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第四十二話

戦闘が終わってからのグダグダ話。自分で書いておいてなんですけど、ゲームにおいて攻略前線とかってホントにあるんですかね? ネトゲしない癖にゲーム物書いてるとこういう時に困りますね。

「そこまで! ミツバが降参したためメイの勝ち! 」


 アニーの勝利宣言をもって戦闘は終了となった。首に当てていた短剣をしまい、ミツバの手を引いて立ち上がるのを促す。ミツバが金属系の鎧だったら俺のSTRじゃ無理だったろうが、始めたばかりらしいミツバは初期装備だったため俺のSTRでもなんとか引き上げられた。ちょっと筋力が足りるか心配だったけど大丈夫でよかった。女の子に重いっていうのは気が引けるし。

 ……よく考えたらミツバはまだ初期装備なのか。それなのに結構苦戦していた俺って一体……。軽く自分の弱さに自己嫌悪に陥りそうになりながらもそれを顔に出さないように努める。ちょっとした先輩の維持だ。


「お疲れさん。ミツバはリアルでも格闘技やってるのか? 動きが達人かよってレベルだったから焦ったぞ」

「それはこっちのセリフだよ? 何あれ? 段々速度が上がっていったと思ったらガクッと転ぶし、かと思ったらトランプ? 体が言う事を聞かなくなるなんて聞いてないよ? 道化師って言ってたからある程度は覚悟してたけど、ちょっと予想以上だったし。」

「まぁゲームだしな。いくらリアルになった所でスキルやステータス差の理不尽なところは変わらないって」

「む~。確かに実感したけど、お姉ちゃんの言うとおりになったのがちょっと癪だよ?」


 モルガーナの予想通り? あの人いつもは残念なくせにこういう時だけは鋭いんだから困る。まぁ道化師ジョブだし、正攻法で戦っても仕方が無いしな。やった事と言えば、ジャグリングして、逃げ回って、ひたすら不意打ちしていただけだし。……あれ? 振り返ってみると俺、姑息な手しか使ってないただの卑怯者じゃね?

 ま、まぁ道化師のスキルの中ではまだまともなスキルしか使ってないし、真面目に戦ったうちに入るんじゃないか? むしろSTRもINTも全部貧弱なのに頑張った方だろう。


「やっぱりメイ君の方が勝ったね。やっぱり私の予想は正しかったって事かな! だけど、メイ君も結構ギリギリだった? 自分の使ったスキルに振り回されそうになってたけど」

「確かに【オーバーリアクション】……あ、俺が自分から吹っ飛んだスキルな。使った後ミツバの格闘術が予想以上に強かったせいでちょっと使用を後悔したよ。こんなに吹っ飛ぶとは俺も思わなかったし。けど、使わなかったら直撃してたからな。使わざるを得なかったんだよ」

「小生はジャグリングの意味を知りたいですな。先日死んだ目をしながらジャグリングしながら町を徘徊していた所を見ていただけにどんなスキルなのか気になりますぞ。あぁそれと、破裂したトランプはどうなったのですかな? 生産職的にはそこも気になりますぞ。」


 観戦していた皆もこちらに集まってお疲れと労いと疑問をぶつけて来た。やっぱりレプラにもジャグリングしながら町を回ってたのを見られてたか。結構な数の人数のプレイヤーにも見られてたから覚悟はしてたけど、好奇の目で見られてた黒歴史を掘り出されると精神的にクるものがあるな。

 あ、ちなみにこのトランプはMP消費で補充できるらしい。使い捨てじゃないのは弟子入りイベントのクリア特典であるアーティさん製のトランプ故の高性能さだろう。いちいちスキルで使う度に買い揃えなければいけない事態にならないから便利だ。


「ジャグリング街一周の刑は俺も思い出したくないから蒸し返さないでくれ……。えっと、戦闘中にやってたジャグリングは俺のスキルだ。一定回数ジャグリングをする度にDEXが上昇していくスキルだ。アクティブスキルじゃなくて、ジャグリングをすれば自動発動するパッシブスキルってのが特徴だな。3つだと上昇値はそこそこなんだけど、それ以上に副次効果が大きくて使っていたんだ」

「副次効果? ……あぁ。あの成功のスキルか? って、待て。まさかジャグリングでも成功の内に入るのか?」

「正解。例えば、ボール3つでジャグリングした時は3回毎に【ジャグリング】スキル成功判定になってDEXが上昇する。それでスキルの成功判定が入れば、【成功】スキルに発動判定が入って更に上昇。しかもアクティブスキルじゃないから、ジャグリングはプレイヤーの腕次第の代わりにずっと発動し続けられる。中々噛み合ってるだろう?」

