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第四十七話

 流石にダメージ計算の設定とかは雑なので実際に今回の話の内容が実現可能かどうなのかは分かりません。取りあえずノリと勢いでロマン火力スゲーが伝わればいいかなという話。

 モルガーナとイワン、それと外野の俺たちはギルドに備え付けられている習練場に移動した。厄介なクラン【前線攻略組】との関わりを断つために。

 最初にイワンと戦闘するモルガーナは習練場の中心に、外野の俺たちは習練場の恥に移動した。二人は既にオプション画面から設定を変え俺たち全員にHPが見えるように設定してある。


「じゃ、ルールは簡単に。私の三回の攻撃をガードして、一度もダメージを与える事が出来なかったらタンク側の勝利。そっちのクランにでも何でも入ってあげるよ。反対に三回の内ガードを貫通して一度でもダメージを与える事が出来たら私の勝利。謝罪して、金輪際関わらないと誓って?」

「はっはっは! そんな簡単な事で良いのか! 分かった。これでまたうちのクランの魔法隊が強化されるな! 喜ばしい事だ! あぁ、ハンデとして最初の攻撃はスキル無しでガードしてやろう!」

「……はぁ。じゃ、行くよ。」


 余程自身の防御能力に自信があるのか既に勝った気でいる様子のイワン。それに呆れながらも坦々と自分の準備をするモルガーナは、既に杖を掲げて魔法の発動を開始する。

 横で見学する俺たちはなんとなくモルガーナのやろうとしている事を察し既に距離を取っている。ただ、唯一モルガーナと初対面で人となりを知らないバロンだけは心配げに俺たちに囁く。


「お、おい。気軽に言ってるが大丈夫なのか? イワンは見ての通りバカだが、その分馬鹿みたいにレベル上げして馬鹿正直にステをHPとVITに割り振っている。オツムが足りなくて作戦や団体行動がとれないから一軍パーティには入れていないが、ステータスだけなら一軍パーティにも引けを取らない。ここに来てギルド登録してる所からして、そこまでレベルは高くないんだろ? 今からでも遅くないから撤回した方が良いんじゃないか?」

「一軍に入れない理由が酷いな!? あーえっと、それなら大丈夫だと思いますよ。 前線攻略組でしたっけ? トップクランの防御力がいくらかは知らないですけど、それでもダメージを与えるだけで良いんですよね? いくら一軍と同等といえどもタンクはVITだけでなく、HPにも、重装備を纏う為にSTRにも割り振らなきゃいけないですしね」

「当たり前だろう。それがどうかしたのか?」


 魔法発動の詠唱時間を終え、ぼそりと周囲に聞こえない程度の声で魔法名を呟く。あぁ、やっぱり予想通りテンプレ展開やろうとか碌でも無い事考えてるな。離れといてよかった。

 イワンに向けた杖の先に巨大な炎が集い、ゆっくりと放たれる。それはこの国へ来る途中の道すがら、()()()()()()()と同様だった。


「ふむ。その炎の大きさ。【()()ファイア】だな? 中級魔法を使えるとはなかなか優秀な魔法使いらしいな! いやぁ良かった。これで初級魔法しか使えないとかだったら連れて行っても役に立たないからな! しかし、この程度ならあの二回なんて無駄だな……」


 そう言って勝手に盛り上がり勝手に落胆するイワン。あぁ……やっちゃったよ。モルガーナの様子を見ると押さえてはいるが口元が緩んでる。盛大なフラグを懇切丁寧に立てられて喜びを抑えきれないって感じだ。


 ゆっくりと進んだ炎球は、油断しきったイワンの大盾にぶつかると……盛大に爆発した。


 巨大な怒号を掻き鳴らし、熱気と暴風を周囲にまき散らした(五感のあるVRではないので感覚だけだが)炎球の直撃を受けたイワンは予想外のその衝撃に耐えきれずに尻餅をついてしまった。初めてモルガーナの攻撃を見たのはイワンだけではなく、バロンもだ。二人とも今引き起こされたことが信じられないといった様子でキョトンとしている。


