表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/129

第四十一話

久しぶりの戦闘描写です。コンボゲーでコンボの描写を書くのはメンド……大変ですね。スキルのご都合主義が止まりませんが、気にしたら負けです。


「それじゃ、審判は俺が請け負う。制限時間は三分、スキル・魔法の使用は自由。アイテム使用不可での1対1だ。先に降参するか、LPゲージが表示されたら敗北とする。万が一の時は俺が止めに入るから気兼ねなく戦ってくれ。二人とも、準備は良いか?」


「はーい。ボクの方は大丈夫でーす」

「俺も大丈夫だ。いつでも始めてくれ」

「よし、それじゃ……始め!」



 合間に立つアニーが勢いよく手を振り上げる。戦闘の始まる合図が出たが、お互い動かず相手の様子を見る。俺の場合は戦うためにちょっと準備が必要だからな。だけど、ミツバちゃんの方はなんで動かないんだ? 武器を出さないという事は、俺の様な特例を除くなら多分格闘家だろうに。


「どうして動かないんだ?」

「それはこっちのセリフだよ? お姉ちゃんが先輩は純粋な戦闘じゃない面で強いっていうから様子見してたのに、何もアクションを起こさないの?」

「そうは言われてもこっちだって警戒してんだよ。こっちは軽いミスでも命とりだからな。」


 どうやら相手も俺を警戒していたらしい。ただ、こうやってにらめっこしてても始まらないし、こっちから動くことにする。アイテム欄を開き、ボールを三つ取り出す。これまでの半端な道化師じゃなく、道化師らしい戦い方を少しだけ見せてやろう。

 ボールを投げ、ジャグリングを始めると俺のスキルが起動する。手の中を三つのボールが行き交う毎に、【ジャグリング】スキルに成功判定が入りDEX値が上昇する。本当はこのスキル、使う個数によって上昇値が上がるんだけど、戦闘中では3つが限界だろう。高望みはしない。そして、スキルに成功判定が入るという事は……。


【スキル:成功(サクセス)!】

【スキル:成功!】【連鎖(チェイン)開始(スタート)!】



 この通り、【成功】スキルにも判定が入る仕様だ。アーティとのジャグリングの特訓が終わった後に手に入ったんだけど、試してみた時は戦慄したね。なにせ試した限りではジャグリングする限り上限無く成功し続けられるのだから。

 ミツバはいきなりジャグリングをし始めて一瞬驚いたが、妨害の為に速攻で距離を詰めて来た。始めたばかりと言えどもレベルはそれなりに上げてるのだろう。予想よりも素早い動きで俺もちょっと驚いた。

 落ち着いて【ステップ】を発動し後ろに下がる。続けて【セカンド】、【サード】、そして新たに入手した四歩目の移動。【フォース】を発動。これだけではまだ距離を離すことはできない。移動速度を【ステップ】で1.2倍したところで俺のAGIじゃまだ誤差の範疇だ。まだ、ね。

 

【スキル:成功!】【連鎖!】×6


 ステップスキルを使用した事でスキルの【成功】判定。更にこの間もジャグリングを続けている為更に【成功】判定。これまでは成功を稼ぐために使えるスキルの種類が少なかったためやりくりが大変だったが、もうそんな心配をする必要が無い。もはやフィーバータイムだ。

 

 更に続けて【ハイステップ】を使用。これまでの成功で俺のAGIの加算値は15。ハイステップの移動速度はAGIの値の1.5倍だから、既に誤差の範囲を超え始める。更に【セカンド】から【フォース】までを使用。ジャグリングも含めて計6回の発動だ。


【スキル:成功!】【連鎖!】×6


 これで加算値の合計が27。これくらい加算すればジャグリングはもういいだろう。ボールをしまい代わりに短剣を一本取り出す。相手は格闘家なのだし、両手に短剣を装備する意味はないだろう。もう片方の手には別のものを装備してある。

 逃げるのを止め逆に自分から攻めに移る。


「む、今度は先輩から近付いてくるんだね?」

「準備が大体揃ったからな。【的確急所】! 【転倒】!」 

 

【スキル:成功!】【連鎖!】×2 


 走りながら転倒スキルを使う事でスライディングの要領でミツバの背後へ回る。流石にこんな移動法なんて予想がつかないだろう。スキルによる移動はなんというか、ぬるぬる? 不自然に滑らかだからな。

 いくら格闘家と言えども後ろからなら対処法は限られてくるだろう。そう考えて背中に剣を突き立てようとしたが、一瞬視界の端で何かがぶれた。ヤバいっ!?

 そう考えた次の瞬間、俺の身体は思いっきり吹き飛んだ。


「なっ!? 回し蹴り!? メイ殿は完璧に不意を突いていた筈ですぞ。よく対応できましたな」

「当然だよ。あの子の得意技は柔や合気の様な返しの技だけど、空手や剛の技も収めてるんだから。むしろあの子にとってこれくらいの不意打ちは不意打ちって言わないよ」

「ふむ……。妙ね」 

「あぁ。確かにミツバの攻撃は型も歪んでないし威力も乗っていた。だが、普通回し蹴りであそこまで吹きとぶか? そこまでSTRに振っていないのに? 」 


 あちゃー。サオリとアニーにはバレてるっぽいな。まぁ不自然に吹き飛んだ自覚はあるし、仕方が無いと言えば仕方が無いか。そして、外野の二人にバレてるって事は……。


「先輩。いま何やったの? いくらゲームで感触が無くても、当たったかどうか位ならわかるよ? それに、ゲージも全く減ってないよね?」

「やっぱバレるよな。種明かしすると、【オーバーリアクション】ってスキルだ。効果は数十秒の間、打撃系の攻撃を受ける時に受ける直前に自分から吹き飛ぶって効果なんだがな。流石に数メートルも吹き飛んだら不自然だよな」