「はぁ……。通常時は誰よりも弱いステータスなのに、使い方次第で誰よりも強力なジョーカーになるってか? 道化師とはよく言ったもんだな」

「すごい! メイ君がチート主人公してる! 隠れてずっとジャグリングしてたら無敵じゃないかな!」


 それは俺も考えた。無駄に【成功】スキルを稼ぐために【的確急所】のスキルを無意味なタイミングで使ったりする必要も減るからな。今回は使っちゃったけど……。

 

 だから、一回どこまで上昇するのかを試してみたんだけど、結果から言うと30分くらいやっても打ち止めにならなかった。だけど、30分も上昇させ続けるとAGIも普段と比べ物にならない速さになってしまって、その違いに順応できなくなった。だから成功スキルのステータス上昇は少しずつスキルを積んでいって体と目を慣らしてやらないと駄目だと知れた。まぁ、強力なのは変わりないから隠れて練習はしてるんだけどな。


 その事をモルガーナに告げるとそれでもロマンがあるとテンション高く騒いでいた。この人の基準は面白いか面白くないかだから何か琴線に触れるものがあるのだろう。

 ソロではジャグリングなんてする暇はないだろうが、パーティを組めば少しはヘイトが分散してくれるだろう。

 サオリとミツバの二人は成功スキルが何かを知らない為疑問符を浮かべていた為、スキルの効果を説明した所ミツバにずるいと怒られた。いや、素のステータスではそっちの方が遥かに上だと思うのですが……。 

 

「まぁまぁ。格闘家のジョブもコンボボーナスで同じ様な事が出来るでしょう?それと同じよ」

「それはそうだけど……なんか釈然としないよ……」

「コンボボーナス? 格闘家もステータスを上げる方法があるのか?」

「えぇ。あるわよ? 拳撃や蹴撃の型を取る事でコンボが発動。STRとAGIが上昇していくの。メイちゃんのそれと違って2点特化の分上昇率は高い筈よ」


 ゴネるミツバを宥めるサオリが格闘家におけるコンボについて教えてくれた。という事は、ずっと攻撃をし続ければ攻撃力が上がるのか。それなら本来ミツバはもっと攻撃をしていれば更に鋭く重い攻撃が出来ていたって事か。

 今回は俺が【オーバーリアクション】で無駄に吹っ飛んで離脱したりと予想外の行動をとっていたからそれが出来なかっただけという事か? ……やっぱりスキル使って正解だったな。ちゃんとコンボを稼がれたらこっちが何かする前に倒されてたかもしれないのだから。


 今回の戦闘とスキルについての雑談はここまでにしてアニーに確認する様に死線を向ける。今回の戦いでアニーパーティに入る上で道化師のジョブを確認してほしかったからな。これでどういう評価を貰えるかだ。

 

「どうだったか?」

「もはや剣士どころか近接戦闘職ですらないな。だけど、様々なスキルで遊撃や陽動が可能そうなのはデカいな。なんならこれから攻略最前線に行きたいくらいだ」


 確かに俺のスキルは移動系や注意を集める様な物が多いから陽動も遊撃も適任だろう。これで仮を返す機会が出来そうだ。ずっと世話になりっぱなしっていうのも嫌だったから内心すこしだけ安堵する。

 流石にその最前線というのは荷が重いだろうけど、まぁ冗談だろう。ただ、その冗談のつもりで言ったであろうその一言に反応する人物が約1名いた。


 「最前線! それ最高! それ採用! このメンツだったら結構奥まで行ける筈だよ! 陽動二人に火力火力火力! 大抵の敵ならどうにかなるよ! 行こう!」


 また残念魔法使いが頭の悪そうな事を言い出した。火力でごり押しと言っているが、うち二人はまだ今日始めたばかりなんじゃないのか? にも拘らず高レベルであろう前線とやらに行って大丈夫なのか? いや、DEXしか振ってない俺が言えたことでもないけど。

 ミツバも釘が打てるバナナを作れそうな極寒の目線で姉の様子を見ているが、その本人はテンションが上がりすぎて気付いた様子はない。この街に来たのもモルガーナのわがままって話だったし、図太いというか、いい性格してる。

 流石に皆反対するだろうと思ったけど、サオリとレプラだけは面白そうな物を顔をしていた。


「それは面白そうね。どうせある程度レベリングをしたら行くつもりだったのだし、物見遊山がてら前線見学に行ってもいいんじゃないかしら?」

「そうですな。レベルは兎も角としても今ほどのリアル戦闘スキルを持っているのであればミツバ殿も問題ないでしょうし、他のメンツも各々自衛の手段は持っているはずですからな」