「ありゃ? ダメージ入ってないっぽいよ。ホントはこれで決めてドヤ顔したかったんだけど、流石は前線に張り付いたプレイヤーだよ。でも、初手で尻餅はつかせたよ?」

「俺がメガファイア程度で尻餅をついた? あ、ああありえない! 一軍の【ギガ・ファイア】でも俺の削られる体力の量は微量なんだぞ? なのに、メガファイア如きでノックバック? そんな馬鹿な話があるか!?」

「今のは【ギガ・ファイア】でも【メガ・ファイア】でもない。 











【プチ・ファイア】だよ!」

 


  

 

 タメにタメて言われたそのセリフは、まるでどこぞの魔王を彷彿とさせるように威風堂々とした宣言だった。バッチリとポーズも決めてモルガーナの中の「言ってみたい言葉ランキング1位」くらいには入っていそうなセリフを言えて大満足といった顔だった。さっきまでの怒りとか凛とした雰囲気は何処へ行ったって感じだ。いっそ俺の感動を返してほしいくらいだ。

 モルガーナを知っている俺たちは呆れるくらいで済んでいるけど、知らない二人は信じられないモノを見て気が動転した様子だった。むしろ自分の防御力に絶対の自信のあった人物と自身も魔法使いの為魔法に詳しい人物なのだ。どれくらい理不尽なのかは俺たち以上に詳しいだろう。


「な、なんだあの火力は!? しかも【プチ・ファイア】? 初級魔法どころか魔法消費が少ないのが取り柄の練習用の魔法じゃねぇか!? ありえねぇ。い、いったいあの魔法使いのレベルは? いや、それ以上に一体なんのジョブなんだよ!?」

「落ち着いてくださいバロンさん。正直に言えば、俺もモルガーナのレベルやジョブは詳しく聞いたことが無いです。だけどステータスの割り振りだけは知ってます。INT振りです。」

「そ、それはあれだけの威力なんだ。INTに多く割り振ってなきゃ説明がつかねぇよ。」

「あぁ、違いますよ。割り振ってるとかじゃないんです。INTだけに振ってるんです。回数を打つためのMPに振る事も、移動の為にAGIに振る事も、より強い杖を持つためにSTRに振る事もなく、ただ火力を追求してINTだけに割り振った。だからINT振りです。」

「……………馬鹿なのか?」

「残念なことに、馬鹿なんですよねぇ」

「さっきまでその馬鹿に俺への侮辱を本気で怒ってくれたと感動していたんだけどな」

「……馬鹿なんですよねぇ」


 疲れた様にため息を吐く俺の隣で、妹のミツバは少しだけ恥ずかしそうに目を逸らした。血のつながった姉妹である事は黙っていよう。プライバシー的にもミツバの精神的にも。更に怒っていた筈のサオリも顔を逸らして肩を震わせている。絶対笑ってるよな?

 っと、そんな外野の話は置いといて、肝心の戦闘中の二人だ。既にイワンは立ち上がり、さっきまでの余裕は何処へ行ったという感じの真剣な顔だ。自信のあったVIT値を超えて尻餅をついたのだから仕方が無いだろう。それに引き換えモルガーナは既に満足し始めているのか満面の笑みだ。


「【防御力(ガード)強化(アップ)】、【ノックバック耐性(アンチ・ノックバック)強化】、【壁の如し(シールドウォール)】。さっきまでの油断は無いぞ。次からは全力で防御にとりかかる」

「ま、私も一回目だからってちょっと舐めてたし、次からはもっと上げてくね。」


 気楽な様子で次の魔法の準備に取り掛かるモルガーナに対してスキルまで使って身を固めるイワン。流石に本気を出した盾職にはふざけたりはしないだろう……なんて考えた俺ば馬鹿だった。


