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第五十話

ちょっと日常描写とどうでもいい話。


「おはよう……」

「あぁ、起きたの? 朝ごはん出来てるから」


 前線で一度戦闘をしてみた次の日、中々濃い内容を過ごしたせいで大分頭が疲れた。俺ほとんど傍観してただけの様な気もするんだけどな。まだぼんやりしたまま、何気なくテレビをつけると、ちょっと興味深い内容が流れていた。




『__つまり、現実とゲームの境界線が曖昧になってきているのですよ』

『なるほど。それが最近のゲーム好きの人々に起きている異変の原因というのですね? あ、VTRがあるようですね? 一度そちらをご覧ください』



『あ、あちらです。あちらの男性が最近挙動がおかしいというゲーム好きの人物です。では、試してみましょう。後ろから忍び寄って……わっ!』

『 ッ! 敵襲か!? プロテクト! ガードアップ! って、なんなんですか貴方たちは!?』

『すいません○○TVです。そのプロテクト?というのは一体何なのでしょうか? やはりゲームの技なのですか? その動きは一体何なのでしょうか。顔を赤くしているという事は羞恥心はあるのですよね?』

『ちょっ、いきなり失礼じゃないですか!? 誰だっていきなり驚かされて撮影されたら恥ずかしいでしょ!』

『あっ! 逃げないでください! もっと話を__』


 VTRはそこで終わってしまった。マスコミのちょっと眉を顰める様な取材法は、まぁこの際置いておくとしてだ。あの男性の盾を構える様な動きと言葉。間違いなくYSOのプレイヤーだろう。確かにあのゲームはVRゲームにしては現実と見紛う程のリアリティだ。しかも脳波やら生体電気やらを読み取って自分の体を操作するような感覚でキャラクターを操作できる。没頭してあのゲームをやっている人間に対していきなり驚かしたら、あんな反応をしてしまうのは仕方がないだろう。例えばせんせー、アニー、それに俺もだ。TVは既に司会とコメンテーターの会話の画面に変わっていた。他人事でもない無いように続きが気になってしまい、トーストが冷める事も忘れ画面に集中する。



『VTRを見た感じどうみてもゲームの内容を引き摺っているといった様子ですね。○○さんと△△さんはどう思いますか?』

『これは由々しき事態ですね~。だいたいどうしてゲームの内容を生活の中でも引きずるのか理解に苦しみます』


『私としては分からなくも無いですけどね。生活にも引きずるって事はそれだけ触れてるものって事ですよね? 私も仕事柄、言葉が回りくどい言い回しになってしまいましてね? よく娘に私と会話をするのは面倒だといわれてしまいますよ。分かりやすい例で言ったら自動ドアが開いたら、思わずいらっしゃいませと言ってしまったりでしょうか。この問題、つまりはそういう事ですよね?』


『いやぁしかし、たかがゲームですよ? そういう仕事と同じく考えるのはどうかと思いますけどねぇ』


『あはは。そういった考えは今時若者受けが悪いと思いますよ? 「長い時間触れている物」という点では同じなのですから』


『なるほど。コメンテーターの間でも意見が分かれていますね。では専門家の方の意見をもう一度聞いてみましょう』


 ゲーム否定派の様な考え方と寛容派の考え方の2つが議論の場に上がった所で、専門家という人物へ話が振られた。何故かふんぞり返る様に座るちょび髭のおじさんといった感じの人物でなんだかいけ好かない雰囲気のある人物だったが、ゆっくりと口を開いた。


『この問題の論点はゲームが生活の一部に侵食してくるほどに没頭してしまう事にありますね。先ほど彼が仰っていたように、娯楽が職業病となりつつある。ここは趣味病とでも言いましょうか。これもゲームがリアリティを持ち現実に近づいているという技術の発展の代償、という所でしょうかね』


『「ゲームが現実に近づく」ですか。アニメでもその手の作品があるといいますね。なんといいましたか。エスエー……』


『あぁ、それですか。確かバーチャルリアリティーマッシブリーマルチプレイヤーオンラインロールプレイングゲームといったジャンルをモチーフにした作品ですね。馴染みの無い言葉ですか? 簡単に説明すると、電子データのみで造り上げた仮想の世界に意識や脳の回路を繋げる事で、五感全てをフィードバックさせたゲームの事です』