「おいおい……正気か? 確かにミツバのプレイヤースキルは大したものだったが、レベル的には気が抜けない程度なのは変わらないんだぞ? 俺もポイントは平均的に割り振っているから純粋なタンクになるのは厳しいし、ただでさえ全員ステータス的に打たれ弱い構成なんだぞ? いくらなんでも自殺行為だ」


 常識人枠のアニーが前線に向かう事を否定する。レプラの言う通りミツバのプレイヤースキルは高いし、アニーも元々前線にいたって話だし、行けない事も無いとは思う。だけど、それ以上にアニーの言う通りここにいるメンツは皆VITに割り振っていない。特化ステータスにしている俺やモルガーナ。レプラも元は魔法使いジョブだったというから戦闘は問題ないとは思うが、それでも今は生産職が本業であり、VITは低い筈だ。

 今日会ったばかりの格闘家ジョブの二人のステータス構成は俺は聞いていないが、逆にこの二人は純粋にレベル不足・ステータス不足だろう。唯一VITに割り振っているのはアニーだけだが、そのアニーが無理と言っているのだから現実的じゃない話なのは明白だろう。

 現状の多数決的には賛成が三人。反対が俺とアニーって所か。残るミツバが反対になってくれればまぁ姉であるモルガーナも強くは言えないのではないのかと思うけど。そう思ってミツバの方を見てみる。流れを察したミツバは俺としては予想外な答えを出した。


「ボクは賛成かな?」

「本気か?! いくらなんでも安全マージン0で行くのは厳しいぞ?」

「うん。先輩に負けたままなのは悔しいし、そこに行けば手っ取り早く強くなれるんでしょ? それならボクも行くのに賛成だよ?」

「ふふふ。味方につける人間を間違えたねメイ君。ミツバの負けず嫌いは筋金入りだよ! それこそ安全マージン何それおいしいの?を地で行くサムライガールなんだよ」


まじかよ……。それならレプラとサオリが肯定的な意見を出した時点でもう多数決が傾いてた訳か。これで賛成4反対2で、攻略前線行きが決まってしまった。こんな血の気の多い脳筋メンツで大丈夫か?

アニーもミツバのその発言を聞いて諦めた様にため息をついた。


「……はぁ。仕方が無いか。ここで俺だけ行かないと言ってゲームオーバーなられても困るしな。俺も付いて行く。ちなみに生産職のレプラも付いて行くのか?」

「小生が? まさか! 行くわけがないですぞ」

「「は?」」


 一瞬キョトンとした顔をしたと思ったら笑いながら否定するレプラ。これにはモルガーナとサオリの二人も予想外だったのか驚きの様子を上げている。面白がって賛成していたくせにレプラは来ないのか? いや、確かにレプラがこの町にいる理由ってNPCの幼女をストーカ……見守る為なんだし付いてくるわけがないか。

 だけどそれならなんで肯定意見出した?


「それはもちろん面白そうだからですな。どうせ小生は行く気が無いから野次っただけですな」

「ハイハーイ それなら服屋のレプラさんには道着作って欲しいでーす」

「む? 素材は麻や綿系でしたかな……? 承りましたぞ。他ならぬJC……ゴホン。友であるメイ殿の後輩殿であるならば、小生が力を尽くさぬ訳には行きませんからな。全力をもって作成いたしましょう」


 このロリコンまた変なスイッチ入ったよ。NPCの幼女のマリーちゃんにも全力で生産した服装備を貢いでたし、また無駄に高性能な装備を作るんだろうな。JCってちょっと本音漏れてるしちょっと息が荒いのが気持ち悪い。

 

「なんか思い出してきたぞ……。生産職に人気の街で異常に高性能な装備を作れる癖に子供用装備しか作らない変人生産職プレイヤーが発見されたって噂があったな……」

「失敬な。小生は作りたいものを作っているだけですぞ」


言外に自分のことだと肯定するレプラの様子にまた頭を抱える様子のアニー。ボソりと現行犯で逮捕にした方が良いのか?って呟いてるけど、もしかしてアニーはリアル警察官なのか? お巡りさん丁度居ますってか?


「それじゃ、レプラが装備を作ったら即・前線挑戦だね? くぅ~燃えて来た! 私たちの冒険はこれからだよ!」

「ちょっとまて! その打ち切りフラグは止めろ!」



 止める者のいないカオスな現場はモルガーナの暴走でまとめられた。





打ち切りエンドじゃないですよ? 続きますよ?

来週の金曜日に続きを投稿する予定です。


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