第二十八話
ごめんなさい
今回短めです。
「さぁ、到着ですぞ!」
「ですぞー!」
盗賊と戦ってから更に1時間。その後また盗賊に襲われるという事なく無事に到着する事ができた。まぁモンスターはちまちま出てきてはいたが、レプラが鬼の様な勢いで全て倒していくから俺は見ているだけだった。
しかも全くモンスターの事をマリーちゃんに全く気付かせない辺り無駄な熱意とこだわりを感じる。
「あぁ。念願のメイカーの町……。まるで夢のようです」
「あなた。良かったですね」
チャック夫妻が涙交じりに都市を見上げる。メイカーの都市は、流石生産の都市とでも言うべきか非常に大きな城壁に囲われていた。しかも、見上げる程の城壁は丁寧に鳥やら龍やら色々なレリーフが施されていて芸術的センスが感じられた。
これだけ大きな城壁に囲われていたら、確かにモンスターから襲われたりといった危険は皆無だろう。戦わない都市とはよくいった物だ。
「メイ殿。冒険者ギルドに登録はしていますかな? 一応、都市に入る際にはプレイヤーも身分確認をされますぞ」
「そうなのか? そこら辺は凝ってるんだな。まぁ、大きい都市だしそういうものか」
馬車を動かし入口へ向かう。入口には槍をもった門番みたいな人が2人立っていて、馬車に気付くとこっちにやってきた。
「止まれ! ここは商業都市メイカーである! 身分確認をさせてもらう!」
「貴殿らの目的はなんだ?」
「私たちは事前に申請をしていたチャックの糸屋の者です。申請していた通りにこちらの都市へ引っ越しに来ました。こちらの二人は移動の際の護衛の方々です」
チャックさんが門番の二人に説明をすると、敬礼をして道を開けてくれた。
「確認が取れました! ようこそメイカーの町へ!」
「皆様の商いの成功を心から願っております!」
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都市の中は活気にあふれていた。自作の剣を自慢げに披露するドワーフ。ポーションを販売するエルフ。薬草らしき植物を露店に並べる犬耳男性。もしかしてあれが獣人か? 初めて見た。
とにかく多種多様な人物がいた。
「レプラさん。今回は何から何までありがとうございました」
「私も娘の面倒を見て貰って大分楽をさせてもらいました。本当にありがとうございます」
「服屋のお兄ちゃん。たのしかったよ! またヌイグルミ作ってね!」
「なんのなんの! 小生が好きでやったことですからな。喜んでもらえて小生もうれしいですぞ。では、また後でお店に失礼させて頂きますぞ」
レプラはチャック家族を一時の別れを告げ、クエスト終了のサインを貰っていた。チャックさんたちはどうやら店を構える場所に引っ越し道具を置きに行くようだった。
「さて、次はメイ殿の用事ですな」
「え? 別に俺は特に用事はないぞ?」
ついてきたは良いけど、生産職に付くつもりは今のところないし。何の話だ?
「馬車での道中でメイ殿の様子を見ていましたが、やはり道化師ジョブは【成功】スキルありきの職業の様に思えましたぞ。スキルを成功さえすれば何処までも強くなっていく。さながら【格闘家】ジョブの上位互換のようでしたぞ」
格闘家ジョブとはあったことは無いけど、確か攻撃コンボが増える度にSTRとAGIが上昇していくんだっけ? そう言われてみると、確かに全ステータスが上がる道化師の方が上位互換にも見えるな。最初のステータスが低すぎのが難だけど。
「しかし! 今のメイ殿には成功を連続させるためのスキルが足りませんぞ! 大体、道化師の癖に芸の1つも出来ないとは何事ですかな!? 道化を名乗るならば、移動中暇ならばマリー殿にジャグリングの1つでも見せれた筈ですぞ!」
「うっ。自分でもちょっとどうなんだって思ってた事を……。スキルの中にも三流芸人とかいう芸が出来ない芸人に送る称号とか言う訳の分からん勲章があるのに」
だけど、芸の数で変わるなら、【一流芸人】みたいな勲章に変わるんじゃないのか? それなら何かしらの補正効果でも入りそうだけど。
「今のメイ殿に足りないモノ。それはスキルの数ですぞ! メイ殿本人はあの射られた矢をパリィするという訳の分からん技術があるのですから、本人チートも良い所ですぞ」
「いや、パリィはそこまで難しくないし、一方向だけだからウサギの群れの方が難易度高いぞ?」
「ぬぁあ! 価値観の違いがもどかしいですぞ! ウサギの方が弓矢より辛いとはどんな状況ですかな!? 兎にも角にも、まずはスキルを増やす所からですぞ! 幸いここは『戦わない都市』。サーカス団のNPCもいる筈ですぞ!」
そう地団駄を踏んで言われても、実際一方からの攻撃にはもう慣れてるからな……。
そう言えば、ここは生産職の都市では無くて非戦闘職の集う都市だっけ? それならそういうNPCもいる……のか? なんだか分からないけど、修業パートにでも入るのだろうか?