威力の攻撃魔法は使えない。だからそんな不機嫌になるなよ」

「そう言うことを言ってるんじゃないよ! いい? 魔法剣士といえば、王道中の王道! ジョブの花形といっても過言ではないよ! うぐぐ……ロマンで私が負けるとはぁ! 」

「モルちゃんったら魔法のお株を奪われたから不機嫌だったんじゃなくて、ロマンで負けたから不機嫌なのね? ほら、アニーちゃんももっとフォロー入れないと」


 アニーがモルガーナにフォローを入れるが、依然としてモルガーナは不機嫌なままだ。火力では誰よりも強いのに、まだロマンを追い求めるのか。サオリは困り顔でフォローを入れるアニーを面白がって二人を見てるだけだし、どうしたものか。


「というかアニーがジョブチェン出来たんだし、モルガーナもジョブチェンジ出来ないのか?」 

「はっ!? それ! それだよ! 」


 何気なくそう告げたらモルガーナはその一言に食い付いた。さっきまで湿気った花火かってくらいに不機嫌だったのに、うって変わって火薬を割り増しした爆竹かよってくらいのハイテンション。豹変とはまさにこんな感じだ。

 完全に火のついたモルガーナは、俺の腕を掴んでギルドの方向に……って、え?


「あー私としたことが、半端剣士に気を取られて全く気が付けなかったよ! そうと決まればギルドに行くよメイ君!」

「ちょ、ちょっと待て! なんで俺まで行く事になるんだ!?」

「レッツゴー!」


 既にギルドに行ってジョブチェンジする事しか頭にないモルガーナは全く聞く耳を持たない。どうにか振る解きたいところだけど、INT極ぶりのモルガーナのSTR値よりも道化師のジョブ補正のせいで半減している俺のSTRの方が低いせいで全く振りほどけない! エルフってSTRにマイナス補正があるんじゃないのか!? それだけ俺のSTRが弱いって事かよ! 

 助けを求めようとアニー達の方を見るけど、2人は諦めろといった目線を返すだけ。もうこれどうしようもないな……。





「冒険者ギルドへようこそ! 本日の__」 

「ジョブチェンジ! ジョブチェンジの申請に来たんだよ!」

「は、はい……」


 ギルドに到着するやいなや、受付嬢が最後まで挨拶をし終わる前にモルガーナは申請を申し出た。NPCの受付嬢にさえ引かれるっていったいどうなんだ? 一応リアルは教師なのに。というか担任としてどうなんだそれは……


「あ、そうだ。メイ君はジョブチェンジどうするの?」

「そうだな……。レベルだけなら十分高いんだけど、なんでか道化師から先に転職できなかったんだよな。ま、もしかしたらって事もあるし、確認だけでもしておくか」


 【三流芸人】の称号も【二流芸人】に進化している。もしもレベルの他にも条件があるとしたら、道化師ジョブと関係が深いこの称号がキーになっている可能性が高いしな。


「では、こちらの部屋にお進みください」






【可能な転職先一覧】

『中級道化師』『ジャグラー』『ビーストテイマー』『マジシャン』『軽業師』『村人』『短剣使い』



 中級道化師が増えてる! 今までは可能な派生先に無かったのに増えているって事は、やっぱり【二流芸人】の称号が関係していたんだろう。逆に、道化師ジョブになる前はあった剣士や盗賊といったジョブは軒並み可能な転職先から消えてしまっている。

 たぶん道化師になった事でDEX以外が半減してしまっていたせいで、適正ステータスすら満たせなくなったんだろうな。唯一ある短剣使いだって、中級短剣使いでなく初級であるただの短剣使いだ。むしろこれだけでも戦闘ジョブがある方が驚きだ。

 ちなみに、ジャグラーやマジシャンといった転職先はサーカス団にて弟子入りイベントがあった時、それぞれのスキルをたくさん覚えさせられたのが理由だと思う。使いどころは余りないけどな。 