『仮想世界と互換ですか……なんだか壮大なテーマですが、今回のゲーマーたちの異変を踏まえると危険に感じるのは私だけでしょうか?』



 なんだか話の雲行きが怪しくなってきたような気がする。なんとなくチャンネルを変えたくなったが、それを堪えて既に冷めてしまったトーストを口に詰め込みつつ続きを見る。


『そうですね。これこそ私の今の研究内容なのですが、もしそんな事になってしまったら非常に危険です! 仮想世界でのゲーム。えぇ、聞こえはいいでしょうが、そこで行われるゲームはFPSというシューティングゲーム・アクションゲーム・バトルゲーム。つまりは殺し合いのゲームがメインとなります。仮に限りなく現実に近い世界でそんな事をしてしまったらどうなるでしょうか? 殺めるという行動に慣れてしまう事でしょう。 それこそ現実の世界でもついカッとなって殺めてしまってもおかしくないと思いませんか? それこそ今回の件のように、ついなじみ深い行動をとってしまうように!』 


『それは……なんとも恐ろしい話ですね。それこそゲームが規制されてもおかしくはない程ではありませんか?』


『フフフ。安心してください。ここまで脅かすような事を言っていましたが、実際はそうはいきません。なぜなら、不可能だからですよ。仮想世界なんていう夢物語の構築というのは。そもそも仮想世界なんて莫大なデータ量のシステムを構築したとして、それをどこに保存するのですか? 百歩譲って構築できたとしましょう。そんな世界にアクセスする事が家庭用の通信ケーブルで出来るのでしょうかね? それだけじゃありません。五感をアクセスさせるための機械だって存在しません。』


『というと?』


『電子データと脳とを繋げる手段が無いんですよ。いや、確かに医療技術としては存在しますよ? 人口網膜やカメラによる視覚データを脳に埋め込んだ電極チップに送る技術が。しかしそれはあくまでも医療分野ですし、発展途上の先進医療です。いまだ研究段階にあるといっても良い。それが電極も何も頭に刺さずに、例えばヘルメットを被るだけで実現させるとして、それが医療分野から他分野に流用・活用される。さて、いったい何時になるのでしょうね?』


『なるほど。では安心ですね。でも現状でもVRゲームがあるでしょう?』


『それは視覚と聴覚の2感覚のゲーム、それもコントローラの様な外部入力装置が必要でしょう? VRMMORPGという分野とは似て非なる物です。断言しますよ。現状の科学力で入力装置不要な脳波読み取りゲームなど、“実現は絶対にありえない”と。』 


 そこまで見た時点で、俺はテレビの電源を切った。まさかテレビに出る様なお偉いさんに存在全否定されるとは思わなかった。自室のある方向に目を向ける。あの電気パッドが複雑に引っ付いたP○4VRモドキは、間違いなく先ほど有り得ないと断言された脳波読み取りのVRゲームだ。一応視覚と聴覚だけという縛りはあるが、まぎれもないオーパーツだったわけだ。

 ……怪しさMAXのゲームが怪しさ天元突破なゲームになってしまったな。だけど、どんなに怪しくて胡散臭いといっても、裏を返せば今の技術では出来ないとお墨付きが付いたゲームな訳だ。 それなら多少の危険くらいは飲んでやるさ。


 

あ、でもそれだったら五感全部フルダイブVRの方が良かったかな。




皆さんは突然怪しいけど滅茶苦茶高性能なゲームが届いたらどうしますか? 深く考えずにプレイしますか? ビビりながらもプレイしますか? 放置? 通報? 作者は迷わずプレイしちゃうと思います。

今回の話はちょっとした布石。そういえばこれフルダイブなゲームじゃないの忘れてました。聴覚と視覚だけでは、マイクとか感覚とか食べ物とかで限界を感じて来たのでその内何かしらテコ入れする時の布石回。

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