「今度は少し強めに行くよ!【ファイア】」

「はぁ!? ぐぇ! 」


 ファイアと唱え放たれたそれは、先ほどの爆発よりももっと高威力で、今度はイワンを尻餅ではなく、数メートルも吹き飛ばした。スキルを使って防御力を上げた状態のタンクをだ。馬鹿げた火力ではあるが、それでも特大ノックバックだけ。俺の【オーバーリアクション】のスキルのように、吹き飛んだだけのノーダメージだ。残りはあと一回だけしかないけど大丈夫か? 大見得切った割にこれだとちょっと心配になって来た。


「うーん。ちょっと遊び過ぎたよ。それじゃ、最後は本気で行くよ!」」

「なっ! この期に及んでまだ火力が上がるのか!? 【プロテクト】、【防御力強化】、【ノックバク耐性】、【壁の如き盾】! 」

「流石に最後だけはこっちもブースト系のスキルを使うよ。【魔法強化(マジックブースト)】、【火属性強化】、【次弾強化(ブースト・ネクストダメージ)】。うぅん、【メガ・ファイア】だと周りの被害が大きいから……【ファイアボール】!」


 そう言って杖を構えると、杖の前に炎が集い、球形に形をとった。見た目の派手さで言えば、二度目に使用したファイアの方が大きかったが一体何が違うのだろうか? 

 そう考えている間に球状に形作られた炎はイワンの構える盾へとぶつかる。すると先ほどまでとは比べ物にならない程の衝撃だったのか、イワンの顔が大きくゆがむ。たぶん爆散するファイア系と違って球形に圧縮されている分、威力が高いのだろう。

 モルガーナの方を見てみるともうする事は無いといわんばかりに後ろを向いて手にする杖を振り決めポーズを決めていた。一体どこのヒーローの決めポーズだよ……。


「これで終わりだよ。」

「くそ! こんな威力、あのエリアボスに近いレベル。こんなのありえねぇ! ぐわぁ!!」


 芸の細かい事に、吹き飛ぶ時間まで計算に入れていたのか格好良くセリフを決めた瞬間、一気にイワンが吹き飛んだ。表示されているイワンのHPゲージを見てみると2割ほど減少していた。2割と聞くと少なく感じるかもしれないが、前線の一軍クラスのタンカーがしっかりとスキルを発動させてガードしていたにも関わらず2割も減らしたわけだ。むしろ火力が異常とほめるべきだろう。

 それに、これでモルガーナの勝利が決まった訳だ。これで負けていたら絶対に面倒な事になっていたしひとまず安心といった所だ。

 今起きた事が信じられないと言うような様子のイワンに更なる追い打ちをかけようとする格闘家の姿。不良ドラマのワンシーンの様に拳を握りポキポキと音を鳴らして不敵な笑みを浮かべたサオリだ。不敵な笑みを通り越して悪鬼羅刹にも見えて滅茶苦茶怖い。


 「ぼーっとしている暇なんて無いわよ? 次は“ネタ職”で“ゴミ”な格闘家の相手をして貰わないと、しっかりとその盾で受けて貰わないと……ねぇ?」


ハルクですら怖気づいてしまうような迫力で威圧(にっこり笑う)するサオリに、イワンは借りて来た猫のに震えてしまっている。なんだかもう展開的にお腹いっぱいなんだけど、これまだ続くのか?

 


仮にモルガーナのレベルが75だとして、割り振れるステータスポイントは合計148。その全てをINTに割り振った状態で、エルフ種族によるINT補正・魔法使いジョブのINT補正によって更なるロマンの追求。火力だけならトッププレイヤーの火力を鼻で笑える程の高火力だ!(こじつけ)

 DEFに全振りも出来ないような普通のタンク如きがノーダメで受け切れる筈が無いのだ!!!(願望)








 MP無振り初期値の魔法ジョブって絶対ネタキャラですけどね。


誤字訂正

「じゃ、ルールは簡単に。私の三回の攻撃を攻撃をガードして、

修正後

「じゃ、ルールは簡単に。私の三回の攻撃をガードして、

誤字報告ありがとうございます。



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