「ふうん。……受け身系の流派かな? でもボクの攻撃が通らないって事でも、効果が切れれば関係ないよね?」

「さぁ、どうだろうな」


 図星である。

 しかもオーバーリアクションが受け身スキルの派生ってところまで全部ドンピシャだ。ミツバの中での理解って事で呟いたんだろうが、こっちは冷や汗ダラダラだ。受け身スキルは地面に叩きつけられる形の攻撃にしか発動しないから意味はないしな。というか、打撃系の攻撃を無効化させる代償が吹き飛ばしってもうこれデメリットだよな。

 このまま話をしていても成功スキルの効果時間が切れるだけだ。もう一度ミツバに向かって走り出す。

 

「何度も同じ手は食わないよ?」

「それはどうかな? 【ジャンプ】!」


 しっかり助走をして踏み込み、ミツバの上を飛び越える。はっきりいってミツバにとってはさっきの不意打ち大差ないんだろうが、使わないとそろそろ連鎖が切れそうだったんだよな。だから使わざるを得ない。同じ行動にミツバはつまらなそうな顔を見せるがそんな顔をされても困る。こっちだって精いっぱいなんだよ。


「それだけしかしないの? それじゃちょっと期待外れだよ?」

「まぁそういうなって。これも計画の内なんだから」 

 

  今度は着地の瞬間を狙って下段蹴りが跳んで来る。涼しい顔してやる事はえぐいな。しかもまだ【オーバーリアクション】の効果時間のせいで過剰に転んでしまう。ほらデメリットになったよこのスキル! 

 俺を見下ろし踵を振り上げるミツバ。おいおいマジか……。


「下が地面なら、何処に吹き飛ばされるんだろうね?」

「お前、絶対ゲーム初心者じゃないだろ! 」


  吹き飛ばしが逃げれない様にしてから攻撃ってスキル効果に順応するのが早い。この辺は流石モルガーナの妹って所か。だけど片足立ちになる踵落としは悪手だ。身体を捻り足を払う。流石のミツバもバランスを崩し、狙いがずれたお陰で踵落としが外れる。これはチャンスだと判断して短剣を振るい、()()()()()初心者とは思えない力量のミツバに腕を取られ投げ飛ばされてしまった。


【スキル:成功!】【連鎖!】


 分かっていたが、バランス崩した身体で投げ飛ばすっていったいどんな腕前だよ!? だけど、これでタネの仕組みはもう終わった。



「むう。やっぱりゲームだと動きが現実離れする時があるね。ちょっと反省。でも、これでまた振り出しだよ?」

「あー悪い。今の状況って完全な振り出しって訳じゃないんだよな」

「? どういう事?」


 俺の言葉に疑問符を浮かべるミツバ。俺は二回目の種明かしの為にアイテムボックスでは無く装備品のポケットからトランプを取り出す。短剣とは反対の手に装備していたもので、ロベールさんから貰った奴だ。

 唐突にトランプを取り出したことに更に疑問の様子を強めるミツバ。戦闘中にトランプなんて出されたら俺だって同じ顔をするだろう。


 「なんでトランプって顔してるな。これ、実は今54枚丁度無いんだよ。ジョーカーが一枚かけている。じゃあその欠けた一枚はいったい何処にあるんだろうな?」

「手品師の真似事? もしかしてボクのポケットの中に入ってるとでも……って、本当に入ってた!?」


 驚くミツバの様子に、してやったりとちょっとだけドヤ顔になる。


スキル【それは貴方の元に(イン・ユア・ポケット)】。

 

 相手の装備または服のポケットの中に指定した特定のアイテムを忍ばせるだけのスキルだ。発動条件は単純で発動前にターゲット対象に触れている事。特定のアイテムしかできないので、流石に爆弾をポケットの中に突っ込むなんて事は出来ないがトランプなら特定の中に入る。投げ飛ばしてくれたおかげで条件を満たせて、ミツバのポケットの中に仕込めたわけだ。


 いや、助かった。ミツバの戦い方が速度重視のお陰で、ポケットの無い金属鎧じゃなくて。

 リアルな格闘術に優れてるおかげであっちから俺に接触してくれて。


 こっちからわざわざ短剣を使わずに素手で接触しようとしたら怪しまれるしな。慌ててトランプを手放そうとするが俺の方が早い。右手をターゲットであるトランプに向け指を鳴らし、スキルを発動させる。


「【フラッシュ・ポーカー】。発動!」

「え? 何これ!?」


 その瞬間、トランプがパン! と小気味いい破裂音を鳴らし弾ける。その瞬間ミツバは先ほどまでの余裕が嘘の様に驚いてのけぞる。それはそうだろう。なぜならこのスキル。対象を驚かせ、仰け反らせるだけのスキルなのだから。

 

【スキル:成功!】【連鎖!】

【スキル:成功!】【連鎖!】 


 ここまでの連鎖で俺の速度は通常時の数倍になっている。更にリーノルーノから貰った指輪の効果で短くなったリキャストタイムのお陰で、既に【ステップ】が使える様になったため、ステップを多用し距離を簡単に詰める事に成功した。

 そしてそのまま短剣を、未だ仰け反りから回復していないミツバの首に押し当てる。いくら格闘技に優れていると言ったって、技をかけるよりも押し当てた短剣で首を切る方が早いだろう。



「これで完全に王手だ。降伏するか?」

「完全に主導権握って置いてそれ聞く? 先輩て意外と意地悪い? ……まぁ結構楽しめたしいいかな。降参するよ」


 


 俺の勝ちだ。

武器トランプはロマン。爆発するトランプはもっとロマン。


誤字修正しました。


2月14日 更に誤字修正しました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