 

 それはそれとして、選ぶジョブはやっぱり中級道化師だ。というか、DEXにしか割り振っていない今、その他の選択肢を取ったとしても意味があるとは思ないし。って事で『中級道化師』を選択! ステータスを開いて中級道化師の補正効果を見てみる事にする。

ん? なんだか腕の反応が鈍い様な気がする。鈍いというか、遅い? 嫌な予感がしつつジョブ補正効果を見てみると……


ジョブ補正▽


職業補正:中級道化師

1.常時、STR・DEF・INT・AGIの値を3分の1にする。(防具や一部パッシブスキルの補正込みして計算する)

2.常時、DEXの値を3倍にする。

3.常時挑発効果

4.スキルのリキャストタイム1割減少

※この効果は芸能系統スキルに限り効果上昇



 道化師の頃よりも効果が増えてる! それ以上に一つ目の効果がおかしい!


 これまで半減だったDEX以外の能力減少が3分の1にまで落ち込んでいる!? 上位のジョブに転職する程に弱くなるってどういう事だよ!

 ……いや、でも前向きに考えると、これまでDEXにしか割り振らなかったのは正解だったかな。例えSTRに6を割り振ったとしても実際の上昇値は2にしかならないなんてハッキリ言ってやってられない。しかも道化師の頃とは違ってご丁寧にも防具やスキル込みなんて補足説明まで入っている。

 これはつまり、防御力21の装備をしたとしても3分の1になって実際には7にしかならないという事だろう。強い装備で有れば有る程この半減の効果が酷く顕著に表れる。やってられないね! 

 反対にDEXは3倍に上がった。モルガーナと違って最初の頃にちょっとだけAGIに割り振ってしまったけど、ほぼ全てをDEXに割り振っている今、この3倍の補正は大きいだろう。これ以上DEXが上がるとレベリングの置物感がいなめないな。

 挑発効果は前と変わらないな。まぁこれはいいだろう。


 次にリキャストタイムが減少する効果。リキャストタイムの減少するのは大きい。指輪の効果と合わせて四割も減少、芸能系統のスキルであれば5割に変わる。芸能系統といえば、触れた相手のポケットにトランプを忍ばせる【インユアポケット】や、トランプを小さく爆発させて相手を驚かせる【フラッシュポーカー】のスキルが当てはまるな。他の芸能系統も同じく早まるのだとしたら、大きな力になるだろう。

 それこそ、ステータスが3分の1になってるのを物ともしないくらいに……は言い過ぎか。だけどそれくらい便利になる筈だ。道化師は低いステータスをスキルで補って戦う事になるジョブだから、そのスキルの回転率が上がればその分強くなるだろうし。


 満足のいくジョブチェンジを終えてアニーらの待つギルドの待合室に戻る。すると、そこには既にモルガーナの姿があった。


「皆悪い。待たせ……」

「フッフッフ。どうかな! このジョブチェンジして新たな力を得たモルガーナの姿は!」

「悪いが俺には全く分からねぇ……アニー、分かるか?」

「いや、分かる訳ないだろ。ジョブを変えただけでぱっと見の変化はないんだぞ?」

「全然違うよ! この溢れ出る知性と気品! まさしく上級ジョブだよ!」



 待たせたか? と言って直ぐにでも三人の中に混ざろうとしたかったけど、なんだか混ざりたくない会話をしている。

 話を聞く限りモルガーナも位が高いジョブに転職できたようだけど、物凄いドヤ顔で自慢をしている。とても知性が溢れる様な人間のする会話じゃないな。この中のメンツでは比較的付き合いの短いバロンは気を使って理解しようとしているのに対して、既にモルガーナの性格を知っているアニーは呆れ気味だ。サオリは面白がって見てるだけみたいだし。何だこのカオスは。

 それに上級ジョブって……確か始めたタイミングは俺とほぼ同時期だったよな? なのになんでモルガーナはそこまで転職できてるんだ? モルガーナの睡眠時間が気になる所だ。

 

「あ、メイ君! そんな所にいないでこっちに来てよ! この半端剣士ったら酷いんだよ! このインテリジェンスなオーラ溢れるこの上級魔法使いから何も感じないっていうんだよ!」

「少なくともその言動からは知性の欠片も感じないな恥性は感じるけど」

「メイ君にまで否定されたよ! しかもダメだしまで貰っちゃったよ!」


 モルガーナは頭を抱えてジーザス!とか訳の分からない慟哭をしている。周囲のプレイヤーなんてドン引いているし、この残念なところさえなければ知性も頼りがいも出てくれると思うんだけどな。

 もはやお手上げな状態でいると、これまでは面白がって会話に混ざらず見物していたサオリが助け舟を出してくれる。


「それで、上級魔法使いに転職してどのくらいモルちゃんは強くなったのかしら?」

「よ、よくぞ聞いてくれたよ! これまでの中級の1.5倍だったINTの補正が2倍! 更にこの他にもMPも同じく2倍! これで中級魔法1発撃つのがやっとだったのがギリギリ上級の魔法も打てるよ!」


 そう言って嬉しそうにモルガーナは笑う。MPとINTが2倍か。これまでひたすらにINTにのみ割り振っていたせいでMPが初期値しかなかったモルガーナが、MP二倍になる事でイワンとの決闘の時に使っていた中級魔法以上の威力の魔法を使えるようになる。

 これなら物凄く恐ろしい程の火力が出る筈だ。INT1点特化が二倍になっている事ですら恐ろしいのに一体どれだけの威力になるんだろうな。

 それにしても、道化師ががDEX以外すべてを半減にさせてやっと二倍だったのに上級魔法使いはノーリスクで二倍か……。えらい違いだな。


「あら? MPが2倍になってエルフが魔法に秀でた種族だといっても、一切割り振っていないMPに割り振っていないのでしょう? それだとどれくらい上級魔法を撃てたかしら? 」

「ちょっと待ってよ…大体中級の1.5倍くらいのコストだから……うん。計算上は中級の魔法なら余裕をもって2発撃てるよ。だけど上級魔法はギリギリ2発撃てないと思うよ。ま、回数は関係ないよ! 大事なのは上級魔法が使えるという事。つまりは最・大・火力! ロマンの座は譲らないよ!」


 サオリの疑問に大雑把ながら大体のコスト計算をして返答を返すモルガーナ。一応数学教師ではあるせいか、この手の計算は結構早いな。

 ただ、その計算の速さに少し関心するのも束の間、すぐにいつも通りに残念な様子でアニーに突っかかっていく。いったいどれだけロマンにこだわりがあるんだ。しかも、ジョブが魔法剣士でロマンがあるって理由だけで対抗意識を燃やすってどれだけロマンの名にこだわってるんだ。

 アニーも呆れた様子で頭を抱えてため息交じりにモルガーナを宥める。


「結局そこに戻るのかよ…… 心配しなくてもその席はお前の物だよ」

「え? ホントに? ロマンは勝ぁつ! 」 

「モルちゃん……それでいいのね……?」 


 アニーのおざなりな発言でも満足したのか、純粋にドヤ顔で喜ぶモルガーナ。そのあまりにも小さい自尊心にサオリですら引いている。いや、それどころか周囲のプレイヤー達も引いてるんだけど、まぁ言わないでいてあげるのが優しさだろうか。


何はともあれジョブチェンジが出来たわけだけど、これからどうしようか?











書いてて思ったのは、STRに一度も割り振っていない癖に更に三分の一になったらこれまで使ってた短剣が持てるのか? って事です。

 これどうしよう……ご都合主義で解決できるかな……


10月13日

中級道化師のステータス補正でスキルまで加味してしまうと、【成功】スキルの計算がとってもめんどくさかったのでちょっと変更しました。

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